ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2018 「BONES & YAMS」 @Zepp TOKYO 6/25
- 2018/06/26
- 00:14
すでに今月の頭にスタートした、アジカンの「BEST HIT AKG 2」と、かつてゴッチが空想で作ったベストアルバム「骨盤」「芋盤」を提げたツアー。月初のZepp DiverCityでの2daysからひと月も経たないうちに東京に帰還。この日はZepp Tokyoでの2daysの初日。
今回のツアーに全て帯同している、開場中のオープニングアクトであるKyteのNick Moonが
「今日は暑いですね~」
など、もう声だけ聞いたら日本人にしか思えないような流暢な日本語を喋りながら、バンド時代からの特徴である、深淵でありながらもポップかつキャッチーなエレクトロサウンドを響かせると、やはりSEもなしにシモリョーを含むメンバーがステージに登場。
基本的な流れは前回見たDiverCityと同じなのでそちらも参照していただきたい。
(http://rocknrollisnotdead.blog.fc2.com/blog-entry-504.html?sp)
しかし流れ自体は同じといいながら、「エントランス」のイントロでは喜多が右手の人差し指を高く掲げ、伊地知潔も立ち上がって両手でスティックを高く掲げる。今回のツアーでは東京で3公演目であるというマンネリ感は一切感じられない。全てをこの1日、この一瞬にぶつけようとしているのがよくわかる。
それは喜多が過去最高レベルのギターソロを響かせる「荒野を歩け」も全く同じ。最も古い曲と最も新しいくらいの曲が同じくらいの熱量を放っている。続けてくる上で色々あったし、日本のギターロックの代表的な存在でありながらも実は幅広い音楽的な挑戦をしてきたアジカンが、結成20年を超えた今になってこんなにみずみずしい姿を見せてくれている。アジカンの音楽に背中を押され続けてきた者にとって、こんなにも嬉しくてこんなにも気分が高揚することはない。
とはいえやはり全く何もかもが同じ内容というわけではもちろんなく、前回のDiverCityでの2日目に演奏され、「いつ以来やったんだろうか」とゴッチが回想していた「マイクロフォン」に変わり、この日は「ロードムービー」(「ブルートレイン」のカップリング)が演奏された。淡々と刻まれるリズムに
「三塁ベンチの夏が終わる 遠くでサイレン 僕はいつかの夢を拾う」
という、「エントランス」の
「焦げ付くような 午後のグラウンド
光る「君」という名のボール
届かないとわかって そして無力を知って
つかえる胸 土濡らす通り雨」
このフレーズに通じる、かつてゴッチが実際に自身で体験したであろう、悔しい景色が垣間見える歌詞。ある意味ではゴッチが野球を諦めて音楽に向かうことになった原風景的な歌詞である。
「シングルにしたかったけど、シングルにならなかった曲を中心に演奏していますが、地方都市ではポカーンとしている方が多発しまして(笑)
地方のTSUTAYAではアジカンは「ソルファ」までしか置いてない(笑)「リライト」で終わったバンドになってる(笑)」
とゴッチ得意の自虐ネタで笑わせながら、間奏部分でカップリングバージョンのコーラスをシモリョーが務めるという新たなミックスを見せる「サイレン」から、「芋盤」「骨盤」に収録された曲を中心に演奏していく。確かにこれらの曲ばかりをフェスでやったらポカーンどころじゃないだろうな、と思うと地方でそうなるのもやむを得ない…あくまでアジカンを好きな人しか来ないはずのワンマンなのだけど。
中盤の「永遠に」「ノーネーム」というあたりのさらに深い曲たちでは、前回見た時よりもシモリョーのピアノのサウンドが前に出ていた印象。見ている位置によってそれは変わるのかもしれないが、おそらくはライブを重ねるごとにサウンドの微調整も図っているのだろう。
「ポール・マッカートニーはライブ中に水飲まないらしいよ。あとWilcoのボーカルも。ボブ・ディランは袖に飲みに行くんだって(笑)
なんの話だ、っていう(笑)
みんなも喉乾いてないですか?乾いてても何ができるわけではないですが、乾いたらドリンクバーに…いや、ドリンクバーじゃない(笑)バーカウンターだ(笑)」
と、「東京だともう話すネタがない(笑)」というだけにMCは内容も薄めだし時間も短め。
最新曲「生者のマーチ」、「夜を越えて」という震災後のアジカン(というかゴッチ)のメンタリティが強く表出した2曲の後は、DiverCity2日目の「ローリングストーン」に変わって「融雪」が演奏される。どちらもアッパーなギターロックであるが、この曲が演奏されたことにより、普段はほとんど演奏されることのないミニアルバム「未だ見ぬ明日に」の収録曲が3曲も演奏されたことになる。「ワールドワールドワールド」の直後というタイミングにリリースされただけあり、ツアーでも何曲も演奏されることはほとんどなかっただけに、1日でここまで聴けるのはかなり貴重である。
