たごもりすメモ

コードとかその他の話とか。

さくら石狩DC見学ツアーに参加してきた

聞いたところによると40名の枠に150名の応募があったらしいが、幸いにも参加できたのでいってきた。

最新鋭データセンターの施設に萌えるべき! さくら石狩DC見学ツアー - はてなニュース

人生で初めて北海道に行ったんだが、正直に申し上げてめちゃくちゃ楽しかった。ありとあらゆるものに価値があった。見たものも聞いたことも食べたものもすべてすばらしかった。DC見学もその前後もすばらしく丁寧にご案内をいただいた。
さくらインターネット様、特に社長の田中さんと広報の櫻井さん、またはてなやJTBの皆さん、本当にありがとうございました。

と、忘れないうちに御礼まで書いたので、あとは適当に見たものや聞いたことについて書く。こと細かなことは誰かが書くだろうからそれを見てもらうとして、印象に残ったことをあれこれ。写真は自分で撮ったものと、ツアー主催側から提供いただいたもの。

石狩DCまわったあれこれ

着いたらとりあえずここ。初雪のおそれとかいう話だったのでわくわくしていたが、当日はあいにく雪じゃなくて雨だった。あいにく?

それはともかくまず入館手続き、をやって、それからはじめにやったことが海鮮丼を食べること。……もういちど書くが、海鮮丼を食べること。ウニとイクラとカニがたっぷりですばらしくうまかった。感激した。


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その後、いよいよ施設見学。いろいろ見せていただいた。というより、データセンタとして稼動するために必要な設備をほとんど見せてもらったんじゃないかという気がする。危険なところ・機器的にデリケートなところは扉の窓から覗いたり扉の前で説明とかだったりだけど。

超高変電設備、変電設備、ファイバ引込室、非常用ディーゼル発電設備(ディーゼルV16ターボ!)、空調、自然給排気システム、自然吸気フィルタ、オペレーションルーム、そしてマシンルーム(およびマシンルームにおけるラックまわりの給排気)、さらにはこれからマシンルームになる空き部屋などなど。普段データセンタといってもマシンルーム*1くらいしか詳しく見られない自分達にとってはまさに未知の世界としか言いようがない。500Ahのバッテリーとか初めて見た。

しかもそれらの設備について、どういう理由でどのように設計しどのように建築・実装・拡張・メンテナンスしているのかについて、田中社長*2の詳細な解説つき。贅沢すぎる。データセンタを本当にイチから作るというのはこういうことだということをすばらしく豊富に見せていただいた。

特に印象的だったのは給排気まわり。石狩データセンタが外気冷却を採用しているのは極めて有名だと思うが、自分は外気冷却というものについて単純に考え過ぎていた。単純に外の空気を取り込んでそのままラックに流す程度のことしか考えていなかった。
普通に考えればわかることだが、マシンルームに流す空気は暑い冷たいだけではなく、湿度も考えなければならない。冷えすぎると良くないく、乾きすぎるのも静電気などの問題があって良くない。これを継続的に監視し、吸入した大気が良い条件から外れている場合には排気を混合して適切な温度と湿度になるよう制御していた。建物全体に対する入出力そのものが制御対象なのだ。

またそれに加え、建物内のエアフローとマシンルームのエアフローを通しで考えているのもこの自社で建物から作る場合のメリットかも。単純な床下吹き出しでもホットアイル・コールドアイル構造でもなく*3天井から冷気吹きおろし、ラック上部からダクトで排気、というシステム。冷気は下りていくし熱気は昇っていくから、実績ベースでそれがどうも効率が良かったということらしい。一年前の記事でも話題にはなっているが、その後しっかり結論が出ている。

冷気・排気のエアフローをいじるにはデータセンタの構造が直結する。サーバを入れる(つまりラック仕様をコントロールできる)ところから建物の設計まで自分達ですべて関与するからこそできることだと思う。

ということで圧巻のPUE 1.14。冗談でもなんでもなくGoogleやFacebookが実現している世界のお話ですよ。感動した。

石狩DC聞いたあれこれ

見学の後、データセンタ建築・完成に至るところを実際に設計・建築計画にたずさわった花清さん、およびその間に広報を担当していた渋谷さんに解説してもらう時間があった。これがまたすごい。


なんといってもすごいのがスケジュール。具体的にはこんな感じだが、あの規模の建物・構造・施設および設備を見た上でこのスケジュールを見て本当にありえないと思った。早過ぎるだろ。

