山本七平botまとめ/【規範の逆転②】/戦場の愚行が美談になる理由とは/~規範の逆転を知ろうともせず、情緒的自己満足に酔いしれる安全地帯の日本人~
- yamamoto7hei
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①ベトナム戦争でも多くの報道がなされた。…私の見た限りでは、そこに共通するものは、書く者と読む者とが共に住む平和な社会における情緒的自己満足は充足させても、前述の様に規範の逆転が全てにのしかかってくるという状態の中で、一人一人の人間がどう行動すべきかという基準を全く考えずに、(続
2013-10-10 03:39:18②続>また、一見人道的に見える情緒的自己満足のための行為が実は最も残酷な行為になるということを全く理解しようともせずに、すべてを知らず知らずのうちに自らの「情緒的自己満足」の充足のため批判しているように見えた。
2013-10-10 04:08:58④だが、それならば一方的断定は避けて、そこに何か、自分たちがいま生きている社会とは全く別の「理解しきれない何か」があるのではないか? 自分たちの批判が基準になったらさらに残酷なことになるのではないか? という疑間は抱いてほしいと思う。
2013-10-10 05:08:59⑤それをよく考えないと、向井・野田両少尉を断罪すると同じような、全く見当はずれの奇妙な断罪を人に加えて、それによってただ情緒的な自己満足に酔いしれて、まるで酔漢がからむように、だれかれかまわず一方的にきめつけるというタイプの人間になり下がってしまうであろう。
2013-10-10 05:39:15①先日、曾野綾子氏から『ある神話の背景』をお送り頂いた。 氏はこの中で沖縄の「伝説的悪人」赤松大尉の事をあらゆる方法で調査しておられる。この中に多くの人の「赤松大尉糾弾」の辞が収められている。 確かに彼には糾弾さるべき点はあったであろうし、戦場にいる限り、それは勿論私にもある。
2013-10-10 06:09:05②ただ私にとって非常に奇妙に見えたのは、ある評論家の「糾弾の方向」である。 それはまるで 「死体をかついで野戦病院にかけこまないのはもってのほかだ」 と言っているように私には思えた。
2013-10-10 06:39:33③赤松大尉の副官であったかつての一見習士官が 「では一体、私たちはどうすればよかったのですか」 と問うている。 それにはだれも答えられない。 そして曾野氏は、この「神話の背景」にあるいま私が要約したような「規範の逆転」を察知しておられる。
2013-10-10 07:09:07⑤従って、それを知ろうともせず「逆方向の糾弾」をしている者 ――いわばマニラの埠頭での私の行為を人間的人道的と見、S中尉を冷酷非人間的と糾弾するような批判をしている者―― その者は、ただその人が無知無感覚でかつ魯鈍な知的怠惰者であることを、自ら証明しているにすぎないであろう。
2013-10-10 08:09:00⑥「情緒的自己満足のための行為」はそれを聞いた安全地帯の人びとを情緒的に満足させるから、この行為はすぐ「美談」になる。 戦場の美談の裏側は愚行であると言ってよい。 どこの国のどこの戦場であれ、日本国内で美談化されている行為がもしあれば、それはすべて愚行に違いない。
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