「ワールドカップですよ。僕は川島のメンタリティが心配(笑)僕だってあるからね。エラーして立ち直れなかったこととか。その体験を「マジックディスク」っていうアルバムに書いてるんで、是非帰りに買っていって欲しいんだけど(笑)(「新世界のラブソング」の歌い出し)
でもスポーツ選手って引退を覚悟させられる時が必ず来るじゃない?その点、音楽は自己申告制だから。「ミュージシャンです」って言えばミュージシャンだし(笑)
音楽は誰も排除したりしないしね。かといって「私も今日からアジカン!」とか言われたらそれは全力ではねのけますけど(笑)
何が言いたいかっていうと、日本頑張れっていうこと(笑)」
とゴッチなりにサッカー日本代表にエールを送ると、「ソルファ」のリメイク盤に先駆けてライブアレンジでシングルカットされた「Re:Re:」ではイントロから大きな歓声が起こり、最後はやはり「ワールド ワールド ワールド」からの「新しい世界」という上がりきったまま、というか最後にピークを持ってくるという終わり方。ゴッチはなかなか喉がキツそうでもあるが、それを歌を崩すことなく乗り切るための術を長い年月の中で会得しているのが近年のこの曲の演奏を見るとよくわかる。
アンコールではまさかのNick Moonがメンバーとともにステージに登場し、この日からやることにしたというセッションをすることに。曲はRadioheadの「High & Dry」でボーカルはNick、ゴッチはギターに専念するのだが、やはりNickのファルセットボーカルは実に美しい。どちらかというとか細い部類に入ると思うのだが、それがこの曲の儚さを際立たせている。ツアー中にもかかわらずこの曲を演奏できるようになったアジカンメンバーもさすがであるが、当たり前のようにメンバーと日本語で会話しているNickの姿を見ていると、何年か後にはスコット・マーフィー(MONOEYES)のように日本でバンドを組んでいるような気さえしてくる。
「この曲はThe Bendsという名盤に入っている曲で…。今はSpotifyとかいろいろ聴く術があるから、帰ったら聴いてみて。術って(笑)アプリだよな(笑)」
としっかり曲を紹介しながら、この日のアンコールが山田チョイスであることを明かすと、セッション的な演奏からサビで一気に突き抜けて行く「センスレス」、アジカン流のラウドロック「Easter」、そしてゴッチがファルセットでイントロを口ずさんでから演奏された「転がる岩、君に朝が降る」という3曲が披露される。この選曲は
「DiverCityでやった曲とは違う曲を選んだ」
という山田なりのファンサービスであることを語っていたが、その辺りはさすがに最も冷静かつ客観的にバンドを見ている男である(アジカンらしさを意識して「オールドスクール」という曲を作ったり)。
そうした配慮があるからこそ、東京で6公演もあっても1回だけじゃなくて何回でも見たいと思えるし、アジカンにはライブで聴きたい曲があまりに多すぎる。今回のツアーは、そう思いながらも普段はなかなか聴けない曲をたくさん聴けるというたまらない機会。だからこそこうして自分も何公演も参加しているのである。
今回も東京だけで6公演という多さだが、アジカンは「マジックディスク」の時もZeppやAX、さらには都内以外の関東のライブハウス(千葉は柏PALOOZAにも来た)も回るなど、本数があまりにも多すぎるツアーを廻っていた。その時のAXなどはやはり本数が多すぎたのか、どことなくライブを「こなしている」という感じも見えてしまっていたが、今は全くそんなことはない。ただひたすらにこのライブに全神経を集中させ、燃え尽きるくらいのパフォーマンスを見せている。あの頃はメンバー同士の関係性もそこまで良くはなく、だからこそフジファブリックの金澤ダイスケが緩衝材のような役割でツアーに参加していた。
しかし今はメンバー全員が本当に楽しそうにライブをやっているし、アジカンであることを全員が引き受けている。だからあの頃にやっていた曲も、今の方が全然良い。止まることなくずっと続いてきたバンドのライブでそう思えるのは本当に幸せなこと。だから来月の新木場2daysも両方見に行くのである。
1.Right Now
2.エントランス
3.荒野を歩け
4.白に染めろ
5.極楽寺ハートブレイク
6.ロードムービー
7.サイレン
8.無限グライダー
9.永遠に
10.ノーネーム
11.未だ見ぬ明日に
12.架空生物のブルース
13.生者のマーチ
14.夜を越えて
15.サイエンスフィクション
16.融雪
17.Re:Re:
18.Standard
19.ワールド ワールド ワールド
20.新しい世界
encore
21.High & Dry w/ Nick Moon
