真紅、最高にハイってやつになる。
- 633 :名無しさん:2013/11/01(金) 21:34:13 ID:iLem/HtI0
- §前回(金糸雀とバカマツタケ)からのあらすじ
裏山でマツタケをたくさん採った金糸雀、翠星石、真紅、雛苺。
だが、それはバカマツタケという別のキノコであることを薔薇水晶から知らされる。
その名前からバカマツタケを無価値なものと勘違いした真紅達は
せっかくの収穫をすべて薔薇水晶に譲ってしまうのであった。
翌日、薔薇屋敷に遊びに来た翠星石は蒼星石から実はバカマツタケも美味しいキノコであることを聞く……… - 634 :名無しさん:2013/11/01(金) 21:36:38 ID:iLem/HtI0
- 翠星石「えええっ!? バカマツタケって本当は凄ぇ美味しいキノコなのですか!?」
蒼星石「そうだよ。輸送の関係で風味がどうしても落ちる外国産マツタケより美味しいかもね」
翠星石「そ、そんな…! なんてこったいですぅ!
こうなったら今からでも遅くはないです! すぐに薔薇水晶からバカマツタケを取り返しに…」
蒼星石「やめなよ。みっともない」
翠星石「ぬぐぐ…! そ、そうですよね。それに『香りマツタケ味シメジ』ともいうですぅ!
マツタケなんか香りだけですぅ! チビ人間の家でいつも食べてるシメジの方がうめーです!」
蒼星石「……」しら~っ
翠星石「な、なんですか? その生温かい目は、蒼星石?」 - 635 :名無しさん:2013/11/01(金) 21:39:27 ID:iLem/HtI0
- 蒼星石「その『香りマツタケ味シメジ』って諺、それぞれにはそれぞれの長所があるってだけの意味で
マツタケをディスる意味合いは本来、無い。そもそも香りが良いと謳われているから
その他の要素は他よりも劣るものだろうという発想をするのは、ちょっとねぇ……」
翠星石「む…」
蒼星石「確信犯的にこの言い回しを使っているのならしょうがないけど。あ、ちなみにこの『確信犯』は
旧来の意味でも、最近の誤用としての意味のどっちに受け取ってもらっても構わないから」
翠星石「う…」
蒼星石「この諺ができたのがいつかは僕は知らない。
でも、昭和初期のマツタケの流通量は、エノキやシイタケと大体同じ。普通に庶民の味だった」
翠星石「ぐ…」 - 636 :名無しさん:2013/11/01(金) 21:41:34 ID:iLem/HtI0
- 蒼星石「さらに言うなら『香りマツタケ味シメジ』のシメジは『ホンシメジ』のことで、これはようやく最近になって
一部の企業や研究機関が養殖に成功したばかり。天然物は、昔も今も流通量の少ない貴重なキノコだ」
翠星石「じゃ、じゃあ翠星石がいつも食べているシメジは?」
蒼星石「それは『ブナシメジ』。ホンシメジとは違うキノコだよ」
翠星石「なんですとーっ!?」
蒼星石「そして困ったことに、昔はブナシメジや、シメジでも何でもないヒラタケが
ホンシメジという商品名で売られていた。流石に今は改められているけどね」
翠星石「ほぁああーーっ!? マ、マジですか? 産地偽装が可愛く思えるほどのゲスッぷりじゃねーですか!」
蒼星石「うん。ちなみにマツタケとバカマツタケの差は例えるなら現代人とネアンデルタール人の違いだけど
ホンシメジとブナシメジの差は現代人とゴリラぐらいの違いがある」
翠星石「うーん。よく分かるようで、よく分からん例えですぅ…」 - 637 :名無しさん:2013/11/01(金) 21:42:12 ID:iLem/HtI0
- 蒼星石「とにかく、ブナシメジの味を以って『香りマツタケ味シメジ』の底が見えたかのような
ふるまいは慎むべきだよ翠星石。マツタケの歴史への用心と敬意を怠るのはよくない」
翠星石「ううう……っ! す、翠星石だってマツタケ憎しで言ったわけじゃねーですよ!
