「現代萌衛星図鑑」、好評発売中!
しきしまふげんさんの「現代萌衛星図鑑」が発売された。私も監修という名目で、名ばかりのお手伝いをさせてもらった。
しきしまさんと知り合ったのは1999年頃だったか。航空宇宙や四駆・バイクのマニア、モデラーやマンガ書きがたむろするネット掲示板でだった。最初に会ったのは確か2001年の夏コミだったはずである。当時彼が運転していたセラ(私のAZ-1とはガルウイングつながりだった)の助手席に乗せてもらうと、車内では今やニコ動の“国歌”となった「鳥の詩」のピアノアレンジ版ががんがん鳴っていた。
「これ、何の曲」
「鳥の詩です。ゲームの音楽ですよ」
「鳥の歌といえば、パブロ・カザルスが弾いたカタルニア民謡だがなあ」
「なんですか、それ?」
というような、かみ合わない会話をした。
当時の彼は、かわいい女の子とメカニックが同じ画面に収まった精緻なイラストを売りにしていたが、やがて人工衛星を擬人化したイラストの連作を「Orbital Pretty」という題名で描き始めた。私は彼と私の大学の後輩がサークル合体で出展するコミケットで、売り子をするようになった。
自然の事物であろうと機械であろうと、あたかも感情のある人のあるかのように捉え、感情移入する——感情移入による世界理解は、人間特有のものなのだそうだ。正直、私の感性だと、実物を見たこともある衛星が女の子の姿として描かれると妙な気恥ずかしさも感じてしまうのだけれども、それでも実によく描いたものだと感嘆してしまう。
本書では、7章に渡って衛星、探査機が擬人化されている。気象衛星ひまわりシリーズ、ハレー彗星探査機「さきがけ」「すいせい」、技術試験衛星「きく7号、おりひめ・ひこぼし」、地球観測衛星「みどりII」、無人実験衛星USERS、小惑星探査機「はやぶさ」、月探査機「かぐや」——。
擬人化イラストに加えて、相当な取材と資料探究を行った衛星の紹介も、メカニカルイラスト付きで掲載されている。さらにはしきしまさんの盟友へかとんさんのマンガ付きだ。
しかし…長かった。三才ブックスから話があって2年、いや3年だったか。当方は、完璧主義を発揮して粘りに粘るしきしまさんをはらはらしながら見ていたのだった。
今年のYuri's Nightのパーティで担当編集のSさんに会って、「出します。なんとしても出します。かぐやが月に落ちるタイミングまでに絶対店頭に並べます」という宣言を聞いた。結果として出版の世界の萌えブーム、さらにはかぐやの月面落下とミッション終了という願ってもないタイミングで、出版できたのは、まったくもって強運な本だし、強運な作者だと思う。
帯には「これが萌え擬人化の最先端!」とあるが、少なくとも衛星に関しては最先端であると同時に絶後でもある。幸い、初動の売り上げは好調のようだ。続編も期待して——いいのではないだろうか。
ちなみに掲載イラストは女の子をアップにするためかなり周辺がトリミングされているそうだ(本人曰く「せっかく太陽電池パドルの端まで全部書いたのに」)。編集のSさんは、原画展の開催も計画しているということなので、近いうちに大判のイラスト原画も見ることができるだろう。
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» [本] 現代萌衛星図鑑 [biac の それさえもおそらくは幸せな日々@nifty]
なんでも萌やせばいいってもんでもなかろーに… f(^^;あいかわらず続く 「萌え本」 攻勢に、 つい、 またか~ と思ってしまうわけですよ。 「萌ゆる神の国!」 のような事実認識の段階で教科書レベル未満、 なんてのが続くとねぇ。 …と思い込んでると大間違い。 どうやら、 この本は違うようです。監修を務められた松浦晋也氏... [Read More]
先日、ドイツで船舶博物館を見たのですが、西洋で古くから船舶をsheよばわりするのも、vehicle萌え擬人化の一種なのかもと思いました。
Posted by: ごんざぶろう | 2009.06.17 06:28 PM