映画評論家・町山智浩「報われない人が元気になれる小説『縮みゆく男』」
2013.09.05 (Thu)
2013年09月03日放送の「たまむすび」にて、映画評論家・町山智浩が、作家・リチャード・マシスンについて語っていた。
町山智浩「リチャード・マシスンを追悼する本『縮みゆく男』が、発売されまして。僕も解説を書いてまして、その作家についてお話をさせてもらいたいんですけどね」
「アメリカでもめちゃくちゃ知られてる人ではないんですけど、この人がやった仕事っていうのは、アメリカ映画に凄い影響を与えているんで重要なんです」
「スティーブン・スピルバーグの映画、これはTVムービーだったんですが『激突!』という映画がありまして、その原作者なんですね」
「『激突!』は、誰ともすれ違わないような砂漠の道を走ってる。そこをセールスマンが自動車で走ってて、目の前を走っていた巨大なタンクローリーを追い抜くんですね、そしたらずっとそれからタンクローリーに追われ続けるんですよ」
「ドライブインに入って逃げると、そのドライブインごとタンクローリーが押しつぶす。パトカーに助けを求めると、パトカーごと押しつぶしてしまうんです。どこまでもタンクローリーが追い掛けてくる…という話を、リチャード・マシスンが書いてるんです」
「この人はミステリーとかSFなどと言われる短編小説をいっぱい書いてて、日本だとたとえば筒井康隆さんにも初期の頃に影響を与えてるんです。とにかく話が不条理で、ミステリーというより、カフカに近いストーリーを書き続けた人なんですね」
「『蒸発』っていう話もあって、これは段々自分の友だちたちが連絡とれなくなっていくんです。会おうとすると、その家がまるごとなかったりするんですよ。図書館に行って、自分の図書カードを探すと、その図書カードが見つからない。そのうち、どんどん自分というものを証明する書類が消えていくんです。そういう怖い話もあって。…僕は小学校6年くらいに小説を読んで凄く影響を受けました」
「藤子・F・不二雄先生も影響を受けて、『流血鬼』って漫画があって。これは、リチャード・マシスンが書いた、『アイ・アム・レジェンド』をほとんどそのまま漫画にしたものなんですね」
「吸血鬼がどんどん増えていく世界で、主人公は家に篭って、夜の間は外に出ないようにする。昼になると、逆に吸血鬼が寝ているので、色んなところを回って、吸血鬼に止めを刺して回るんですね。何年も吸血鬼と戦っていると、ある時に気づく。世間の人間は全て吸血鬼になっていて、自分だけが人間になっている。吸血鬼は吸血鬼で、ちゃんとルールを作って法律を作って、文化を作っている。自分だけが時代遅れで、主人公はこう言われるんです。『お前は人間を殺して回っている怪物だ』と」
「『運命のボタン』って小説も書いてて。ある日、セールスマンがやってきて、ボタンのついた箱を持っていく。『そのボタンを押すだけで100万ドルが手に入る、押しますか?』って言うんです。『ただ、そのボタンを押すと、あなたが全く知らない誰かが1人死にます。その代わり、100万ドルが手に入ります、押しますか?』と」
「『世にも奇妙な物語』っていうドラマがありますが、あれはもともと、リチャード・マシスンたちが作っていた『トワイライトゾーン』っていうテレビシリーズがありまして、それを日本でやったのが、『世にも奇妙な物語』なんですよ。リチャード・マシスンは、後世に色んな影響を与えているのに、本人の名前があまり知られていないんですね」
縮みゆく男
「僕が今回、解説を書かせてもらった文庫本はですね、『縮みゆく男』なんですね。これは、奥さんと子供がいる男の体が、どんどんと縮んでいくっていう話なんです」
「最後、虫よりも小さくなっていってしまうんです。始まりは普通で、服が合わなくなってくる。次にベルトが合わなくなって、靴が合わなくなって…っていう感じになっていく。その後、段々と奥さんと目線がほぼ一緒の高さになり、次第に奥さんより小さくなっていくんです」
