過酷な現実を乗り越えるために。
そして、その力をくれた仲間たちを救い、またともに笑い、一緒に前へ進むために。
できるだろうか。乗り越えられるだろうか。
ふとそんな思いが彼らの頭をよぎる。でも、そこで諦めることは無いだろう。彼らが越えてきた道のりは、その先を保証するぐらい過酷なものだったのだから。
だから、彼らは力強く言うのだ。「今できることをしよう」と。
彼らのこの先に来るものに、祝福を。願わくば、幸せな時間が、彼らにも僕らにも、少しでも長く続きますように。
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第13話、一期から通算すると第39話(番外編を入れると40話?)にして、リトルバスターズ!~Refrain~、堂々の完結!でございました。
オチを知ってしまってる身としては、さすがに「でっかいサプライズ」にあたるものは無かったのですが…これまでと同様に、非常に丁寧に作られた最終話には、あちこちで胸が熱くなりました。原作をきっちり踏襲しているところはもちろん、「ここをこう表現してくるのか!」という部分やアニメならではの表現を含め、十二分に楽しませていただけた感じで。
何より私を唸らせたのが、「リトルバスターズ」「Refrain」という、この作品を構成する二つの言葉を、縦軸・横軸に織り込んででもいるかのように、この一話の中に見事に散りばめてきたことでした。
「リトルバスターズ」は、友情の証。相互の思いの結実。
「Refrain」は、これまでに奏でられた旋律の繰り返し。印象に残るフレーズの再来。
今話で絶妙のハーモニーを鳴らした、その縦横二つの軸から、最終話のレビューを紐解いてみたいと思います。
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Refrain最終話、「リトルバスターズ」。
一期第1話のサブタイトルは「チーム名は…リトルバスターズだ」でした。
一番最初と一番最後を同じ言葉で括る…これは、「この作品を全体を通じて描く対象やキーワードを示す」時に用いられる手法の一つでしょう。しかもそれは、ただ同じ言葉である、というだけではなく、最初に提示されているそれと最後に提示されているそれとで、意味が変化・深化していることが受け手を唸らせます。別な作品を挙げるならば、漫画版の「機動警察パトレイバー」がいい例ですね。第一話が「ザ・ライトスタッフ(あっ軽い人びと)」、最終話が「The Right Stuff(正しい資質)」になっていて…この仕掛けには、読んでいた当時、私も大きく揺さぶられたものでした。他にもこの作品には良質な伏線やモチーフ間の連関、それらをまとめ上げて物語を大きく動かしていくダイナミクス、完全な解決に至らぬことの割り切れなさや、それでも得ることのできる絶妙なカタルシスなど、今読んでも数々の「良きもの」を得られる名作の一つですので、興味のある方は是非ご一読を。
…おっとっと。リトルバスターズのレビューでしたね。(^^;
今話サブタイトル「リトルバスターズ」も、単に呼称・名称を挙げたわけではないのだと思います。一期第1話においては、仲良し5人組の古くからの名前の復活、という程度の意味合いだったこの言葉は、これまでの40話によって描き出された彼らの絆が、意味を深化させています。当然、最終話のこの言葉に込められるのは、「確かな絆を紡ぎ上げた最高の仲間たち」の意味合いのはず。5人だった仲間が10人に増え、辛いことや悲しいこともみんなで越え続けて、そうして到達したのが最終話の「リトルバスターズ」なんですよね。
だから、彼らの思いであったり、絆であったり…そうした「リトルバスターズの到達点」「そうであればこそ動けるもの」などを暗示しているようなモチーフが、今話にはいくつか見て取ることができます。
今話アバンで理樹は、自分に残った最後の弱さであるナルコレプシーを克服するために、その原因となったもの、過去の記憶へと遡ります。その原因は、父母を失うことになった、交通事故。大切なものを失うことを恐れた理樹は、自分の中に閉じこもる「眠り病」を発症することになった、というわけなのですが…。
