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吉田豪が語る、出版業界におけるゴーストライターの実情「タレント本の9割は自分で書いてない」

2014.03.08 (Sat)
2014年03月06日放送のテレビ朝日系の番組『侃侃諤諤』(毎週木 25:51 - 26:21)にて、プロインタビュアー、ライターの吉田豪が、出版業界におけるゴーストライターの実情について語っていた。

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吉田豪のゴーストライター経験

吉田豪:「若手ライターは、どんどんゴーストライターになるべし」…若手のライターにとっては、絶対に良い経験の場になるし、稼げないうちは、こういうことで稼いで、徐々に実力をつけて、自分の本を出す流れっていうのは、確実にあるし。

太田光:うん。

吉田豪:仁義にもとるから、名前出していないだけで、想像以上に(ゴーストライターは)いるはずですよ。

太田光:えぇ。

吉田豪:僕もゴーストライター出身って言いましたが、『催眠術師になりたい』って本を、ダーク・ヒロカズさんっていう、催眠術師 兼 手品師の本を、作ったことがあるんですけど。

伊集院光:その人、知ってるよ。

吉田豪:この人の本を、作ったことがあるんですけど、なぜこれを僕が書いたってバラしたかって言いますと、この本が、1回、話題になったんですよ。「"ハーレム男"を名乗る男が、女性11人くらいと同居して、呪文で(自分を)モテさせていた」みたいなニュースが、10年以上前にあったんですね。

伊集院光:洗脳みたいな感じで。

吉田豪:家宅捜索されたときに、出てきたのが、この本だったんです。

伊集院光:あぁ。

吉田豪:この本によって、やったんじゃないかと。この本に、「スケベ洗脳医師になりたい」とか、そんなことが目次にあるんで、「確実にこれを読んでやったんじゃないか」っていうふうに騒がれたんですよ。

伊集院光:うん。

吉田豪:でも、書いたのは僕で、役に全然立たないんですよ。そんなの(笑)

太田光:催眠術師でもなんでもないからね(笑)

吉田豪:僕、催眠術かけられないですからね。事情を言いますと、別のゴーストの方がいたんですよ。それは、新聞社を定年退職されたお堅い方が原稿書いたら、「堅すぎる」ってことで、下請けになったんですよ。

太田光:ゴーストのゴースト?(笑)

伊集院光:背後霊の背後霊みたいな(笑)

吉田豪:より緩い感じにしてくれっていわれたんで、僕がギャグとか加える感じで、書いたんです。結果、くだらないシモネタとかガンガン入れて、こういう風に使えるんじゃないかって、妄想で書いただけのことであって、絶対にコレを使ってやったワケじゃないと思うんですよ。

太田光:えぇ。

吉田豪:それで、ダーク・ヒロカズさんが叩かれていたんで、「違うんです。犯人は僕です」って、名乗りでたっていうね。

太田光:それはかなり特殊なケースだよ(笑)

吉田豪:そういう風に、ゴースト出身者って凄い多いじゃないですか。

太田光:多いでしょうね。

吉田豪:構成のクレジットが入ってることもあれば、入ってないこともありますけどね。

太田光:その場合は、ダーク・ヒロカズが言ったことを、書き起こしている感じなの?

吉田豪:ダーク・ヒロカズさんは、催眠術のやり方を教えてくれただけです。

太田光:あぁ。

吉田豪:本文は、全部こっちが書いてます。

伊集院光:俺ね、そこが結構、根深いと思うの。どこまでをゴーストと言うのかって。

吉田豪:えぇ。

伊集院光:ダークさんのように、筆者とされている人の発想に全くないことも書いちゃうレベルがゴーストなのか、よくあるインタビューを3日間連続でやって、それをライターさんが文語にまとめましたっていうのも、今は全部一緒くたにゴーストになってるでしょ?どこまでがゴーストなの?