ただ言葉の勢いってヤツで。それを、それを何も! 鬼の首を取ったように……」
蒼星石「あ、いや……翠星石……」
翠星石「うわーん! 蒼星石のバカヤローですぅ」ドタタタッ
蒼星石「ああっ! 翠星石っ!?」 - 638 :名無しさん:2013/11/01(金) 21:44:14 ID:iLem/HtI0
- §数時間後・桜田ジュンの部屋
翠星石「おーいおいおいおいおいおい! おーいおいおいおいおいおいおい!」シクシク
ジュン「これまた延々と盛大に泣きはらしていやがるな。いい加減、泣き疲れないのか」
雛苺「薔薇屋敷で蒼星石に厳しいことを言われたらしいのよね」
翠星石「いいや! アレは単なる嫌味ですよ! ちょっと物知り博士だからって…!
蒼星石は、翠星石のピュアで純なハートを心無い言葉で踏みにじったのですぅ!」
真紅「ピュアで純て…」
ジュン「蒼星石って、そんなキツイ物言いしたかなあ」
真紅「翠星石相手だと遠慮が無くなるからじゃない?」
雛苺「蒼星石が翠星石を信頼している証拠なの」 - 639 :名無しさん:2013/11/01(金) 21:47:05 ID:iLem/HtI0
- 翠星石「…このまま泣き寝入りするわけにはいかんですぅ!
なんとしても今度は逆に翠星石が蒼星石を論破して、ギャフンと言わせてやるですぅ」
ジュン「無理だろ」
雛苺「無理なの」
真紅「ええ、どう考えても無理ね」
翠星石「ほぁあああーっ!? 何を言いやがるですか三人とも!」
真紅「雑学対決で翠星石が蒼星石に勝る要素なんて一つも無いじゃない」
ジュン「そうそう。この間、図書館行った時に蒼星石を見かけたが、あいつ一生懸命に百科事典を読んでたぞ」
翠星石「えっ!? な、なんで辞典を?」
ジュン「僕もそう思って理由を聞いたら『ちょっと暇だったから』だとさ。相手はちょっと暇な時に辞書を
読みふけるほどの猛者だぞ。本棚でドミノ倒しして遊んで、出禁くらってるお前ら三馬鹿とは違うんだよ」
翠星石「す、翠星石だって辞典ぐらい読んでるですぅ!」
真紅「あなたが読んでいるのは『お菓子の作り方辞典』とか、そんなのでしょ。
せめて国語辞典とか英和辞典を読んでから、そういうことは言いなさい」
翠星石「ぬううう! じゃ、じゃあ真紅は…!?」
真紅「当然、私も暇な時にはジュンの英和辞典を読むのが嗜みよ。
そして、いやらしい言葉を見つけては、余さずピンクの蛍光ペンで線を引いている」
ジュン「やっぱり、あれお前の仕業だったか。この前、授業中に柏葉に辞書貸したら、思いっきり投げ返されたぞ」 - 640 :名無しさん:2013/11/01(金) 21:48:06 ID:iLem/HtI0
- 雛苺「えっとねー翠星石は雑学じゃ蒼星石の足元にも及ばないんだから
別のことで蒼星石を見返してやればいいと思うのー」
翠星石「別のことぉ?」
雛苺「蒼星石の言っていた『香りマツタケ味シメジ』も、きっとそういう意味なの。
みんな、それぞれ違った長所が必ずあるってことだと思うのよ」
翠星石「チ、チビ苺…」
真紅「あなた時々、神懸かった発言するわね」
翠星石「よっしゃ! それじゃあこの翠星石様が蒼星石よりも優れている点を見せつけて
姉の威厳というやつを回復させるですぅ! 汚名挽回ですぅ!!」
真紅「それを言うなら名誉挽回か汚名返上」
ジュン「雑学勝負に持ち込むのを思いとどまって、本当に良かったな」 - 641 :名無しさん:2013/11/01(金) 21:49:15 ID:iLem/HtI0
- 翠星石「ぬぐっ!? い、いいからとっとと翠星石の美点をあげつらえです!」
雛苺「え!? ヒナ達が翠星石のいいところを言わなくちゃなの?」
翠星石「こういうのは自分よりも他人の方がよく分かっているはずですぅ」
真紅「それはそうかもしれないけど…」
翠星石「おらおら、とっとと麗しの翠星石様を褒め称えやがれです!」
ジュン「いや、でも。いざ考えてみるとなると…」
雛苺「翠星石の蒼星石よりもいいところ…」
真紅「ひょっとして……、ない?」
翠星石「うぉーい! もうちょっと真剣に考えろです! 何か一つ、何か一つぐらいあるはずだろがです!」 - 642 :名無しさん:2013/11/01(金) 21:49:58 ID:iLem/HtI0
- ジュン「髪が長い…とか」
翠星石「……」
真紅「緑色が目に優しい」
翠星石「……」
雛苺「よく考えてもヒナには思いつかなかったの」
翠星石「ふんがーっ! このスカポンタンども! 大体、チビ苺!
