ちくちく日記

DTP系備忘録。真面目にやってます。

Illustratorの保存オプション「PDF互換ファイルを作成」にチェックを入れてほしい理由

前回のエントリ「「制作者のための『正しく刷れる』データ制作のポイント」を受ける前に知っておくべき基本の話」の中で、EPSを使わずにIllustratorネイティブ形式を使おうっていう話で

Illustratorの入稿データはPDF互換のチェックをいれて保存してくださいね。

▲Illustratorの保存オプション。PDF互換にチェックが入ってないと、InDesignに貼れなくて後行程が泣きます。ここはお約束としてチェックを!

とお願いをしたところ


「えっっ、あのチェック入れた事無い…!」
「いままで、入れなかったけど問題なかったよ…!」
「入れろとか言われた事無いし…!」

「何で入れなきゃいけないの?」



と、思いも寄らぬ反発反響をいただきまして。
なので、もう少し詳しく、あのチェックを入れて欲しい理由を説明しようかなと。



チェックが入ってないとInDesignに配置できません

多分、あのチェックを入れてください、と言われて「えっっ?何で?」ってなった方は、ほぼ確実に「普段InDesignを使わない人」でしょう。
InDesignに(というかInDesignだけではなく、ほとんどのアプリケーションで)Illustratorネイティブファイルを配置しようとする場合「PDF互換ファイルを作成」にチェックが入っていないと、配置できません。

具体的に、チェックを入れたものと入れてないものでテストしてみます。

Illustratorで「PDF互換ファイルを作成」にチェックが入ったファイルと入っていないファイルを作成します。

▲ちなみにファイルの中身はリンク画像とテキスト


▲チェックオンとオフ、それぞれのオプションで保存

このファイルをそれぞれ、InDesignで配置してみます。


▲上が「PDF互換ファイルを作成」にオン、下がオフ


「PDF互換ファイルを作成」をオフにした方は、表示がおかしいのが分かります。
拡大して見てみると「このファイルはPDF互換じゃないよ」的な説明文が書いてある。


▲これはPDF互換ファイルじゃないから、配置できないよと言われる

ちなみにこの状態でそのままPDF/X−4ファイルを書き出してみます。


▲PDF/X−4に書き出したもの

PDFに書き出しても、チェックオフのものは正しく書き出されません。
InDesignに配置して出力するためには「PDF互換ファイルを作成」にチェックが必須なのです。


Illustratorだけで作ったデータを入稿してるのに、なんでInDesignが関係あるの?

一般的な出力の現場では、Illustratorのファイルから直接出力データを作る事ってあまりやりません。
一度InDesignやQuarkといったレイアウトソフトに配置して、そこからPDFやPSなどの出力用データを作成します。


どうしてIllustratorからそのまま出力しないの?

一つは出力サイズをきちんと統一したいから。
Illustratorで作るレイアウトの場合、自分でトンボをオブジェクトとして作ってあったり、ドキュメントサイズ(アートボードのサイズ)を指定したり、割と自由度が高いので、その分微妙なサイズ違いとか、トンボの外にオブジェクトがおいてあるとか、そのまま出力するには問題があるデータもある。
InDesignなどに貼って出力すれば、きちんとサイズを合わせて出力できる。

あと、色玉とか、管理票的な印刷業務に必要なチェックオブジェクトをトンボの周りにおいて出力したい。

▲色玉とか管理票はこんな感じ

こういう事しようと思うと、Illustratorファイルにいちいち設定するより、InDesignなどで用意した台紙にIllustratorファイルを貼っていく方が楽。
まぁ他にも出力の際の設定値をプリントプリセットで保存できるとか、インキ管理でインキチェックできるとか、プリフライトできるとか、細かい理由はあるけど、とにかく、通常の出力業務ではInDesign等を経由して出力する事が多いです。


でも、いままでもチェックなしで入稿してきたけど、何も言われなかったよ?

入稿した先の印刷会社で、チェックを入れて保存し直しているんだと思います。(もしかしたらネイティブじゃなくてEPS運用してるかもしれないけど…どちらにせよ、保存し直していることには違いない)


いままでもそうだったんだから、チェック入れずに入稿してもよくない?