太田光:俺は、それがイヤなんだよ。そういう語りおろし、みたいな本もあるわけですよ。それはちゃんと、ライター誰々っていうのは、明記してもらうようにしてんの。

伊集院光:太田光談、文が誰々っていう形でね。

太田光:そうそう。

伊集院光:でも、そうやって全くクレジットされてない人もいるんでしょ?そもそも聞きたいのは、若手で初めての時、どういう形でオファーがくるんですか?

吉田豪:この時は、会社名が構成で入ってるだけですね。僕の名前はないです。

ゴーストライターが許される条件

太田光:吉田豪が、ゴーストを使ってんじゃないかって、疑われるのはイヤでしょ?

吉田豪:"書いてそうな人"が、使ってたら問題だってくらいだと思うんですよね。そうじゃない場合は、良いんじゃないかって僕の意見ですね。

太田光:あぁ。

伊集院光:読む側ももうちょっと頭良くなって、ニュアンスを読み取れよってことですかね。

太田光:松本伊代は、許してやれよってことね。

注釈:84年、松本伊代が『伊代の女子大生モテ講座』を宣伝した際、会見で本の内容につい訊かれた際、「まだ読んでないですけど」と発言。そのため、自身で書いていないことが明らかとなった。

吉田豪:そういうことですね(笑)

伊集院光:そもそも、自分で書いたと思わないだろっていうことね(笑)

太田光:「私もこれから読みますから」って言った人だから(笑)

松本伊代、長門裕之の実例

吉田豪:そもそも、ゴーストライターが書いた方が面白いんですよ。太田さんや伊集院さんのように、書ける人だったら良いんですけど、タレントさんも書ける人だけじゃないじゃないですか。書けない人が書いたら、見るに堪えない。

太田光:はい。

吉田豪:たまに、本人が書いて、事故みたいなことになったことがあるんですよ。小学生の作文みたいになって。

太田光:ふはは(笑)

吉田豪:本当に上手い構成者がやる場合もあるんですが、そうじゃない場合、おかしなことが起きやすいんですよ。

太田光:はいはい。

吉田豪:たとえば、芸能界で書いてはいけないことを平気で書いてしまったりとか。ルール分からない人がやっちゃってて。

伊集院光:はいはい。

吉田豪:たとえば、松本伊代さんの本なんですけど、明らかに伊代ちゃんが書いていないことで、変なことが起きてるんですよ。

伊集院光:ふふ(笑)

吉田豪:伊代ちゃんが読書について語るページで、なぜか伊代ちゃんが日本の右傾化を憂いて、「今、日本がどんどん右傾化していますが…」って、4ページに渡って、右傾化ってフレーズが何度も出てて、危機を訴えてたり。

太田光:はっはっはっ(笑)

吉田豪:あと、性について語るってページでは、なぜか、王さんの家での性教育の話が出てきて。

太田光:ふふ(笑)

吉田豪:王さんに、やけに詳しいんですよ。「王さんは努力の人で…」とか。なんでこんな話ばっかり出てくるのか、後にご本人に確認したら、野球は全然知らないし、右傾化の話を訊いたら、「右傾化ってなんですか?」って。ゴーストの人が、自分の思想を入れちゃったんです。

太田光:ふふ(笑)凄いですね(笑)…長門(裕之)さんの時は、どうだったの?

吉田豪:これは、ご本人さんから訊いてますけど、長門さんは、普通に取材受けてたんですよ。語りおろしで。それで、終わった後に、編集とライターと酒を飲んで話をしてたら、そこを全部とられて、そこを主に使われて。

太田光:それ、チェックしなかったんですか?