ここで、ちょっと引っかかる描写がなされています。交通事故の後、母に守ってもらって無傷の理樹が気が付く直前。画面に映し出されるのが、「満天の星空」なんですよ。すごく美しい、夜の空に瞬く無数の星たちが…。
ここは、理樹が遭遇した事故の経緯を示すだけなら、「特に描写しなくてもいい部分」だと思います。この星空のカットを丸々削っても、説明に不足はないはず。なのに何故だか、非常に手間暇をかけて、この星空は描かれています。美しく輝く星々というだけではなく、そこを望むべく空に開いた窓が、悲惨な事故によって壊れた車窓であり、ひび割れたガラスに縁どられたものであることを、印象付けるようにされているんですね。これは、「そうして描きたい理由があるから」としか思えません。この「星々」や「ひび割れたガラス」が象徴している、何かがあるはずなんですね。
その理由は、Aパートの冒頭まで進むと見つけることができます。
昏い虚空へ落ちていく理樹。まだ生まれていない、胎児の姿で闇へと吸い込まれていったその先に…胎児の理樹は、周りの星々と同じく、一つの光になるような描写がされています。理樹が一つの星なのだとしたら、他の星も人の象徴なのでしょう。「生きることは失うこと」と理樹は思います。だけど、その、失われる世界でも、こんなにたくさんの星が瞬いている。
失うこと。すなわち、この世界で数多く起こる、どうしようもなく辛い出来事、悲しい出来事、それらによって生を奪われること、です。そんな世界に僕らは生きています。でも、その世界から望む先には、数多くの星が…つまり、人々の一人一人の生が、そしてその思いの数々が、瞬いている。これが、「事故の後のひび割れたガラスの間から、天に瞬く星々を望む構図」の意味ではないでしょうか。
そして、その中でも明るく輝く星々の集まり~銀河の中心に扉が開いて…中から、恭介、真人、謙吾、鈴が姿を現すんです。理樹が、その先に失うことを知ってもなお出会いたいと望んだ、かけがえのない仲間たちが…。
つまり、星々の輝きはそれぞれが「人々」の象徴であると同時に、「人と人とが織りなす絆」の暗示としても描かれているのではないでしょうか。それは独りぼっちの光ではなく、お互いがお互いを照らして輝き合う、得難い絆になるものなのだと。
交通事故で両親を失った理樹の頭上でも…あんなに悲しい出来事の中でも、星々は輝いていました。まるで、悲しみの淵に立たされた少年・理樹を見守るように。だからそれは、「どんなに辛いことがあっても、絆のある仲間たちがいること・支えてくれること」にもつながるんです。
それが、それこそが、「リトルバスターズ」なんですよね…。
だから、そのひときわ大きく輝く光を、その手に力強く掴んで…理樹は願うんです。「生まれよう…新しい世界へ!」と。得難い絆を手に、自分自身もこの「失われていく世界」の中で輝く星になることを誓って。
理樹が光の奔流を抜けた先には…数えきれない無数の光の粒が輝く中で、鈴と抱き合う理樹がいました。
こっ!!この光の粒たちはっ!!
「仲間たちの思い・絆」なんじゃないのかっ!!
だって、今までにも「天に輝く8つの星」や、「波紋の中に光る小さな粒」として、理樹と鈴以外のメンバーの思いを描いてきたことがあったじゃないか!!そして、直前の星々の描写も併せて考えれば…この光の粒たちも、やはりその延長にあると結論せざるを得ないじゃないか!!
て、ことは、だ。
この「理樹と鈴が抱き合う光景」は、「仲間たちの思いと絆に彩られた二人」のシーンは…「リトルバスターズのみんなで到達した地点」ということを表してはいないかっ!!
うがはああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!
最終話ではもう泣かないかも、って思ってたのに!!前々回と前回でいいだけ涙流しつくしたと思ってたのに!!グッジョブすぎるじゃないか、くっそぅ!!
