ロマンノカケラ

一作目というのはやはり、色々と丁寧に描かれていることを再認識しました。
総集編的な作品ですので、いきなりな展開に感じる部分はありますが
発進、波動砲発射などはその流れがその後のシリーズより丁寧で
（これは仕方がないでしょうねぇ～、ずっと全部見せていられないでしょうから＾＾;）
自分の気持ちも、その展開にそってだんだんと高揚していくというか。
発進、初めての波動砲発射、α星での危機を突破するところ、七色星団、
そしてガミラス本土決戦…と何度も、ゾクゾクしたというか鳥肌がたつような感覚がありました。
テンポもいいですよねぇ、場面場面の音楽も絶妙な印象です。

やっぱり、「ヤマト」っていいねぇ～！！

そしてやはりこの場面はこの作品の中で最も重要ではないかと感じたのがガミラス本土決戦決着後です。
実際に戦わないなんてことが簡単に出来るとは思えません。
それでも自分たちがひとつの星を滅ぼしてしまったという現実を見て
古代くんは敵にも自分達と同じように、仲間や家族がいて幸せに暮らしたいという気持ちがあることに思い至り
そしてその幸せを消し去ってしまった罪を自覚し、そんな絶望を背負っても生きていかなければならない現実を
受け入れていくのだと思います、ユキも同じでしょう。
上映当時（実際に観たのはその後のTVでですが）、私は子供でした。
戦うことを否定するヒーローにただ感動していた気がしますが
大人になった今は、古代くんの言う事が非常に実現困難な理想であることを感じます。
あくまでも私個人の考えですが、人間は誰かを守るより誰かを責める方が楽で
普段はそれを理性で抑えているけれど、何かでその抑えがきかなくなれば、誹謗中傷したり攻撃したりとなる。
哀しいことですが人ってそういう本質を持った生き物だと思っています。
だから古代くんの言葉は正しいけれど実現が難しい、
でもだからこそ、ずっとずっと忘れてはならない場面、忘れてはならない言葉なのだろうなぁと。

感想が重い感じになってしまいましたね、話題を古代くんとユキにしましょう。
TVシリーズと違って二人のエピソードと言えば写真撮影ぐらいしかありませんが
この時、既にユキは古代くんとの未来を思い描いていたでしょう。
古代くんはまったく分かっちゃいないようでしたが。まぁ、分かったら古代くんじゃないですね(笑)
それが地球が近づいてきた頃には沖田艦長が二人に「君たちの結婚式の晴れ姿を…」
と言ってますのでこの時点では二人の気持ちは固まって沖田艦長に報告済だったのかな？
なんて思いますが、それなら彼奴はいつ、どんなプロポーズをしたのでしょうねぇ。
まぁ、そりゃどうでもいいか（←いいのか？）
長い航海の中で徐々に二人の気持ちは近づいていき、決定的になったのはガミラスでのことだったかもしれませんね。
ラストで寄り添う二人の姿が初々しくて大好きです。
ガミラスでのことを忘れたわけではないでしょう、忘れられるはずもありませんね。
でもそれを一緒に背負って生きていくのだろうなぁ、二人の幼い笑顔の裏にそんな決意もあると思っています。

それから、スターシャがものすごくキレイだなぁ…と思いました。
スターシャのまわりだけ、何か空気が違う感じ。あんなでしたっけ？あれが４Ｋの力かしら？
スターシャもユキも美しい女性ですし、二人は似ているけれど、そういうところで女王と普通の女の子の違いを感じるというか。
でもまぁ、そんなスターシャも守さんの前ではひとりの女性ですよね(*^^*)


今の時代になって、またヤマトを映画館で観る機会を得ることが出来るとは思っていませんでした。
とてもとても有難いことです。
この度の上映の実現に関わった皆さま、本当に有難うございました。

「さらば」も、もちろん行くよ～！！

-- 続きを閉じる --

第１位☆新たなる旅立ち
前半の英雄の丘での場面ですねぇ。
結婚延期の話をする時、チラッとユキに視線を送るんですよねぇ…
その視線の色っぽさったら…きゃっ(*/ω＼*)　なのでございます。

「お前ら、何かあったな…」

と思わずにはいられない。
仲間たちは鋭い。彼らが古代くんのあの視線に気づかないとは思えないのに
それを彼らの前でやっちまうとは、「大胆よのぉ…古代進」なのでした。

