ハート♥剛毛系

心が剛毛な心臓モサモサ系の人の散文。主に「自分のこと」を書くのがテーマです。

子有りで事実婚

こんにちは。“水谷”さるころです。
人生3度目の水谷姓です。
というわけで、出産のときだけ法律婚して再び事実婚に戻って参りました。
って書き出したのは12月末。5月になっちゃった…。
赤子の観察と仕事の両立に日々忙殺されています。

前々から「事実婚をしている」と言っているのですが「子どもがいる状態での事実婚はどうやってするの?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。確かに、夫婦2人での事実婚と、子どもがいる状態での事実婚は違う形になってきます。
そして、その方法も「事実婚をしたい」理由によって違ってきます。
なので、うちの場合はこうやってるよ。という体験談を書いてみたいと思います。
4ヵ月間試行錯誤したので長いです。

まず、法律婚でできることは、殆ど事実婚でもできます。

法的な権利・義務

社会保障制度(医療、健康保険、年金など)は事実婚(内縁)でも受給が認められますが、税制上の優遇などは認められません。

婚姻に準ずる形(準婚)生じる義務と権利
1)夫婦の同居・協力扶助義務(民752条)
2)貞操義務、婚姻費用の分担義務(民760条)
3)日常家事債務の連帯責任(民761条)
4)夫婦財産制に関する規定(民762条)
5)内縁不当破棄による損害賠償、内縁解消による財産分与(民768条)
6)遺族補償および遺族補償年金の受給権(労基法79条・労基則42条)
7)優生手術の同意(優生保護法3条)
8)年金・健保・労災など各種受給権(厚生年金保険法3条の2、健康保険法1条の2、労働者災害補償保険法16条の2)※扶養に入れますので、国民年金3号も可能です。
 8)-b 離婚時の厚生年金分割
 (事実婚に係る厚生年金の分割請求の要件について)社会保険庁 (2006年)
9)賃貸借の継承(借地借家法36条)
10)公営住宅の入居(公営住宅法23条の1)


事実婚で認められない権利
1)夫婦同一姓名
2)子の嫡出性の推定 ※つまり、全員非嫡出子になります。
3)婚姻による成年
4)夫婦間の契約取消権
5)配偶者の相続権 ※ただし遺言によって贈与することはできます
6)税金の配偶者控除

上記はこちらのページから引用しています。
→http://www.h6.dion.ne.jp/~pnest/wedding/jijitsukon.html


表にしてみました。
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(表の作成はid:salucoroによるもの。id:salucoroの責任において確認できたもののみ、平成27年時点で法律が改正されているものは修正しています)
つまり、事実婚でもお互いが困ったときは助けないといけないし、浮気しちゃダメだし、浮気したら慰謝料もらえるし、経済的DVとかもしちゃダメだし、公営住宅にも一緒に入れる。

あれ? 私は扶養もされない、税金も別々に支払っていて控除もない。だったらわざわざ名前を変えてまで法律婚するメリットないじゃん?!
と、気が付いたので、私は事実婚派になりました。

なお、表には含まれていませんが事実婚は法律婚に比べて「離婚のハードルが低い」というものがあります。事実婚は両者が合意し、住居を共にすることで成立しているため、片方による解消の意志の表明で法律婚でいうところの離婚が成立します。もちろん、不当な理由で破棄されたほうには損害賠償請求権があるわけですが、合意がなくても「事実婚の解消」は可能です。それをメリットとするか、デメリットとするかは夫婦の関係性にもよると思いますが、うちの場合は「法律による関係の拘束力」にはあまりメリットを感じないので(関係性の悪化、事実上の婚姻関係の破綻があったとしても婚姻を持続させるメリットがない)あまり問題にしていません。

夫婦別姓

私が事実婚をしたいのは主な理由は「夫婦別姓」がよいからです。
夫婦別姓をする理由はひとによって違うと思いますが私は前の結婚と離婚で改姓を2回やり、大変煩わしかったのでもうやりたくない…と思ったのが一番の理由です。
その他にはパートナーとの心理的バランスの取り方や、自分達の場合「法律婚のメリットが少ない」などの理由があります。

