MERRY ROCK PARADE 2021 day1 @ポートメッセなごや 12/18
- 2021/12/21
- 20:50
昨年末に開催が予定されていた冬フェスはCOUNTDOWN JAPANもRADIO CRAZYもコロナの急速な感染拡大にあって直前で中止になってしまった。
そんな中で唯一と言っていいくらいに開催することができた冬フェスが名古屋で開催されている、年末フェスというよりはクリスマスフェスであるMERRY ROCK PARADEである。
昨年無事に開催された実績もあってか、収容人数も今年のフェスでは最大規模となっており、感染対策として参加者には「ワクチン2回の接種証明」か「会場内施設での抗原検査」が義務付けられている。
そのため、名古屋駅からあおなみ線(Zepp Nagoyaの最寄駅もあおなみ線内にある)に乗って30分ほどの金城ふ頭から徒歩ですぐの場所にある、会場のポートメッセなごやに着くと敷地内に検査場があったりするというのはさすがだな…と思うけれど、今年がこのフェス初参加、そもそも年末のフェスはCOUNTDOWN JAPANしか行ったことがないだけに、開場時間(分散入場にするためにそれぞれ時間をズラしている)を過ぎた後に会場に着いても入場するのにこんなに時間がかかるものなのかと思うのは、開場時間後ならすぐに入場することができるCDJのホスピタリティに慣れ切った身としては少し衝撃でもあった。
なので10時くらいに会場には着いていたのに、入場したのは開演ギリギリの時間とあって、物販を買ったりとか、会場内を見て回るという時間が全くないままでメインステージがある1号館へ。このフェスはもちろん、昨年2月にはcoldrain主催の「BLARE FEST.」もこの会場で開催されているだけに、映像で見ていたあの会場に来たんだなと思えるし、前方エリアは事前抽選制であるが、そのエリアから後の自由席も足元はマス目で区切られたスタンディング形式で、想像以上に客席が広く感じる。トイレに入ったりすると結構年季が入った建物であるということもわかるけれども。
11:00〜 秋山黄色 [BLESS STAGE]
1号館にはステージが横並びで2つあり、最初のライブが行われるのは向かって左側のBLESS STAGE。主催者を交えての諸注意を含めた挨拶的なトークを終えると、ステージサイドのスクリーンに見たかった4文字の漢字が並ぶ。この日のトップバッターにして、今年のMERRY ROCK PARADEの幕開けを告げるのは秋山黄色である。
おなじみのSEが鳴って登場したメンバーのうち、ギターの井手上誠とドラムの片山タカズミという2人はおなじみのメンバーであるが、もう1人は明らかに新顔なのだけれども、一目で誰だかわかるくらいによく知っている人だ。それは赤い公園としての活動を終えた藤本ひかり(ベース)であり、最近はBenthamの辻怜次が務めていたサポートベースはこれからは藤本が務めていくのか、あるいはそれぞれのスケジュールなどの都合によって変わっていくのか。最後にステージに現れた秋山黄色は秋のぴあフェスの時などに比べると少し髪が伸びており、目まではっきりと見ることはできない。
井手上がエフェクティブなギターを鳴らすと、そこにボーカルもエフェクトされた秋山黄色の声が乗る「Caffeine」でスタートするというのは最近のフェスでのお馴染みの立ち上がりであるが、どちらかというとイントロからAメロまではやや穏やかなサウンドと言える曲なのだが、サビで秋山黄色の歌唱もバンドのサウンドも一気に高く飛翔していく。サウンドが激しくなると途端に動きも激しくなる井手上はもちろん、藤本もぴょんぴょん飛び跳ねるようにベースを弾いているし、何よりもタイプ的に絶対に朝に強くないであろう秋山黄色の声もエフェクトを抜きにしても実に伸びやかである。
イントロでのセッション的な演奏も含んでの「アイデンティティ」が始まると、井手上の姿に合わせて観客もリズムに合わせて手拍子をするのが広がっていき、フェスが始まったなという感覚にさせてくれるのだが、人気アニメのタイアップということもあってか、観客はサビでは一斉に腕を上げる。バンドも重いキメを連発する最後のサビの演奏でその観客のリアクションに応える。そうしたライブにおける相互作用が確かに感じられる。やはり秋山黄色はこの規模のステージにふさわしい存在になったんだなということがわかる。
こちらはドラマ主題歌として秋山黄色の存在を世の中に知らしめた「モノローグ」であるが、バラード曲と言っていいようなタイプの曲であるのに、ライブで観るとそのパフォーマンスや鳴らしているサウンドは完全にロックであり、ライブお馴染みの3曲が続いただけで秋山黄色というミュージシャンのサウンドの幅の広さがよくわかる。それはとっ散らかっているような感じは一切ないのは、どれも秋山黄色の記名性の高い歌声で歌われていて、秋山黄色が描いたからこそのメロディだからだ。その歌声がこの天井の高いステージに本当に良く響いている。
このフェスはメインステージでも持ち時間が30分と短い。それだけに秋山黄色が曲間でティッシュで鼻を噛んでいるのを観ると、2年前のロッキンに出演した時のように持ち時間なくなるぞ!とヒヤヒヤしながらも、
「今日がライブ納めっていう人もいたり、新幹線に乗ってきてくれたっていう人もいたり。アーティスト側も色々あるし、この1〜2年は本当に辛いことばかりだったし、No Music, No Lifeって言いながらもアーティストも本当に辛い時は音楽が聴きたくなかったり、やりたくなかったりもする。それでも、音楽を好きな奴がいてくれる限りはこうやって音楽は鳴り止まないから!」
と、MCは本当にこのステージに立つべきアーティストの、コロナ禍以降にもライブを行ってきたアーティストのものであり、実は音楽以外のマルチな芸術の才能を持っている秋山黄色がやっぱり音楽に救われて生きてきた人間であるということを実感させてくれる。
そんなMCの後に演奏されたのは最新曲「ナイトダンサー」であり、そこに込められたメッセージがたった1人であってもこの世界を生き抜いて戦っていくという意思を確かなものにしてくれるし、そんな最新曲すらも新たなメンバーとして新たなグルーヴをバンドにもたらしてくれる藤本が秋山黄色の姉であるかのように頼もしく見える。初めて会った時は10代だった藤本をそんな風に感じることができるのは、辛い経験をした彼女がそれでも音楽を続けることを選んだからだ。サウンド的にはうねりまくる神崎峻とギターロックな辻とのちょうど間くらいというスタイルであるが、どうか、秋山黄色をこれからもよろしくお願いします。
そしてあっという間の最後に秋山黄色がイヤモニを外した剥き出しの状態であの印象的なギターリフを弾き始めたのは「やさぐれカイドー」で、バンドのサウンドはもちろん、秋山黄色のボーカルも最後の最後により獰猛に感情を放出していくと、間奏でステージ前に出てきた秋山黄色はステージ最前部分にある段差に背中を預けて逆立ちのような状態になりながらギターを弾き、さらには春のJAPAN JAM以降の恒例になりつつある、頼むから落ちないでくれと観客をハラハラさせるくらいにステージから身を乗り出すようにしてまでギターを弾くと、
「パンパンって手拍子したら一回演奏止めるから。その時にみんな来年やりたいことを願ってみて。今年出来なかったことたくさんあるでしょ?俺は来年もこうやってみんなと一緒にくだらない音楽をやりたいんだー!」
と叫び、本当に観客に願い事をする時間を設ける。自分は、今年行くことができない場所で秋山黄色のライブが見れたらいいないいないいなって思っていた。この日のようなライブを観ていたら、きっとそれは現実になると思える。
「元気がない時があったら検索してくれ。俺が噂の秋山黄色だー!」
と叫んで間奏を終えると、井手上がステージ袖まで消えてしまうんじゃないかと思うくらいに動き回り飛び跳ねまくりながらギターを弾きまくる。その姿はやはり秋山黄色という名前のバンドそのものだった。
演奏が終わると去り際に側転をしてトップバッターの役割を終えた。今年はZeppにワンマンで立つ姿も観ることができたという意味では、コロナ禍という僕らの足がもがくような状況であっても飛躍の一年だったと言ってもいいはずだ。このわずか30分でも「今日ここまで来て本当に良かったな」と思えるようなライブを見せてくれるのだから、きっと来年はもっといろんな場所で、もっと長い時間ライブをたくさん見れるようになるはず。その未来に用がある。
1.Caffeine
2.アイデンティティ
3.モノローグ
4.ナイトダンサー
5.やさぐれカイドー
11:45〜 Hump Back [NOEL STAGE]
先月の武道館ワンマンもツアーの途中の公演の一つだったということからもわかるが、年末にかけてもガンガンライブをやりまくって生きているHump Backがこのまだ早い時間にNOEL STAGEのトップバッターとして登場。
リハで曲を演奏してからそのままステージにとどまってSEなしで本番へ、というのは持ち時間が短いからかもしれないが、
「大阪Hump Backです。MERRY ROCKおはようございます!」
と林萌々子(ボーカル&ギター)が挨拶すると、最初に演奏されたのは「新しい朝」というフェスでやるには意外な選曲であるが、それはまだ朝と言ってもいい出演時間だからこそできる選曲であるし、このフェス、さらにはいわゆる冬フェスがこうして開催されていることでシーン全体が新しい朝を迎えようとしていることを歌ったものだと言っていいだろうし、この曲の際は歌に寄り添うようなサウンドだからこそ、林のボーカルは本当に伸びやかだ。秋山黄色もそうであったが、ワンマンで武道館を経験したことによって、より一層この規模に立つべきバンドとしての歌を鳴らしている。
そんな意外なオープニングから一気に元気良くバンドの演奏も林のギターソロも鳴り響く「拝啓、少年よ」でのこうしてライブをやれていることの楽しそうな姿は本当にライブをやって生きているというスタンスをバンドがやりたくて仕方なくて選んでいるということがわかるし、何もかもが真っ直ぐなバンドが
「あぁ もう泣かないで
君が思う程に弱くはない」
というフレーズを歌っているのを聞くとやはり泣かないでと歌っているのに涙が出そうになってしまう。
林の歌い出しの歌唱に合わせてぴか(ベース)が踊るように腕を動かすのが見ていて実に楽しくなる「生きて行く」では林が
「ねぇ先生 僕は今 でっかい場所で歌ってます!」
と叫ぶと、ぴかと美咲(ドラム)のハイトーンのコーラスの歌唱もこの広い会場に響き渡る。
「Hump Backはライブハウスで見るのが1番カッコいいんや。今日はここがライブハウスや!」
と言って、そのライブハウスバンドの生き様を見せるかのように演奏された「宣誓」は、武道館や大阪城ホールでもワンマンをやるようになったのは、そうした会場をもライブハウスに変えることができるバンドになったからだろう。だからHump Backのライブはこうした広い会場で見てもライブハウスで見ているのと変わらないという感覚になるのだ。
すると林はギターの音を鳴らしながら、
「マスクする生活も当たり前になって、モッシュもダイブもない、身動き取れないライブは楽しいかい?それでもみんな良い顔してるぜ。だってドキドキすることもワクワクすることも禁止されてないんだぜ。ルールも法律も政治家もそれを禁止することはできないんだぜ」
と弾き語るように観客に語りかける。ああ、そうだ、だからこうやって一緒に歌えなくても、モッシュやダイブが出来なくてもこうやってロックフェスという場所に時間や金をかけて足を運んでいるのだ。ドキドキしたり、ワクワクしたりする感覚は全く失われていないから。
そうした言葉の後に鳴らされた「番狂わせ」は今年きってのキラーチューンでありながらもその言葉をそのまま体現している曲であると言える。こうやってロックバンドのライブを見るために名古屋まで来てしまうような、そんなしょうもない大人であり続けたいと思うから。
美咲の激しいビートから、
「スリーコード エイトビートに乗って
僕らの歌よ どうか突き抜けておくれよ」
と自分たちの音楽のスタイルを歌うような「ティーンエイジサンセット」はこの会場にいる少年少女に捧げるように演奏されたが、それは実年齢的なものだけではなく、精神が少年少女である人も含まれている。つまりはこういう場所に来ている全ての人に向けた歌なのだ。
それにしても林は本当にこの1〜2年で特に強くなったと思う。放つ言葉の力の強さはもちろん、歌や歌う姿からもオーラが感じられるようになったというか。それは特に「LILLY」の
「君に会えたらそれでいいや」
というフレーズから強く感じられるし、そのフレーズの後にバンドが鳴らす音が重なり合う様もまたそう感じさせるのだ。
そんなライブはなんとリハも含めるとこの短い持ち時間で3回目となる、さすがに初見の人もこれだけ聴いたら覚えるだろうと思う「宣誓」で締められるのだが、この最後の演奏では
「MERRY ROCKまた来るからな〜!」
と林が叫んだりと、それは1回1回違う意味を持って鳴らされていたのだった。何より、演奏するたびにステージ上の楽しさが増していて、それが客席にも広がっていた。
JAPAN JAM、武道館など今年はHump Backのライブを観て、救われたなと思うことがたくさんあった。自分ですらそう思うということは、若い人はもっとそういう感覚を抱いていることだろう。もはやライブシーンにおける最重要バンドと言える位置にまで来ているように感じる、Hump Backの2021年だった。
リハ.宣誓
リハ.君は春
1.新しい朝
2.拝啓、少年よ
3.生きて行く
4.宣誓
5.番狂わせ
6.ティーンエイジサンセット
7.LILLY
8.宣誓
12:30〜 アルカラ [BLESS STAGE]
地元の神戸でサーキットフェスを主催しているバンドではあるが、アルカラにはもうこのフェスにはこのバンドがいないと、というフェスがいくつもあって、それはこのフェスも間違いなくその一つだろう。
9mm Parabellum Bulletのサポートでもおなじみの為川裕也(folca)をサポートギターに加えた4人で登場すると、いつも通りにタンバリンを首にかけた稲村太佑(ボーカル&ギター)が
「MERRY ROCKー!」
と叫んで「アブノーマルが足りない」でスタートし、早くもこれぞアルカラ!というメタリックなギターサウンドとリズムのグルーヴを見せてくれるのだが、アウトロでは疋田武史が魂込めまくりのドラムソロを叩きまくり、なんだなんだ今日は?と思っていると、そのドラムソロからそのまま、
「もう年末やけど、来年の準備はできてるかー!?俺たちはもう新しい曲を作ってるからなー!」
と言って祭囃子のビートが「ロック界の奇行士」を自称するこのバンドならではのどこか一筋縄ではいかないロックサウンドに融合する新境地でありながらもアルカラの曲でしかない「Dance Inspire」を新曲とは思えないくらいのライブの完成度で披露する。
そのまま「半径30cmの中を知らない」で下上貴弘も観客を煽るように腕を高く上げながらベースを弾き、もはや正規メンバーなんじゃないかというくらいに為川もギターを抱えてジャンプするという姿を見せてくれる。その熱量が客席に広がっていくことによってたくさんの観客が腕を上げてバンドの演奏に応えている。もう完全にベテランバンドだけれど、メンバーの見た目もライブのアグレッシブさも全く変わることはない。
すると稲村は先日、THE ORAL CIGARETTESのスタジオに遊びに行き、その後に山中拓也と2人で久しぶりに食事に行って話したら、会えなかった時期にどんなことをしていたかを話し合うことによって空白の時間が埋まり、コロナによってディスタンスが生まれた時代でも変わらぬものがあることを悟り、それはロックバンドの生き方も変わるものではないということも改めてわかったという。
そんな稲村を、アルカラを慕う山中が今でも大好きな曲だという「ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト」をこの後に出てくるオーラルに捧げるかのようにも演奏するのだが、
「いつか10年後でいい 笑い合って
偶然でもいい 何処かで会って
叶わぬ想いでも 信じたくて今」
と歌うこの曲を10年以上前からこうやってライブでずっと聴き続けている。それは稲村が言っていたようにこれから先も変わらないのだろうなとも思えるものであったし、
「30年後でも 笑い合って
四半世紀分 笑い合って」
というフレーズも確かなリアリティを持って響いていたということだ。
そんなライブの最後に演奏されたのは、稲村がサビを歌い上げるようにしてから、ここまでの爆裂っぷりと比べると穏やかなサウンドで演奏されているようにも感じる「秘密基地」であるが、別れた後の情景を歌っている歌詞がバンドが経験してきたであろう別れの多さ、それを乗り越えてこうして続けてきた強さを感じさせるのだが、ライブハウスをはじめとしたこうしたライブ会場こそが我々にとっての秘密基地である。そんな感覚を共有するかのような演奏だった。
勢いのある若手バンドがメインになっていくロックフェスにおいてはベテランであるほどにアウェーになってしまう。そうしていつのまにか前はよく出ていたフェスでもなかなか名前を見ることがなくなってしまったりもするのだけど、アルカラが今でもこうして大きなフェスの大きなステージに立っているのを見れるというのは嬉しいことであるし、アルカラは今でもこうしたステージに立つべきバンドであるとも思う。
リハ.デカダントタウン