てめーが『きっと何かあるはずだ』って言いだしたんじゃぁねーですか!」
雛苺「でもぉ…」
翠星石「デモもスト様もねーですっ!」 - 643 :名無しさん:2013/11/01(金) 21:51:13 ID:iLem/HtI0
- 真紅「それじゃあ、こういうのはどう?」
翠星石「どういうのですぅ?」
真紅「あなたは双子の姉として、ローゼンメイデン第3ドールとして実に大らかで優しい気性よ」
翠星石「ほうほう成る程。流石、真紅は分かっているですぅ」
真紅「だから、今回の怒りもあなたは穏やかに沈め、蒼星石に対して遺恨なく寛大な心で
今までどおりに接することができる…でしょ? それ即ち『思いやり』と『おもてなし』の心意気」
翠星石「う…むぅ、まあ、そうですね。何事も情愛の精神で包み込むのが翠星石ですぅ!
よしっ! 今回の件も綺麗さっぱり水に流して、清らかな心で…」
ジュン(上手く誤魔化したな真紅。言い換えれば結局『ズボラで適当な性格』ってことだろ?)
真紅(ものは言いようよ。何事も信じやすい翠星石の性根は美点だわ)
雛苺(うぃ。翠星石は単純で助かったのー)
翠星石「ぬははははは! 翠星石の海よりも広い心に感謝しやがれです蒼星石ぃ! ぐははははは!」 - 644 :名無しさん:2013/11/01(金) 22:11:54 ID:iLem/HtI0
- 蒼星石「…お邪魔します」ガチャッ
翠星石「っ!? そ、蒼星石ぃ!? な、何故ここに?」ビクッ
蒼星石「いや、さっき君が怒って帰っちゃっただろう。一言、謝りたくて」
翠星石「……!」
蒼星石「僕もちょっと知識を鼻にかけて言い過ぎた。お詫びのしるしに、これ。
マスター(結菱一葉)に頼んで本物の『ホンシメジ』を取り寄せてもらったんだ」
翠星石「え、えええ…っ!?」
雛苺「うにゅにゅ! 本物のシメジってマツタケと同じかそれ以上に貴重なはずなのよね!」
真紅「そ、それをこんな短時間で用意するとは!」
ジュン「結菱さんも凄いが、蒼星石の誠意の表れか! これが」 - 645 :名無しさん:2013/11/01(金) 22:13:51 ID:iLem/HtI0
- 蒼星石「物で償いきれるものでもないだろうけど、これで今日の事は許してくれないかな」
翠星石「いやいやいやいや! そ、それは勿論…! 翠星石も全然…」オロオロ
真紅「な、なんてこと! 謝られているはずの翠星石がどんどん縮こまっていく!」
ジュン「せっかく真紅が久しぶりに良いこと言って上手くまとめようとしたのに…
どう見ても蒼星石の方が『思いやり』の心も『おもてなし』の精神も圧倒的に上回っている!」
真紅「まるでお茶も淹れたことの無いような野球部か何かが
茶道部全国大会優勝チームに挑むが如き光景! 惨め…すぎる…!」
ジュン「何だ、その例え」 - 646 :名無しさん:2013/11/01(金) 22:14:27 ID:iLem/HtI0
- 蒼星石「本当に今日はゴメンね翠星石」
翠星石「まあ、その…翠星石も大人気なかったですぅ…」しおしお
真紅「ああ、すごい。翠星石が恐縮しすぎて、いつもの半分ぐらいの大きさになってるわ」
雛苺「ヒナよりも小さいの」
ジュン「まるで塩をふられたナメクジだな」
