「イプシロンロケット」「事故/トラブル」「新規事業」。Tech-On!のテーマサイト「産業機器・IT」のニュース記事において、2013年1月1日~11月30日の期間で多くの読者から読まれた記事は、こうしたキーワードに関連するものだった。
数々の試練乗り越え成功の栄冠
イプシロンロケットは、日本が12年振りに開発した国産の新型ロケットだ。液体燃料ロケットの「H-ⅡA」「H-ⅡB」と並ぶ日本の基幹ロケットと位置付けられ、日本が目指す宇宙利用と宇宙ビジネスの拡大に大きく貢献するものと期待されている。
最大の特徴は、打ち上げシステムを革新した点だ。人工知能を使った自動・自律的点検システムや、わずか2台のパソコンで管制業務を実施できるモバイル管制システムなど、これまでの打ち上げの常識を覆す技術を世界に先駆けて採用した。これにより低コストかつ高頻度での打ち上げを実現する。
もっとも、挑戦的な取り組みだったこともあり、打ち上げはすんなりとは成功しなかった。当初予定していた2013年8月22日の打ち上げは、ロケット(機体)側の計算機と地上側の計算機(モバイル管制システム)をつなぐケーブルの途中に配した信号中継装置に、配線の誤りが見つかったことで延期。次の打ち上げ予定日として再設定された同月27日も、発射19秒前に地上側の計算機がロケットの姿勢を異常と判断し、打ち上げシーケンスを自動で停止させたことから、打ち上げには至らなかった。
結局、打ち上げに成功したのは、3度目に設定された2013年9月14日。数々の試練を乗り越え、ようやく手にした栄冠だった。打ち上げ成功後の記者会見で、宇宙航空研究開発機構(JAXA) イプシロンロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャの森田泰弘氏は、満面の笑みをたたえながら次のように語った。「ようやく心の底から笑える状態になった。最後は新しいものを生み出す、生みの苦しみを味わったが、終わってみたら最高だった」。それを紹介したのが、今回のランキングで1位になった記事「『これほど“きれい”な打ち上げは今までなかった』、大成功だったイプシロンの打ち上げ」。この他、3、10、18位の記事がイプシロンロケットに関する記事だった。