改姓についてはこちらのエントリーをどうぞ。

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女性も一緒に働いていて、男性に養われたりしてない場合でも、結婚して改姓すると男性だけが経済的に強いと誤解されてしまうケースが出てくる。
私は前回の結婚で前夫と財布は別、お互い五分五分の折半だったにもかかわらず「旦那さんがいるから、もう仕事はそんなにしなくていいのよね、羨ましい」などと言われることがありました。結婚後に仕事が減ったような気はしていたのですが、実際に納期の厳しい仕事などはオーダーを避けられたりしたようです(離婚後に発覚しました)。
今の生活もパートナーに経済的にサポートされたり、養われたりしていないので、「もう仕事しなくていい」という誤解をされたくない…という気持ちもあって事実婚を選びました。
「私はそんなこと思わない」という人も「私は結婚して働いてるけどそんなこと言われたことない」とか、そういうこともあると思うのですが、その辺は各々の個人の環境の違いなどもあると思います。私の場合は会社勤めではない「在宅フリーランス」だったために、そういう誤解が多く生じたと思っています。

母子別姓事実婚

そして。出産です。
事実婚のまま子どもを出産すると、非嫡出子となり自動的に名前が母親の姓と同じなりますが、私は子の姓をパートナーの姓にしようと思っていました。

その場合、2つの方法があります。
1)「出産時だけ法律婚」
2)「父親が認知した後、家裁の許可を得て子の入籍届を出す」
という方法です。
1)の場合は子は嫡出子になりますが、2)の場合は(認知後に法律婚をしなければ)非嫡出子になります。

私は夫婦が2人だけでいる場合は2つの姓で生活していてもよいと思うのですが、子ができて家族が増えた場合は「家族のチーム名」としての統一した姓があるほうが便利だと思っています。
チーム名としてはパートナーの姓を選びました。主な理由は「パートナーの姓のほうがチームのメンバーが多かった」からです。私には「自分の家の家督を継ぐ」といったような特に自分の姓にしたい理由も無かったので、子の名前はパートナーの姓を選択しました。

「嫡出子」「非嫡出子」の問題で言うと、パートナーは前妻との間に子がいます。なので、2)の手続きだと、子が「嫡出子」「非嫡出子」に別れます。
以前は同じ親の子どもであっても「嫡出子」「非嫡出子」では相続権に差があり、「婚外子差別」が問題になっていましたが、2013年に民法の条文に対して違憲判決が下り、同年中に民法改正され、婚外子の相続差別は撤廃されました。

(余談ですが、うちの異母きょうだいは交流があります。)
salucoro-mile.hatenadiary.jp

なので、1)でも2)でも問題はなかったのですが、なんとなく「認知」→「家裁の許可」がめんどくさいかな…と思ったのもあって、1)を選択しました。

1)を選択すると、一時的に自分の姓は変わりますが、一時的であれば改正のデメリットは軽減できます。例えば、金融機関の名義変更はそんなに厳密なものでなく、旧姓のままでも使用できます。
長いこと使っているうちにクレジットカードの更新や新規作成など、旧姓使用できなくなってくる機会が増えてきます。なので、短期間であれば法律婚して戸籍名が変わっても、金融機関の名義変更をしなくても大丈夫なことが多いです。同様に、公共料金の契約の名義変更も、旧姓のまま使用できます(口座やクレジットカードと名前が変わると契約者名もそれに会わせて変更することになります)。

事実婚で出産をするにあたり、事実婚に詳しい行政書士さんに相談をして、自分のプランで問題がないかどうかを確認しました。
入籍をギリギリにすると何かあったときにバタバタしてしまうだろうというのもあって、春に婚姻届を提出し、夏に出産、そして、身辺が落ち着いた12月に離婚届を提出して法的には離婚しました。ペーパー離婚というやつです。元々事実婚したいのだからそもそもペーパー法律婚なんですけど。

母子別姓を気にする人が多いのですが、そもそも私は社会的には「水谷さるころ」で、成長すれば子は「母は仕事するときの名前がある」と理解すると思うので、母子別姓に関して子になにか影響があるとは思っていません。私は実生活の大部分でも「さるころ」として呼ばれて生活しているので「名前のアイデンティティ」に関してはかなり特殊だと思います。子どもが母親の名前が別姓だからといって混乱する可能性は、あまりないのではないかと思っています。(※5年後である2020年追記/子どもは6歳になってますが母親の名前が「さるころ」と本名がある事も何もかも基本理解しており疑問に思っていません)

区役所での手続き

クリスマスイブにパートナーと2人揃って区役所へ。クリスマスは婚姻届を出すカップルが多いそうで、窓口は混んでいました(うちは東京都渋谷区なので、これらは全て渋谷区のケースです)。
我々は離婚届の提出です。
日本は離婚した両親の共同親権はないので子どもの籍はパートナー、子の親権は私にしました。
行政書士さんから、籍と親権が片方にあると事実婚の解消のときに籍も親権もないほうが不利になるし、母子別姓になるので子ども名義の銀行口座の開設やパスポートの申請をしたりするのに、母親が親権者であるほうがよいというアドバイスをされ、そのようにしました。