吉田豪:チェックは、本出来てから送ってきたって言ってて。だから、酒を飲んで話をした人の悪口とシモネタが全部本になってるんです。

伊集院光:はっはっはっ(笑)

吉田豪:でも、酔っ払って話をしてるから、カラっとした悪口なんです。そこで長門さんが凄いのは、怒ろうとしたんだけど、最初の振込の額が凄かったから「じゃあ、いいや」って(笑)

タレント本の裏側

吉田豪:「タレント本は、本人が書いていないと思って買え」

伊集院光:このへんだよね、俺たちがピリつくの(笑)

吉田豪:ぶっちゃけ、9割は書いてないじゃないですか。

伊集院光:9割いきます?(笑)

吉田豪:伊集院さんと太田さんは、(自分で書いてる)珍しい1割ですよ。だから、一緒にされたくなくて、怒ってるんですよ。

伊集院光:ライターの人の対談ってなったら、絶対に文章はライターが書いてると思うじゃん。クレジットもライターだから。でも、俺は本気で自分で書いてるから。

吉田豪:はい。

伊集院光:今まで、ある程度、自分で書いてるんだろうって思ってたら、一気に「どうせ芸能人なんか、自分で書いてないんだ」ってなってるから。俺たちは、"本当に自分で書いてるマーク"とか付けてほしいわ。

吉田豪:ふふ(笑)本屋で棚を変えるとかですよね(笑)

伊集院光:クレジットの仕方も、もっと明確に書いて欲しいの。アシスタントとか、再構成みたいな言葉でクレジットされてるけど、なんか耳障り良い言葉にしてて、イヤなんだよね。1から10まで書いてる側からすると、迷惑な感じがするね。

吉田豪:僕が思うに、タレント本って、プロレスみたいなもんだと思うんですよ。お2人は、「俺たちはガチでやってるのに、一緒にするな」っていう風に怒ってる状態というか。今、そういう意味で言うと、「プロレスがなんなのか、ハッキリしろ」って問われてるような状況だと思うんです。それは、野暮じゃんって話で、「そこは曖昧にしておきましょうよ」って話なんですよ(笑)

伊集院光:この一連の問題をワイドショーで取り上げてる時に、見方として好きなのは、凄いゴーストを擁護する人って、「お前、ある程度使ってるよな?」って思うんですよ。

太田光:タレントで?(笑)

伊集院光:俺たちみたいにムキになってるのは、「一緒にするんじゃねぇよ」って思うからだろうね。何人か、いると思うの。「そんなの、1人では絶対にできませんから」とか言ってた人ね。「名前も、クレジットされるとは限りませんし」って言ってる人は、「アレ…お前、やけに庇うな」って思ったりするんで。

吉田豪:カブキロックスの氏神一番さんが、佐村河内さんの話をしてて。否定してたんですよ。「耳が聞こえない」ってウソをついてるのが良くないって言ってたんですけど、あの人も、「江戸出身」ってウソついてたんですよ。

伊集院光:ふふ(笑)

太田光:ウソというか(笑)

吉田豪:本人も言ってたんですよ。「俺の言ってることは、誰も信じてないやろ」って言ってたんです。それみたいなもんじゃないですか?デーモン閣下のことを、「悪魔じゃない、だまされた」って言う人が、どれくらいいるのかって話で。そういうもんだと思って良いんじゃないですかねって。幻想を買うっていうか。

伊集院光:あぁ。

吉田豪:今の世の中の出版物が、全部、本人が書かなきゃいけない時代になったら、多分、出版業界は崩壊すると思うんですよ。出版するに値しない本が、いっぱいあるんで。

太田光:あぁ。

吉田豪:クレジットの問題だとは思うんですけど、クレジットしないのもアリだと思うんです。しないことで、ギャラが上がるとかもあると思うんで。

太田光:あぁ。

吉田豪:ある女子プロレスラーの方が、昔出した本が、ひらがなだらけで、凄いリアリティがあって。本の中にも、作文用紙とかもあって、「これは良い本だなぁ」と思って、関係者に訊いたら、やっぱり誰かが作ってたらしいんですよ。

伊集院光:へぇ、そこまで凝って。

吉田豪:でも、その幻想はアリじゃないですか。クレジット無いが故に、リアリティを出せるって。僕はそれで良いと思います。

太田光:そうだね。そういうジャンルはあって良いと思うけど。でも、そういうジャンルですよって言った時点で、冷めちゃうもんね。

吉田豪:全部カミングアウトしろよって言われると、僕は「ちょっとそれは良いんじゃないの?」って思うんですよ。

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