リハ.キャッチーを科学する
1.アブノーマルが足りない
2.Dance Inspire
3.半径30cmの中を知らない
4.ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト
5.秘密基地
13:15〜 HEY-SMITH [NOEL STAGE]
HEY-SMITHもまた今年はコロナに翻弄されまくったバンドである。猪狩秀平(ボーカル&ギター)が自身のYouTubeチャンネル内で出演を楽しみにしていた京都大作戦はバンドが出演する週が中止になり、それでもなんとか自身が大阪で主催するHAZIKETEMAZARE FESTIVALはやはり開催することができず、本人もだいぶ凹んでいるように感じた。それでもこうしてこのフェスを始めとした冬フェスには多数参加できているというのはバンドにとって1年を良い形で締めることができることになるのではないだろうか。
メンバー6人がおなじみのSEでステージに登場すると、イイカワケン(トランペット)、かなす(トロンボーン)、満(サックス)というこのバンドならではのホーン隊の音が高らかに鳴り響く「Living In My Skin」でスタートし、猪狩とは真反対と言えるような爽やかな歌声を、それでもやはりライブバンドとして熱く響かせるYuji(ボーカル&ベース)メインボーカルの「Dandadan」と続くことによって客席ではスカダンスも発生するのだが、両サイドにディスタンスが取られている前方エリアは踊りやすいけれども、普通に隣にも観客がいる後方エリアではぶつかりまくってしまい、コロナ禍になる前よりもどこか申し訳なく感じてしまう。ヘイスミのように集客力のある人気バンドであればなおさらである。
バンドにとっては失意の1年だったとも言えるけれども、夏にはライブ会場限定シングルをリリースしており、そのCDに収録されている「Fellowship Anthem」は猪狩のギターがスカのリズムを刻む、実にこのバンドらしいスカパンクナンバーで、さらにもう1曲の新曲「Be The One」も完全にパンク・ラウドな曲であるという、例えコロナ禍であろうとも自分たちが鳴らすべき音楽、やりたい音楽は全く変わることがないというバンドの姿勢を感じることができるし、そうしたサウンドはかつてのモッシュやダイブをするのが当たり前だったライブハウスに戻れるようにという願いを込めているかのようでもある。そんな曲が入ったCDをライブ会場でリリースするのも必然性のあることだ。
ホーンのサウンドを鳴り響かせるだけではなく、イイカワケンは自身に寄ってくるカメラに目線を向けながら煽りまくる「Fog and Clouds」、急にライブ映像がバンド公式から公開されることになった、上半身裸の満がステージ上を転げ回り、かなすも叫ぶかのようにコーラスをする「Over」と続くのだが、ヘイスミは本当にフェスごとにセトリを変えてくるバンドだよなぁということを思い知らされる。それは猪狩がSNSでライブで演奏して欲しい曲のリクエストを募っていることにも繋がっている。
そんな猪狩は演奏中は重く速いビートを刻むTask-n(ドラム)が言葉を載せるためのリズムを刻み始めると、
「このフェスは去年の冬フェスで唯一開催できたフェスだったやん?それが春フェスに続いて、まぁ夏はほとんど中止になってしまったけれど、またこうして冬にも続いている。
TREASUREも毎年蒲郡の海辺で開催していたけど、今年はあの場所では開催できなくて、それでもガイシホールで開催するっていう音楽を止めない不屈の精神を持った主催のサンデーフォークには俺は本当にリスペクトを持ってる。俺はあのTREASUREの海辺の会場が大好きだから、来年あそこでTREASUREが開催された時のために、あそこで鳴らしたい曲をやるわ!」
と言って季節外れではあるが、来年の愛知の夏に願いを込めた「Summer Breeze」を演奏しようとした瞬間、猪狩が
「押さえていたコードがそもそも全然違っていた(笑)」
と言って、演奏を止めてやり直すことに。曲のメインボーカルであるYujiにも
「え〜(笑)」
と突っ込まれるくらいに、せっかくカッコよく曲に入るところが決まりきらないというのが実に猪狩らしくもあるけれども、その猪狩自身が苦笑しながらもう一度タイトルコールをしてから演奏された「Summer Breeze」はやはりこの室内なのに空調がないし換気をしているから冷気が入りまくってきて寒さを常に感じざるを得ないこの会場を一瞬だけ夏にしてくれたのだった。
そんなお茶目な一面も見せながらも、
「俺たちはパンクバンドだから!」
とパンク魂を見せつけるような「Let It Punk」でさらに演奏は激しく速くなっていき、ステージ上のメンバーのアクションの激しさも含めてそのヘイスミの持つパンクさがいかにカッコいいものかということを示してくれると、やはり最後にはヘイスミの象徴とも言えるホーンサウンドが突き抜けるかのように鳴り響く「Endless Sorrow」で観客も踊りまくっての大団円となった。ミスもあったが、それも含めて観客を笑顔にしてくれて、ライブという場を守り続けようと日々戦っているヘイスミの頼もしさを感じたライブであり、1年だったと言っていいのかもしれない。来年は猪狩の沈んだ顔を見るようなことがありませんように。
1.Living In My Skin
2.Dandadan
3.Fellowship Anthem
4.Be The One
5.Fog and Clouds
6.Over
7.Summer Breeze
8.Let It Punk
9.Endless Sorrow
14:00〜 KEYTALK [BLESS STAGE]
明らかにまたここで一気に客席が混雑してきたように感じるのは、この後に登場するのがKEYTALKだからであろう。
リハで盟友と言えるフォーリミの「monolith」を歌うというメンバーのテンションの高さはおなじみの「物販」のSEで登場してもそのままに、いきなりの「MONSTER DANCE」で観客は隣の人に気を遣いながらも振り付けを踊りまくるのだが、巨匠こと寺中友将(ボーカル&ギター)も首藤義勝(ボーカル&ベース)も気合い入りまくりで早くも叫ぶようにして歌っているのだが、前回自分がライブを観たハルカミライとの対バンの時にはハルカミライの関大地の出で立ちのコスプレをしていた小野武正(ギター)もこの日はキャップを被ったギター小僧というような格好で、最後のサビではギターを弾かずに振り付けを踊ったりしている。
バンドは今年ニューアルバム「ACTION!」をリリースしたばかりなのだが、そのアルバムのオープニング曲である「宴はヨイヨイ恋しぐれ」がロックフェスという宴に実にふさわしく響いている。KEYTALKのアルバムはバラエティに富んだサウンドになっているが、この曲はこれからもフェスではおなじみの曲になっていきそうである。
完全に季節は冬であるのだが、今年はほとんど開催されずに出演できなかっただけにライブの本数も少なくなってしまったのだが、特にこのバンドが数々のサマーアンセムを鳴らしてきた夏フェスの景色を取り戻すように、義勝の歌い出しの歌詞から夏の情景そのものを歌った「YURAMEKI SUMMER」で再び観客を踊らせまくるのだが、そのダンサブルなビートを担う八木優樹(ドラム)の吹くホイッスルの音も気合いに満ちまくっている。巨匠は
「やっぱりフェス楽しいー!」
と素直すぎる感想を口にしていたが、とりわけ鎬を削ってきた同世代バンドが多く集結しているだけにその思いをより強く感じているのだろう。
そんなフェスらしいダンサブルな流れから、同じフェスで演奏されてきた曲でも幸福な雰囲気に包まれながらメンバーとともに飛び跳ねる「Love me」とモードはポップな方へ向かっていく…かと思いきや、ここで急にフェスで演奏するような曲でもなければ最新作の曲でもない「マスターゴッド」を義勝が歌い始めただけに、客席からも「え?」という驚きの空気が満ちていた。確かにワンマンや対バンなどの長い持ち時間のライブではセトリを大幅に入れ替えたりするという、どんな曲でもいつでも演奏できるというバンドなのだが、今までは代表曲を中心に演奏していたフェスの戦い方もライブそのものが減ってしまったこの1〜2年でいろんな曲を演奏するというように変わってきている感がある。
武正は「ぺーい」こそやらないが、メンバーに気合いが入っているかを確認すると、そんな中でも「ACTION!」からはこちらもタイトルからしてフェスによく似合う「もういっちょ」も演奏され、巨匠の懐が深くも力強いボーカルがバンドを引っ張りながら、ラストは春の到来を待ち遠しく感じさせる「桜花爛漫」のキラキラと輝くようなメロディを響かせながらも、武正のギターは唸りまくるというロックバンドとしてのポップサイドを見せる形になった。
フェスで大きく育ってきたKEYTALKのフェスへの愛と感謝を感じるとともに、
「最後のBLUE ENCOUNTまで涙は取っておきましょう!」
という武正の言葉からは、共闘してきた仲間たちへの愛が確かにあった。やっぱり1番嬉しかったのはそうした仲間たちに会えたことなのかもしれない。
リハ.Summer Venus
リハ.sympathy
1.MONSTER DANCE
2.宴はヨイヨイ恋しぐれ
3.YURAMEKI SUMMER
4.Love me
5.マスターゴッド
6.もういっちょ
7.桜花爛漫
14:45〜 BIGMAMA [NOEL STAGE]
クリスマスの日にファンサービス的な精神の強いワンマンライブを行ってきたバンドであるだけに、クリスマスの時期のフェスというイメージの強いこのフェスにうってつけのバンドなのがBIGMAMAである。ましてや近年もクリスマスソングを生み出しているだけに、クリスマスとこのフェスへの思い入れも強いはずである。
SEからしてもう祝祭感に溢れた「No.9」が流れているのだが、いざメンバー5人が登場すると金井政人(ボーカル&ギター)が
「MERRY ROCKに歓びの歌を」
と言ってSEからそのまま演奏が始まり、髪が短くなって色合いも独特なものになっている東出真緒(ヴァイオリン)が「Yeah」とコーラスする傍で、立ち上がってバスドラを踏み続ける、バケツを被ったドラマーことビスたんの姿を知らない人も多いのか、どこかざわめきのようなものが起こっていたようにも感じた。
ハイパーかつ安井英人(ベース)が支える跳ねるようなダンサブルなサウンドにヴァイオリンの美しい調べとBメロでの観客も一体となっての手拍子がBIGMAMAでしかないライブの楽しさを存分に体感させてくれる「MUTOPIA」、さりげなく作家としても活動するようになったくらいの文筆家である金井のストーリーテリングが炸裂する「The Naked King 〜美しき我が人生を〜」というあたりは近年のライブではおなじみの曲たちであるが、常に安定感とロックバンドの衝動を両立させてきた柿沼広也のコーラスに負けないくらいに金井のボーカルも実に伸びやかである。
しかしながらそこから思わず「この曲なんだっけ?」とイントロを聴いた時点では何らかの曲をライブならではのアレンジをしているのかとすら思ったくらいに全くこうしたフェスやイベントで演奏するとは思っていなかった「Ruby Red Shooting Star」という昨年リリースされた冬の曲を集めたコンセプトの強いep「Snow Motion」に収録されている曲を披露し、
「雪化粧でめかして
揺れるイルミネーション
ウィンクして急げの合図
暗がり夜道は
ピカピカの赤い鼻を
目印にすれば
迷わずにいけるさ」
という歌詞はどうしたってクリスマスという時期であることを感じさせる、このフェスのためなんじゃないかとすら思うような曲であるのだが、そこへさらにこちらも「Snow Motion」収録曲でありながら、今年に別アレンジバージョンをまとめたシングルとしてもリリースされた「誰もがみんなサンタクロース」というクリスマスソングの連発っぷり。
「Merry Christmas
Happy Christmas
世界中のどこもかしこもサンタが増殖中
Merry Christmas
Happy Christmas
幸せな時間が溢れますように」
というフレーズはこれまでにもクリスマスライブを行っては幸せな時間をファンに提供してきてくれたBIGMAMAだからこそ、クリスマスという日が誰かが誰かを幸せにすることができる日であるということを噛み締めさせてくれるし、このクリスマス曲の連発は他の冬フェスやイベントに出たとしてもやらないだろう。それは同じようにクリスマスというものを愛してイベントを作ってきた、このフェスへの愛が溢れていた。
そんなライブの最後を担うのは、こちらも「Snow Motion」収録曲でありながらも、すでにこうしてライブの締めの曲として定着した感すらある「PRAYLIST」で、ビスたんが立ち上がって観客を煽りながらバスドラを踏む中で金井が歌う
「願い事ひとつ書き出そう
些細なもので構わない
願い事ふたつ書き出そう
大いなる野望や大志も
死ぬまでにしたい全てを」
という歌い出しのフレーズに、願い事を願うとしたら、やっぱりこうやって来年以降もこの時期にライブが観れていますようにということを考えていた。すると金井は演奏が終わって去り際に
「メリークリスマス、BIGMAMAでした!」
と口にした。やはりBIGMAMAにとってクリスマスというのは特別な日なのだ。
実はバンドとして深い関係にあるアルカラもそうであるが、やはりBIGMAMAもなかなか今はこうした大きいステージで見る機会が少なくなってきている。それでもこうしてライブを観ると、ずっとこうした広いステージでライブを見れたらいいなと思うくらいに素晴らしいライブを見せてくれるし、このフェスにおいては間違いなくメインステージに立つべき理由を持っているバンドだ。かつて足を運んでいたクリスマスワンマンにまた行きたいなと思うくらいに、この日でまたクリスマス=BIGMAMAのイメージが強く固まったライブだった。
1.No.9
2.MUTOPIA
3.The Naked King 〜美しき我が人生を〜
4.Ruby Red Shooting Star
5.誰もがみんなサンタクロース
6.PRAYLIST
15:30〜 氣志團 [BLESS STAGE]
何というか、タイムテーブルを見ても1組だけ完全に異質の存在である。というか後半の方に控えているバンドのファンの若い方々は氣志團という存在を知っているのだろうかと心配になってしまうくらいの浮きっぷりだ。そんな氣志團のライブをこうして見れるのも、氣志團万博が今年もリアルでは開催できなかっただけに実に久しぶりである。
この日は白い学ランを着たメンバーがステージに登場する際のSEが完全にEDMサウンドの「房総魂」であり、早乙女光(ダンス&スクリーム)が楽団の団員のようにタムを抱えて打ち鳴らすという姿も含めて、氣志團が時代とともに自分たちの音楽をアップデートしてきているバンドであるということがよくわかるのだが、やはりこれだけ「房総」というフレーズを歌詞に取り入れまくってくれているのは千葉県民の後輩としては本当に嬉しいし、やっぱり氣志團こそが千葉県を1番盛り上げてきてくれたアーティストであると思える。BUMP OF CHICKENもELLEGARDENもさすがに歌詞に「房総」なんて言葉は使えないだけに。
綾小路翔と早乙女のダンスは全く錆びることなくキレッキレであるということを「デリケートにキスして」をライブで演奏するのを見るたびに思うのであるが、ここまでは割と正攻法なバンドとしての戦い方で、それは2019年の氣志團万博初日の出演時のパフォーマンスを思い出させる。あの時は直前に台風が直撃して本当に大変だったことも。
するとここでおそらくはここまでの2曲を全く知らない人も綾小路と早乙女に合わせて振り付けを踊る「One Night Carnival」で、この曲の持つ力を改めて感じさせるというか、タイムテーブルを見ると完全に浮いた存在である氣志團の曲によって会場が一つになっていることがハッキリとわかるのであるが、これまでのライブでは観客が大合唱して綾小路が感動するという寸劇じみた光景がお決まりになっていた最後のサビも、今は観客は歌うことはできないために無音のまま。その様を見た綾小路は、
「一緒に歌うことも、騒いだり肩を組んだりすることもできないし、キャパも減らさないといけない。こんなんでどうやってライブやればいいんだ!」
と悲痛な胸のうちを明かし、どこか客席からは涙を拭うような音すらも聞こえてくるのだが、
「でも俺はお前たちの永遠の2個上の先輩。先輩が発明しました!ハミング!そうすれば飛沫が飛ばない!」
と言って合唱パートはハミングバージョンへと様変わりし、感動的なようでいてどこか笑えるようなものになる。
ハミング自体は千葉LOOKのサイトウ店長が昨年からすでに取り入れ(もしかしたらそこから伝授されたのかもしれない)、バックドロップシンデレラもライブで使っているが、こんなにも誰もが知っている曲で1万人以上の人がハミングするという光景はこれまでになかったんじゃないだろうか。
そうして「One Night Carnival」を今の状況に合わせた形で観客と一緒に演奏してみせると、
「先生驚いてます。紅白歌合戦に2回も出たことがあるのに、あんまり盛り上がってなかったから(笑)
でもこの「One Night Carnival」がリリースされたのは2001年。もう20年も前なんだね。君なんかまだ産まれてないもんね(笑)
だから、今前方エリアにいるお前たちが本当はTHE ORAL CIGARETTESを前方で見たかったのもわかってる(笑)