第２位☆ヤマトⅢ最終回「ヤマト あの太陽を撃て！」
これ、説明いらないですよね(笑)
まぁ、でも一応（おいっ！）太陽を撃つ時（２度目ね）、
皆がいるのにユキを呼んであんな要求…
古代くん、ここはヤマトだってばっ！


第３位☆ヤマトⅢ第20話 「幻の惑星」
序盤、ファンタムを目の前にしているところですねぇ…
ようやく第二の地球となるであろう（ならなかったけど）星を見つけたという
思いからなのでしょうが、ちゃっかりユキの肩を抱いております。
しかも、しっかり見つめちゃって…

「艦長、誰も見てないと油断してるでしょ？絶対誰か見てるから！」

と教えてあげたい…
あの時、第一艦橋には結構、人がいましたよねぇ(^▽^;)


う～ん、久々の企画の為、何か調子出ないな(^^;)
皆さんにとっての古代くんの“大胆スイッチ”入った瞬間はいつでしょう？
ちなみに私は今回、「人前」という条件で選んでおります。
二人きりなら、もっと大胆だよねぇ～、古代くん💕

-- 続きを閉じる --

2月14日…つまりバレンタインデーの18：00過ぎ。
浮かない顔で紙袋を抱えた古代進が司令本部を出ようとしていた。

「進」

背後からかけられたその声に古代が足を止める。今、この世の中で彼を「進」と呼ぶ者はただ一人。
確かめなくても声の主が誰なのかは分かる、兄の守だ。古代は振り返ることもせず答えた。

「何？」

古代をよく知らない者であれば震え上がるであろう感情のない冷たい声。
だが呼び止めた守はそんなことには動じない。楽しそうに近づいて古代の前に回り込むと言った。

「おぉ～、随分もらったなぁ。さすが俺の弟だな」
「……」

兄の顔を見た途端、古代の表情は不機嫌になった。
気づいているのかいないのか、守は古代の持つ紙袋をのぞき込みながら言う。
それは、そこそこの数のチョコレート。

「しっかし、これどうするんだ？食いきれないだろ？」
「……」
「しかも、持って帰るのか？ユキ…大丈夫か？」
「……」

古代はずっと無言だが、守の口から出た「ユキ」の名に、こめかみがピクッと反応を見せる。

「俺は独り身だからいいが、お前がこれ持って帰ったら義理とは言えユキの機嫌が悪くなるんじゃないか？」

「俺はいい」というのは守もそこそこの数のチョコレートをもらったということであろう。
しかし、古代は兄とバレンタインチョコの数を張り合うつもりはないので、それはどうでもいい。
古代のこめかみがわずかに反応を見せた理由はそれではなく、もちろん「ユキ」だ。

「ユキはそんな女じゃないから」

ようやく口を開いた古代はほぼ棒読みで答える。
確かにユキは古代がバレンタインに自分以外の女性からチョコレートをもらおうと不機嫌になったりはしないだろう。
それはもちろん古代がユキ以外の女性を相手にはしないからでもあるが、ユキはそういう懐の深い女性なのだ。

「そうだなぁ、よく出来た子だからなぁ、そんなことで不機嫌になるわけないな。
今日は俺にもちゃんとチョコ用意してくれててな。やっぱり嬉しいよな、かわいい義妹だからな」
「……」

守のユキ語りに再び古代は無言になった。

「あぁ、帰るところ呼び止めて悪かったな、早く帰ってやれよ」

そう言うと守は自分はまだ仕事が残っているからと、持ち場に戻っていった。
立ち尽くす古代。

「何だよ、それも義理じゃないか」

溜息をつき、袋の中のチョコレートを見つめる。

「こんなの、いくらもらったって意味ねぇよ…」

ユキが守に渡したチョコは当然義理であることはよく分かっている。
だが、実はその義理チョコでさえ古代はユキからもらえていない。
今年だけではなく、18歳で出会った初めてのバレンタインの時から。
18歳の時のバレンタインは苦い思い出だ。
ユキは第一艦橋の皆にチョコを配ったが古代の分だけなかった。
タイミングが悪くてもらえなかったわけではなく、最初から古代の分は用意されていなかった。
ユキにしてみれば、古代は受け取らないだろうと気をつかい用意しなかったようなのだが
ショックは大きかった。その次は多忙でバレンタインに地上にいることがなかったが、
今年はまだ気をつかっているのか？一緒に暮らしているのに、もらえていない。
帰宅すれば用意されているのかもしれないが、初回のことがあるせいか、すっかり自信をなくしていた。