22.センスレス
23.Easter
24.転がる岩、君に朝が降る
生者のマーチ
https://youtu.be/SxPzkOkEoL0
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今回のツアーに全て帯同している、開場中のオープニングアクトであるKyteのNick Moonが
「今日は暑いですね~」
など、もう声だけ聞いたら日本人にしか思えないような流暢な日本語を喋りながら、バンド時代からの特徴である、深淵でありながらもポップかつキャッチーなエレクトロサウンドを響かせると、やはりSEもなしにシモリョーを含むメンバーがステージに登場。
基本的な流れは前回見たDiverCityと同じなのでそちらも参照していただきたい。
(http://rocknrollisnotdead.blog.fc2.com/blog-entry-504.html?sp)
しかし流れ自体は同じといいながら、「エントランス」のイントロでは喜多が右手の人差し指を高く掲げ、伊地知潔も立ち上がって両手でスティックを高く掲げる。今回のツアーでは東京で3公演目であるというマンネリ感は一切感じられない。全てをこの1日、この一瞬にぶつけようとしているのがよくわかる。
それは喜多が過去最高レベルのギターソロを響かせる「荒野を歩け」も全く同じ。最も古い曲と最も新しいくらいの曲が同じくらいの熱量を放っている。続けてくる上で色々あったし、日本のギターロックの代表的な存在でありながらも実は幅広い音楽的な挑戦をしてきたアジカンが、結成20年を超えた今になってこんなにみずみずしい姿を見せてくれている。アジカンの音楽に背中を押され続けてきた者にとって、こんなにも嬉しくてこんなにも気分が高揚することはない。
とはいえやはり全く何もかもが同じ内容というわけではもちろんなく、前回のDiverCityでの2日目に演奏され、「いつ以来やったんだろうか」とゴッチが回想していた「マイクロフォン」に変わり、この日は「ロードムービー」(「ブルートレイン」のカップリング)が演奏された。淡々と刻まれるリズムに
「三塁ベンチの夏が終わる 遠くでサイレン 僕はいつかの夢を拾う」
という、「エントランス」の
「焦げ付くような 午後のグラウンド
光る「君」という名のボール
届かないとわかって そして無力を知って
つかえる胸 土濡らす通り雨」
このフレーズに通じる、かつてゴッチが実際に自身で体験したであろう、悔しい景色が垣間見える歌詞。ある意味ではゴッチが野球を諦めて音楽に向かうことになった原風景的な歌詞である。
「シングルにしたかったけど、シングルにならなかった曲を中心に演奏していますが、地方都市ではポカーンとしている方が多発しまして(笑)
地方のTSUTAYAではアジカンは「ソルファ」までしか置いてない(笑)「リライト」で終わったバンドになってる(笑)」
とゴッチ得意の自虐ネタで笑わせながら、間奏部分でカップリングバージョンのコーラスをシモリョーが務めるという新たなミックスを見せる「サイレン」から、「芋盤」「骨盤」に収録された曲を中心に演奏していく。確かにこれらの曲ばかりをフェスでやったらポカーンどころじゃないだろうな、と思うと地方でそうなるのもやむを得ない…あくまでアジカンを好きな人しか来ないはずのワンマンなのだけど。
中盤の「永遠に」「ノーネーム」というあたりのさらに深い曲たちでは、前回見た時よりもシモリョーのピアノのサウンドが前に出ていた印象。見ている位置によってそれは変わるのかもしれないが、おそらくはライブを重ねるごとにサウンドの微調整も図っているのだろう。
「ポール・マッカートニーはライブ中に水飲まないらしいよ。あとWilcoのボーカルも。ボブ・ディランは袖に飲みに行くんだって(笑)
なんの話だ、っていう(笑)
みんなも喉乾いてないですか?乾いてても何ができるわけではないですが、乾いたらドリンクバーに…いや、ドリンクバーじゃない(笑)バーカウンターだ(笑)」
と、「東京だともう話すネタがない(笑)」というだけにMCは内容も薄めだし時間も短め。
最新曲「生者のマーチ」、「夜を越えて」という震災後のアジカン(というかゴッチ)のメンタリティが強く表出した2曲の後は、DiverCity2日目の「ローリングストーン」に変わって「融雪」が演奏される。どちらもアッパーなギターロックであるが、この曲が演奏されたことにより、普段はほとんど演奏されることのないミニアルバム「未だ見ぬ明日に」の収録曲が3曲も演奏されたことになる。「ワールドワールドワールド」の直後というタイミングにリリースされただけあり、ツアーでも何曲も演奏されることはほとんどなかっただけに、1日でここまで聴けるのはかなり貴重である。