「前方エリア、氣志團だけ当たって草」
とか言ってんだろ!(笑)
でも今ここにいるお前たちはオーラルを後方でしか見れない(笑)
だから俺たちがオーラルになってやる!」
と言うと、これまでにもDA PUMP「U.S.A.」やBTS「Dynamite!」という大ヒット曲から、前日のポルノ超特急では主催バンドのROTTENGRAFFTY「金色グラフティー」をマッシュアップしてきた「One Night Carnival」最新バージョンを、オーラルの「狂乱Hey Kids!!」でやってみせ、メロディは「狂乱〜」なのに歌詞が「One Night Carnival」という、毎回何でこんなに上手くハメられるんだろうと思うくらいにマッシュアップしてみせる。それはそうした他のアーティストの曲を完璧に演奏することができる氣志團の優れた演奏技術とアイデア力、さらには氣志團万博を主催することによって、あらゆるジャンルの勢いのある若手バンドたちのライブを見てきた勤勉さによって作られているものだ。それはここにいる誰もがわかる曲であるだけに、異質な存在の氣志團がこのフェスの主役として観客を狂乱させていた瞬間でもあった。
そして最後は西園寺瞳がツインネックギターを弾くという、普通に優れたギタリストであることを示してくれる、氣志團の冬のラブソング「Secret Love Story」。(ドラマ仕立てのMVは超名作)
名ソングライターの星グランマニエ(ギター)もボーカルを務める曲であるだけに、その際には綾小路と早乙女が星を讃えるようなパフォーマンスもし、そこにさらに西園寺と白鳥松竹梅(ベース)までも寄ってきて5人が固まるという構図も見ていて実に楽しいのだが、この曲で締めるというあたりに今氣志團が冬フェスに出演することにした意識が現れていたように思えた。
「これは絶対に時間ないぞー!撤収ー!」
と言って綾小路が重いものを持ち上げられずに倒れるという演奏終了後のコント的なドタバタ劇は、完全に時間を押す一因になっていたけれど。
自分が10代の頃に氣志團がちょうど「One Night Carnival」によってブレイクしたので、それからずっと見てきたバンドであるとも言えるのだが、あの当時からすでにキワモノ感というか、散々「すぐに消える」と言われながらも、プロデューサーの阿部義晴(ユニコーン)の手腕もあり、氣志團は今も消えることなく、ロックシーン屈指のエンターテイナーとして、そしてフェスに出ては曲を知らない人ばかりであっても全てをかっさらっていく存在として今も元気に活動を続けている。その氣志團の魅力を地元の千葉で体験できる、一度行ったら毎年通う様になってしまうくらいに素晴らしいフェスである「氣志團万博」が来年こそはあの何もない場所で開催されて、またあそこで会えるように。ギリギリだったけど、今年中に氣志團が見れて本当に良かった。
1.房総魂
2.デリケートにキスして
3.One Night Carnival
4.One Night Carnival 2022 〜狂乱Hey Carnival!!〜
5.Secret Love Story
16:15〜 Crossfaith [NOEL STAGE]
こうも極端なタイムテーブルか、というのはエンタメ精神溢れる氣志團の後がラウドバンドとしての迫力に満ちたCrossfaithだからであるが、そもそも氣志團万博にもcoldrainやSiMというラウドバンドが毎回名を連ねているだけに、そう思うと違和感はない並びなのかもしれない。
もうSEの段階から完全にこれまでと音圧が違う中で最初にTeru(プログラミング・ボーカル)が登場してお立ち台の上に立って観客を煽りまくると、そのまま自身の卓に移動して音を操作し、メンバーが次々に登場。Koie(ボーカル)はバンドの巨大なフラッグを掲げており、このライブへの並々ならぬ気合いを感じさせる。
そんなライブのスタートはラウドロックとしての重さにエレクトロというよりレイヴサウンドの凶暴性が加わり、Koieのデスボイスが炸裂しまくる「Xeno」であるのだが、こんなにも重く強いサウンドをこのコロナ禍の中でも磨き上げてきたというのが一瞬でわかるくらいのメンバーの姿。Kazuki(ギター)とHiroki(ベース)はステージ上を目まぐるしく動き回りながら演奏し、Tatsuya(ドラム)のビートがそれを後ろで支えながらもさらに前へ先へと疾駆し、牽引していく。もはや日本のバンドを見ている様な感覚ですらないくらいの凄まじさだ。
「Freedom」では自身専用と言っていいくらいに近い位置にいるカメラマンに接近したTeruがカメラを揺らしたり、カメラに向かって舌を出したりというメンバー内で最も自由なパフォーマンスを展開すると、そのTeruはライブを見ていても寒さを感じてしまうくらいのこの会場で上半身裸になり、「Wildfire」ではKoieとツインボーカルという形でボーカルも務めるのだが、これだけ激しいサウンドで飛び跳ねまくっている中でもしっかりルールを守っているこのバンドのファンであろう前方エリアにいる人たちも本当に凄い。
するとKoieは2020年の2月にこの会場でcoldrainが主催したフェス「BLARE FEST.」に出演した時のことを懐かしそうに語りながら、1人缶ビールを開けて乾杯する。そうして「The Perfect Nightmare」に突入すると観客にタオルを回させるというこの日このバンドでしか見れなかった光景に。
するとKoieは観客を一度床に座らせてカウントとともに大ジャンプをさせてからラストの「Leviathan」へと突入していくのだが、そのジャンプをした効果によって、前方エリアだけでなく後方で見ていた人たちも飛び跳ねまくるくらいに空気が一気に変わった。それを生み出していたのはもちろんバンドのサウンドの強さであり、久しぶりに見たライブはこのバンドが世界でも当たり前のようにライブをやり、あのHYDEが絶賛するというのが実によくわかるくらいに圧巻だった。
去年から今年、ラウドロックシーンは色々あった。それはもちろんコロナに端を発したものであるのだが、本来ならばただただカッコいい音楽を鳴らしているバンドが「もうあのバンドはああいうことするなら見なくていい」という評価を下されたりするようなことにもなってしまった。
もちろんそこにはやり方や責任などあらゆる要素が介在しているのだけれども、今のこの状況の中でもラウドロックを鳴らしているバンドというのは絶対にラウドロックが1番好きで、これがカッコいいと信じているからこうしたルールのある中でもバンドを続けているはずだ。
そんなバンドたちの音楽やライブを、何も余計なことを考えることなく、ただただ「カッコいいな」って思える世の中に戻って欲しいと、演奏が終わって笑顔で全員で肩を組んでいたCrossfaithのメンバーを見ながら思っていた。
1.Xeno
2.Freedom
3.Wildfire
4.The Perfect Nightmare
5.Leviathan
17:00〜 THE ORAL CIGARETTES [BLESS STAGE]
間違いなく、ライブが始まる前から観客の数が1番多い。なんならステージがハッキリ見えないくらいのレベルで。それが今のTHE ORAL CIGARETTESのいる状況を物語っていると言っていいだろう。
なのでメンバー4人がステージに登場すると、かろうじて見えるのはどこか寝巻きのようにも見えるくらいにカジュアルなスウェットを着用した山中拓也(ボーカル&ギター)がギターを持っているということであるということであるが、その山中がギターを弾きながら歌い始めたのはなんと「Shala La」という、フェスの1曲目として今演奏するとは全く予想していなかった曲で、もちろん客席もどよめきながらもそんな曲が聴けた喜びを爆発させている。山中も、コーラスをするあきらかにあきら(ベース)もどこかその先制攻撃を楽しんでいるかのように不敵な表情を見せるのだが、鈴木重伸(ギター)はいつもと変わらぬクールな表情のままである。
山中の妖艶な歌声がタイトル通りにどこかドリーミーなサウンドと絡み合うことによってオーラルの持つ世界観にグッと深く誘ってくる「Dream In Drive」から、中西雅哉(ドラム)のビートが一層激しくなるのはリリースされたばかりの新曲「MACHINEGUN」であるのだが、この曲が「カッコいいロックバンドとしてのオーラル」を本当に強く感じさせてくれる。自分が心の底でそんなオーラルの姿を見たかったんだなということが自分でもよくわかるくらいに、完全にロックモードのオーラルだ。
すると山中はこの日のトリがONAKAMAを共に形成するBLUE ENCOUNTであることに触れ、
「彼らはピンチの時になればなるほどにやってくれるバンドですので!」
と愛あるプレッシャーをかけまくるのだが、どこかそこにはほんの少しだけ自分たちではなくブルエンがトリであることの悔しさが滲んでいるようにも感じられた。
「MACHINEGUN」が最新曲であるだけに、
「新曲やったんで、次は昔の曲やりまーす」
とイタズラっぽく口にしてから演奏されたのは観客が歓喜の「Mr.ファントム」で、それがここまでの曲と地続きになっている流れに感じられるのはやはり「MACHINEGUN」がロックモードの曲だからというのが大きいのだけれども、最後のサビ前での鈴木とあきらの楽器を抱えてのハイジャンプの高さもまた「カッコいいな…」と思えるロックバンドの姿である。
さらには氣志團がマッシュアップバージョンとして先に演奏していた「狂乱Hey Kids!!」も本家バージョンで演奏されたのだが、氣志團バージョンに触れなかったのはそのライブを見れていなかったのか(この週末、オーラルは各地の大規模イベントに毎日出演しているだけに)、あるいはそれをわかっていたから本家バージョンをセトリに入れていたのか。それは本人たちにしかわからないことであるが、完全にロックバンドのオーラルとしてのキラーチューン祭りである。
すると山中は
「ロックバンドシーンも誰と誰が仲良いとか仲悪いとか見ていてもようわからんと思うけど」
と前置きをしながら、それでもそれぞれがロックシーンを守り、そして盛り上げるために活動していることを語り、
「ロックシーンをこれからもよろしくお願いします!」
とロックバンドを代表して言うと、メンバー全員で深々と頭を下げた。
思えば山中は去年からロックバンドの出演するライブハウスがルールを守ってライブをやっているのに、ルールを全く守らずに闇営業のようにしているクラブなどへの嫌悪感を真っ向から口にしていた。自分たちの育ってきた場所が危機に晒されていて、でもそこが本当は素晴らしい場所であるということをちゃんと伝えたい。それこそが抜群の嗅覚でもって近年は自分たちのサウンドを広げるような活動をしてきたオーラルがコロナ禍においてロックに回帰した最大の理由なんじゃないかとも思う。
最後に真っ赤な照明に照らされながら、山中がギターをぶん回すというロックなパフォーマンスを見せた「Red Criminal」はロックバンドが1番カッコいいということを、ロックバンドである自分たちのパフォーマンスで証明するかのようだった。
あらゆるジャンルを巧みに取り入れて自分たちの音楽へと昇華した「SUCK MY WORLD」も実に良いアルバムだったと思っているけれど、こうしたライブを見ていると、やっぱりオーラルにはロックが1番似合うし、カッコいいと思える。そんなオーラルを見れているということが、本当に頼もしく感じられた。
1.Shala La
2.Dream In Drive
3.MACHINEGUN
4.Mr.ファントム
5.狂乱Hey Kids!!
6.Red Criminal
17:45〜 ヤバイTシャツ屋さん [NOEL STAGE]
もはや完全に自分たちのものにしていると言っていい「喜志駅周辺なんもない」のサビを瑛人「香水」に変えて歌うというアレンジをリハで演奏するというサービス精神を見せてくれたヤバTはしかし、ここにいる人に来年のツアーにも来て欲しいと告知するも、
「名古屋はチケットが取りづらいから、札幌がチケット取りやすくておすすめです」
とわざわざ名古屋の人を飛行機に乗せて札幌まで来てもらおうとして笑わせてくれる。
本番ではこやま(ボーカル&ギター)ともりもと(ドラム)はいつもと全く変わらない出で立ちであるが、しばた(ベース)はピンクの道重さゆみTシャツの上に「検査済み」というコロナの感染検査結果のシールを直で貼り、下はスウェットという冬仕様の出で立ちで、いきなりの「かわE」で観客が歌えない「やんけ!」のフレーズをメンバーが歌い、会場に楽C超して楽Dな空気が満ちていく。そんな曲を演奏しているバンドはかっこE超してかっこFなのである。
もりもとの疾走するツービートドラムに合わせてこやまとしばたのボーカルがこの広い会場いっぱいに伸びる「無線LANばり便利」も合唱パートを観客の心にこやまは委ねるのだが、
「世界のどこでも 君と繋がれる 県境越えて」
というフレーズ部分で飛び跳ねまくれるだけでも最大限に楽しいし、こうした大きなフェスに出ているヤバTの姿を見ていると、こんな明らかに他に歌う人が全くいない歌詞の曲が完全にヤバTだからこそのものとして様々なバンドのファンがいる場でも受け入れられていることがよくわかる。
ヤバTはフェスやイベントはもちろん、ワンマンでもガラッとセトリを変えてくるバンドであるために、その日にどんな曲が演奏されるのかは実際に見てみるまで全くわからないのだが、この日は「この曲フェスでやる!?」と思ってしまう、こやまの学生時代の甘酸っぱいというか上履き味の思い出がパンクビートに乗せて歌われる「sweet memories」が演奏されたのにはビックリ。常に抜群の安定感を誇るしばたのボーカルに加えて、こやまもこの日はファルセットが非常に良く出ていて、自分たちの曲を真っ直ぐに伝えるために常に技術を磨いていることがよくわかる。それは記念碑的なライブだった大阪城ホールでのワンマンを見たからこそでもある。
そんなこやまのギターがエモーショナルに鳴り響く「ハッピーウェディング前ソング」では大合唱はできなくても観客の腕がガンガンに振られ、サビに入った瞬間に大きく飛び上がる観客の姿を見ているのも実に楽しい。しばたの「Yeah」というハイトーンの叫びもこうしてフェスに出演できているという喜びに満ち溢れている。つまりヤバTのライブには、鳴らす音には音楽と音楽が鳴る場所への愛が確かに乗っている。
しかしながらこやまは
「今日は俺たちのONAKAMAのBLUE ENCOUNTがトリで…」
と嘯き、
しばた&もりもと「違う違う!」
こやま「4バンドで合同ツアーしてアー写撮ったやん?」
しばた「うちらお仲間外れやから(笑)」
こやま「ほなこっちのやまたく(こやまたくやの略)もよろしくってことで…(笑)」
と絶好調極まりないMCはしばたの
「ヤバイTシャツ屋サンタからの音のプレゼント」
というクリスマスならではの上手さに着地し、なかなかフェスが出来なかった今年もたくさんライブハウスでライブをやってきたバンドとしてのライブハウス賛歌「Give me the Tank-top」で疾走し、ヤバTのマジなパンクバンド、ライブハウスバンドっぷりをライブハウスよりはるかに広いこの会場に響かせると、こうしたフェス会場で大きな声でみんなでコーラスを歌えるようにという願いを込めるかのような「NO MONEY DANCE」で2021年に回ってきたツアーで演奏され続けてよりタフになった曲たちがその一年間の集大成として鳴らされる。もちろんヤバTにはまだこれから年末にかけてもライブが控えているのだが。
そんなライブの締めはやはり観客は叫べないけれども、それでも腕を左右に振ったりするだけで本当に楽しい、こうしてフェスという場に集まった我々(パリピじゃないけど)のテーマソングとも言えるような「あつまれ!パーティーピーポー」で終わりかと思ったら、
「始まりが押してたから、まだ時間ある。残り3分でできるかな!?」
と言って「Tank-top of the world」を演奏し、
「Go to rizap!」
のコーラスを全部もりもとにやらせて、こやまとしばたはその際にもりもとの方を向くというのは最近のおなじみであるが、時間が迫っているだけに明らかにそのもりもとのドラムが超速バージョンと言えるくらいに速くなっていき、こやまは足元の時計を見ながら
「あと1分で最後のサビまでいけるかな〜!」
とどこか楽しそうに時間をギリギリまで使う。それはそのこやまが残り時間を言うことによってリズムを速くしたりしているところもあるのだろうし、音楽と曲を使ったフェスにおける最高のパフォーマンスだ。
最後のキメを鳴らした後にこやまが時計を見ると、
「残り4秒!ありがとうございました!」
と言って3人はあっという間にステージから消えた。
ヤバTがフェスという場所でやりたいこと、やろうとしていること、ヤバTがどれだけカッコいいバンドで、凄いバンドなのかということ。それが凝縮されたかのような時間だった。
こんな世の中の状況である2021年でも、ヤバTのライブがたくさん見れたことは本当に幸せなことだったし、何回見ても飽きることはない、毎回見るたびにあくまで音楽と曲で驚かされる。そんなヤバTを見てきた2021年はまだもうちょっと続く。それでも、こやまが
「こういう制限があるライブは今年でもう終わりにしたい」
と言っていたように、これで100%最高なんじゃなくて、我々はバンドと一緒に目指すべきものがある。来年もヤバTと一緒にそれを掴み取りに行きたい。
リハ.ZORORI ROCK!!!