「今年もなしかなぁ…」

古代は力なく呟くと、重い足取りで司令部を後にした。


*****************************************

「はい、これ」

帰宅して夕食をすませた古代はユキから可愛らしい包装紙に包まれた小さな箱を手渡された。

「？」

きょとんとしている古代をユキが上目遣いでみつめ、すまなそうに言う。

「本当は手作りしたかったのだけれど、時間がなくて…買ったものでごめんなさい」

何が何だか分からない表情でユキから受け取った箱の包装をとき開ける古代。
そこにはいかにも「本命」というオシャレなチョコレートが……

「えっ？な、なんで？」

古代は驚きを隠せない。そんな古代の反応にユキもまた驚きを隠せなかった。

「何でって…今日、バレンタインだから」
「だ、だって今まで一度もくれたことなかったし、急に…どうして？」
「今までって…去年は古代くん、地上にいなかったからよ」
「いや、でも最初の時だって…」
「最初？……あっ！」

何かを思い出したのであろう、ユキの頬が恥ずかしそうに赤く染まった。

「あ、あれは…古代くんが私からのチョコは迷惑だって言うのを聞いちゃって…」
「えっ？…あーっ！」
「思い出した？」
「う、うん、でもあの時は俺の分はもともと…」
「いやだっ、そんな意地悪しないわよ！」
「へっ？」
「古代くんの分だってちゃんと用意していたけれど、あんなこと言われたら出しづらくなっちゃって…」

自分だけがユキからチョコレートをもらえなかったと思っていた18歳のバレンタイン。
実は、自分の不用意な一言が原因で招いたことだったと初めて知った古代。
しかしそうなると、当然、そのチョコがどうなったのかという疑問がわく。

「そ、そうなの？それで、そのチョコ…どうしたんだ？」
「えっ？自分で食べたわよ、泣きながら」

あっさり答えるユキ。だが「泣きながら」と聞き、古代は頭を抱える。
部屋は明るいが、彼の目の前は真っ暗だ。
これまで何度となくユキを泣かせてきた自覚はあるが、泣きながらチョコを食べるユキを想像すると、
どうしようもなく悪いことをしてしまったという罪の意識がわいてくる。
かなり意地っ張りな部分もある男だが悪いと思うと素直に謝るものこの男。

「ごめん！」

何年越しの謝罪であろうか。しかし心底悪かったと思っている古代は真剣に頭を下げている。
そんな古代の姿を見て、ユキはくすくすと笑った。

「もういいわよ、そんな昔のこと。それとも、今でも私からのチョコはいらない？」
「そ、そんなことあるわけないだろ！あの時だって今だって、ユキからのチョコは欲しいよ！」

軽い疑いをかけられたような古代は、がばっと頭を上げると勢いで本音を叫んだ。
相変らず「好き」とか「愛している」とかは言わないが、立派な愛の告白である。
照れ屋の彼が必死に自分への想いを叫んでいることが、それが無自覚の叫びであってもユキは嬉しかった。

「だったら、いいじゃない。私はもう気にしていないし。
それより、ねっ、食べてみて！このチョコレート人気№１なのよ！」
「う、うん」

ユキの勢いに圧され、古代はチョコをひとつつまむと口に運んだ。
口の中いっぱいにチョコの甘さが広がっていく。

「うん、旨い！」

古代がそうひとこと言えば、ユキは嬉しそうに瞳を輝かせて古代を見つめている。
出会ってから三度目のバレンタイン。
一度目は互いの気持ちがすれ違い、ほろ苦いものになったけれど、
それは大人になりきれていなかった当時の懐かしい思い出。
古代はそっとユキの肩を抱くとつぶやいた。

「子供だったなぁ、あの頃」

しみじみとする古代だったが、ユキはそうでもないように

「古代くんはね」

と返す。自分だけ子ども扱いされた古代はちょっと不貞腐れた様子だ。
だがユキは古代のご機嫌を取ろうとはせず、
さらにあおるように「ほら、そういうところ！」と言ってコロコロと笑っている。
そんなユキを恨めしそうに見ながら、古代はもう一粒、チョコを口へ運んだ。

