海の中には母がいる
母の中には海がある
季節がパントマイムを演じる時
私は夜を絞め殺す
死には重さがない
夢から醒めて
いのちの温かさを確認する
見えない季節の中で
もうひとりの私に出逢う
眼差しがあった
故郷の自然を呼吸する
過去という未来
風が鳴る
夢を啄む盲目の鳥が飛んでいく
私は笑った
海が見たい
やがて
空が落ちてくる
夢から醒めて
知っている風景と
知らない風景の隙間を
知らない時間が流れていく
名前のない時間が透けて見えてくる
私はどこにいるのだろう
始まりがなければ終わりはない。
終わりがなければ始まりはない。
双子の時間が踞っている。
想像してみよう
現実が夢であると
夢が現実であると
いのちは時を所有することが出来ない
風がみえる
遠くにいこう
掌の中の
掌の形をした血を握りしめて
遠く遥か遠くに
私は見知らぬ透明な路を歩いている
月明かりに誘われて
忘れ去られたモノ達が蠢き始める
不完全な風景を埋めるための約束はない
記憶の中を忘れ物が追いかけてくる
見ることの出来ない飢え
知ることの出来ない渇きが
こゝろの隙間にある
私の中の欠けた部分が私そのものだった
世界は思考を共有している
他者たちの中で他者たちと共に私は思考している
私の思考は群集の思考に内包されている
私以外のモノを認識することでしか
私は私の存在を確認できない。
世界を象徴する夢が在り
夢を象徴する世界が在る
世界はひとつではない
複数の世界が入れ替わる瞬間がある
失われたモノと
失われなかったモノが
共に存在する世界で
私は私の隙間を抱きしめる
透き徹っていく季節を追いかける
名前のない日常の想い
懐かしさを感じる出逢い
寂しい声に私の身体が侵されている
刻が見えない
刻が見る夢の中では存在しないものが存在する
刻はもうひとつの日常をつくる
人は常に未知の中にいる
繰り返される変化という調和
記憶もまた変化し成長していく
風のように記憶の中を刻が流れていく
曖昧な選択肢を残したまま日常が歪んでいく
閉じられた感覚の窓の向こうに見失った私の欠片がある
心を溶かすような雨が降っている
風化する想い
未来という過去
失われるべきものは既に失われていた
雨が踊っている
木の葉の揺れる音が聞こえてくる
湿った空気が身体に絡み付いてくる
記憶は明日生まれる
複数の明日が繋がる
なにを探すかではなく
なぜ探すかという所から始まり
時を失った樹木のように生き続け
私は私の沈黙を抱きしめる
風が吹く
低く垂れ込めた雲に
水彩画のように私の影が重なっていく
私には私が見えない
あなたには私が見えない
あなたにはあなたが見えない
私にはあなたが見えない
扉の向こうで風の声がする
あなたは記憶として私の中にある。
残された時間を習慣化する不思議
失われた答は失われたまま
待つ事で過ぎ去った時をなぞる
いのちは孤独だ
やがて私もひとつの記憶になる
明日の過去になる