The Changing Train 〜ちょっと強引で怪奇な物語〜
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「何度言えば分かるんだ!!」
いつものように所長の声が響き渡る。
原因は僕、大野賢翔が連絡ミスをしてしまい大事な契約が取り消しになってしまったからだ。
「本当にすみません。次は失敗が無いように頑張ります。」
「全く。木村君を見てみなさい。真面目にコツコツと仕事をしているじゃないか!」
僕はよく、同僚で保育園からの幼馴染の木村晃と比べられる。木村は美人の奥さんと結婚し、可愛い子供が2人いて、仕事の評価も上々で僕とは真逆な生活を送っている。


そんな木村とは、所長に怒られた夜は行きつけの居酒屋「飛翔苑」へ行く。
今日も所長にど叱られされたので、飛翔苑へ行った。
「いらっしゃい!」
店主の明るい大きな声がした。土曜の夜のためか、いつもより客が多い感じがする。いつもの席に座ってメニュー表を見た。
「今日はいっぱい怒られたし、飲んじゃいますか!」
ビール瓶の蓋を栓抜きで開け、木村のコップにビールを注ぎながら言った。
「こんな遅くに飲んで、奥さんに怒られないのか?」
「大丈夫だよ。」
「優しい奥さんだな。」
木村はビール瓶を持ち、僕のコップに注ごうとしていた。僕はコップを傾け、注いでもらった。その最中、木村が口を開いた。
「それより、賢翔のほうはどうなんだよ。彼女さん、家で待ってるんじゃないのか?」
僕には結婚を考えて5年間付き合っている田口彩という彼女がいる。
「大丈夫だよ。彩も夜のバイトがあって今の時間、家にいないってメール来たから。」
「ならいいか。じゃ。」
「乾杯!」
並々にビールが入ったコップを軽くぶつけた。カラン。といういい音がした。ビールを一気に飲み干し、晃の方を見た。そのとき、晃の背景に見馴れた女性が座っていることに気づく。男と一緒だった。
体が動かなくなった。
「おい、賢翔。大丈夫か?なに、固まってんだよ!」
「か、彼女がいる。」
「彼女?ここでバイトしてんのか?」
「違う、そうじゃない。」
「じゃあどういうことだよ」
「あれ。」
そう言いながら、彩を指差した。それと同時に、彩は僕の存在に気付き慌て始める。そして、彼を置いて店を出て行く。
「追いかけなくていいのか?」
「そ、そうだな。」
「あとは俺に任せて、早く行け!」
「ごめん、よろしく」
僕は彩を追いかけた。しかし、彩は元陸上部で、インターハイで優勝したことがあるほど俊足で、追いつけるはずもなかった。

来た道を戻る途中、携帯が鳴った。
メールが1通。
「さようなら。    彩より」

「なんだよそれ。」
壁を思いっきり叩いた。手がビリビリと痺れた。
「賢翔?」
後ろから、木村の声が聞こえた。
「もう、こんな人生...」
「賢翔?なに言ってるんだよ!?とりあえず、戻ろう。」

二人は飛翔苑に戻った。彩がいたところには、別のお客さんが座っていた。
「なにがあったのか教えてくれよ。」
なにが起こっているのか分からず、なにも喋れなかった。その代わりに、メールを見せた。
「・・・。」
沈黙が続く。木村も突然のことでなんと言えばいいのか分からなかったのだろう。
「ふられたよ。」
「・・・。」

二人の横に店主がやって来た。
「お前さん、大丈夫か?なにが起こったかは聞かんが、これ。」
店主はお酒の入った一升瓶を持っていた。
「そんな、僕は大丈夫です。」
「いやいや、いつも来てもらっているお礼でもあるから。」
店主は机の上に一升瓶を置いた。
「ありがとうございます。」

その後、木村は次の日に重要な会議があったため酒は控えめにしていたが、僕は何も重要なことはなかったため一升瓶の半分以上を飲み干した。

ベロベロに酔った。木村に支えられ、なんとか駅まで辿り着いた。最終電車が近づいていため、駅には数人しかいなかった。
フラフラになりながら、電車に乗車。座席に座ると、深い眠りについた。

  目がさめると、一人の車掌が立っていた。
「ようこそお乗りくださいました。この電車はあなたの人生を “かえる” ことができる電車です。」
「どういうことですか?」
「あなた、今の人生をかえたいと思っていますよね。」
「そうですけど... なんでそれを?」
「それは、企業秘密です。」
「はぁ...」

車掌は次に、ある一枚のアンケート用紙を渡した。そこにはたった一つ、「何を “かえたい” ですか?」という質問があった。
「それでは、私が戻ってくる間に書き終えておいてください。」
上手くいかない人生を “かえる” チャンスだと思い、ペンをはしらせた。

5つの変えたいことを書いた。
扉が開き、車掌が入ってきた。
「書き終わりましたか?」
「はい。」
「それでは、快適な旅をお過ごしください。」
「旅?旅ってなんだよ。」
車掌は見向きもせず、別の車両に行ってしまった。扉が閉まると同時に、携帯が鳴った。1通のメールが届いた。


しかし、ただの迷惑メールだった。
「なんだよ。何も変わっていないじゃないか。」
呆れた。携帯を座席に落とし、その近くに座った。窓の外は深夜の夜景があった。

数分後、ある駅に到着。一人の女性がが乗車してきた。