リハ.くそ現代っ子ごみかす20代
リハ.喜志駅周辺なんもない 〜 香水
1.かわE
2.無線LANばり便利
3.sweet memories
4.ハッピーウェディング前ソング
5.Give me the Tank-top
6.NO MONEY DANCE
7.あつまれ!パーティーピーポー
8.Tank-top of the world
18:30〜 SUPER BEAVER [BLESS STAGE]
オーラルがそうであったように、もはやこの規模ですら収まりきってないなと思えるくらいにたくさんの観客が、それこそ逆サイドのステージの奥の方にまで詰めかけている。そりゃあこれは来年のホールツアーのチケットが当たらない人ばかりなのもわかるなというくらいの状態となっているのがSUPER BEAVERである。
そんな大観衆が待ち構える中で4人がステージに登場すると、上杉研太(ベース)も赤く染まった髪が少しサッパリしているように見えるのだが、渋谷龍太(ボーカル)が髪のボリュームがなくなっているように見えたのは髪を後ろで結いていたからである。
そんな渋谷の姿についつい目が行きがちになりながらも、真っ先にリズムを刻み始めたのは藤原広明(ドラム)でかなり長めに繰り返しハイハットを中心としたリズムを刻むと、そこにこの日も金髪姿が眩しい柳沢亮太(ギター)の音が重なり、渋谷が
「ロックスターは死んだ まだ僕は生きてる」
と歌う「27」からスタート。偉大なロックスターたちが世を去っていった年齢を超えてもロックバンドを続けているからこそ、こうして大観衆の前に立っている姿を見ることができる。それが実に愛おしく感じるオープニングだ。
恒例の渋谷の自分たちを「ポップミュージック」と自称する挨拶の後に演奏された「青い春」はまさにバンドの持つポップさを強く感じさせる曲であるが、この曲を歌い始める瞬間に渋谷が結いていた髪を解いて長い髪が左右に流れるという瞬間の色気たるや。今ビーバーのワンマンに行くと渋谷の出で立ちを真似ているであろう人もいるけれど、それもわかるような。その横で柳沢は叫ぶようにして観客に手拍子を促す。その熱さがこのポップミュージックをバンドとしての意志があるものにしている。
すると渋谷は
「俺たちは現実逃避する音楽をやりたいんじゃない。あなたが明日から、いや、今この瞬間から現実と向き合っていける音楽を鳴らしたい」
と自分たちが鳴らしたい音楽、それによって聴き手一人一人に与えたい力について口にしてから「予感」を演奏する。
「どうあったって自分は自分で
どうやったって誰かにはなれない
ならば嫌うより 好きでいたい 想うまま 想っていたい
会いに行こうよ 会いたい自分に」
という歌い出しの歌詞も、
「正解なんて あって無いようなものさ 人生は自由」
というサビのフレーズもそのMCがそのまま歌詞に、音楽になっているかのようだ。
基本的に歌詞を書いているのが柳沢で、MCをするのが渋谷であるということは、精神的に通じ合っているメンバー同士だからこそその意志を共有しているということだろう。それは上杉と藤原のコーラスの声の大きさ、歌うときの表情を見ていても感じることができる。
そんなビーバーが2021年に世に放った新たな名曲「名前を呼ぶよ」の、
「名前を呼んでよ 会いに行くよ 命の意味だ 僕らの意味だ」
というフレーズはそのままこうしてライブという場にお互いに会いに来ていて、命の意味を確認し合っているからこそのリアリティを感じざるを得ない。こうした近年の曲においては渋谷が歌わずに3人のコーラスのみになる部分もあるのだが、それが複数ではなく、1人が重なったものであることも感じさせるのは、ビーバーがいつだって「あなた1人」と対峙してきたバンドだからだ。
そんな中でも渋谷はやはりこれだけの規模、これだけの数のあなたには感じるところもあったようであり、
「昔は100人くらいの規模のライブハウスでも人が全くいないのが当たり前だった。そんなバンドがこうした舞台に立たせてもらって、あなたの前で歌わせてもらっている。バンドっていうのは聞いてくれるあなたがいないと存在している意味がない。
生きる理由をあなたから貰えたから、あなたの生きる理由になれたら」
とやはりビーバーが音を鳴らす、ライブをやる意味を真正面から語ると、まさに
「信じ続けるしかないじゃないか
愛し続けるしかないじゃないか
身に覚えのある失敗を どうして指差せる?」
という歌詞がやはりその言葉そのものが音楽になったかのように響く「人として」が完全にこの広い会場でこの歌、この音以外に何も耳に入らないというか、入れようとすら思えないくらいの説得力を持って鳴らされる。ビーバーのメンバーが人としてカッコよく生きているということが、この景色の理由であり証明だ。
そうして演奏以外にも言葉を口にする時間が多かっただけに、これで終わりかとも思ったのだが、今1番あなたに伝えたい言葉としてバンドがそれを曲として、音楽として最後に放ったのが「アイラヴユー」。特定の誰かではなくて、目の前にいるあなたに向けて歌われる「アイラヴユー」。そのあなたの数が増えた結果としてのこのライブで、最後に最大の衝動を炸裂させた。
これから先、こうした規模のあらゆるフェスでさらにたくさんのあなたと対峙しながら、1番大きなステージでその日の最後を締めるようになる日がきっとくる。そんな、楽しい予感を確かに感じていたし、どんなライブも100%以上で臨むビーバーのライブへの想いが溢れ出ているように感じた時間だった。
1.27
2.青い春
3.予感
4.名前を呼ぶよ
5.人として
6.アイラヴユー
19:20〜 04 Limited Sazabys [NOEL STAGE]
あっという間に残りはあと2組。地元である名古屋のクリスマス兼忘年会的なフェスであるだけに、NOEL STAGEのトリとして出演するのが、先月には幕張メッセでYON EXPOを2days開催したフォーリミである。
リハで演奏した曲の段階で少しいつもとは違う流れになりそうな雰囲気を感じてはいたのだが、おなじみのオリジナルSEでメンバーがステージに登場し、KOUHEI(ドラム)が台の上に立ち、RYU-TAとHIROKAZのギターコンビも手拍子を煽りまくってからそれぞれが楽器を持ってSEが止むと、GEN(ボーカル&ベース)がその持ち前のハイトーンボイスを響かせるように歌い始めたのは「Horizon」というフェスの始まりとは思えない選曲に、やはりリハの時に感じた雰囲気は当たっていたんじゃないかと思えてくる。それくらいにフェスでやるイメージは全然ない曲だ。自分たちの主催フェスである「YON FES」を除いては。
GENが思いっきり腕を振りおろすようにしてイントロが鳴らされた「monolith」でのRYU-TAの
「かかってこいよー!」
という叫びが観客のハートに火をつけると、その「monolith」の流れも汲むような最新シングル曲「fade」と続くことでフォーリミの芯の部分をしっかりと見せると、赤い照明がよりバンドの演奏を燃え上がらせる「Jumper」へと至るのだが、YON EXPOの時も思ったように、GENはここに来て本当に歌が上手くなっている。特にハイトーンをさらに張り上げるようなこれらの曲の締めのフレーズなどはちょっと前までだったら苦しくて歌いきれなかったであろう高さであるのだが、そうした部分もキーを下げたりすることなくしっかり歌いきっている。コロナ禍でライブが少なくなる中でも自分の技術や能力を研ぎ澄ませていた結果がそのままステージに現れていると言っていいだろう。
「この会場、なくなるらしいからね。なくなるっていうか、移設というか改装みたいな感じで」
とこの場所のことをしっかり把握しているのは名古屋のバンドならではであるが、
「そうやってなくなる場所もあって、個人的に悲しい別れもあって…」
と感慨深げに口にし始めたと思ったら、
「俺はち○ち○にホクロがあったんだけど、この前見たらなくなってて。手術したりしたわけでもないのになくなってた」
とこの大きなステージで言うこととは思えないくらいにどうでもいい下ネタをぶっ込んでくるあたりはフォーリミならではというかGENならではである。
それでもどこか久しぶりの感覚になる「Chicken race」では演奏中にRYU-TAの側のカメラにRYU-TAが視線を送りながらウインクしたりしていると、HIROKAZも逆サイドからそのカメラの前まで寄ってきてRYU-TAとともにカメラに視線を送る。久しぶりに聴く曲で見る久しぶりのステージの光景はやはり我々を楽しくさせてくれるし、観客は本当に楽しく踊っている。
そんな地元というここでしかない場所のフェスにおいて自分たちの存在証明を打ち立てるような「Now here, No where」からKOUHEのアグレッシブかつパンクのスピード感溢れる「My HERO」と、MCではしょうもないことを言いながらもこのテンポの良さはパンクバンドのそれでしかなく、さらにそこに最新シングル曲「Just」も放り込んでくる。
この曲がフォーリミのメロディメーカーっぷりを今になって改めて示すような曲であるだけに、
「届けたい 今から」
というこの曲というかシングルのリリース形態も含めて、今のバンドの力を全て凝縮したような曲だ。パンクバンドとしてこうして広いステージに立ち続けている理由が確かにある。
するとGENはこの後に出てくるBLUE ENCOUNTを
「俺たちが終わったら人めちゃ減るから」
と、ONAKAMAとして愛を持っていじると、スクリーンには袖からライブを見ていたブルエンの田邊がマイクを通さずにバンドにツッコミを入れている場面が映って笑いを誘うし、本当にこの両者は仲が良いという関係性がよくわかる。
そして今ではリスペクトを持っているサンデーフォークとはケンカしたこともあったけれど、今はこうして主催するフェスに出て、お互いこの地域を盛り上げていこうとしていることを話し、KOUHEIが激しくドラムを連打するイントロから始まる「Squall」が鳴らされると、GENのハイトーンボイスもより力強さをもって響いているのだが、年末にこうしてこの曲を聴くと、新しい年を迎えたらその度に何度も生まれ変われるような、そんな気がしてくる。
それは来年への確かな希望であるとも言えるのだが、演奏後にGENが
「さすが04 Limited Sazabys。持ち時間まだあるから短い曲やりまーす」
と言うと、名古屋のライブハウスの名前を並べた歌詞のショートチューン「758」を放つという、「ここはYON FESなのか?」と思ってしまうくらいのセトリとなったのだが、最後にGENは
「来年はYON FESでお会いしましょう!」
と言った。すでに開催発表されているが、開催出来なかった2年を経ても、フォーリミはこの自分たちが育った愛知県でフェスをやる、続けていくということを全く諦めていない。本当に、またあの場所へ行けたら。YON FESでフォーリミと会えたら。年が明けても、それが2022年の最初の希望になるんじゃないかとすら思える。まだやれる。あの時と似ている。
このセトリも、口にする言葉も。このフェスで初めてフォーリミのライブを見て、やっぱりフォーリミは名古屋で育ってきた、名古屋のバンドなのだと思った。そうした存在だからこそ、名古屋でできることも言えることもたくさんある。そんなフォーリミの名古屋への愛が確かに感じられたライブだったし、そのライブが我々をさらに名古屋好きにしてくれるような。それはつまりこれから先もこのフェスで何度もフォーリミのライブを見ていたいということだ。
リハ.message
リハ.Cycle
1.Horizon
2.monolith
3.fade
4.Jumper
5.Chicken race
6.Now here, No where
7.My HERO
8.Just
9.Squall
10.758
20:10〜 BLUE ENCOUNT [BLESS STAGE]
長かったようでいてあっという間だった1日。その締めを担うのはBLUE ENCOUNTである。すでにONAKAMAを形成するオーラルやフォーリミから散々いじられてきているが、その2組ではなくてブルエンをトリにするというあたりにこのフェスからのブルエンへの揺るぎない愛を感じさせる。
リハでは田邊駿一(ボーカル&ギター)がこの時期ならではの桑田佳祐「白い恋人たち」を口ずさんだりしながら本番で登場すると、白いコートを着た江口雄也(ギター)の笑顔が眩しい。辻村勇太(ベース)は冬でもタンクトップというファッションを貫いており、高村佳秀(ドラム)といつもと何ら変わることはない。
つまりは出で立ち自体はいつものBLUE ENCOUNTであるのだが、田邊が挨拶してからその空気を一閃するような、「この曲から来るとは!」というエモーショナルなサウンドが炸裂する「Freedom」から、見た目はいつも通りだけれど、その音に込められた感情からはこうしてトリを任されたという感謝と責任と喜びを強く感じられる。
それは「ピンチの時ほど強い」とオーラルの山中がこのバンドを評していた通りの歌詞が、今この瞬間、この場所のためのものとして逆境すらも美しいものであるかのような「ポラリス」、レーザー光線がステージから飛び交うのだが、そのレーザーの当たる先をよく見てみると、会場の天井に曲のタイトルが鮮やかに映し出されている「囮囚」とすでに完全にブルエンのキラーチューンと化している曲たちが凄まじいテンションで鳴らされていき、そのテンションは声は出せなくても腕を掲げて飛び跳ねる観客にも広がっていく。この日の最後をここにいる全員が最高の時間にしようという空気に会場全体が満ちている。
そんな中で田邊は
「このフェスが初めて開催されたのが7年前で、その時は俺たちはトップバッターで出てたの。半分くらいは観に来てくれた人がいたんだけど、そんなに良いライブができた感じはしなくて。そんな俺たちが今日はこのフェスのトリを任せてもらってます!」
と、この日のテンションの高さ、トリをやる感慨にはしっかりとしたこのフェスとバンドとの歴史や思い入れがあることを口にするのだが、
「半分しか埋まらなかった」
ではなくて、
「半分くらい観に来てくれていた」
といい言回しに、当時観てくれていた人への田邊なりの感謝を感じられる。なかなかそういうふうに言える人はいないし、そこに田邊の人間性の本質が見えるのだが、
「今日、ここまで見てきて最高だったっていう人、声出せないから拍手してもらっていいですか?…その最高を更新しにきました、BLUE ENCOUNTです!」
というその後の言葉で完全にさらに空気が変わったのがわかった。だから田邊がハンドマイクでファルセットでサビを歌う、ダンスナンバーと言えるサウンドの「バッドパラドックス」さえもそこに込められている熱量が爆発して、それまで以上に観客が飛び跳ねまくっている。それは田邊がステージを歩き回りながらあらゆる方向にいる観客に目を合わせたりする姿や、辻村の力強いスラップというサウンドの要素もあるのかもしれない。
そんなバンドサウンドがさらに疾駆していくのは江口のタッピングが冴え渡る中、辻村と高村の力強いコーラスがバチバチにバンドのサウンドがぶつかり合う中に調和をもたらして観客をさらに熱く、そして一つにしていく「VS」から「DAY × DAY」というライブではおなじみの曲を連発していく。トリだからこそ、レア曲というよりも誰もが知っている、そしてライブで演奏することでバンドも観客も燃え上がれる曲を、ということが実によくわかる。
そして田邊が
「初めてこのフェスに出た時はまだ誰に歌うべき曲なのかわかってなかった。でも今はわかる。目の前にいるあなたに歌います!」
と、曲の持つ意味が変化した、というよりもしっかりと自分でわかったということを口にしてから演奏されたのは「もっと光を」。
実際に田邊は当時とはこの曲の歌い方も変わった。ただ張り上げまくるだけではなく、どこか慈悲深さも感じられるような歌い方になった。それは決して衝動が失われたということではなく、より強くしっかりとあなたの方を見て歌うようになったということ。だからこそ当時はバンドにとっての光を感じていたこの曲が、会場にいる1人1人の光になっているというように感じられる。それは今もこの大名曲の力が増し続けているということだ。
最後に田邊は
「今日、今年のキツかった日よりちょっとでも楽しかった人?」
と問いかけると、ライブ冒頭よりもはるかに大きな拍手が起こり、
「俺たちの居場所はここだ。知らない人がどう言ってこようと、俺たちはこの場所の素晴らしさを知っている。それを守るためにこれからも頑張るよ。だって頑張ればあなたの笑顔が見れるんだから」
と、フェスがなくなり、ライブが悪いものとして世間から捉えられてしまったこの1年を総括するような言葉を口にしたのも、この年末のフェスのトリだからであろうし、ブルエンが今どういう意識を持ってバンドを続けているかということでもある。
その際に田邊は何度も「大丈夫」という言葉を口にしていたので、もしかして「だいじょうぶ」を演奏するのかとも思ったのだが、そんな言葉の後に演奏されたのは「ハミングバード」だった。その歌い出しの
「間違っちゃいないから
今日 乗りきった一歩は
燦然と輝く足音なんだ
間違っちゃいないから
夢中で飛び込んだ世界は正解だ」
というフレーズが今ここにいることの喜びを、生きている実感を感じさせてくれる。ブルエンがこの日のトリで本当に良かったと思った。
このブルエンがトリで良かったという感覚は今年すでに感じたことがあった。それはゴールデンウィークのJAPAN JAMの最終日のSUNSET STAGEのトリとして出演した時だ。
あの時、世間から開催することも参加することもどうやって開催されているのか、どんなルールがあって、会場内はどんな状態なのかを見ることすらなく言われまくった。その時もブルエンは我々のことを正面から肯定してくれた。それはブルエンが会場や客席をちゃんと見た上で言ってくれた言葉だった。
「傷つけられても傷つけるようなことはするな」
というあの時の田邊の言葉は今でも心に強く残っている。この日のライブも後々振り返った時にそうなるはずだ。
だからこそ、やっぱりブルエンがトリで良かった。これからもいろんな場所で、何回でもそう思える時が来るんだろうな。
