Steve Reich
Nonesuch (2014-10-07)
売り上げランキング: 28
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実際に聴いた感想を端的に述べれば「退屈な演奏」という表現がまず思いつく。パット・メセニーによるひとつひとつの音が生き生きと跳ねるような演奏から、遠くはなれた、静的なものだ。おそらくは意図的にそのような解釈が取られているのだろう。ジョニー・グリーンウッドはこの楽曲を、アンビエント作品として録音しているようである。アフロ・ポリリズムというダンス・ミュージック的な音楽要素を取り入れた、もっともポップな現代音楽のひとつであるスティーヴ・ライヒが、こうしてアンビエント作品として提示されると、それはそれでこの作曲家の本質を捉えているようにも思われる。皮肉めいているけれど、スティーヴ・ライヒの音楽は、シリアスな音楽ではない、ということだ。
アルバムの表題作《Radio Rewrite》は2012年の作品で、Radioheadの楽曲をモチーフに、リミックス的な作曲方法で書かれたもの(ジョニー・グリーンウッドの起用は、この楽曲にちなむものだろう)。とりあげられているのは「Jigsaw Falling into Place」(『In Rainbows』に収録)と「Everything in Its Right Place」(『Kid A』に収録)。かつて「リミックスという作業はクラシックの作曲家がおこなった変奏曲の現代的な形式だ」と語り、自作曲のリミックス・コンテストもおこなった彼だが、本作ではクラシックの作曲家が自作のなかに当時の流行歌や俗謡を引用したことが念頭に置かれていたようである。
しかしながら、そこで選ばれているのがRadiohead……というのがまたスティーヴ・ライヒのセンスの悪さというか、ベタなセンスを表している。自分の75歳の誕生日にアメリカ同時多発テロ事件をテーマにした作品を書くような人だから、まあ、仕方がない部分はあるが。作品の内容も元ネタがわかる部分では「あー、なるほど〜」と思ったが、取り立てて評価すべきものでもない。ただ、旋律的でも、和声でも、スティーヴ・ライヒっぽくないところが随所にあり、そういう意味では面白いのかもしれない。
アルバムにはもう一曲《Piano Counterpoint》(《Six Pianos》の編曲版)も収録。これはカナダの若手女性ピアニスト、ヴィッキー・チョウが演奏している。この人は、ニューヨークの現代音楽アンサンブル、Bang on a Canにも参加するなど、現代音楽を中心に活動しているそうである。このアルバムで得られた一番の収穫は、彼女の存在を知ったことかもしれない。近々でるニューヨークの作曲家/芸術家、トリスタン・ペリッヒの楽曲をとりあげたアルバムなんか、スティーヴ・ライヒなんかよりもずっと面白そうである。
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