再び口の中に広がるチョコの甘さに古代の頬はゆるみそうになるが
ユキの視線に気づくと再び仏頂面になる。無理しているのは見え見えだ。

最愛のひとから初めて贈られたバレンタインチョコは
彼の心に新しい思い出を残したようだ。

-- 続きを閉じる --

最近は大分変ってきたかとは思いますが
コロナ渦となって会いたい人に思うように会えないということが続いていたかと思います。
そんな中で思いがけず、会えた人がいたのですが、
そういう時の喜びって大きくて深いものだなぁ…と感じました。

一緒に過ごした時間は短くても、楽しくて、嬉しくて…ね。
それを古代くんとユキで書いてみました。
この二人もね…一緒に過ごせる時間が多いとは言えないと思います。
だからこそ、短い間でも一緒にいられる時を大切にしたのではないかなと考えます。
付き合い始めてまだ間もない、互いを思いやるあまり遠慮がちになっている、
そんな二人が少しでも表現出来ていたらいいなぁと感じます。

こういうお話を書こう、書こうとは思っていたのですがなかなか実現しなくて。
でもtwitterのフォロワーさんが描いた優しい眼差しの古代くんを見たら
急に、書きたい～！って意欲がわいてきました。感謝・感謝です。

またね、少しずつでも書いていけたらなぁ～と思っています。
激しくスローペースなので図々しいお願いですが、またお越しいただけたら嬉しいです。

-- 続きを閉じる --

【つかの間の中の永遠】

連邦中央病院。宇宙戦艦ヤマト元乗組員の森ユキは、ヤマト乗艦前の職場であるこの病院に復帰していた。
ヤマトがイスカンダルからコスモクリーナーDを受け取り帰還してから既に７ヵ月が経過していた。

病院内の廊下を歩きながら、ふと窓の外に目を向けたユキはその場で足を止める。
春の気配が微かに感じられる風景。しかしユキにとって春はまだまだ先…
陽が伸びても、吹く風が暖かくなっても、桜が咲いても…肝心のあの人がいなければ春はこない。

あの人…それはかつての同僚、今は恋人同士…のはずの古代進。
はず…というのは、最近のユキは日に日に“古代進の恋人”である自信を失っているからだ。
古代は今、ヤマトを旗艦とする太陽系外周艦隊第３護衛隊で一年間の辺境警備任務に就いている。
全く連絡が取れないわけではないが、古代から連絡が入ることはほとんどなく
ユキからメッセージを送っても返ってくる答えは

「おはよう」
「おやすみ」
「うん」
「そうだね」
「いいよ」

と、こんな感じ。ほぼ単語のみだ。
古代はもともとあまり“お喋り”が得意なわけではない。文字にするのはもっと得意ではない。
それを理解しているユキではあるが、あまりの言葉の少なさに落ち込んでしまうのだ。
しかもさらに追い打ちをかけるようなこともあった。

一年間の任務とは言え、実はずっと行ったきりなわけではない。
以前、一時帰還していたことがあった。しかしユキは古代に一目会うどころか連絡すらもらえていない。
ではなぜ、ユキは古代が一時帰還していることを知っているのか？
聞いたのだ。島に、南部に、太田に、相原。イスカンダルへの航海をともにした仲間たちに。
そして決まりごとのように言われる。「えっ？知らなかったの？」と。
仲間たちは古代の一時帰還を知っていて、恋人であるはずの自分には連絡がないという事実は
ユキが自信を失うのに十分な条件だった。

「はぁぁぁぁ…」

ユキは深く長い溜息をつく。そしてポツリと呟いた。

「私って、古代くんの何なのかしら？」



その日の退勤時間を少しまわった時だった。
別に急いで帰る理由もなければ、早く帰ったところで古代に会えるわけでもない。
佐渡先生の手伝いをすることも考えたが佐渡は既に一杯始めてしまっていた。
結局帰ることにしたユキだったが憂鬱な気持ちから更衣室でグダグダと着替えていると、
ユキの携帯端末がメッセージの着信を告げる。

「？」

誰だろう？そう思って端末を手にとって確かめると…

「えっ？う、うそ！」

メッセージの送信元を確認したユキは大慌てで着替えを済ますと更衣室を飛び出して行った。



地球防衛軍総司令本部前。
息をきらしたユキが到着したのは数分前。まだ心も息も落ち着かない状態のまま、
正面玄関の様子をうかがった後、鞄から携帯端末を取り出し、もう一度メッセージを確認する。