リハ.白い恋人たち
リハ.VOLCANO DANCE
リハ.Never Ending Story
1.Freedom
2.ポラリス
3.囮囚
4.バッドパラドックス
5.VS
6.DAY × DAY
7.もっと光を
8.ハミングバード
去年も開催できたという貴重なフェスだからこそわかることがある。それは去年の状況で開催したからこそ、そこで見つかった改善点を今年に活かせるということ。何よりも去年開催して無事に終わったという信頼を勝ち得ているということ。もちろん去年とは状況が違うけれど、そんな止まらなかったフェスだからこその想いが主催者や出演者から強く感じられたフェスだった。それが何よりも大事なことであるということも。
自分自身、今年はいろんなライブに行けるようになった。でもほとんどがワンマンだったりする。もちろんワンマンで好きなアーティストをじっくり見れるというのが1番だし、それが基本であるべきだとも思う。
でもワンマンじゃ行けないような規模の会場でたくさんの観客がいる光景を見れて、様々なアーティストが次々に出てきては、その想いをバトンのようにして繋いでいくというフェスの楽しさを久しぶりに味わうことができた。それはやっぱり緊張感の方が遥かに強かった、業火の中に飛び込んでいくような感覚だったフジロックや春フェスの時とは全く違うものだった。
そんなフェスの楽しさを久しぶりに感じさせてくれた、今年のMERRY ROCK PARADE。正直、自分は年末のフェスはCDJだけ行ければいいとも思っている。他のだいたいのフェスの出演者も見れるし、1組あたりの持ち時間も長い。何よりも寒さを感じることなく快適にライブを見まくることができるフェスだから。
でも今年こうやって久しぶりにフェスの楽しさを体感させてくれたからこそ、その借りや恩はちゃんとこれからも返しにいかないといけないなとも思っている。年末と同じくらいに、クリスマスの時期がライブ、フェスというものに染まっていく人生であれたら毎年この時期をもっと楽しく過ごせるはずだから。
そんな中で唯一と言っていいくらいに開催することができた冬フェスが名古屋で開催されている、年末フェスというよりはクリスマスフェスであるMERRY ROCK PARADEである。
昨年無事に開催された実績もあってか、収容人数も今年のフェスでは最大規模となっており、感染対策として参加者には「ワクチン2回の接種証明」か「会場内施設での抗原検査」が義務付けられている。
そのため、名古屋駅からあおなみ線(Zepp Nagoyaの最寄駅もあおなみ線内にある)に乗って30分ほどの金城ふ頭から徒歩ですぐの場所にある、会場のポートメッセなごやに着くと敷地内に検査場があったりするというのはさすがだな…と思うけれど、今年がこのフェス初参加、そもそも年末のフェスはCOUNTDOWN JAPANしか行ったことがないだけに、開場時間(分散入場にするためにそれぞれ時間をズラしている)を過ぎた後に会場に着いても入場するのにこんなに時間がかかるものなのかと思うのは、開場時間後ならすぐに入場することができるCDJのホスピタリティに慣れ切った身としては少し衝撃でもあった。
なので10時くらいに会場には着いていたのに、入場したのは開演ギリギリの時間とあって、物販を買ったりとか、会場内を見て回るという時間が全くないままでメインステージがある1号館へ。このフェスはもちろん、昨年2月にはcoldrain主催の「BLARE FEST.」もこの会場で開催されているだけに、映像で見ていたあの会場に来たんだなと思えるし、前方エリアは事前抽選制であるが、そのエリアから後の自由席も足元はマス目で区切られたスタンディング形式で、想像以上に客席が広く感じる。トイレに入ったりすると結構年季が入った建物であるということもわかるけれども。
11:00〜 秋山黄色 [BLESS STAGE]
1号館にはステージが横並びで2つあり、最初のライブが行われるのは向かって左側のBLESS STAGE。主催者を交えての諸注意を含めた挨拶的なトークを終えると、ステージサイドのスクリーンに見たかった4文字の漢字が並ぶ。この日のトップバッターにして、今年のMERRY ROCK PARADEの幕開けを告げるのは秋山黄色である。
おなじみのSEが鳴って登場したメンバーのうち、ギターの井手上誠とドラムの片山タカズミという2人はおなじみのメンバーであるが、もう1人は明らかに新顔なのだけれども、一目で誰だかわかるくらいによく知っている人だ。それは赤い公園としての活動を終えた藤本ひかり(ベース)であり、最近はBenthamの辻怜次が務めていたサポートベースはこれからは藤本が務めていくのか、あるいはそれぞれのスケジュールなどの都合によって変わっていくのか。最後にステージに現れた秋山黄色は秋のぴあフェスの時などに比べると少し髪が伸びており、目まではっきりと見ることはできない。
井手上がエフェクティブなギターを鳴らすと、そこにボーカルもエフェクトされた秋山黄色の声が乗る「Caffeine」でスタートするというのは最近のフェスでのお馴染みの立ち上がりであるが、どちらかというとイントロからAメロまではやや穏やかなサウンドと言える曲なのだが、サビで秋山黄色の歌唱もバンドのサウンドも一気に高く飛翔していく。サウンドが激しくなると途端に動きも激しくなる井手上はもちろん、藤本もぴょんぴょん飛び跳ねるようにベースを弾いているし、何よりもタイプ的に絶対に朝に強くないであろう秋山黄色の声もエフェクトを抜きにしても実に伸びやかである。
イントロでのセッション的な演奏も含んでの「アイデンティティ」が始まると、井手上の姿に合わせて観客もリズムに合わせて手拍子をするのが広がっていき、フェスが始まったなという感覚にさせてくれるのだが、人気アニメのタイアップということもあってか、観客はサビでは一斉に腕を上げる。バンドも重いキメを連発する最後のサビの演奏でその観客のリアクションに応える。そうしたライブにおける相互作用が確かに感じられる。やはり秋山黄色はこの規模のステージにふさわしい存在になったんだなということがわかる。
こちらはドラマ主題歌として秋山黄色の存在を世の中に知らしめた「モノローグ」であるが、バラード曲と言っていいようなタイプの曲であるのに、ライブで観るとそのパフォーマンスや鳴らしているサウンドは完全にロックであり、ライブお馴染みの3曲が続いただけで秋山黄色というミュージシャンのサウンドの幅の広さがよくわかる。それはとっ散らかっているような感じは一切ないのは、どれも秋山黄色の記名性の高い歌声で歌われていて、秋山黄色が描いたからこそのメロディだからだ。その歌声がこの天井の高いステージに本当に良く響いている。
このフェスはメインステージでも持ち時間が30分と短い。それだけに秋山黄色が曲間でティッシュで鼻を噛んでいるのを観ると、2年前のロッキンに出演した時のように持ち時間なくなるぞ!とヒヤヒヤしながらも、
「今日がライブ納めっていう人もいたり、新幹線に乗ってきてくれたっていう人もいたり。アーティスト側も色々あるし、この1〜2年は本当に辛いことばかりだったし、No Music, No Lifeって言いながらもアーティストも本当に辛い時は音楽が聴きたくなかったり、やりたくなかったりもする。それでも、音楽を好きな奴がいてくれる限りはこうやって音楽は鳴り止まないから!」
と、MCは本当にこのステージに立つべきアーティストの、コロナ禍以降にもライブを行ってきたアーティストのものであり、実は音楽以外のマルチな芸術の才能を持っている秋山黄色がやっぱり音楽に救われて生きてきた人間であるということを実感させてくれる。
そんなMCの後に演奏されたのは最新曲「ナイトダンサー」であり、そこに込められたメッセージがたった1人であってもこの世界を生き抜いて戦っていくという意思を確かなものにしてくれるし、そんな最新曲すらも新たなメンバーとして新たなグルーヴをバンドにもたらしてくれる藤本が秋山黄色の姉であるかのように頼もしく見える。初めて会った時は10代だった藤本をそんな風に感じることができるのは、辛い経験をした彼女がそれでも音楽を続けることを選んだからだ。サウンド的にはうねりまくる神崎峻とギターロックな辻とのちょうど間くらいというスタイルであるが、どうか、秋山黄色をこれからもよろしくお願いします。
そしてあっという間の最後に秋山黄色がイヤモニを外した剥き出しの状態であの印象的なギターリフを弾き始めたのは「やさぐれカイドー」で、バンドのサウンドはもちろん、秋山黄色のボーカルも最後の最後により獰猛に感情を放出していくと、間奏でステージ前に出てきた秋山黄色はステージ最前部分にある段差に背中を預けて逆立ちのような状態になりながらギターを弾き、さらには春のJAPAN JAM以降の恒例になりつつある、頼むから落ちないでくれと観客をハラハラさせるくらいにステージから身を乗り出すようにしてまでギターを弾くと、
「パンパンって手拍子したら一回演奏止めるから。その時にみんな来年やりたいことを願ってみて。今年出来なかったことたくさんあるでしょ?俺は来年もこうやってみんなと一緒にくだらない音楽をやりたいんだー!」
と叫び、本当に観客に願い事をする時間を設ける。自分は、今年行くことができない場所で秋山黄色のライブが見れたらいいないいないいなって思っていた。この日のようなライブを観ていたら、きっとそれは現実になると思える。
「元気がない時があったら検索してくれ。俺が噂の秋山黄色だー!」
と叫んで間奏を終えると、井手上がステージ袖まで消えてしまうんじゃないかと思うくらいに動き回り飛び跳ねまくりながらギターを弾きまくる。その姿はやはり秋山黄色という名前のバンドそのものだった。
演奏が終わると去り際に側転をしてトップバッターの役割を終えた。今年はZeppにワンマンで立つ姿も観ることができたという意味では、コロナ禍という僕らの足がもがくような状況であっても飛躍の一年だったと言ってもいいはずだ。このわずか30分でも「今日ここまで来て本当に良かったな」と思えるようなライブを見せてくれるのだから、きっと来年はもっといろんな場所で、もっと長い時間ライブをたくさん見れるようになるはず。その未来に用がある。
1.Caffeine
2.アイデンティティ
3.モノローグ
4.ナイトダンサー
5.やさぐれカイドー
11:45〜 Hump Back [NOEL STAGE]
先月の武道館ワンマンもツアーの途中の公演の一つだったということからもわかるが、年末にかけてもガンガンライブをやりまくって生きているHump Backがこのまだ早い時間にNOEL STAGEのトップバッターとして登場。
リハで曲を演奏してからそのままステージにとどまってSEなしで本番へ、というのは持ち時間が短いからかもしれないが、
「大阪Hump Backです。MERRY ROCKおはようございます!」
と林萌々子(ボーカル&ギター)が挨拶すると、最初に演奏されたのは「新しい朝」というフェスでやるには意外な選曲であるが、それはまだ朝と言ってもいい出演時間だからこそできる選曲であるし、このフェス、さらにはいわゆる冬フェスがこうして開催されていることでシーン全体が新しい朝を迎えようとしていることを歌ったものだと言っていいだろうし、この曲の際は歌に寄り添うようなサウンドだからこそ、林のボーカルは本当に伸びやかだ。秋山黄色もそうであったが、ワンマンで武道館を経験したことによって、より一層この規模に立つべきバンドとしての歌を鳴らしている。
そんな意外なオープニングから一気に元気良くバンドの演奏も林のギターソロも鳴り響く「拝啓、少年よ」でのこうしてライブをやれていることの楽しそうな姿は本当にライブをやって生きているというスタンスをバンドがやりたくて仕方なくて選んでいるということがわかるし、何もかもが真っ直ぐなバンドが
「あぁ もう泣かないで
君が思う程に弱くはない」
というフレーズを歌っているのを聞くとやはり泣かないでと歌っているのに涙が出そうになってしまう。
林の歌い出しの歌唱に合わせてぴか(ベース)が踊るように腕を動かすのが見ていて実に楽しくなる「生きて行く」では林が
「ねぇ先生 僕は今 でっかい場所で歌ってます!」
と叫ぶと、ぴかと美咲(ドラム)のハイトーンのコーラスの歌唱もこの広い会場に響き渡る。
「Hump Backはライブハウスで見るのが1番カッコいいんや。今日はここがライブハウスや!」
と言って、そのライブハウスバンドの生き様を見せるかのように演奏された「宣誓」は、武道館や大阪城ホールでもワンマンをやるようになったのは、そうした会場をもライブハウスに変えることができるバンドになったからだろう。だからHump Backのライブはこうした広い会場で見てもライブハウスで見ているのと変わらないという感覚になるのだ。
すると林はギターの音を鳴らしながら、
「マスクする生活も当たり前になって、モッシュもダイブもない、身動き取れないライブは楽しいかい?それでもみんな良い顔してるぜ。だってドキドキすることもワクワクすることも禁止されてないんだぜ。ルールも法律も政治家もそれを禁止することはできないんだぜ」
と弾き語るように観客に語りかける。ああ、そうだ、だからこうやって一緒に歌えなくても、モッシュやダイブが出来なくてもこうやってロックフェスという場所に時間や金をかけて足を運んでいるのだ。ドキドキしたり、ワクワクしたりする感覚は全く失われていないから。
そうした言葉の後に鳴らされた「番狂わせ」は今年きってのキラーチューンでありながらもその言葉をそのまま体現している曲であると言える。こうやってロックバンドのライブを見るために名古屋まで来てしまうような、そんなしょうもない大人であり続けたいと思うから。
美咲の激しいビートから、
「スリーコード エイトビートに乗って
僕らの歌よ どうか突き抜けておくれよ」
と自分たちの音楽のスタイルを歌うような「ティーンエイジサンセット」はこの会場にいる少年少女に捧げるように演奏されたが、それは実年齢的なものだけではなく、精神が少年少女である人も含まれている。つまりはこういう場所に来ている全ての人に向けた歌なのだ。
それにしても林は本当にこの1〜2年で特に強くなったと思う。放つ言葉の力の強さはもちろん、歌や歌う姿からもオーラが感じられるようになったというか。それは特に「LILLY」の
「君に会えたらそれでいいや」
というフレーズから強く感じられるし、そのフレーズの後にバンドが鳴らす音が重なり合う様もまたそう感じさせるのだ。
そんなライブはなんとリハも含めるとこの短い持ち時間で3回目となる、さすがに初見の人もこれだけ聴いたら覚えるだろうと思う「宣誓」で締められるのだが、この最後の演奏では
「MERRY ROCKまた来るからな〜!」
と林が叫んだりと、それは1回1回違う意味を持って鳴らされていたのだった。何より、演奏するたびにステージ上の楽しさが増していて、それが客席にも広がっていた。
JAPAN JAM、武道館など今年はHump Backのライブを観て、救われたなと思うことがたくさんあった。自分ですらそう思うということは、若い人はもっとそういう感覚を抱いていることだろう。もはやライブシーンにおける最重要バンドと言える位置にまで来ているように感じる、Hump Backの2021年だった。
リハ.宣誓
リハ.君は春
1.新しい朝
2.拝啓、少年よ
3.生きて行く
4.宣誓
5.番狂わせ
6.ティーンエイジサンセット
7.LILLY
8.宣誓
12:30〜 アルカラ [BLESS STAGE]
地元の神戸でサーキットフェスを主催しているバンドではあるが、アルカラにはもうこのフェスにはこのバンドがいないと、というフェスがいくつもあって、それはこのフェスも間違いなくその一つだろう。
9mm Parabellum Bulletのサポートでもおなじみの為川裕也(folca)をサポートギターに加えた4人で登場すると、いつも通りにタンバリンを首にかけた稲村太佑(ボーカル&ギター)が
「MERRY ROCKー!」
と叫んで「アブノーマルが足りない」でスタートし、早くもこれぞアルカラ!というメタリックなギターサウンドとリズムのグルーヴを見せてくれるのだが、アウトロでは疋田武史が魂込めまくりのドラムソロを叩きまくり、なんだなんだ今日は?と思っていると、そのドラムソロからそのまま、
「もう年末やけど、来年の準備はできてるかー!?俺たちはもう新しい曲を作ってるからなー!」
と言って祭囃子のビートが「ロック界の奇行士」を自称するこのバンドならではのどこか一筋縄ではいかないロックサウンドに融合する新境地でありながらもアルカラの曲でしかない「Dance Inspire」を新曲とは思えないくらいのライブの完成度で披露する。
そのまま「半径30cmの中を知らない」で下上貴弘も観客を煽るように腕を高く上げながらベースを弾き、もはや正規メンバーなんじゃないかというくらいに為川もギターを抱えてジャンプするという姿を見せてくれる。その熱量が客席に広がっていくことによってたくさんの観客が腕を上げてバンドの演奏に応えている。もう完全にベテランバンドだけれど、メンバーの見た目もライブのアグレッシブさも全く変わることはない。
すると稲村は先日、THE ORAL CIGARETTESのスタジオに遊びに行き、その後に山中拓也と2人で久しぶりに食事に行って話したら、会えなかった時期にどんなことをしていたかを話し合うことによって空白の時間が埋まり、コロナによってディスタンスが生まれた時代でも変わらぬものがあることを悟り、それはロックバンドの生き方も変わるものではないということも改めてわかったという。
そんな稲村を、アルカラを慕う山中が今でも大好きな曲だという「ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト」をこの後に出てくるオーラルに捧げるかのようにも演奏するのだが、
「いつか10年後でいい 笑い合って
偶然でもいい 何処かで会って
叶わぬ想いでも 信じたくて今」
と歌うこの曲を10年以上前からこうやってライブでずっと聴き続けている。それは稲村が言っていたようにこれから先も変わらないのだろうなとも思えるものであったし、