そして離婚をした後、住民票の記載を「妻(未届)」にできるかどうかを確認しました。
本来「妻(未届)」は「結婚予定」の世帯に使われる物なので、基本的には離婚後は「同居人」の扱いになるとのこと。しかし、希望すれば「妻(未届)」にしてもらえるということでした。
「同居人」でも「妻(未届)」でも法的に何か扱いが違うわけではないのですが、「妻(未届)」のほうが婚姻関係であるのが明らかなので、そちらを選択しました。
ただ、役所の扱いとしてはイレギュラーなものなので区長への手紙のような「申出書」を書かされました。
これはどこの区でもやっているのか不明なのですが、住民票の記載は窓口の担当者の責任で表記を変えることができるらしく、手続きとしては担当者が「私がこうしました」というような「職権記載申出書」という書類と、本人達の「こういう事情で記載を変えて貰いました」という申出書がセットでした。
そしてこの記載をするにあたり再婚や事実婚の解消の予定はないかと確認されました。ころころとすぐ記載を変えるわけにはいかないようです。

「夫婦別姓を希望して事実婚をしています」というような内容と「しばらく婚姻届を出す予定はありません」という内容を書いて夫婦2人の署名をしました(夫婦2人の署名は必須です)。

その後、担当が違うので念のため保育課等へ確認へ行って下さいと言われたので、待ち時間にパートナーに行ってきてもらいました。
法的に離婚し、親権者は私になるものの「同居しているパートナーがいる」場合はもちろん「母子家庭」の扱いにはなりません。

【誤解されがちなポイント/法的に離婚しても、母子家庭にはなりません】
「事実婚をしている」というと「母子家庭のルールが適応されて行政サービスが有利に受けられるのでは?」と聞かれることがあります。
しかし、そんなに行政サービスというのは簡単なものではありません。行政サービスは「実態に基づいて」施行されます。
我が家は母子家庭の控除や助成を受ける必要はないのですが、事実婚によって何か行政サービスが変わることがあるかどうかを確認しました。世帯が一緒であれば事実婚と法律婚で変わることはありませんでした。
ちなみに同居はもちろん、離婚後、母子の家庭に父親が通っているという場合も母子家庭の助成は受けられないそうです。

世の中には認可保育園に子を入れるために、書面上離婚する人もいる…と聞くのですが、実際には夫婦の住民票も分けなければならないので、別に部屋を借りるコストもかかるだろうし、認可に入った後も通い婚や同居がバレたら問題になるので、正直そのやり方はメリット少ないのでは…? と思います(聞いた話によると、そういった不正が発覚するのは周囲からのタレ込みが多いそうです)。
「事実婚だと保活が有利なのでは? 母子家庭ポイントがつくでしょう?」と保活中に言われたのですが、事実婚は行政サービス上は法律婚と同じですので、優位にはなりません。

なお、うちは周囲に告知していないだけで、保活中は法律婚していました。
保活を頑張り、無事に認可保育園から入園の内定をもらうことができました。認可保育園の申請は11月、内定が出たのは2月。すでに事実婚になっていましたが、それが問題になったり確認されたりということはありませんでした。

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母子別姓で子の代理人業務

「母子別姓」で困りそうなことの一つに「子の代理人としての業務」がスムーズにいくかどうか、ということがありました。身近なケースでは「銀行口座の開設」と「パスポートの取得」などです。
すでに子の銀行口座を開設したので書いておきます。結果からいうと、問題無くできました。
「事実婚で母子別姓である」ことを告げて、銀行口座を開設をお願いしました。
自分と子の健康保険証と、親子関係を証明する書類として「母子手帳」を使いました。
窓口へ行く前にこちらのページを参照して行きました。
www.faq.mizuhobank.co.jp
戸籍謄本や住民票など、役所へ取りに行かなければならない書類無しでも無事に銀行口座を開設できました。
次に子のパスポート取得をしたらまた追記したいと思います。

保険・死亡後

我々は現状「共有財産を持たない」という約束をしています。そしてお互いの死後相続もしない予定です。現在は子どもがいるので、子どもが相続します。そして未成年のうちは管理は後見人(残された親)がするので、現時点では相続財産もそれほど大きくならなさそうだし、問題がないと考えています。
しかし、お互いの死後にはお金がかかるはずなので、保険には加入しました。取り急ぎ、都民共済に加入しましたので、以下の手続きは都民共済のものになります。
死亡保険金の受取人をお互いにしたのですが「同居一年以上」であれば「内縁」で受取人をお互いに指定することができます(1度法律婚した後、事実婚になった場合は「同居一年以上」でなくてもよいそうです)。ただ、戸籍・住民票・印鑑登録が必要です。問い合わせをした後、専用の書類が送られてきたので、それに明記し、その他の必要書類をそろえて送り返しました。
お互いが死んだらお互いの喪主になって葬儀を執り行うと決めています。