入稿先でチェックを入れ直すという事は、そこでファイルを一旦開いて、保存しなおしているということです。
と、言う事は制作環境と違うところでファイルを開くということで、もしかしたら、リンク切れや、フォント化け、文字組が変わってしまうなどの事故につながる可能性があります。
印刷会社の立場からいうと、出来るだけデータは開かずそのまま使えた方が、そういった事故をおこす可能性が低くなり安全なんです。だからチェックを入れて入稿してください、とお願いしています。


ぶっちゃけ、あそこにチェック入れると、保存に時間かかるし、データ重くなるからやりたくないんだけど!

えっと、結局いまその保存にかかる時間と手間を印刷会社が代わりにやってるわけなんですが…(笑)

でも、まぁ、重いし遅いからやりたくないって気持ちは分かります。
とりあえず、チェックを入れずに入稿していいかどうかは、ご利用の印刷会社さんにご相談ください。
印刷会社側からももしかしたら、PDF互換ファイルの容量で入稿されるより、チェックオフの容量軽い状態の方がファイルコピーとかが早くすんで都合がいい場合もあるかもしれないし。


ただ、さっきも言った通り、チェックを入れないという事は印刷会社側でファイルを開いて保存し直すということで、それだけなにか事故につながる可能性があがるという事は忘れないでくださいね。



【おまけ】

結局「PDF互換ファイルを作成」って、どういう機能なの?

だからIllustratorネイティブファイルを「PDF互換」のファイルにするための設定です。
あそこにチェックが入っていないIllustratorファイルはPDFファイルとして認識されません(というか、実際PDFファイルじゃないし)
チェックが入ることによって、PDFファイルになり、InDesignのようなレイアウトソフトなどに貼れるようになるんです。
PDFファイルですから、Acrobatなどで見る事もできます。ためしにチェックを入れてないファイルと入れたファイルをAcrobatで表示してみてください。


PDFファイルってことはPDF/X-4とかと同じってこと?

まったく同じではないです。少なくともPDF/X-4という規格にそったファイルではないですから。
あくまでIllustartorネイティブファイルをPDF互換にしてる(んー、イメージでいうとIllustratorファイルがあってその周りをPDFの皮でくるんだみたいな…)
だからいくらPDFとはいっても、そのIllustratoネイティブファイルをそのままRIPに投げて処理したりとかPDFだからこのまま人に配布しよう!とかはあまりしないほうがいいと思います(PDFだから処理できると思いますが、処理結果が正しいかどうかとかどんなPDFビューワーでもちゃんと開けて表示できるかとかの保証はないので)様々な用途に使うPDFが必要なら、ちゃんとPDFファイルとして書き出しをした方がよいです。(ちなみにIllustratorからのPDF書き出しは別名保存…からPDFを選んで、そこでPDFのオプションなどを選択します)


チェック入れるとデータが重くなるのはなんで?

PDF互換になることで、PDFとしての情報がつくのと、リンクされている画像も全部、ファイルの中にもつようになるからだと思います。
その証拠に、PDF互換にチェックいれたIllustratorファイルだけあれば、リンクファイルなくてもちゃんと出力できます。
EPSファイル保存の時の「配置画像を含む」「フォントを含む」のチェックににてますね。
あとPDFって圧縮してもあまり容量軽くならないですよね。だからPDF互換のIllustratorファイルを圧縮ソフトで圧縮してもあまり軽くならないです。


え?じゃあリンクファイルは一緒に入稿しなくていいの?

いや、なにかファイルに問題があって修正するとき必要なんで、つけていれてください。


結局開いて修正するんかい!

そりゃ、問題があればやりますよ。
でも、全部開いて保存し直さなきゃいけないのと、問題があるものだけ開いて修正するのじゃ、かかる手間が全然ちがいますから。
入稿する人にとってはファイル一つかもしれませんが、受ける側は何十、何百ってファイルを処理するんで。そこをちょっと考えてみてください




PDF互換にチェック入れずにIllustratotネイティブファイルを入稿するって、以前でいうならEPSファイルにせずにファイル入稿するってのに近いかな。
結局だれかがやらなければならないんだし、データ制作者がやれば、リンク切れやフォント化けといった事故を防げるので、ここは是非おねがいしたい。
保存後に時間がかかるのと、保存後のファイルがくそ重くなるってのはAdobeももうちょっとなんとかしてくんねーかなーとおもうけど。

しかしまぁ、twitterなどで「PDF互換にチェックして」っていって「そーだそーだ!」と同意するのは出力クラスタばっかりなのよねー。皆苦労してんだろうなー。