これ、2011年11月15日には完成してるんだぜ……。なんだそのスピード。データセンタってそんなに簡単にできるもんなのか。そうだと思っちゃうぞ。
まあ素人が真似をしていいものじゃないような気もするが。しかしこれだけ話題になる巨大施設を作るのもさぞ楽しかろうという感じで、話している内容も物凄く興味深かった。たまらん。さぞエキサイティングな仕事なんだろうなあ。

その後、これまで・現状・これから、について田中社長に質問できる時間もあった。あれこれ、あれこれ。聞いた内容のうちに数点だけオフレコの内容が混じってた気がする、が、どこだったか覚えてないのであんまり詳しくは書けない(ぉぃ……)。データセンタのことから使用しているサーバの構成・スペックなど、およびそれがどうさくらの各サービスに関連するかまで多岐にわたった。

これはオフレコではなかったと思うので書いてしまうが、直流給電を本気でやるつもりがある、というのも大きな挑戦になるだろうことだった。配電設備から考えないといけないので建設会社など施設側での対応などもあって、それが世間でも進まない理由の一端らしい。ただし「やりたい」という明確な意思を示しておられた。しかも雰囲気的には遠い将来のいつかということではなく、もう明確に可能な限り早目に、という感じすらあった。すごい。じつに。*4

いやもう、圧倒されっぱなし。すごいわ。データセンタ運用を商売にするってこういうことなのか……と思いかけたが、GoogleやFacebookはやってることだった。うーむ、単純に規模と気合いの問題か。

懇親会など

いろんな人と話をした。普段勉強会でもあまり会わない人とだいぶ話せてたのしかった。(子供かw)

雑感

石狩データセンタそのものもすごかったし、さくらの人にも参加者の人にも感銘を受けた。が、じつは一番驚いたのは田中社長その人についてだったりする*5。このツアー以前に一度お会いする機会があり、その時もすごい人だとは思ったが、今回の印象は段違いだった。

自分の聞いていた限り、データセンタの各設備を案内するとき、あるいはその後に質問に答えるとき、懇親会で捕まえて質問をしたとき、田中さんは一度も「そこは詳しくない、知らない」といったことを言わなかった。すべてに明確に、どのような背景があるかまで含めて自分の言葉で答えていた。ツアーの参加者は何も知らない集団ではない、ほとんどがどこかのIT企業で働くエンジニアであったり、情報系に縁のある学生であったりだ。そうそう簡単な質問ばかりのわけがない。

そういった質問に自分の言葉で答えていくのは、たぶん経営者としては途方もないことだと思う。「なんでこのサービスのこのプランは(エンジニア目線でこんなに安いはずはないと思えるものが)この値段なのか?」とか、「これこれこのような仕様のサーバも使用するラインナップに欲しくはないか?」といったような話に答えられるIT関連企業の社長が日本にどれだけいるだろうか。しかも現場レベルでの判断に近い言葉で、現状ではいったん諦めている選択肢まで含めた思考の過程をだ。毎日エンジニアリングばっかりやってる職種じゃないぞ、あちこち飛び回ってる社長だぞ。

じつのところ、帰路でそういったことを考えていて連想したのは、つい先日Cloudera World Tokyoのときに懇親会で話をして感銘を受けたClouderaのCTO、Amr Awadallah氏のことだった。同じくらい経営者で、同じくらい詳細な技術的質問に明快に答える人だった。それに勝るとも劣らない、というより完全に同じような空気を感じた。

今回のツアーではっきりと理解した。さくらインターネットはエンジニアリングの会社で、それは社長が自ら先頭で突っ走っていることからも明らかで、そして日本国内ではおそらく本当に唯一といってもいいだろうという、データセンターという技術分野で世界のトップレベルと戦える会社だ。

結論

ごはんが非常においしい1泊2日でした。石狩と札幌はこの世の天国かと思った。

改めて、関係者のみなさま、本当にありがとうございました!

*1:および機器類搬入ルートw

*2:2グループあった、もうひとつの見学グループは副社長の舘野さんだったようだ

*3:コロケーション用途で他社に貸している部屋もあるらしく、そっちはホットアイル・コールドアイル構造になっているらしい、という話も聞いた。専用構造のラックに統一できないという事情があるからそうなるんだろう、おそらく。

*4:対応サーバベンダも増えてきているらしい。メーカーのロゴリストがあった。

*5:もう片方の案内をしていた舘野氏もおそらくそうなのだろう……が、直接話をする機会を得られなかったので。