このシーンには、先週と同じくBGM「たったひとつの魔法の言葉」が流れていて、それがまた涙腺を刺激するんですよぅ…曲もすんごくいいんだけど、それ以上に「たったひとつの魔法の言葉に象徴される、小毬たちの願いが叶う瞬間がこの場面なんだ」と思うと、それだけでもうもうもうもう…。
「この過酷な世界」へと戻ってきた理樹に、鈴はおかえりを告げ、自分自身も逃げないことを誓って…二人は過酷な現実に向かいます。
ここの、「光溢れるイメージ」から、「過酷な現実」へと一気にザンッ!と切り替わる描写が、すごく良いです。理樹が帰ってきたこの世界は、こうして過酷な現実が目の前に存在する世界であり、同時に仲間たちの思いと絆に彩られた世界でもあり…それらは同時に存在しているんですね。だから、このように瞬時に切り替わるような描写がすごくしっくりきますし、見た目は変わっても「理樹と鈴の中には仲間たちからもらったものが脈打っている」ことが、ちゃんと伝わってくるんですよ。
みんなからもらったものを手にした理樹と鈴は…過酷な現実に立ち向かうのです。
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Refrain最終話、「リトルバスターズ」。
一期最終話のサブタイトルは「最高の仲間たち」でした。
これは、「到達点」である彼らの絆を表す言葉の、リフレインです。そう、「リフレイン」なんですよね、この二期は。
この二期のタイトルが発表された時、私は「そうじゃろう、そうじゃろうて」とか思っていたんですよ。だって、原作であるゲームのラストシナリオのタイトルが、まさしく「Refrain」そのものでしたから。その二期の中に、独自の繰り返しを内包している姉御シナリオをあえて持ってきたことを「おお!」とは思ったけれど、それを除けば「当然そうなるだろう」というくらいにしか捉えていませんでした。
それが…前回、第12話で想定外の「リフレイン」で散々にヤられて、制作スタッフがこの「Refrain」という言葉を非常に大事に扱っていることを思い知ったわけです。そして今話。ここでも、絶妙の「リフレイン」があちこちで炸裂しまくっています。
まず、先にも挙げた、理樹が「もう一度生まれよう」と決意するシーン。ここでは、星々の中でもひときわ大きな光~恐らくはリトルバスターズの仲間たちとの絆~を掴む理樹が描かれていますが、これは一期のOP映像で描写されていた、「太陽のような光に向かって手を伸ばし、掴み取る仕草をする理樹」のリフレインです。繰り返しの妙に唸るとともに、そうか、あそこで掴み取っていたのは仲間たちの絆だったのか!と、今さらながらに感じ入る、実に良い描写です。また、この直前の理樹が裸で(生まれる前の胎児のイメージ)目を開けるシーンも、やはり一期OPの「裸で目を閉じ、胎児のように体を丸めている理樹」からのリフレイン。どちらも、この最終話でのリフレインを想定して当初から仕込まれていたのかと思うと、その入れ込みようのすさまじさに、目頭が熱くなります。
そして、目頭が熱くなるだけでは済まなかったのが、こちら。過酷な現実に立ち向かう理樹が鈴に言う、この一言が…。
僕たちが今、できることをしよう!
そっ!!
それはあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!
一期最終話の!!恭介の真意をまだ理解してはいなかった理樹が、最高の仲間たちと最高の時間を過ごそうとしての、野球の試合に臨む直前のこのセリフのリフレインじゃねぇか!!
僕たちが、今できることを思いっきりやろう!
どちらもが!!ああ、どちらもが「理樹たちが紡いできた絆の『到達点』」なんだよ!!でもそれが、一期の時には「いつまでも続いてほしい楽しい時間」を、そしてこの二期では「何としても越えたい辛い現実」を前に言われていて、到達した場所が比較にならないほど深いのが、もう許し難いほどにグッジョブじゃないか!!
おおおおおおおおお、こんな仕込みを、一期の時点で!!ああもお、いいようにやられ過ぎだよ!!
過酷な現実に立ち向かう二人の描写の中にも、「繰り返し」を示唆するパーツが埋め込まれています。
バスの中からみんなを連れ出した後、燃料に引火しても安全な場所にみんなを運ぶため、鈴は即席の担架を作ります。その担架に友だちを乗せて運ぶわけですが…普通、担架は前と後ろに一人ずつがついて、二人で一人を運ぶものですよね?でもここでは、担架の前だけを理樹もしくは鈴が持ち、後ろの方は地面に引きずる格好で、みんなを丘の上まで運んでいるんです。
バスの燃料に引火する恐れがあるから、時間が無いから、かしら。でも、ひょっとしたら、二人で一人を運んだ方が、早かったりして…そんなことを思いながら見ていたのですが…。
理樹と鈴が担架を引きずってできた地面のすじが、あえて、画面いっぱいに映し出されます。そしてそれは、幾条にも刻まれ、重なり合って…。
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!
これは…これはっ!!「辛いことでも、頑張って繰り返す」というリフレインの表現じゃないかっ!!そう言えば恭介も「何度でも繰り返す」と言ってたよねっ!!ダメかと思いながらも、何度も何度もやり直して…同じことを今度は理樹と鈴がやってるんだよっ!!