「幼い子どもよりも、ネコよりも小さくなり、虫よりも小さくなる。どうやってそれで生きていくかっていう、サバイバルの話なんです。声が聞こえなくなり、奥さんも気づ日なくなっていくんです。その中で食べ物も確保しなきゃならないし。ちょっとした亀裂であっても、どんどん体が小さくなるから、大峡谷になってしまう」
「どんどん体が小さくなるから、自信が無くなって、奥さんとの性生活が出来なくなっていくんです。そこも怖いんですけど、もっともっと小さくなり、奥さんは主人公を夫としてではなく、子どもとして可愛がるようになる。それがかえってリアルで怖いんです。あと、娘よりも小さくなって、娘に馬鹿にされるようになる。これ、誰にでもよくあることですが(笑)お父さんにとっては」
「女性に対する男性的な自信を失っていくと、少女に欲情するようになっていく。そこも怖いんですよ。当時、ロリ○ンって言葉が無かった頃に、男性性の自信の無さと、少女愛を結びつけているんです。凄いリアルなんですよ」
「体が小さくなっていくと、何より生活が成り立たなくなっていくんです。仕事ができなくなっていって。会社勤めも出来なくなって。小人症の人も出てきて、差別の問題も出てくる。どんどん体が縮んでいくというだけで、その中に色んなものを詰め込んでいっていくんです。ものすごく良く出来た小説なんです」
「これがアメリカで重要な作品だと言われる理由としては、主人公が昔、戦争の英雄だったんだけども、今は生活に苦しんでいる。郊外に一戸建てを買ったんだけども、そのローンが払えない、みたいな話になっていくんですね。当時、これはアメリカで一戸建てを郊外に建てて住み始めてローンを払うっていうのは始まりの時なんですよ。核家族化が進んで」
「肉体的な労働者が大多数だった中、次第にサラリーマンが大多数になっていく。汗水たらして肉体労働を行っていた男たちが、書類整理や営業とかをさせられるんですね。この時から、働く実感がなくて苦しんだらしいんですね。社会の中で、自分の位置や、やってる仕事がどういう関係性があるのか分からなくなっていくんです。巨大な社会の歯車になっていくから」
「巨大な社会の中で、自分というものがどんどんと小さくなっていった。その気持を『縮みゆく男』に象徴させているんですよ。それまでガンガン働いてたのが、社会の中での位置がどんどん小さくなっていく。社会の仕組みがどんどん複雑化してわからなくなっていく、そのことが象徴化されてるんですね」
「実はその頃、アメリカや日本で『サラリーマンが辛くなっていく』って話がたくさん書かれてるんですよ。ところが、その中で他の作品は消えていったのに、『縮みゆく男』だけは残っているんですよ。それは、象徴的に描いているからでしょうね。ハッキリと生活が大変で、実感がわかない、とは書いていないんです。体が小さくなる、とお伽話として書いているから、かえって残るんですね。時代が変わっても普遍的に残るんですね」
「この当時、リチャード・マシスンも作家として全く食えなくて、主人公と同じようにローンで家を買ったんだけども払えなくて、兄に経済的に世話になってて、奥さんや子どもを食わせられない状況だったらしいんですね。自分がどうなってしまうんだろうか、と考えつつ書いた話だったんですね」
「子供の頃に読んだんですけど、その当時は全く分からなかったんです。子供だから。でもね、僕がアメリカに渡って、収入がなくなっちゃったんですね。英語スクールでスティーブン・キングの『死の舞踏』って本を読めって言われて読んだんですよ。その中で、スティーブン・キングは、『縮みゆく男っていうのは、ものすごく重要な小説だ。これはSFではなく、人間そのものなんだ』って書いてて」
「スティーブン・キングも、『キャリー』を書いている時に貧困のどん底にあって。追い詰められている時に、『縮みゆく男』に共感した、と書いてるんです。彼の場合は、いじめられっ子が街中の人間を皆殺しにするって凄い小説でデビューしたんですけどね(笑)」
「僕はそれで初めて、『縮みゆく男』の意味がわかったんですね。その時、僕も収入が無くて、カミさんに食わせてもらってたんですよ(笑)縮みゆく感じが分かったんですよ」