『今、司令部にいる。用事が済んだら少し時間が取れるから会えるかな？』

突然の、予想もしていなかった古代からのメッセージ。
中央病院を飛び出して司令部まで急いでやって来たユキは古代を待つわずかな間も、
髪や服装を気にしたりしてそわそわしている。早く出てきてほしいというユキの願いか念力が通じたのか？
ほどなくして古代が姿を見せた。ユキはぱぁっと花が咲いたような笑顔になり、
そのユキの笑顔を見た古代ははにかむように微笑む。
「おかえりなさい」「ただいま」そんな挨拶を交わしたあと、歩き始めると古代は告げた。

「ごめん、本当に少ししか時間がないんだ」
「少しって、どれくらい？」

久しぶりに会えた喜びが大きいのかユキは無邪気に問い返す。

「ここから、ドックまで歩く時間」
「ドック？」
「明日の早朝、出航なんだ」
「そんなすぐ…」

ドックまでではせいぜい20分弱と言ったところか。
せっかく会えてもまたすぐバイバイかと落胆したような様子のユキに古代も申し訳なさそうに言う。

「これでもいつもよりは時間がある方だから、少しでも会えればと思ったんだけど…
かえって迷惑だったかな？」

古代にそう言われてユキは立ち止まり固まってしまった。
そんなユキを振り返り、心配そうに彼女の顔をのぞき込む古代。
古代に見つめられてはっとしたユキは懸命に首を横に振る。

「そんなことないわ、すごく嬉しい」

そう言って笑顔を古代にむけた。
それを見て古代もほっとしたように笑顔を見せるとそっとユキの手をにぎり、そのまま歩き始めた。
20分はあっと言う間だった。その間、二人は他愛のない話をしながら歩いた。
二人にとって短くても嬉しいひと時だった。
ドックの入り口近くまで来て二人は立ち止まる。これから再び離れ離れの日々を過ごすのだ。
互いに黙ったまま、どちらからも別れの言葉を切り出せないでいたが、ユキは決意したように古代に声をかけた。

「古代くん、お願いがあるの」
「ん？」

古代がユキを見れば、その表情は思いつめたような、真剣なものだった。
ユキの真剣さが伝わったのだろう、古代の顔も自然に引き締まる。

「時間がなくて会えない時は我慢するわ。でも連絡はしてほしいの」
「えっ？」
「皆から、古代くんが帰ってきていたって聞いたわ。寂しかった。会えないことも、知らなかったことも。
古代くんにしてみたら会う時間がないからあえて連絡しなかったのは分かったし、その気遣いは嬉しいことだけど…」

少しでも会えればと思ったと古代は言った。
古代はこれまでユキのことを忘れていたのではなく、まともに会えないのに連絡してもがっかりさせると
気をつかっていたのだと知ったユキは、古代と会えなかった時に感じた寂しさとその意味を言葉にした。
そんなユキの願いを受けた古代は答える。

「わかった…でももうその必要もないと思う」
「？」
「次は正式な帰還だから」
「えっ？」

それはもう少し、もう少しだけ待てば古代は帰ってくるということだった。
そして今よりももっともっと一緒にいることが出来る未来がもうすぐそこまできているのだということだ。
ユキの顔が今日一番明るく輝いた。

「今日はありがとう、嬉しかった」

素直な気持ちそのままの言葉。
互いに多忙な二人。普通の恋人たちのようにはいかないこともある。
だが会っている時間の長さの問題ではない。
ほんの数十分でも互いの為に時間を割き同じ時を過ごした。
つかの間の再会だったが、この時間の中で伝え合った想いはきっと永遠……
古代は優しさが溢れる瞳でユキを見つめながら頷くと

「じゃ、行ってくる。送れなくてごめん」

そう言って、ユキとつないだ手をゆっくりとほどいた。
少しだけ…名残惜しそうにユキの手が古代の手を追いかける。
だが、無意識に追いかけてしまったその手をユキは健気にあげて、

「ううん、大丈夫。気をつけて、いってらっしゃい」

笑顔で手を振った。
古代も晴れ晴れとした顔でユキに手を振る。

ドックに入る古代の背がだんだんと小さくなっていく。
ユキの瞳から涙が零れた。
それは、ほんの少しの寂しさと大きな喜びの涙だった。

-- 続きを閉じる --