「30年後でも 笑い合って
四半世紀分 笑い合って」
というフレーズも確かなリアリティを持って響いていたということだ。
そんなライブの最後に演奏されたのは、稲村がサビを歌い上げるようにしてから、ここまでの爆裂っぷりと比べると穏やかなサウンドで演奏されているようにも感じる「秘密基地」であるが、別れた後の情景を歌っている歌詞がバンドが経験してきたであろう別れの多さ、それを乗り越えてこうして続けてきた強さを感じさせるのだが、ライブハウスをはじめとしたこうしたライブ会場こそが我々にとっての秘密基地である。そんな感覚を共有するかのような演奏だった。
勢いのある若手バンドがメインになっていくロックフェスにおいてはベテランであるほどにアウェーになってしまう。そうしていつのまにか前はよく出ていたフェスでもなかなか名前を見ることがなくなってしまったりもするのだけど、アルカラが今でもこうして大きなフェスの大きなステージに立っているのを見れるというのは嬉しいことであるし、アルカラは今でもこうしたステージに立つべきバンドであるとも思う。
リハ.デカダントタウン
リハ.キャッチーを科学する
1.アブノーマルが足りない
2.Dance Inspire
3.半径30cmの中を知らない
4.ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト
5.秘密基地
13:15〜 HEY-SMITH [NOEL STAGE]
HEY-SMITHもまた今年はコロナに翻弄されまくったバンドである。猪狩秀平(ボーカル&ギター)が自身のYouTubeチャンネル内で出演を楽しみにしていた京都大作戦はバンドが出演する週が中止になり、それでもなんとか自身が大阪で主催するHAZIKETEMAZARE FESTIVALはやはり開催することができず、本人もだいぶ凹んでいるように感じた。それでもこうしてこのフェスを始めとした冬フェスには多数参加できているというのはバンドにとって1年を良い形で締めることができることになるのではないだろうか。
メンバー6人がおなじみのSEでステージに登場すると、イイカワケン(トランペット)、かなす(トロンボーン)、満(サックス)というこのバンドならではのホーン隊の音が高らかに鳴り響く「Living In My Skin」でスタートし、猪狩とは真反対と言えるような爽やかな歌声を、それでもやはりライブバンドとして熱く響かせるYuji(ボーカル&ベース)メインボーカルの「Dandadan」と続くことによって客席ではスカダンスも発生するのだが、両サイドにディスタンスが取られている前方エリアは踊りやすいけれども、普通に隣にも観客がいる後方エリアではぶつかりまくってしまい、コロナ禍になる前よりもどこか申し訳なく感じてしまう。ヘイスミのように集客力のある人気バンドであればなおさらである。
バンドにとっては失意の1年だったとも言えるけれども、夏にはライブ会場限定シングルをリリースしており、そのCDに収録されている「Fellowship Anthem」は猪狩のギターがスカのリズムを刻む、実にこのバンドらしいスカパンクナンバーで、さらにもう1曲の新曲「Be The One」も完全にパンク・ラウドな曲であるという、例えコロナ禍であろうとも自分たちが鳴らすべき音楽、やりたい音楽は全く変わることがないというバンドの姿勢を感じることができるし、そうしたサウンドはかつてのモッシュやダイブをするのが当たり前だったライブハウスに戻れるようにという願いを込めているかのようでもある。そんな曲が入ったCDをライブ会場でリリースするのも必然性のあることだ。
ホーンのサウンドを鳴り響かせるだけではなく、イイカワケンは自身に寄ってくるカメラに目線を向けながら煽りまくる「Fog and Clouds」、急にライブ映像がバンド公式から公開されることになった、上半身裸の満がステージ上を転げ回り、かなすも叫ぶかのようにコーラスをする「Over」と続くのだが、ヘイスミは本当にフェスごとにセトリを変えてくるバンドだよなぁということを思い知らされる。それは猪狩がSNSでライブで演奏して欲しい曲のリクエストを募っていることにも繋がっている。
そんな猪狩は演奏中は重く速いビートを刻むTask-n(ドラム)が言葉を載せるためのリズムを刻み始めると、
「このフェスは去年の冬フェスで唯一開催できたフェスだったやん?それが春フェスに続いて、まぁ夏はほとんど中止になってしまったけれど、またこうして冬にも続いている。
TREASUREも毎年蒲郡の海辺で開催していたけど、今年はあの場所では開催できなくて、それでもガイシホールで開催するっていう音楽を止めない不屈の精神を持った主催のサンデーフォークには俺は本当にリスペクトを持ってる。俺はあのTREASUREの海辺の会場が大好きだから、来年あそこでTREASUREが開催された時のために、あそこで鳴らしたい曲をやるわ!」
と言って季節外れではあるが、来年の愛知の夏に願いを込めた「Summer Breeze」を演奏しようとした瞬間、猪狩が
「押さえていたコードがそもそも全然違っていた(笑)」
と言って、演奏を止めてやり直すことに。曲のメインボーカルであるYujiにも
「え〜(笑)」
と突っ込まれるくらいに、せっかくカッコよく曲に入るところが決まりきらないというのが実に猪狩らしくもあるけれども、その猪狩自身が苦笑しながらもう一度タイトルコールをしてから演奏された「Summer Breeze」はやはりこの室内なのに空調がないし換気をしているから冷気が入りまくってきて寒さを常に感じざるを得ないこの会場を一瞬だけ夏にしてくれたのだった。
そんなお茶目な一面も見せながらも、
「俺たちはパンクバンドだから!」
とパンク魂を見せつけるような「Let It Punk」でさらに演奏は激しく速くなっていき、ステージ上のメンバーのアクションの激しさも含めてそのヘイスミの持つパンクさがいかにカッコいいものかということを示してくれると、やはり最後にはヘイスミの象徴とも言えるホーンサウンドが突き抜けるかのように鳴り響く「Endless Sorrow」で観客も踊りまくっての大団円となった。ミスもあったが、それも含めて観客を笑顔にしてくれて、ライブという場を守り続けようと日々戦っているヘイスミの頼もしさを感じたライブであり、1年だったと言っていいのかもしれない。来年は猪狩の沈んだ顔を見るようなことがありませんように。
1.Living In My Skin
2.Dandadan
3.Fellowship Anthem
4.Be The One
5.Fog and Clouds
6.Over
7.Summer Breeze
8.Let It Punk
9.Endless Sorrow
14:00〜 KEYTALK [BLESS STAGE]
明らかにまたここで一気に客席が混雑してきたように感じるのは、この後に登場するのがKEYTALKだからであろう。
リハで盟友と言えるフォーリミの「monolith」を歌うというメンバーのテンションの高さはおなじみの「物販」のSEで登場してもそのままに、いきなりの「MONSTER DANCE」で観客は隣の人に気を遣いながらも振り付けを踊りまくるのだが、巨匠こと寺中友将(ボーカル&ギター)も首藤義勝(ボーカル&ベース)も気合い入りまくりで早くも叫ぶようにして歌っているのだが、前回自分がライブを観たハルカミライとの対バンの時にはハルカミライの関大地の出で立ちのコスプレをしていた小野武正(ギター)もこの日はキャップを被ったギター小僧というような格好で、最後のサビではギターを弾かずに振り付けを踊ったりしている。
バンドは今年ニューアルバム「ACTION!」をリリースしたばかりなのだが、そのアルバムのオープニング曲である「宴はヨイヨイ恋しぐれ」がロックフェスという宴に実にふさわしく響いている。KEYTALKのアルバムはバラエティに富んだサウンドになっているが、この曲はこれからもフェスではおなじみの曲になっていきそうである。
完全に季節は冬であるのだが、今年はほとんど開催されずに出演できなかっただけにライブの本数も少なくなってしまったのだが、特にこのバンドが数々のサマーアンセムを鳴らしてきた夏フェスの景色を取り戻すように、義勝の歌い出しの歌詞から夏の情景そのものを歌った「YURAMEKI SUMMER」で再び観客を踊らせまくるのだが、そのダンサブルなビートを担う八木優樹(ドラム)の吹くホイッスルの音も気合いに満ちまくっている。巨匠は
「やっぱりフェス楽しいー!」
と素直すぎる感想を口にしていたが、とりわけ鎬を削ってきた同世代バンドが多く集結しているだけにその思いをより強く感じているのだろう。
そんなフェスらしいダンサブルな流れから、同じフェスで演奏されてきた曲でも幸福な雰囲気に包まれながらメンバーとともに飛び跳ねる「Love me」とモードはポップな方へ向かっていく…かと思いきや、ここで急にフェスで演奏するような曲でもなければ最新作の曲でもない「マスターゴッド」を義勝が歌い始めただけに、客席からも「え?」という驚きの空気が満ちていた。確かにワンマンや対バンなどの長い持ち時間のライブではセトリを大幅に入れ替えたりするという、どんな曲でもいつでも演奏できるというバンドなのだが、今までは代表曲を中心に演奏していたフェスの戦い方もライブそのものが減ってしまったこの1〜2年でいろんな曲を演奏するというように変わってきている感がある。
武正は「ぺーい」こそやらないが、メンバーに気合いが入っているかを確認すると、そんな中でも「ACTION!」からはこちらもタイトルからしてフェスによく似合う「もういっちょ」も演奏され、巨匠の懐が深くも力強いボーカルがバンドを引っ張りながら、ラストは春の到来を待ち遠しく感じさせる「桜花爛漫」のキラキラと輝くようなメロディを響かせながらも、武正のギターは唸りまくるというロックバンドとしてのポップサイドを見せる形になった。
フェスで大きく育ってきたKEYTALKのフェスへの愛と感謝を感じるとともに、
「最後のBLUE ENCOUNTまで涙は取っておきましょう!」
という武正の言葉からは、共闘してきた仲間たちへの愛が確かにあった。やっぱり1番嬉しかったのはそうした仲間たちに会えたことなのかもしれない。
リハ.Summer Venus
リハ.sympathy
1.MONSTER DANCE
2.宴はヨイヨイ恋しぐれ
3.YURAMEKI SUMMER
4.Love me
5.マスターゴッド
6.もういっちょ
7.桜花爛漫
14:45〜 BIGMAMA [NOEL STAGE]
クリスマスの日にファンサービス的な精神の強いワンマンライブを行ってきたバンドであるだけに、クリスマスの時期のフェスというイメージの強いこのフェスにうってつけのバンドなのがBIGMAMAである。ましてや近年もクリスマスソングを生み出しているだけに、クリスマスとこのフェスへの思い入れも強いはずである。
SEからしてもう祝祭感に溢れた「No.9」が流れているのだが、いざメンバー5人が登場すると金井政人(ボーカル&ギター)が
「MERRY ROCKに歓びの歌を」
と言ってSEからそのまま演奏が始まり、髪が短くなって色合いも独特なものになっている東出真緒(ヴァイオリン)が「Yeah」とコーラスする傍で、立ち上がってバスドラを踏み続ける、バケツを被ったドラマーことビスたんの姿を知らない人も多いのか、どこかざわめきのようなものが起こっていたようにも感じた。
ハイパーかつ安井英人(ベース)が支える跳ねるようなダンサブルなサウンドにヴァイオリンの美しい調べとBメロでの観客も一体となっての手拍子がBIGMAMAでしかないライブの楽しさを存分に体感させてくれる「MUTOPIA」、さりげなく作家としても活動するようになったくらいの文筆家である金井のストーリーテリングが炸裂する「The Naked King 〜美しき我が人生を〜」というあたりは近年のライブではおなじみの曲たちであるが、常に安定感とロックバンドの衝動を両立させてきた柿沼広也のコーラスに負けないくらいに金井のボーカルも実に伸びやかである。
しかしながらそこから思わず「この曲なんだっけ?」とイントロを聴いた時点では何らかの曲をライブならではのアレンジをしているのかとすら思ったくらいに全くこうしたフェスやイベントで演奏するとは思っていなかった「Ruby Red Shooting Star」という昨年リリースされた冬の曲を集めたコンセプトの強いep「Snow Motion」に収録されている曲を披露し、
「雪化粧でめかして
揺れるイルミネーション
ウィンクして急げの合図
暗がり夜道は
ピカピカの赤い鼻を
目印にすれば
迷わずにいけるさ」
という歌詞はどうしたってクリスマスという時期であることを感じさせる、このフェスのためなんじゃないかとすら思うような曲であるのだが、そこへさらにこちらも「Snow Motion」収録曲でありながら、今年に別アレンジバージョンをまとめたシングルとしてもリリースされた「誰もがみんなサンタクロース」というクリスマスソングの連発っぷり。
「Merry Christmas
Happy Christmas
世界中のどこもかしこもサンタが増殖中
Merry Christmas
Happy Christmas
幸せな時間が溢れますように」
というフレーズはこれまでにもクリスマスライブを行っては幸せな時間をファンに提供してきてくれたBIGMAMAだからこそ、クリスマスという日が誰かが誰かを幸せにすることができる日であるということを噛み締めさせてくれるし、このクリスマス曲の連発は他の冬フェスやイベントに出たとしてもやらないだろう。それは同じようにクリスマスというものを愛してイベントを作ってきた、このフェスへの愛が溢れていた。
そんなライブの最後を担うのは、こちらも「Snow Motion」収録曲でありながらも、すでにこうしてライブの締めの曲として定着した感すらある「PRAYLIST」で、ビスたんが立ち上がって観客を煽りながらバスドラを踏む中で金井が歌う
「願い事ひとつ書き出そう
些細なもので構わない
願い事ふたつ書き出そう
大いなる野望や大志も
死ぬまでにしたい全てを」
という歌い出しのフレーズに、願い事を願うとしたら、やっぱりこうやって来年以降もこの時期にライブが観れていますようにということを考えていた。すると金井は演奏が終わって去り際に
「メリークリスマス、BIGMAMAでした!」
と口にした。やはりBIGMAMAにとってクリスマスというのは特別な日なのだ。
実はバンドとして深い関係にあるアルカラもそうであるが、やはりBIGMAMAもなかなか今はこうした大きいステージで見る機会が少なくなってきている。それでもこうしてライブを観ると、ずっとこうした広いステージでライブを見れたらいいなと思うくらいに素晴らしいライブを見せてくれるし、このフェスにおいては間違いなくメインステージに立つべき理由を持っているバンドだ。かつて足を運んでいたクリスマスワンマンにまた行きたいなと思うくらいに、この日でまたクリスマス=BIGMAMAのイメージが強く固まったライブだった。
1.No.9
2.MUTOPIA
3.The Naked King 〜美しき我が人生を〜
4.Ruby Red Shooting Star
5.誰もがみんなサンタクロース
6.PRAYLIST
15:30〜 氣志團 [BLESS STAGE]
何というか、タイムテーブルを見ても1組だけ完全に異質の存在である。というか後半の方に控えているバンドのファンの若い方々は氣志團という存在を知っているのだろうかと心配になってしまうくらいの浮きっぷりだ。そんな氣志團のライブをこうして見れるのも、氣志團万博が今年もリアルでは開催できなかっただけに実に久しぶりである。
この日は白い学ランを着たメンバーがステージに登場する際のSEが完全にEDMサウンドの「房総魂」であり、早乙女光(ダンス&スクリーム)が楽団の団員のようにタムを抱えて打ち鳴らすという姿も含めて、氣志團が時代とともに自分たちの音楽をアップデートしてきているバンドであるということがよくわかるのだが、やはりこれだけ「房総」というフレーズを歌詞に取り入れまくってくれているのは千葉県民の後輩としては本当に嬉しいし、やっぱり氣志團こそが千葉県を1番盛り上げてきてくれたアーティストであると思える。BUMP OF CHICKENもELLEGARDENもさすがに歌詞に「房総」なんて言葉は使えないだけに。
綾小路翔と早乙女のダンスは全く錆びることなくキレッキレであるということを「デリケートにキスして」をライブで演奏するのを見るたびに思うのであるが、ここまでは割と正攻法なバンドとしての戦い方で、それは2019年の氣志團万博初日の出演時のパフォーマンスを思い出させる。あの時は直前に台風が直撃して本当に大変だったことも。
するとここでおそらくはここまでの2曲を全く知らない人も綾小路と早乙女に合わせて振り付けを踊る「One Night Carnival」で、この曲の持つ力を改めて感じさせるというか、タイムテーブルを見ると完全に浮いた存在である氣志團の曲によって会場が一つになっていることがハッキリとわかるのであるが、これまでのライブでは観客が大合唱して綾小路が感動するという寸劇じみた光景がお決まりになっていた最後のサビも、今は観客は歌うことはできないために無音のまま。その様を見た綾小路は、
「一緒に歌うことも、騒いだり肩を組んだりすることもできないし、キャパも減らさないといけない。こんなんでどうやってライブやればいいんだ!」
と悲痛な胸のうちを明かし、どこか客席からは涙を拭うような音すらも聞こえてくるのだが、
「でも俺はお前たちの永遠の2個上の先輩。先輩が発明しました!ハミング!そうすれば飛沫が飛ばない!」
と言って合唱パートはハミングバージョンへと様変わりし、感動的なようでいてどこか笑えるようなものになる。
ハミング自体は千葉LOOKのサイトウ店長が昨年からすでに取り入れ(もしかしたらそこから伝授されたのかもしれない)、バックドロップシンデレラもライブで使っているが、こんなにも誰もが知っている曲で1万人以上の人がハミングするという光景はこれまでになかったんじゃないだろうか。