「社会の中で、自分の立場がどんどん小さくなる不安感とか、自身の無さとかを味わった人には、共感できる作品だと思うんですよ。なので、解説に『縮みゆく男は自分である』って書いたんですね。みんなそういう時あるだろう、と」
「実は、解説がもう一つあって、デヴィッド・マレルが書いた解説で、『縮みゆく男は、カミュが書いた"シーシュポスの神話"が元になっている』と書いているんですね」
「『シーシュポスの神話』は、神々の怒りを買ってしまい、大きな岩を山頂に押して運ぶという罰を受けた主人公の話なんです。彼は神々の言い付け通りに岩を運ぶんですが、山頂に運び終えたその瞬間に岩は転がり落ちてしまう。同じ動作を何度繰り返しても、結局は同じ結果にしかならない、それこそが人生なんだ、という話なんです」
「まさに『縮みゆく男』っていうのは、どんどん小さくなる中で、生きる意味はつかめるんだろうかって話なんです。生きるというのはなんなのか、無駄ではないか、と。途中で、縮んでゼロになってしまうなら、生きていてもしょうがないじゃないかって気持ちに襲われるんですね。それと戦っていく話になっているんです。本当に、これは凄まじい小説です」
「売れてない時、何をやっても上手くいかないって時、誰にもあるでしょ?そうなると、周りが大きく見えるんですよ。その時のツラさがわかる人は、この本を読むと色々わかると思いますよ」
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リチャード・マシスンとは
リチャード・マシスン(Richard Burton Matheson, 1926年2月20日 - 2013年6月23日)は、アメリカ合衆国の小説家、SF作家、ホラー小説作家、ファンタジー作家、ウエスタン作家、脚本家。
優れたストーリーテリング能力を駆使し、ひとつのアイディアを丁寧かつ繊細な描写で語るというスタイルを持つ。
映像媒体の脚本でもその才能を遺憾なく発揮し、スティーヴン・スピルバーグの『激突!』(原作と脚本)、『ヘルハウス』(原作と脚本)、エドガー・アラン・ポー作品の『恐怖の振子』『黒猫の怨霊』『忍者と悪女』、自作品"Bid Time Return"の改作脚本版『ある日どこかで』などの映画作品の他 、『トワイライトゾーン』などのTVドラマの脚本も多く手がけている。『ある日どこかで』『ゴッドファーザーPARTII』ではカメオ出演している。
リチャード・マシスン
町山智浩「リチャード・マシスンを追悼する本『縮みゆく男』が、発売されまして。僕も解説を書いてまして、その作家についてお話をさせてもらいたいんですけどね」
「アメリカでもめちゃくちゃ知られてる人ではないんですけど、この人がやった仕事っていうのは、アメリカ映画に凄い影響を与えているんで重要なんです」
「スティーブン・スピルバーグの映画、これはTVムービーだったんですが『激突!』という映画がありまして、その原作者なんですね」
「『激突!』は、誰ともすれ違わないような砂漠の道を走ってる。そこをセールスマンが自動車で走ってて、目の前を走っていた巨大なタンクローリーを追い抜くんですね、そしたらずっとそれからタンクローリーに追われ続けるんですよ」
「ドライブインに入って逃げると、そのドライブインごとタンクローリーが押しつぶす。パトカーに助けを求めると、パトカーごと押しつぶしてしまうんです。どこまでもタンクローリーが追い掛けてくる…という話を、リチャード・マシスンが書いてるんです」
「この人はミステリーとかSFなどと言われる短編小説をいっぱい書いてて、日本だとたとえば筒井康隆さんにも初期の頃に影響を与えてるんです。とにかく話が不条理で、ミステリーというより、カフカに近いストーリーを書き続けた人なんですね」
リチャード・マシスンの作品紹介