【誤解されがちなポイント/事実婚の夫婦は親戚付き合いをしない?】
なぜか、事実婚だというと「親戚付き合いをしなくていいのね」と思う人がいるようです。「事実婚」か「法律婚」なのかは親戚付き合いに、基本的には関係ないと思います。法律婚していても、親戚付き合いをしない人もいるでしょう。
うちの場合はどちらの家の家族、親戚とも通常の付き合いがあります。親戚、家族の協力体制というのは、日頃のお付き合いによって形成されるものなので、法律婚してるかどうかは、全く関係がないと思います。

選択的夫婦別姓制度

私は現状の「法律婚をしない事実婚」で基本的に困っていません。
私は「選択的夫婦別姓制度」は賛成派なのですが、現状の事実婚であまり困ってないので、選択的夫婦別姓制度が実現しても法律婚するかはわからないです。自分が使いたいから賛成してるのではなくて、共有財産を持っている事実婚の方などは不利なので、早々に法整備されるといいなと思っています。
(自分が別姓婚を希望するまで知らなかったのですが)現状、日本において国際結婚をした夫婦は(自分から氏の変更をしなければ)「夫婦別姓」です。なので、すでに国内に別姓の夫婦は存在するわけですから、選択できるようになっても問題がないと思っています。

【誤解されがちなポイント/重婚的内縁との違い】
このブログにおいて「ほぼ法律婚をしているのと同じ=事実婚」としている状態は「住民票を一緒にする」ことで受けられる行政サービスが多いです。
法律婚をしている相手がいる人とは、住民票を一緒にすることができません。

事実婚というのは基本的に「内縁」の関係です。
「内縁」という言葉によくないイメージを持っている方がいるようなのですが、おそらくそれは「重婚的内縁関係」のイメージが強いからだと思います。法律婚してる相手がいる場合のことです。しかし「内縁」と「重婚的内縁関係」は違います。
「重婚的内縁関係」にはいわゆる「お妾さん」といったものや、DVや執拗なストーキングなどを受けて離婚ができない人が相手から逃げて、別にパートナーを作るというようなものなどがあります。
「内縁(事実婚)」であれば、ほとんど法律婚と同じように扱われますが、「重婚的内縁関係」は法律的には圧倒的に弱いです。場合によっては法律婚の配偶者に慰謝料を請求されたりしますし、関係の解消やパートナーが亡くなった場合も、基本的に法律婚の配偶者に全ての采配を握られてしまうので社会的にも非常に弱い立場です。
ただ、住民票を一緒にすると誰かを「世帯主」に選ばなければならず(認可保育園の請求や、健康保険料の請求などは世帯主にまとめて送られます)、その状態がフェアではないということで住民票を一緒にしていない事実婚のケースもあります。なので「事実婚=世帯を一緒にしている」と定義されているわけではありません。世帯が一緒だとより「事実婚している」と認められやすいということです。
「事実婚」という言葉は「法律婚はしていないが、法律婚していると近しい生活を送っている」を表す言葉なので、様々なケースを含みます。なのでたまに「重婚的内縁関係」に関しても「同居している」というところで「事実婚」という言葉を使うケースもみかけるのですが、できれば「重婚的内縁関係」と「事実婚」は区別して認識して欲しいと思っています。

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長くなりましたが、以上が私の「事実婚」の現時点での体験談です。
所有財産や心境の変化その他、この先に変わっていくことがあれば、その時の条件に合わせて話合いをし、関係を見直しお互いが納得する形に変更する可能性もあります。
これからも何か事実婚にまつわる出来事があればブログに綴りたいと思います。

追記:子のパスポート取って海外旅行しました。
salucoro.hatenablog.com

追加情報:医療関係(2017年時点での一個人の体験談)
パートナーが入院する際に「家族の最終同意」が必要になりましたが、事実婚でも問題なく説明&サインができました(事実婚であることは、全然問題になりませんでした)。
子が手術を受ける際に「母親と別姓であること」について病院から「どういった事情でしょうか」と質問を受けましたが「別姓希望で事実婚です」と説明したら問題ありませんでした。