「ワールドカップですよ。僕は川島のメンタリティが心配(笑)僕だってあるからね。エラーして立ち直れなかったこととか。その体験を「マジックディスク」っていうアルバムに書いてるんで、是非帰りに買っていって欲しいんだけど(笑)(「新世界のラブソング」の歌い出し)
でもスポーツ選手って引退を覚悟させられる時が必ず来るじゃない?その点、音楽は自己申告制だから。「ミュージシャンです」って言えばミュージシャンだし(笑)
音楽は誰も排除したりしないしね。かといって「私も今日からアジカン!」とか言われたらそれは全力ではねのけますけど(笑)
何が言いたいかっていうと、日本頑張れっていうこと(笑)」
とゴッチなりにサッカー日本代表にエールを送ると、「ソルファ」のリメイク盤に先駆けてライブアレンジでシングルカットされた「Re:Re:」ではイントロから大きな歓声が起こり、最後はやはり「ワールド ワールド ワールド」からの「新しい世界」という上がりきったまま、というか最後にピークを持ってくるという終わり方。ゴッチはなかなか喉がキツそうでもあるが、それを歌を崩すことなく乗り切るための術を長い年月の中で会得しているのが近年のこの曲の演奏を見るとよくわかる。
アンコールではまさかのNick Moonがメンバーとともにステージに登場し、この日からやることにしたというセッションをすることに。曲はRadioheadの「High & Dry」でボーカルはNick、ゴッチはギターに専念するのだが、やはりNickのファルセットボーカルは実に美しい。どちらかというとか細い部類に入ると思うのだが、それがこの曲の儚さを際立たせている。ツアー中にもかかわらずこの曲を演奏できるようになったアジカンメンバーもさすがであるが、当たり前のようにメンバーと日本語で会話しているNickの姿を見ていると、何年か後にはスコット・マーフィー(MONOEYES)のように日本でバンドを組んでいるような気さえしてくる。
「この曲はThe Bendsという名盤に入っている曲で…。今はSpotifyとかいろいろ聴く術があるから、帰ったら聴いてみて。術って(笑)アプリだよな(笑)」
としっかり曲を紹介しながら、この日のアンコールが山田チョイスであることを明かすと、セッション的な演奏からサビで一気に突き抜けて行く「センスレス」、アジカン流のラウドロック「Easter」、そしてゴッチがファルセットでイントロを口ずさんでから演奏された「転がる岩、君に朝が降る」という3曲が披露される。この選曲は
「DiverCityでやった曲とは違う曲を選んだ」
という山田なりのファンサービスであることを語っていたが、その辺りはさすがに最も冷静かつ客観的にバンドを見ている男である(アジカンらしさを意識して「オールドスクール」という曲を作ったり)。
そうした配慮があるからこそ、東京で6公演もあっても1回だけじゃなくて何回でも見たいと思えるし、アジカンにはライブで聴きたい曲があまりに多すぎる。今回のツアーは、そう思いながらも普段はなかなか聴けない曲をたくさん聴けるというたまらない機会。だからこそこうして自分も何公演も参加しているのである。
今回も東京だけで6公演という多さだが、アジカンは「マジックディスク」の時もZeppやAX、さらには都内以外の関東のライブハウス(千葉は柏PALOOZAにも来た)も回るなど、本数があまりにも多すぎるツアーを廻っていた。その時のAXなどはやはり本数が多すぎたのか、どことなくライブを「こなしている」という感じも見えてしまっていたが、今は全くそんなことはない。ただひたすらにこのライブに全神経を集中させ、燃え尽きるくらいのパフォーマンスを見せている。あの頃はメンバー同士の関係性もそこまで良くはなく、だからこそフジファブリックの金澤ダイスケが緩衝材のような役割でツアーに参加していた。
しかし今はメンバー全員が本当に楽しそうにライブをやっているし、アジカンであることを全員が引き受けている。だからあの頃にやっていた曲も、今の方が全然良い。止まることなくずっと続いてきたバンドのライブでそう思えるのは本当に幸せなこと。だから来月の新木場2daysも両方見に行くのである。
1.Right Now
2.エントランス
3.荒野を歩け
4.白に染めろ
5.極楽寺ハートブレイク
6.ロードムービー
7.サイレン
8.無限グライダー
9.永遠に
10.ノーネーム
11.未だ見ぬ明日に
12.架空生物のブルース
13.生者のマーチ
14.夜を越えて
15.サイエンスフィクション
16.融雪
17.Re:Re:
18.Standard
19.ワールド ワールド ワールド
20.新しい世界
encore
21.High & Dry w/ Nick Moon
22.センスレス
23.Easter
24.転がる岩、君に朝が降る
生者のマーチ
https://youtu.be/SxPzkOkEoL0
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