そうやって越えてくんだよな、彼らは…後に「あれだけの事故で一人も死ななかったのは奇跡」と言われるほどの、途方もない過酷を。
え?今回は叫び方が単調じゃないかって?こ、これも、ある種の「リフレイン」の表現だから……。(´Д`;
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「リトルバスターズ」も「Refrain」も絡まないパーツとしては、「バスの反転」が印象的でした。バスの側面をカメラがなめていって、途中でくるっと180度、向きを反転させ、そのまま端まで映していく、という。
これ、明確な説明は特にないので、「何を表したものか」は見る側に委ねられているのですが…この直後での鈴の言葉が示す通り、「あたし、これからは前を向く」ということ、つまりは「弱い自分には戻らない」ということを表しているのかもしれませんね。ちょっとしたところでこんな風なモチーフを挟み込んでくる辺り、実に丁寧です。ああ、このスタッフに制作していただけたことが、改めてありがたく思えます…。
Bパートは、まるまる後日談。
「ねこねこ、うたうー」という鈴の歌で始まるところは、原作ゲームのままを踏襲していて、ファンとしては嬉しい限りですが…ここで、「目を覚ました理樹を振り返る鈴」の構図が、二期OPのラストそのままを再現していて、これまた二期を通じて見てきた者にとって実に感慨深いシーンになっています。
途中、「理樹と鈴以外は助からない」と聞かされた時点では、OPのあのカットは「二人きりになった現実の世界から、懐かしく虚構世界を望む」ような印象に見えていたのですが、こうして大団円を迎えた後に振り返ると、また全然違う思いが湧いてきますよね。
祭りは、終わりました。
その最後は、OP曲でも歌われている通り、ちょっとだけ寂しさを禁じ得ないものですが…それでも、「彼らのワクワクする日々が、これからもずっと一緒に続いていく」ことを思えば、僕らも寂しがってはいられません。「これからは前を向く」と鈴も言っていることですし、ね。
恭介が無事に戻り、もう一度修学旅行に行こう、というところで。聞き覚えのあるギターのカッティングから、「Little Busters!」がかかります。これもまた「リフレイン」の一つとして数えられそうですが、これは原作でもかかる曲で、実はバージョンが違います。その名も「Little Busters! -Little Jumper Ver.-」となっていて、歌詞も、苦難を乗り越えた先の到達点を示すようなものに変わっているんですよ。例えば、「その足は歩き出す やがて来る過酷も」という歌詞が「その足は歩き出す 更なる未来へと」になっていたり。他にも多くの違いがあるので、じっくりと比較してみていただきたいところですね。
歌だけではなく映像も、「あの永遠に繰り返す一学期」を過ぎた10人だからこそ、という楽しい雰囲気に満ち溢れています。そんな、楽しげな「リトルバスターズの今」を美魚のデジカメのシャッターで切り取りながら、最後のサービスとばかりに、いくつものリフレインがここでも花開きます。
例えば、砂浜に着いた恭介と理樹が、互いの手を打ち合わせるカット。
これは、一期第26話の終盤で、野球を始める前に恭介と理樹が手を打ち合わせるカットのリフレインです。
ただ、一期第26話のあのシーンでは、手を打ち合わせた後の恭介と理樹は互いに逆の方向を行くようなカットになっていて、「いつか一緒に進めなくなる暗示」のように描写されていたんです。
今回は、それとは違います。手を打ち合わせた二人は、互いに背を預け、同じ海の方向を見て笑顔を交わし合うんです。いったんは、ともに進むことを諦めねばならない、と思っていた二人が、それぞれに苦難を乗り越えたその先に、こうして同じ場所で同じものを見て笑顔を交わし合っている、という…以前のカットを踏まえると、より感慨が増すシーンです。
最後には、潤んだ眼を大きく見開いて海を見つめる理樹と、理樹に並ぶ仲間たちが。
これは一期EDの終盤の構図そのままを再現したリフレインですね。そこから上にカメラがパンして青空を映し、そこに白い鳥が飛び立っていくのは、一期OPの再現で。最後まで、「リトルバスターズ」と「リフレイン」で締めるというこのイキよ…。
………………素晴らしいっ!!
見事な収束っぷりでございましたっ!!大団円、という言葉にふさわしい最終話だったと思います!!もちろん最終話だけではなく、昨年からの40話、こうして追いかけてこれたことが幸せでなりません!!制作に関わって下さったたくさんの方に、改めて感謝を!!この作品を送り出して下さって、本当にありがとうございました!!
もちろん、来月から発売されるBlu-rayも、全巻買わせていただきますっ!できれば、そちらのみに収録されるエクスタシーの方も、それなりにレビューしていきたいと思いますが…うん、頑張るっ!オレも過酷な現実を乗り越えていくぞっ!!
きっとまた、お会いしましょう。いつかの、過酷な世界で。
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