そうして「One Night Carnival」を今の状況に合わせた形で観客と一緒に演奏してみせると、
「先生驚いてます。紅白歌合戦に2回も出たことがあるのに、あんまり盛り上がってなかったから(笑)
でもこの「One Night Carnival」がリリースされたのは2001年。もう20年も前なんだね。君なんかまだ産まれてないもんね(笑)
だから、今前方エリアにいるお前たちが本当はTHE ORAL CIGARETTESを前方で見たかったのもわかってる(笑)
「前方エリア、氣志團だけ当たって草」
とか言ってんだろ!(笑)
でも今ここにいるお前たちはオーラルを後方でしか見れない(笑)
だから俺たちがオーラルになってやる!」
と言うと、これまでにもDA PUMP「U.S.A.」やBTS「Dynamite!」という大ヒット曲から、前日のポルノ超特急では主催バンドのROTTENGRAFFTY「金色グラフティー」をマッシュアップしてきた「One Night Carnival」最新バージョンを、オーラルの「狂乱Hey Kids!!」でやってみせ、メロディは「狂乱〜」なのに歌詞が「One Night Carnival」という、毎回何でこんなに上手くハメられるんだろうと思うくらいにマッシュアップしてみせる。それはそうした他のアーティストの曲を完璧に演奏することができる氣志團の優れた演奏技術とアイデア力、さらには氣志團万博を主催することによって、あらゆるジャンルの勢いのある若手バンドたちのライブを見てきた勤勉さによって作られているものだ。それはここにいる誰もがわかる曲であるだけに、異質な存在の氣志團がこのフェスの主役として観客を狂乱させていた瞬間でもあった。
そして最後は西園寺瞳がツインネックギターを弾くという、普通に優れたギタリストであることを示してくれる、氣志團の冬のラブソング「Secret Love Story」。(ドラマ仕立てのMVは超名作)
名ソングライターの星グランマニエ(ギター)もボーカルを務める曲であるだけに、その際には綾小路と早乙女が星を讃えるようなパフォーマンスもし、そこにさらに西園寺と白鳥松竹梅(ベース)までも寄ってきて5人が固まるという構図も見ていて実に楽しいのだが、この曲で締めるというあたりに今氣志團が冬フェスに出演することにした意識が現れていたように思えた。
「これは絶対に時間ないぞー!撤収ー!」
と言って綾小路が重いものを持ち上げられずに倒れるという演奏終了後のコント的なドタバタ劇は、完全に時間を押す一因になっていたけれど。
自分が10代の頃に氣志團がちょうど「One Night Carnival」によってブレイクしたので、それからずっと見てきたバンドであるとも言えるのだが、あの当時からすでにキワモノ感というか、散々「すぐに消える」と言われながらも、プロデューサーの阿部義晴(ユニコーン)の手腕もあり、氣志團は今も消えることなく、ロックシーン屈指のエンターテイナーとして、そしてフェスに出ては曲を知らない人ばかりであっても全てをかっさらっていく存在として今も元気に活動を続けている。その氣志團の魅力を地元の千葉で体験できる、一度行ったら毎年通う様になってしまうくらいに素晴らしいフェスである「氣志團万博」が来年こそはあの何もない場所で開催されて、またあそこで会えるように。ギリギリだったけど、今年中に氣志團が見れて本当に良かった。
1.房総魂
2.デリケートにキスして
3.One Night Carnival
4.One Night Carnival 2022 〜狂乱Hey Carnival!!〜
5.Secret Love Story
16:15〜 Crossfaith [NOEL STAGE]
こうも極端なタイムテーブルか、というのはエンタメ精神溢れる氣志團の後がラウドバンドとしての迫力に満ちたCrossfaithだからであるが、そもそも氣志團万博にもcoldrainやSiMというラウドバンドが毎回名を連ねているだけに、そう思うと違和感はない並びなのかもしれない。
もうSEの段階から完全にこれまでと音圧が違う中で最初にTeru(プログラミング・ボーカル)が登場してお立ち台の上に立って観客を煽りまくると、そのまま自身の卓に移動して音を操作し、メンバーが次々に登場。Koie(ボーカル)はバンドの巨大なフラッグを掲げており、このライブへの並々ならぬ気合いを感じさせる。
そんなライブのスタートはラウドロックとしての重さにエレクトロというよりレイヴサウンドの凶暴性が加わり、Koieのデスボイスが炸裂しまくる「Xeno」であるのだが、こんなにも重く強いサウンドをこのコロナ禍の中でも磨き上げてきたというのが一瞬でわかるくらいのメンバーの姿。Kazuki(ギター)とHiroki(ベース)はステージ上を目まぐるしく動き回りながら演奏し、Tatsuya(ドラム)のビートがそれを後ろで支えながらもさらに前へ先へと疾駆し、牽引していく。もはや日本のバンドを見ている様な感覚ですらないくらいの凄まじさだ。
「Freedom」では自身専用と言っていいくらいに近い位置にいるカメラマンに接近したTeruがカメラを揺らしたり、カメラに向かって舌を出したりというメンバー内で最も自由なパフォーマンスを展開すると、そのTeruはライブを見ていても寒さを感じてしまうくらいのこの会場で上半身裸になり、「Wildfire」ではKoieとツインボーカルという形でボーカルも務めるのだが、これだけ激しいサウンドで飛び跳ねまくっている中でもしっかりルールを守っているこのバンドのファンであろう前方エリアにいる人たちも本当に凄い。
するとKoieは2020年の2月にこの会場でcoldrainが主催したフェス「BLARE FEST.」に出演した時のことを懐かしそうに語りながら、1人缶ビールを開けて乾杯する。そうして「The Perfect Nightmare」に突入すると観客にタオルを回させるというこの日このバンドでしか見れなかった光景に。
するとKoieは観客を一度床に座らせてカウントとともに大ジャンプをさせてからラストの「Leviathan」へと突入していくのだが、そのジャンプをした効果によって、前方エリアだけでなく後方で見ていた人たちも飛び跳ねまくるくらいに空気が一気に変わった。それを生み出していたのはもちろんバンドのサウンドの強さであり、久しぶりに見たライブはこのバンドが世界でも当たり前のようにライブをやり、あのHYDEが絶賛するというのが実によくわかるくらいに圧巻だった。
去年から今年、ラウドロックシーンは色々あった。それはもちろんコロナに端を発したものであるのだが、本来ならばただただカッコいい音楽を鳴らしているバンドが「もうあのバンドはああいうことするなら見なくていい」という評価を下されたりするようなことにもなってしまった。
もちろんそこにはやり方や責任などあらゆる要素が介在しているのだけれども、今のこの状況の中でもラウドロックを鳴らしているバンドというのは絶対にラウドロックが1番好きで、これがカッコいいと信じているからこうしたルールのある中でもバンドを続けているはずだ。
そんなバンドたちの音楽やライブを、何も余計なことを考えることなく、ただただ「カッコいいな」って思える世の中に戻って欲しいと、演奏が終わって笑顔で全員で肩を組んでいたCrossfaithのメンバーを見ながら思っていた。
1.Xeno
2.Freedom
3.Wildfire
4.The Perfect Nightmare
5.Leviathan
17:00〜 THE ORAL CIGARETTES [BLESS STAGE]
間違いなく、ライブが始まる前から観客の数が1番多い。なんならステージがハッキリ見えないくらいのレベルで。それが今のTHE ORAL CIGARETTESのいる状況を物語っていると言っていいだろう。
なのでメンバー4人がステージに登場すると、かろうじて見えるのはどこか寝巻きのようにも見えるくらいにカジュアルなスウェットを着用した山中拓也(ボーカル&ギター)がギターを持っているということであるということであるが、その山中がギターを弾きながら歌い始めたのはなんと「Shala La」という、フェスの1曲目として今演奏するとは全く予想していなかった曲で、もちろん客席もどよめきながらもそんな曲が聴けた喜びを爆発させている。山中も、コーラスをするあきらかにあきら(ベース)もどこかその先制攻撃を楽しんでいるかのように不敵な表情を見せるのだが、鈴木重伸(ギター)はいつもと変わらぬクールな表情のままである。
山中の妖艶な歌声がタイトル通りにどこかドリーミーなサウンドと絡み合うことによってオーラルの持つ世界観にグッと深く誘ってくる「Dream In Drive」から、中西雅哉(ドラム)のビートが一層激しくなるのはリリースされたばかりの新曲「MACHINEGUN」であるのだが、この曲が「カッコいいロックバンドとしてのオーラル」を本当に強く感じさせてくれる。自分が心の底でそんなオーラルの姿を見たかったんだなということが自分でもよくわかるくらいに、完全にロックモードのオーラルだ。
すると山中はこの日のトリがONAKAMAを共に形成するBLUE ENCOUNTであることに触れ、
「彼らはピンチの時になればなるほどにやってくれるバンドですので!」
と愛あるプレッシャーをかけまくるのだが、どこかそこにはほんの少しだけ自分たちではなくブルエンがトリであることの悔しさが滲んでいるようにも感じられた。
「MACHINEGUN」が最新曲であるだけに、
「新曲やったんで、次は昔の曲やりまーす」
とイタズラっぽく口にしてから演奏されたのは観客が歓喜の「Mr.ファントム」で、それがここまでの曲と地続きになっている流れに感じられるのはやはり「MACHINEGUN」がロックモードの曲だからというのが大きいのだけれども、最後のサビ前での鈴木とあきらの楽器を抱えてのハイジャンプの高さもまた「カッコいいな…」と思えるロックバンドの姿である。
さらには氣志團がマッシュアップバージョンとして先に演奏していた「狂乱Hey Kids!!」も本家バージョンで演奏されたのだが、氣志團バージョンに触れなかったのはそのライブを見れていなかったのか(この週末、オーラルは各地の大規模イベントに毎日出演しているだけに)、あるいはそれをわかっていたから本家バージョンをセトリに入れていたのか。それは本人たちにしかわからないことであるが、完全にロックバンドのオーラルとしてのキラーチューン祭りである。
すると山中は
「ロックバンドシーンも誰と誰が仲良いとか仲悪いとか見ていてもようわからんと思うけど」
と前置きをしながら、それでもそれぞれがロックシーンを守り、そして盛り上げるために活動していることを語り、
「ロックシーンをこれからもよろしくお願いします!」
とロックバンドを代表して言うと、メンバー全員で深々と頭を下げた。
思えば山中は去年からロックバンドの出演するライブハウスがルールを守ってライブをやっているのに、ルールを全く守らずに闇営業のようにしているクラブなどへの嫌悪感を真っ向から口にしていた。自分たちの育ってきた場所が危機に晒されていて、でもそこが本当は素晴らしい場所であるということをちゃんと伝えたい。それこそが抜群の嗅覚でもって近年は自分たちのサウンドを広げるような活動をしてきたオーラルがコロナ禍においてロックに回帰した最大の理由なんじゃないかとも思う。
最後に真っ赤な照明に照らされながら、山中がギターをぶん回すというロックなパフォーマンスを見せた「Red Criminal」はロックバンドが1番カッコいいということを、ロックバンドである自分たちのパフォーマンスで証明するかのようだった。
あらゆるジャンルを巧みに取り入れて自分たちの音楽へと昇華した「SUCK MY WORLD」も実に良いアルバムだったと思っているけれど、こうしたライブを見ていると、やっぱりオーラルにはロックが1番似合うし、カッコいいと思える。そんなオーラルを見れているということが、本当に頼もしく感じられた。
1.Shala La
2.Dream In Drive
3.MACHINEGUN
4.Mr.ファントム
5.狂乱Hey Kids!!
6.Red Criminal
17:45〜 ヤバイTシャツ屋さん [NOEL STAGE]
もはや完全に自分たちのものにしていると言っていい「喜志駅周辺なんもない」のサビを瑛人「香水」に変えて歌うというアレンジをリハで演奏するというサービス精神を見せてくれたヤバTはしかし、ここにいる人に来年のツアーにも来て欲しいと告知するも、
「名古屋はチケットが取りづらいから、札幌がチケット取りやすくておすすめです」
とわざわざ名古屋の人を飛行機に乗せて札幌まで来てもらおうとして笑わせてくれる。
本番ではこやま(ボーカル&ギター)ともりもと(ドラム)はいつもと全く変わらない出で立ちであるが、しばた(ベース)はピンクの道重さゆみTシャツの上に「検査済み」というコロナの感染検査結果のシールを直で貼り、下はスウェットという冬仕様の出で立ちで、いきなりの「かわE」で観客が歌えない「やんけ!」のフレーズをメンバーが歌い、会場に楽C超して楽Dな空気が満ちていく。そんな曲を演奏しているバンドはかっこE超してかっこFなのである。
もりもとの疾走するツービートドラムに合わせてこやまとしばたのボーカルがこの広い会場いっぱいに伸びる「無線LANばり便利」も合唱パートを観客の心にこやまは委ねるのだが、
「世界のどこでも 君と繋がれる 県境越えて」
というフレーズ部分で飛び跳ねまくれるだけでも最大限に楽しいし、こうした大きなフェスに出ているヤバTの姿を見ていると、こんな明らかに他に歌う人が全くいない歌詞の曲が完全にヤバTだからこそのものとして様々なバンドのファンがいる場でも受け入れられていることがよくわかる。
ヤバTはフェスやイベントはもちろん、ワンマンでもガラッとセトリを変えてくるバンドであるために、その日にどんな曲が演奏されるのかは実際に見てみるまで全くわからないのだが、この日は「この曲フェスでやる!?」と思ってしまう、こやまの学生時代の甘酸っぱいというか上履き味の思い出がパンクビートに乗せて歌われる「sweet memories」が演奏されたのにはビックリ。常に抜群の安定感を誇るしばたのボーカルに加えて、こやまもこの日はファルセットが非常に良く出ていて、自分たちの曲を真っ直ぐに伝えるために常に技術を磨いていることがよくわかる。それは記念碑的なライブだった大阪城ホールでのワンマンを見たからこそでもある。
そんなこやまのギターがエモーショナルに鳴り響く「ハッピーウェディング前ソング」では大合唱はできなくても観客の腕がガンガンに振られ、サビに入った瞬間に大きく飛び上がる観客の姿を見ているのも実に楽しい。しばたの「Yeah」というハイトーンの叫びもこうしてフェスに出演できているという喜びに満ち溢れている。つまりヤバTのライブには、鳴らす音には音楽と音楽が鳴る場所への愛が確かに乗っている。
しかしながらこやまは
「今日は俺たちのONAKAMAのBLUE ENCOUNTがトリで…」
と嘯き、
しばた&もりもと「違う違う!」
こやま「4バンドで合同ツアーしてアー写撮ったやん?」
しばた「うちらお仲間外れやから(笑)」
こやま「ほなこっちのやまたく(こやまたくやの略)もよろしくってことで…(笑)」
と絶好調極まりないMCはしばたの
「ヤバイTシャツ屋サンタからの音のプレゼント」
というクリスマスならではの上手さに着地し、なかなかフェスが出来なかった今年もたくさんライブハウスでライブをやってきたバンドとしてのライブハウス賛歌「Give me the Tank-top」で疾走し、ヤバTのマジなパンクバンド、ライブハウスバンドっぷりをライブハウスよりはるかに広いこの会場に響かせると、こうしたフェス会場で大きな声でみんなでコーラスを歌えるようにという願いを込めるかのような「NO MONEY DANCE」で2021年に回ってきたツアーで演奏され続けてよりタフになった曲たちがその一年間の集大成として鳴らされる。もちろんヤバTにはまだこれから年末にかけてもライブが控えているのだが。
そんなライブの締めはやはり観客は叫べないけれども、それでも腕を左右に振ったりするだけで本当に楽しい、こうしてフェスという場に集まった我々(パリピじゃないけど)のテーマソングとも言えるような「あつまれ!パーティーピーポー」で終わりかと思ったら、
「始まりが押してたから、まだ時間ある。残り3分でできるかな!?」
と言って「Tank-top of the world」を演奏し、
「Go to rizap!」
のコーラスを全部もりもとにやらせて、こやまとしばたはその際にもりもとの方を向くというのは最近のおなじみであるが、時間が迫っているだけに明らかにそのもりもとのドラムが超速バージョンと言えるくらいに速くなっていき、こやまは足元の時計を見ながら
「あと1分で最後のサビまでいけるかな〜!」
とどこか楽しそうに時間をギリギリまで使う。それはそのこやまが残り時間を言うことによってリズムを速くしたりしているところもあるのだろうし、音楽と曲を使ったフェスにおける最高のパフォーマンスだ。
最後のキメを鳴らした後にこやまが時計を見ると、
「残り4秒!ありがとうございました!」
と言って3人はあっという間にステージから消えた。
ヤバTがフェスという場所でやりたいこと、やろうとしていること、ヤバTがどれだけカッコいいバンドで、凄いバンドなのかということ。それが凝縮されたかのような時間だった。
こんな世の中の状況である2021年でも、ヤバTのライブがたくさん見れたことは本当に幸せなことだったし、何回見ても飽きることはない、毎回見るたびにあくまで音楽と曲で驚かされる。そんなヤバTを見てきた2021年はまだもうちょっと続く。それでも、こやまが
「こういう制限があるライブは今年でもう終わりにしたい」
と言っていたように、これで100%最高なんじゃなくて、我々はバンドと一緒に目指すべきものがある。来年もヤバTと一緒にそれを掴み取りに行きたい。
リハ.ZORORI ROCK!!!
