こんにちは, 株式会社ECナビ システム本部の春山(@haruyama)です.
セキュリティに関係する仕事をしていると, 「脆弱性」という言葉を聞かない日はありません. コンピュータセキュリティにおいては「脆弱性」とは, セキュリティ上の弱点という意味です. 「脆弱性」に関するニュースは毎日報じられています. 最近も, 「YouTube」にスクリプトを埋め込める脆弱性、現在では修正済み - ニュース:ITpro, Adobe Reader/Acrobatのアップデート公開、ゼロデイ脆弱性を修正 -INTERNET Watch などがニュースサイトで報じられています.
「脆弱性」は vulnerability という英語の訳です. 私が知っている vulnerability が 脆弱性と翻訳されたもっとも古い記録は, ロンドン海軍軍縮会議(1930年)です. 阿川弘之「山本五十六」で紹介されています. 新潮文庫「山本五十六」(上)三十三刷72ページから引用します(原文は縦書きです).
そして, 日本が「ナショナル・プレステージ」という言葉を持ち出すのに対し, 英国はしばしば「バルネラビリティ」という言葉を持ち出して議論した.
(略)
「バルネラビリティ」vulnerabilityという英語を, 溝田は「脆弱性」と訳したそうだが, それだけではちょっと通りが悪いかもしれない.
「バルネラビリティ」が大きいと英国側が言うのは, アキレスの踵がたくさんありすぎることである. 守備範囲が広すぎて, どこからでも刺されやすいという言葉である.
ここで出てくる「溝田」とは, 溝田主一という海軍の名通訳と言われた人です. 溝田主一がなぜ vulnerability を脆弱性と訳したかはわかりません. もともとそういう訳が先にあったのか, 彼が作った語なのか? もしご存知の方がいらっしゃったらブログのコメント覧や@haruyamaまでご連絡お願い致します.
原文には, この直後に「バルネラビリティ」についての記述があります. 「山本」は山本五十六です.
もっとも山本自身は, この言葉を生でよく理解出来たはずである. 何故なら, vulnerable というのはブリッジの勝負で終始使われる言葉であったから.
私はブリッジはやったことがないのですが, コントラクトブリッジでゲームを1度勝ったチームを、バルネラブル(バル)と呼ぶ。
そうです.
以上, 「脆弱性」に関するトリビアでした.