「『蒸発』っていう話もあって、これは段々自分の友だちたちが連絡とれなくなっていくんです。会おうとすると、その家がまるごとなかったりするんですよ。図書館に行って、自分の図書カードを探すと、その図書カードが見つからない。そのうち、どんどん自分というものを証明する書類が消えていくんです。そういう怖い話もあって。…僕は小学校6年くらいに小説を読んで凄く影響を受けました」
「藤子・F・不二雄先生も影響を受けて、『流血鬼』って漫画があって。これは、リチャード・マシスンが書いた、『アイ・アム・レジェンド』をほとんどそのまま漫画にしたものなんですね」
「吸血鬼がどんどん増えていく世界で、主人公は家に篭って、夜の間は外に出ないようにする。昼になると、逆に吸血鬼が寝ているので、色んなところを回って、吸血鬼に止めを刺して回るんですね。何年も吸血鬼と戦っていると、ある時に気づく。世間の人間は全て吸血鬼になっていて、自分だけが人間になっている。吸血鬼は吸血鬼で、ちゃんとルールを作って法律を作って、文化を作っている。自分だけが時代遅れで、主人公はこう言われるんです。『お前は人間を殺して回っている怪物だ』と」
「『運命のボタン』って小説も書いてて。ある日、セールスマンがやってきて、ボタンのついた箱を持っていく。『そのボタンを押すだけで100万ドルが手に入る、押しますか?』って言うんです。『ただ、そのボタンを押すと、あなたが全く知らない誰かが1人死にます。その代わり、100万ドルが手に入ります、押しますか?』と」
リチャード・マシスンの影響
「『世にも奇妙な物語』っていうドラマがありますが、あれはもともと、リチャード・マシスンたちが作っていた『トワイライトゾーン』っていうテレビシリーズがありまして、それを日本でやったのが、『世にも奇妙な物語』なんですよ。リチャード・マシスンは、後世に色んな影響を与えているのに、本人の名前があまり知られていないんですね」
「縮みゆく男」のストーリー
縮みゆく男
「僕が今回、解説を書かせてもらった文庫本はですね、『縮みゆく男』なんですね。これは、奥さんと子供がいる男の体が、どんどんと縮んでいくっていう話なんです」
「最後、虫よりも小さくなっていってしまうんです。始まりは普通で、服が合わなくなってくる。次にベルトが合わなくなって、靴が合わなくなって…っていう感じになっていく。その後、段々と奥さんと目線がほぼ一緒の高さになり、次第に奥さんより小さくなっていくんです」
「幼い子どもよりも、ネコよりも小さくなり、虫よりも小さくなる。どうやってそれで生きていくかっていう、サバイバルの話なんです。声が聞こえなくなり、奥さんも気づ日なくなっていくんです。その中で食べ物も確保しなきゃならないし。ちょっとした亀裂であっても、どんどん体が小さくなるから、大峡谷になってしまう」
「どんどん体が小さくなるから、自信が無くなって、奥さんとの性生活が出来なくなっていくんです。そこも怖いんですけど、もっともっと小さくなり、奥さんは主人公を夫としてではなく、子どもとして可愛がるようになる。それがかえってリアルで怖いんです。あと、娘よりも小さくなって、娘に馬鹿にされるようになる。これ、誰にでもよくあることですが(笑)お父さんにとっては」
「女性に対する男性的な自信を失っていくと、少女に欲情するようになっていく。そこも怖いんですよ。当時、ロリ○ンって言葉が無かった頃に、男性性の自信の無さと、少女愛を結びつけているんです。凄いリアルなんですよ」
「体が小さくなっていくと、何より生活が成り立たなくなっていくんです。仕事ができなくなっていって。会社勤めも出来なくなって。小人症の人も出てきて、差別の問題も出てくる。どんどん体が縮んでいくというだけで、その中に色んなものを詰め込んでいっていくんです。ものすごく良く出来た小説なんです」
「縮みゆく男」の意味
「これがアメリカで重要な作品だと言われる理由としては、主人公が昔、戦争の英雄だったんだけども、今は生活に苦しんでいる。郊外に一戸建てを買ったんだけども、そのローンが払えない、みたいな話になっていくんですね。当時、これはアメリカで一戸建てを郊外に建てて住み始めてローンを払うっていうのは始まりの時なんですよ。核家族化が進んで」