真紅「もう少しで、敗北を認めたローザミスティカ出るわよ、きっと」
ジュン「ともかく翠星石も恥を知る心だけは一人前に備えていたようで何よりだ」 - 647 :名無しさん:2013/11/01(金) 22:15:43 ID:iLem/HtI0
- 蒼星石「それはそうと翠星石、真紅、雛苺」
翠星石「?」
雛苺「うぇ?」
真紅「なぁに? 蒼星石?」
蒼星石「裏山のバカマツタケを乱獲された件で水銀燈がかなり怒っているらしいよ」
真紅「なんでよ。別に水銀燈の所有物じゃないでしょうに、裏山は」
雛苺「水銀燈の人は独占欲が強くて苦手なの」
蒼星石「ともかく現に水銀燈は怒っている。野生動物は食べ物を奪われた時に一番怒るそうだからね」
ジュン「あいつは野生動物レベルか」
蒼星石「既に金糸雀にいたっては水銀燈の仕置きを受けてしまった」
翠星石「なんですとー!? カナチビが水銀燈に何かされたのですか?」 - 648 :名無しさん:2013/11/01(金) 22:17:55 ID:iLem/HtI0
- 蒼星石「ああ。寝込みを襲われて、体中のあらゆる球体間接にカラシを流し込まれたらしい」
真紅「まあ! なんて陰湿かつ恐ろしい真似を!」
雛苺「あややややや! 想像するだけで体中が痒くなってきたのよ…!」
ジュン「と言うか水銀燈が自分から金糸雀にマツタケの件は話したんだろ? なのに」
蒼星石「どうやら金糸雀は誰にも話さないという条件で水銀燈からその話を聞きだしていた」
翠星石「え? そうだったんですか?」
真紅「それをペラペラと私達に喋っちゃったもんだから、というわけか」
蒼星石「おそらく水銀燈は翠星石達にも何らかの危害を加えるつもりだ。みんな気をつけてね」
翠星石「ありがとうですぅ蒼星石!」
雛苺「うぃ! ヒナ達気をつけるのよね!」
真紅「ええ、戸締りをきっちりしておけば、野獣と化した水銀燈でも付け入る隙は無いはず」
翠星石「うむうむ。エムデンに勝るとも劣らない翠星石達の鉄壁の守りを見せてやるですぅ!」 - 649 :名無しさん:2013/11/01(金) 22:22:30 ID:iLem/HtI0
- ……が、翌朝!
雛苺は自身の鞄の中で樹脂によってギッチリ埋められて固められており
翠星石の方は犬神家の一族よろしく逆立ち状態で、庭に埋められていた。
のり「ひぃいいいいいい! 何これ!? 何これぇーーーっ!?」
ジュン「す、水銀燈だ! 水銀燈の仕業だ! あいつ、ぶち切れてやがる!」
雛苺「……」
翠星石「……」
真紅「ああ! そ、そんな! なんてこと! 二人とも少しも抵抗した痕跡が無い!
つまり皆が寝ている間に、誰にも…被害者にも全く気付かれずに、これほどの仕置きを!」
ジュン「し、しかし何で真紅だけ無事だったんだ?」
真紅「…見なさい、これを。私の鞄にはこの紙だけが入れられていた」ピラッ
のり「紙? 何か書いてある。『次は真紅の番よ。せいぜい震えてなさぁい』?」
ジュン「こ、これは!」 - 650 :名無しさん:2013/11/01(金) 22:23:36 ID:iLem/HtI0
- 真紅「恐ろしい長姉だわ! 敢えて私だけを残したことで怖がらせようとしている!
