子ども虐待防止シンポジウム
先週末横浜で開かれた「子ども虐待防止シンポジウム」に出張で参加。二日間のワークショップでした。
サインズ・オブ・セイフティー・アプローチ(SoSA)を学んできました。
オーストラリアのソーシャル・ワーカー、アンドリュー・ターネルという方が開発した、児童虐待の調査・面接に関する比較的新しい方法論です。
ブリーフ・セラピーや家族療法が元になっています。
従来からある虐待へのアプローチは、もっぱら親や家庭における虐待のリスクや危険性のアセスメントのみを行い、問題の解決とはそのリスクの軽減、消滅を目指すことと考えてきたといえます。
それは子どもの最悪の事態を避けるためには一見必要不可欠に思えるでしょうが、実はそれだけではうまくいかないことがよくあります。
よくあるのは、膨大なリスクアセスメントのリスト項目を検討することからくる判断の硬直化(イギリスではそれが顕著になってしまったとのこと)と親・家族との不要な関係の悪化が生じやすくなることです。
SoSAは、虐待家庭のリスクも正確に見ながらも、親や家族の安全性(セイフティ)、強み(ストレングス)、リソースも同時に見ていこうとするもので、しかもできるだけそのプロセスを親と共同でやろうとするものです。
そのために面接では一枚の大きめの紙やホワイトボードを使って、家族と一緒にアセスメント・シートを埋めていきます。
とてもシンプルかつポジティブな発想で、一見問題だらけに見える虐待家庭をバランスよく見ようとするところが素敵です。そうすれば、対立しがちな家族からも協力を得やすくなりますし、リスクもかえって正確に見通せるようにもなります。
虐待の解決とは、虐待をなくすこと(殴らないとか罵倒しないとか)だけでは不十分で、それに代わるもの、家族の良さ、強み、肯定的な側面を増大させることにあると考えているのですね。
酒でも犯罪でも何でもそうですが、「~するな」は効き目が薄いものです。具体的な「良いもの」を増やさないとならないと思います。
SoSAは、そういう発想に立っているところがいいですね。
私は3年前、ターネル先生が初来日してWSを開いたときに参加して、SoSAの使い勝手の良さに感心して、以来自分のケースの面接で使ってきました。とてもいいなあ、と実感しています。
だから自分にとって今回は二回目の学びです。一緒に参加した仲間や全国からの参加者はほとんどが初めてのようでした。少しずつ広がっているようです。
ターネル先生は、スキンヘッドでユル・ブリンナーみたいな人ですが、フランクな実践家といった感じで、なかなか良い雰囲気の方です。
ご承知の通り、全国で頻発する虐待の被害や事件を少しでも改善させるために、このSoSAが関係者の間にもっと普及してくれたらと願わずにはおれませんでした。
詳しくお知りになりたい方は
「安全のサインを求めて-子ども虐待防止のためのサインズ・オブ・セイフティー・アプローチ」A・ターネル著,金剛出版
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