GoogleのOpenSocial陣営にひとつだけ欠けているものがあった。巨大ユーザーベースを持つアメリカ市場中心のSNSである。SNSの価値の源泉は「みんなが入っている」ことに尽きる。「加入者が増えるほどサービスの価値が増加する」というネットワーク効果が発揮される典型的な例だ。
OpenSocialについて「なるほどさまざまなアプリケーション(ウィジェット)がSNSで利用できれば楽しいには違いないが、所詮はオマケだ」という冷めたコメントも出ていた。
しかしMySpaceがOpenSocial陣営に参加してくるとなると、話はまるで違ってくる。登録アカウント数2億、Facebookに急追されているとはいえ、SNSとしてはユーザー数でもトラフィックでも段違いの1位だ。
しかもMySpaceは独自のアプリケーション開発言語(マークアップ言語)の開発を放棄し、サードパーティーのアプリケーション開発は全面的にOpenSocial APIに任せるという。これほど重要な決断が一朝にできるものではないはず。どうやら昨年の広告に関する提携交渉のあたりでこの合意がなされたらしい。GoogleとMySaceは1年近くこの秘密プロジェクトを隠しとおしたことになる。CIAも模範とするに足る情報管理だ。
これでFacebookは難しい決断を迫られることになる。このFacebook包囲網を破る正攻法は無論OpenSocialに参加することだ。Facebookが加入しないからこそOpenSocialはFacebook包囲網として機能するのであり、逆にFacebook自身がサポートすればhtmlと同様の単なる標準規格となってしまう。
しかし、すでにMicorosoftから巨額の資金を受け入れてしまった今となってはザカーバーグの一存だけでことを決めるわけにはいくまい。いずれにせよ、Facebook/Microsoft連合としてはOpenSocialに参加しても戦術的にはデメリットしかなく、参加しなければ戦略的に重大なリスクを背負う。結局Googleの一手は「王手飛車取り」の絶妙の着手となったようだ。
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