どうしましょうジュン! 真紅ちゃん恐怖で失禁しちゃいそう!」
ジュン「うるさい。どのみち自分でまいた種だろ。素直に水銀燈に謝っちまえ」
真紅「水銀燈に謝るくらいなら、ウンコ食べるほうがマシよ。即ちクソ喰らえってこと」
のり「で、でもこのままじゃ真紅ちゃんは明日にも翠星石ちゃんやヒナちゃんみたいに!」
真紅「…策はある。私だけ残したことを水銀燈に死ぬほど後悔させてやるのだわだわ」
ジュン「おおっ! 真紅の瞳が漆黒の殺意に燃えている! これは人殺しの目だ!」
のり「し、真紅ちゃんも本気のようね」
ジュン「ああ、真紅がこの目をした時は、自らの人間性をも殺す決意をした時だ。
どれだけえげつない対抗策を講じるつもりなのやら…」 - 651 :名無しさん:2013/11/01(金) 22:26:29 ID:iLem/HtI0
- §深夜
ジュン「くかーすぴー」zzZ
翠星石鞄「……」
雛苺鞄「……」
真紅鞄「……」
水銀燈「ふんっ、今日もまたよく眠ってるわねぇ…。随分と戸締りに念を入れていたようだけど
この水銀燈が、その気になりさえすれば一般家庭の窓や扉の一つや二つをすり抜けるのも、どうってことない」
真紅鞄「……」
水銀燈「よくも私の大事な食事場である裏山を荒らしてくれた。どいつもこいつも有罪よ」
真紅鞄「……」
水銀燈「真紅ぅ、あなたには特別に…私が今日一日かけて捕まえた大量のドジョウを
その鞄の中に流し込んであげるわ。うれし涙流しなさい、マヌケ」
真紅鞄「……」
水銀燈「と見せかけて! 実は鞄の中にいないんでしょ! そんなのお見通し!
本当は、そこの人間のベッドの下に震えながら隠れてる! そうでしょっ!?」グバッ - 652 :名無しさん:2013/11/01(金) 22:28:18 ID:iLem/HtI0
- しーん
水銀燈「あ、あれ? いない? 違っちゃったぁ? ならば、こっちか!
この、これ見よがしに飾ってある巨大くんくん人形の中に…っ!」ドズッ
しーん
水銀燈「ここも違う! は! まさか人間の布団にもぐりこんで!?」バサッ
ジュン「うう…ん」ゴロン
水銀燈「ここでもない!? それじゃ、翠星石か雛苺の鞄に!」パカパカッ
翠星石「……」
雛苺「……」
水銀燈「普通に翠星石と雛苺がちゃんと一人ずつ寝てるだけッ!?
じゃあ真紅は…? 裏の裏をかいて、真紅自身の鞄の中に?」ガバッ
真紅鞄「……」カラッポ
水銀燈「いや! やはり居ない! 真紅は…奴は起きている! どこ!? どこなの?」ババッ - 653 :名無しさん:2013/11/01(金) 22:30:18 ID:iLem/HtI0
- ???『くすくすくす』
水銀燈「し、真紅の声? ど、どこから?」
???『あらやだ。まだ分からない? 私からはあなたがよく分かるのに、あなたはまだ私がどこかよく分からない?」
水銀燈「この声のする方向は! まさか、翠星石!?」クルッ
翠真紅「そのとおりなのだわ! 水銀燈! 怒りに我を忘れた女は滑稽ね!
この程度のことも見抜けなくなってしまったとは!」
水銀燈「ちぃ! 翠星石から服を奪って寝ていたのか!」
翠真紅「いかにも! 髪の毛もウィッグで偽装は完璧! ものの見事に騙されたわね!
ちなみに翠星石本体は冷蔵庫の中に隠してある!」
水銀燈「くっ! おとなしく恐怖に怯えていればいいのに、小賢しい真似を!
予定が変わった! ドジョウじゃあ生ぬるい! 今夜こそジャンクにしてあげる!」
翠真紅「冗談! 今夜の真紅ちゃんは一味違ってよ! たかがバカマツタケごときで逆上しているあなたなんて返り討ちだわ」 - 654 :名無しさん:2013/11/01(金) 22:31:45 ID:iLem/HtI0
- 水銀燈「いけっ! 黒羽根……ッ」ぶわさ
翠真紅「そうはさせない! くらいなさい! ジュン謹製の投網をっ!」ドシュバッ
水銀燈「ぐ!?」ギシッ
翠真紅「そうそう何度も黒羽根を放たせない! 特にこんな狭い室内ではね!」
水銀燈「この程度のなまっちょろい網でこの水銀燈がしばれるか! 火羽根ですぐに…」ボゥッ
翠真紅「そんな暇も与えない! 必殺ダブル絆パンチ!」ドオスゥッ
水銀燈「くあっ! しかし! 浅い! この程度では!」
翠真紅「いいえ。水銀燈…今、あなたの命運は尽きた」
水銀燈「はぁ!?」
翠真紅「自分が今、何を打ち込まれたか分かってる?」
水銀燈「……?」
翠真紅「分からない? でも、すぐに分かる…」 - 655 :名無しさん:2013/11/01(金) 22:35:08 ID:iLem/HtI0
- 水銀燈「っ!?」ブショアッ
翠真紅「ほら、効いてきた」
水銀燈「KUUAAAAAAAッーーー! 真紅に打ち込まれた部位から、か…体が!?