リハ.くそ現代っ子ごみかす20代
リハ.喜志駅周辺なんもない 〜 香水
1.かわE
2.無線LANばり便利
3.sweet memories
4.ハッピーウェディング前ソング
5.Give me the Tank-top
6.NO MONEY DANCE
7.あつまれ!パーティーピーポー
8.Tank-top of the world
18:30〜 SUPER BEAVER [BLESS STAGE]
オーラルがそうであったように、もはやこの規模ですら収まりきってないなと思えるくらいにたくさんの観客が、それこそ逆サイドのステージの奥の方にまで詰めかけている。そりゃあこれは来年のホールツアーのチケットが当たらない人ばかりなのもわかるなというくらいの状態となっているのがSUPER BEAVERである。
そんな大観衆が待ち構える中で4人がステージに登場すると、上杉研太(ベース)も赤く染まった髪が少しサッパリしているように見えるのだが、渋谷龍太(ボーカル)が髪のボリュームがなくなっているように見えたのは髪を後ろで結いていたからである。
そんな渋谷の姿についつい目が行きがちになりながらも、真っ先にリズムを刻み始めたのは藤原広明(ドラム)でかなり長めに繰り返しハイハットを中心としたリズムを刻むと、そこにこの日も金髪姿が眩しい柳沢亮太(ギター)の音が重なり、渋谷が
「ロックスターは死んだ まだ僕は生きてる」
と歌う「27」からスタート。偉大なロックスターたちが世を去っていった年齢を超えてもロックバンドを続けているからこそ、こうして大観衆の前に立っている姿を見ることができる。それが実に愛おしく感じるオープニングだ。
恒例の渋谷の自分たちを「ポップミュージック」と自称する挨拶の後に演奏された「青い春」はまさにバンドの持つポップさを強く感じさせる曲であるが、この曲を歌い始める瞬間に渋谷が結いていた髪を解いて長い髪が左右に流れるという瞬間の色気たるや。今ビーバーのワンマンに行くと渋谷の出で立ちを真似ているであろう人もいるけれど、それもわかるような。その横で柳沢は叫ぶようにして観客に手拍子を促す。その熱さがこのポップミュージックをバンドとしての意志があるものにしている。
すると渋谷は
「俺たちは現実逃避する音楽をやりたいんじゃない。あなたが明日から、いや、今この瞬間から現実と向き合っていける音楽を鳴らしたい」
と自分たちが鳴らしたい音楽、それによって聴き手一人一人に与えたい力について口にしてから「予感」を演奏する。
「どうあったって自分は自分で
どうやったって誰かにはなれない
ならば嫌うより 好きでいたい 想うまま 想っていたい
会いに行こうよ 会いたい自分に」
という歌い出しの歌詞も、
「正解なんて あって無いようなものさ 人生は自由」
というサビのフレーズもそのMCがそのまま歌詞に、音楽になっているかのようだ。
基本的に歌詞を書いているのが柳沢で、MCをするのが渋谷であるということは、精神的に通じ合っているメンバー同士だからこそその意志を共有しているということだろう。それは上杉と藤原のコーラスの声の大きさ、歌うときの表情を見ていても感じることができる。
そんなビーバーが2021年に世に放った新たな名曲「名前を呼ぶよ」の、
「名前を呼んでよ 会いに行くよ 命の意味だ 僕らの意味だ」
というフレーズはそのままこうしてライブという場にお互いに会いに来ていて、命の意味を確認し合っているからこそのリアリティを感じざるを得ない。こうした近年の曲においては渋谷が歌わずに3人のコーラスのみになる部分もあるのだが、それが複数ではなく、1人が重なったものであることも感じさせるのは、ビーバーがいつだって「あなた1人」と対峙してきたバンドだからだ。
そんな中でも渋谷はやはりこれだけの規模、これだけの数のあなたには感じるところもあったようであり、
「昔は100人くらいの規模のライブハウスでも人が全くいないのが当たり前だった。そんなバンドがこうした舞台に立たせてもらって、あなたの前で歌わせてもらっている。バンドっていうのは聞いてくれるあなたがいないと存在している意味がない。
生きる理由をあなたから貰えたから、あなたの生きる理由になれたら」
とやはりビーバーが音を鳴らす、ライブをやる意味を真正面から語ると、まさに
「信じ続けるしかないじゃないか
愛し続けるしかないじゃないか
身に覚えのある失敗を どうして指差せる?」
という歌詞がやはりその言葉そのものが音楽になったかのように響く「人として」が完全にこの広い会場でこの歌、この音以外に何も耳に入らないというか、入れようとすら思えないくらいの説得力を持って鳴らされる。ビーバーのメンバーが人としてカッコよく生きているということが、この景色の理由であり証明だ。
そうして演奏以外にも言葉を口にする時間が多かっただけに、これで終わりかとも思ったのだが、今1番あなたに伝えたい言葉としてバンドがそれを曲として、音楽として最後に放ったのが「アイラヴユー」。特定の誰かではなくて、目の前にいるあなたに向けて歌われる「アイラヴユー」。そのあなたの数が増えた結果としてのこのライブで、最後に最大の衝動を炸裂させた。
これから先、こうした規模のあらゆるフェスでさらにたくさんのあなたと対峙しながら、1番大きなステージでその日の最後を締めるようになる日がきっとくる。そんな、楽しい予感を確かに感じていたし、どんなライブも100%以上で臨むビーバーのライブへの想いが溢れ出ているように感じた時間だった。
1.27
2.青い春
3.予感
4.名前を呼ぶよ
5.人として
6.アイラヴユー
19:20〜 04 Limited Sazabys [NOEL STAGE]
あっという間に残りはあと2組。地元である名古屋のクリスマス兼忘年会的なフェスであるだけに、NOEL STAGEのトリとして出演するのが、先月には幕張メッセでYON EXPOを2days開催したフォーリミである。
リハで演奏した曲の段階で少しいつもとは違う流れになりそうな雰囲気を感じてはいたのだが、おなじみのオリジナルSEでメンバーがステージに登場し、KOUHEI(ドラム)が台の上に立ち、RYU-TAとHIROKAZのギターコンビも手拍子を煽りまくってからそれぞれが楽器を持ってSEが止むと、GEN(ボーカル&ベース)がその持ち前のハイトーンボイスを響かせるように歌い始めたのは「Horizon」というフェスの始まりとは思えない選曲に、やはりリハの時に感じた雰囲気は当たっていたんじゃないかと思えてくる。それくらいにフェスでやるイメージは全然ない曲だ。自分たちの主催フェスである「YON FES」を除いては。
GENが思いっきり腕を振りおろすようにしてイントロが鳴らされた「monolith」でのRYU-TAの
「かかってこいよー!」
という叫びが観客のハートに火をつけると、その「monolith」の流れも汲むような最新シングル曲「fade」と続くことでフォーリミの芯の部分をしっかりと見せると、赤い照明がよりバンドの演奏を燃え上がらせる「Jumper」へと至るのだが、YON EXPOの時も思ったように、GENはここに来て本当に歌が上手くなっている。特にハイトーンをさらに張り上げるようなこれらの曲の締めのフレーズなどはちょっと前までだったら苦しくて歌いきれなかったであろう高さであるのだが、そうした部分もキーを下げたりすることなくしっかり歌いきっている。コロナ禍でライブが少なくなる中でも自分の技術や能力を研ぎ澄ませていた結果がそのままステージに現れていると言っていいだろう。
「この会場、なくなるらしいからね。なくなるっていうか、移設というか改装みたいな感じで」
とこの場所のことをしっかり把握しているのは名古屋のバンドならではであるが、
「そうやってなくなる場所もあって、個人的に悲しい別れもあって…」
と感慨深げに口にし始めたと思ったら、
「俺はち○ち○にホクロがあったんだけど、この前見たらなくなってて。手術したりしたわけでもないのになくなってた」
とこの大きなステージで言うこととは思えないくらいにどうでもいい下ネタをぶっ込んでくるあたりはフォーリミならではというかGENならではである。
それでもどこか久しぶりの感覚になる「Chicken race」では演奏中にRYU-TAの側のカメラにRYU-TAが視線を送りながらウインクしたりしていると、HIROKAZも逆サイドからそのカメラの前まで寄ってきてRYU-TAとともにカメラに視線を送る。久しぶりに聴く曲で見る久しぶりのステージの光景はやはり我々を楽しくさせてくれるし、観客は本当に楽しく踊っている。
そんな地元というここでしかない場所のフェスにおいて自分たちの存在証明を打ち立てるような「Now here, No where」からKOUHEのアグレッシブかつパンクのスピード感溢れる「My HERO」と、MCではしょうもないことを言いながらもこのテンポの良さはパンクバンドのそれでしかなく、さらにそこに最新シングル曲「Just」も放り込んでくる。
この曲がフォーリミのメロディメーカーっぷりを今になって改めて示すような曲であるだけに、
「届けたい 今から」
というこの曲というかシングルのリリース形態も含めて、今のバンドの力を全て凝縮したような曲だ。パンクバンドとしてこうして広いステージに立ち続けている理由が確かにある。
するとGENはこの後に出てくるBLUE ENCOUNTを
「俺たちが終わったら人めちゃ減るから」
と、ONAKAMAとして愛を持っていじると、スクリーンには袖からライブを見ていたブルエンの田邊がマイクを通さずにバンドにツッコミを入れている場面が映って笑いを誘うし、本当にこの両者は仲が良いという関係性がよくわかる。
そして今ではリスペクトを持っているサンデーフォークとはケンカしたこともあったけれど、今はこうして主催するフェスに出て、お互いこの地域を盛り上げていこうとしていることを話し、KOUHEIが激しくドラムを連打するイントロから始まる「Squall」が鳴らされると、GENのハイトーンボイスもより力強さをもって響いているのだが、年末にこうしてこの曲を聴くと、新しい年を迎えたらその度に何度も生まれ変われるような、そんな気がしてくる。
それは来年への確かな希望であるとも言えるのだが、演奏後にGENが
「さすが04 Limited Sazabys。持ち時間まだあるから短い曲やりまーす」
と言うと、名古屋のライブハウスの名前を並べた歌詞のショートチューン「758」を放つという、「ここはYON FESなのか?」と思ってしまうくらいのセトリとなったのだが、最後にGENは
「来年はYON FESでお会いしましょう!」
と言った。すでに開催発表されているが、開催出来なかった2年を経ても、フォーリミはこの自分たちが育った愛知県でフェスをやる、続けていくということを全く諦めていない。本当に、またあの場所へ行けたら。YON FESでフォーリミと会えたら。年が明けても、それが2022年の最初の希望になるんじゃないかとすら思える。まだやれる。あの時と似ている。
このセトリも、口にする言葉も。このフェスで初めてフォーリミのライブを見て、やっぱりフォーリミは名古屋で育ってきた、名古屋のバンドなのだと思った。そうした存在だからこそ、名古屋でできることも言えることもたくさんある。そんなフォーリミの名古屋への愛が確かに感じられたライブだったし、そのライブが我々をさらに名古屋好きにしてくれるような。それはつまりこれから先もこのフェスで何度もフォーリミのライブを見ていたいということだ。
リハ.message
リハ.Cycle
1.Horizon
2.monolith
3.fade
4.Jumper
5.Chicken race
6.Now here, No where
7.My HERO
8.Just
9.Squall
10.758
20:10〜 BLUE ENCOUNT [BLESS STAGE]
長かったようでいてあっという間だった1日。その締めを担うのはBLUE ENCOUNTである。すでにONAKAMAを形成するオーラルやフォーリミから散々いじられてきているが、その2組ではなくてブルエンをトリにするというあたりにこのフェスからのブルエンへの揺るぎない愛を感じさせる。
リハでは田邊駿一(ボーカル&ギター)がこの時期ならではの桑田佳祐「白い恋人たち」を口ずさんだりしながら本番で登場すると、白いコートを着た江口雄也(ギター)の笑顔が眩しい。辻村勇太(ベース)は冬でもタンクトップというファッションを貫いており、高村佳秀(ドラム)といつもと何ら変わることはない。
つまりは出で立ち自体はいつものBLUE ENCOUNTであるのだが、田邊が挨拶してからその空気を一閃するような、「この曲から来るとは!」というエモーショナルなサウンドが炸裂する「Freedom」から、見た目はいつも通りだけれど、その音に込められた感情からはこうしてトリを任されたという感謝と責任と喜びを強く感じられる。
それは「ピンチの時ほど強い」とオーラルの山中がこのバンドを評していた通りの歌詞が、今この瞬間、この場所のためのものとして逆境すらも美しいものであるかのような「ポラリス」、レーザー光線がステージから飛び交うのだが、そのレーザーの当たる先をよく見てみると、会場の天井に曲のタイトルが鮮やかに映し出されている「囮囚」とすでに完全にブルエンのキラーチューンと化している曲たちが凄まじいテンションで鳴らされていき、そのテンションは声は出せなくても腕を掲げて飛び跳ねる観客にも広がっていく。この日の最後をここにいる全員が最高の時間にしようという空気に会場全体が満ちている。
そんな中で田邊は
「このフェスが初めて開催されたのが7年前で、その時は俺たちはトップバッターで出てたの。半分くらいは観に来てくれた人がいたんだけど、そんなに良いライブができた感じはしなくて。そんな俺たちが今日はこのフェスのトリを任せてもらってます!」
と、この日のテンションの高さ、トリをやる感慨にはしっかりとしたこのフェスとバンドとの歴史や思い入れがあることを口にするのだが、
「半分しか埋まらなかった」
ではなくて、
「半分くらい観に来てくれていた」
といい言回しに、当時観てくれていた人への田邊なりの感謝を感じられる。なかなかそういうふうに言える人はいないし、そこに田邊の人間性の本質が見えるのだが、
「今日、ここまで見てきて最高だったっていう人、声出せないから拍手してもらっていいですか?…その最高を更新しにきました、BLUE ENCOUNTです!」
というその後の言葉で完全にさらに空気が変わったのがわかった。だから田邊がハンドマイクでファルセットでサビを歌う、ダンスナンバーと言えるサウンドの「バッドパラドックス」さえもそこに込められている熱量が爆発して、それまで以上に観客が飛び跳ねまくっている。それは田邊がステージを歩き回りながらあらゆる方向にいる観客に目を合わせたりする姿や、辻村の力強いスラップというサウンドの要素もあるのかもしれない。
そんなバンドサウンドがさらに疾駆していくのは江口のタッピングが冴え渡る中、辻村と高村の力強いコーラスがバチバチにバンドのサウンドがぶつかり合う中に調和をもたらして観客をさらに熱く、そして一つにしていく「VS」から「DAY × DAY」というライブではおなじみの曲を連発していく。トリだからこそ、レア曲というよりも誰もが知っている、そしてライブで演奏することでバンドも観客も燃え上がれる曲を、ということが実によくわかる。
そして田邊が
「初めてこのフェスに出た時はまだ誰に歌うべき曲なのかわかってなかった。でも今はわかる。目の前にいるあなたに歌います!」
と、曲の持つ意味が変化した、というよりもしっかりと自分でわかったということを口にしてから演奏されたのは「もっと光を」。
実際に田邊は当時とはこの曲の歌い方も変わった。ただ張り上げまくるだけではなく、どこか慈悲深さも感じられるような歌い方になった。それは決して衝動が失われたということではなく、より強くしっかりとあなたの方を見て歌うようになったということ。だからこそ当時はバンドにとっての光を感じていたこの曲が、会場にいる1人1人の光になっているというように感じられる。それは今もこの大名曲の力が増し続けているということだ。
最後に田邊は
「今日、今年のキツかった日よりちょっとでも楽しかった人?」
と問いかけると、ライブ冒頭よりもはるかに大きな拍手が起こり、
「俺たちの居場所はここだ。知らない人がどう言ってこようと、俺たちはこの場所の素晴らしさを知っている。それを守るためにこれからも頑張るよ。だって頑張ればあなたの笑顔が見れるんだから」
と、フェスがなくなり、ライブが悪いものとして世間から捉えられてしまったこの1年を総括するような言葉を口にしたのも、この年末のフェスのトリだからであろうし、ブルエンが今どういう意識を持ってバンドを続けているかということでもある。
その際に田邊は何度も「大丈夫」という言葉を口にしていたので、もしかして「だいじょうぶ」を演奏するのかとも思ったのだが、そんな言葉の後に演奏されたのは「ハミングバード」だった。その歌い出しの
「間違っちゃいないから
今日 乗りきった一歩は
燦然と輝く足音なんだ
間違っちゃいないから
夢中で飛び込んだ世界は正解だ」
というフレーズが今ここにいることの喜びを、生きている実感を感じさせてくれる。ブルエンがこの日のトリで本当に良かったと思った。
このブルエンがトリで良かったという感覚は今年すでに感じたことがあった。それはゴールデンウィークのJAPAN JAMの最終日のSUNSET STAGEのトリとして出演した時だ。
あの時、世間から開催することも参加することもどうやって開催されているのか、どんなルールがあって、会場内はどんな状態なのかを見ることすらなく言われまくった。その時もブルエンは我々のことを正面から肯定してくれた。それはブルエンが会場や客席をちゃんと見た上で言ってくれた言葉だった。
「傷つけられても傷つけるようなことはするな」
というあの時の田邊の言葉は今でも心に強く残っている。この日のライブも後々振り返った時にそうなるはずだ。
だからこそ、やっぱりブルエンがトリで良かった。これからもいろんな場所で、何回でもそう思える時が来るんだろうな。
リハ.白い恋人たち
リハ.VOLCANO DANCE
リハ.Never Ending Story
1.Freedom
2.ポラリス
3.囮囚
4.バッドパラドックス
5.VS
6.DAY × DAY
7.もっと光を
8.ハミングバード
去年も開催できたという貴重なフェスだからこそわかることがある。それは去年の状況で開催したからこそ、そこで見つかった改善点を今年に活かせるということ。何よりも去年開催して無事に終わったという信頼を勝ち得ているということ。もちろん去年とは状況が違うけれど、そんな止まらなかったフェスだからこその想いが主催者や出演者から強く感じられたフェスだった。それが何よりも大事なことであるということも。
自分自身、今年はいろんなライブに行けるようになった。でもほとんどがワンマンだったりする。もちろんワンマンで好きなアーティストをじっくり見れるというのが1番だし、それが基本であるべきだとも思う。
でもワンマンじゃ行けないような規模の会場でたくさんの観客がいる光景を見れて、様々なアーティストが次々に出てきては、その想いをバトンのようにして繋いでいくというフェスの楽しさを久しぶりに味わうことができた。それはやっぱり緊張感の方が遥かに強かった、業火の中に飛び込んでいくような感覚だったフジロックや春フェスの時とは全く違うものだった。
そんなフェスの楽しさを久しぶりに感じさせてくれた、今年のMERRY ROCK PARADE。正直、自分は年末のフェスはCDJだけ行ければいいとも思っている。他のだいたいのフェスの出演者も見れるし、1組あたりの持ち時間も長い。何よりも寒さを感じることなく快適にライブを見まくることができるフェスだから。
でも今年こうやって久しぶりにフェスの楽しさを体感させてくれたからこそ、その借りや恩はちゃんとこれからも返しにいかないといけないなとも思っている。年末と同じくらいに、クリスマスの時期がライブ、フェスというものに染まっていく人生であれたら毎年この時期をもっと楽しく過ごせるはずだから。
a flood of circle 「15周年ベストセットツアー"FIFTHTEEN"」 @長野LIVEHOUSE J 12/19 ホーム
[Alexandros] 「12/26直前の年末パーティー」 〜1部・2部制〜 @Zepp Tokyo 12/17