「肉体的な労働者が大多数だった中、次第にサラリーマンが大多数になっていく。汗水たらして肉体労働を行っていた男たちが、書類整理や営業とかをさせられるんですね。この時から、働く実感がなくて苦しんだらしいんですね。社会の中で、自分の位置や、やってる仕事がどういう関係性があるのか分からなくなっていくんです。巨大な社会の歯車になっていくから」
「巨大な社会の中で、自分というものがどんどんと小さくなっていった。その気持を『縮みゆく男』に象徴させているんですよ。それまでガンガン働いてたのが、社会の中での位置がどんどん小さくなっていく。社会の仕組みがどんどん複雑化してわからなくなっていく、そのことが象徴化されてるんですね」
「実はその頃、アメリカや日本で『サラリーマンが辛くなっていく』って話がたくさん書かれてるんですよ。ところが、その中で他の作品は消えていったのに、『縮みゆく男』だけは残っているんですよ。それは、象徴的に描いているからでしょうね。ハッキリと生活が大変で、実感がわかない、とは書いていないんです。体が小さくなる、とお伽話として書いているから、かえって残るんですね。時代が変わっても普遍的に残るんですね」
「この当時、リチャード・マシスンも作家として全く食えなくて、主人公と同じようにローンで家を買ったんだけども払えなくて、兄に経済的に世話になってて、奥さんや子どもを食わせられない状況だったらしいんですね。自分がどうなってしまうんだろうか、と考えつつ書いた話だったんですね」
「子供の頃に読んだんですけど、その当時は全く分からなかったんです。子供だから。でもね、僕がアメリカに渡って、収入がなくなっちゃったんですね。英語スクールでスティーブン・キングの『死の舞踏』って本を読めって言われて読んだんですよ。その中で、スティーブン・キングは、『縮みゆく男っていうのは、ものすごく重要な小説だ。これはSFではなく、人間そのものなんだ』って書いてて」
「スティーブン・キングも、『キャリー』を書いている時に貧困のどん底にあって。追い詰められている時に、『縮みゆく男』に共感した、と書いてるんです。彼の場合は、いじめられっ子が街中の人間を皆殺しにするって凄い小説でデビューしたんですけどね(笑)」
「僕はそれで初めて、『縮みゆく男』の意味がわかったんですね。その時、僕も収入が無くて、カミさんに食わせてもらってたんですよ(笑)縮みゆく感じが分かったんですよ」
「社会の中で、自分の立場がどんどん小さくなる不安感とか、自身の無さとかを味わった人には、共感できる作品だと思うんですよ。なので、解説に『縮みゆく男は自分である』って書いたんですね。みんなそういう時あるだろう、と」
「実は、解説がもう一つあって、デヴィッド・マレルが書いた解説で、『縮みゆく男は、カミュが書いた"シーシュポスの神話"が元になっている』と書いているんですね」
「『シーシュポスの神話』は、神々の怒りを買ってしまい、大きな岩を山頂に押して運ぶという罰を受けた主人公の話なんです。彼は神々の言い付け通りに岩を運ぶんですが、山頂に運び終えたその瞬間に岩は転がり落ちてしまう。同じ動作を何度繰り返しても、結局は同じ結果にしかならない、それこそが人生なんだ、という話なんです」
「まさに『縮みゆく男』っていうのは、どんどん小さくなる中で、生きる意味はつかめるんだろうかって話なんです。生きるというのはなんなのか、無駄ではないか、と。途中で、縮んでゼロになってしまうなら、生きていてもしょうがないじゃないかって気持ちに襲われるんですね。それと戦っていく話になっているんです。本当に、これは凄まじい小説です」
「売れてない時、何をやっても上手くいかないって時、誰にもあるでしょ?そうなると、周りが大きく見えるんですよ。その時のツラさがわかる人は、この本を読むと色々わかると思いますよ」
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