溶けるように崩れ落ちていく!? こ、これは! こ、この効果はまさかぁ…っ」ボゴゴンッ
翠真紅「そう! 『敗北を認めないローザミスティカ』よ! それを二つ同時に食らわせた!」
水銀燈「なんですって!? し、真紅ぅ!!」
翠真紅「実を言うと翠星石と雛苺は全然目覚めなかったから、私がミスティカを抜いた!
けれど、それを私は飲み込んではいない。当然よね。
水銀燈、あなたのせいで二人とも『何が何だか分からないまま』気を失ったのだもの!」
水銀燈「!」
翠真紅「敗北を認めていないミスティカは他の姉妹にとって劇薬! それを二つもあなたに入れた!
蒼星石の時より拒絶反応も遥かに強い(多分)。どう? ブルっちまう相乗効果でしょ?」
水銀燈「うおごごごごごご! こ、この痛み! この熱さ! 馬鹿な! この水銀燈が! この水銀燈がーーーーーー!!」
翠真紅「散滅すべし! 水銀燈!!」
水銀燈「ぐはぁ!」ドサァッ - 656 :名無しさん:2013/11/01(金) 22:36:40 ID:iLem/HtI0
- 翠真紅「…勝った。ついに水銀燈は、この私と翠星石と雛苺の絆の力の前に敗れ去った!
無敵! 絶好調! もう誰もこの真紅様を止めることはできないのだわだわ!」
水銀燈「……」
翠真紅「フハハハハハ! 残るは取るに足らぬ次女と四女と末妹! 同じ方法で倒してみせる!
アリスになるのはこの私ッ! 長いアリスゲームの暗雲がついに打ち払われる時が来た!
実に! 実にスカッと爽やか、晴れ晴れとした気分だわ! 今はまだ深夜だけど」
水銀燈「……」ぐったり
翠真紅「おっと、そうそう。水銀燈からもミスティカを回収しておかなくちゃね。敗北を認めていれば私の糧に…
そうでなければ他の姉妹への新たな『毒』として使う。くっくっく、どう転んでも美味しい作戦だわ」 - 657 :名無しさん:2013/11/01(金) 22:41:36 ID:iLem/HtI0
- 翠真紅「…て、あれ?」グギギ
水銀燈「……」
翠真紅「きゅ、急に私の体の動きが…鈍く? い、いや! ぜ、全然動かなくなって、これは!?」
ジュン「僕が投網をもう一度投げた、真紅に向かって。背後からな」ズオオオオ
翠真紅「ジュ、ジュン? なぜ? い、何時の間に起きて…?」
ジュン「何時の間にじゃねぇよ! 馬鹿みたいに大声張り上げてバトルと解説をしやがって! 今、何時だと思ってるんだ」
翠真紅「ちょ、ちょっと待って! これは水銀燈が襲って来たから…! 自己防衛! 自己防衛よ」
ジュン「うるさい! 薔薇乙女たるものアリスゲームの一つや二つするだろう!
しかし今夜の真紅はあまりにもゲスすぎる! そして、うるさすぎる!」
翠真紅「だ、だからそれは水銀燈の夜襲に対応するために…」
ジュン「二人ともだ。水銀燈と真紅、二人ともに罰を与える! ドミネ・クォ・ヴァディス! 二人とも明後日まで逆さ磔の刑だ!」
翠真紅「そ、そんなぁああああーー…っ」
こうして真紅の野望は脆くも崩れ去り、水銀燈と翠星石そして雛苺も一応復活したのであった。
【真紅、最高にハイってやつになる。】 終
2013/11/02 13:48:13 コメント18 ユーザータグ ローゼンメイデン