テーマ:『ダブル・スタンダート』
創作文章(ショート・ストーリー)を募集します。
ルールははてなキーワード【人力検索かきつばた杯】を参照してください。
締切は6月26日(日)午後9時以降、締切後に一斉オープンします。
※『ダブル・スタンダード』というキーワードは入らなくていいです。
※『ダブル・スタンダード』の意味はこちらhttp://dic.nicovideo.jp/a/%E3%83%80%E3%83%96%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%89
※できれば「逆転・逆転・また逆転」というストーリを期待してます。
【かきつばた杯】史上初の連載小説、いよいよ今夜スタート!
6月24日(金)午後10時より連載開始(予定)
乞うご期待!!
ここは帝都・東京。武蔵野の面影を残す郊外にひっそりと佇む洋館があった。その大広間。
ロココ調のテーブルを挟んで、二人の男が向きあっていた。一人は、でっぷりと太った中年で、脂ぎった顔から流れる汗をひっきりなしにハンカチで拭いていた。
「こうしてあなたに来ていただければ安心です」
太った中年の名前は、成田金蔵。彼と仕事でつきあわざるを得ない人々は、影で「成金」と呼んでいた。
「予告状に書いてあった時間は、午後10時でしたね?」
もう一人の男が、成田に尋ねた。こちらは、背広を着こなした、いかにも紳士然とした風体である。
「そうです、明智さん。『午後10時に、貴殿の宝物をいただきに参上する。怪人二十面相』とありました。この『クレオパトラの涙』を盗みに来るに違いありません」
成田は、目の前に置いた宝石箱の蓋を開いた。シャンデリアの光が射して、大粒のダイアモンドが煌きを周囲に放った。
(続く)
「ほんとに綺麗なダイアですこと」
広間のドアの方から声がして、和服に身を包んだ妙齢の女性が、後ろに女中を従えて入ってきた。
「明智さん、妻の美和子です。美和子、こちらがかの有名な明智さんだ」
成田美和子は、赤い唇の端に蠱惑的な笑みを浮かべた。
「存じあげておりますわ。お目にかかれて光栄です。……お飲み物を用意してますのよ」
彼女は女中に合図した。金蔵の前にはブランディーのグラスが、明智の前にはコーヒーが置かれた。
「10時までまだ間がありますわ。どうぞお飲みください」
美和子の声に、明智が無言でコーヒーカップに手を伸ばした、その時。
何の前触れもなく、大広間の明かりが消えた。
「停電か?」
「成田さん、ダイアを。二十面相かもしれません」
闇の中に明智の声が響いた。
(続く)
次回、ついに最終回。完結編一挙掲載!
(紙面の都合で省略)
程なくして、テーブルの上にほのかな明かりが付いた。明智は火のついたマッチをかざして、宝石箱を凝視した。
「良かった。『クレオパトラの涙』は無事だ」
金蔵が言うのとほぼ同時に、絹を裂くような女の悲鳴が聞こえた。明智は指を焦がしそうになったマッチを捨て、次のマッチを手探りで探した。しかし、明智がマッチを擦るよりも早く、シャンデリアの明かりが復活した。
広間のドアに背を向けて、美和子が大きな目を見開いて立っていた。その背後には、黒い覆面をした男が、美和子の喉もとにナイフを向けている。
覆面の男が、押し殺した声で言った。
「『クレオパトラの涙』をよこせ。さもなくば、女の命はないぞ」
「あなた、助けて。早くダイアを」
美和子は震える声で、金蔵に訴えた。金蔵は手元の宝石箱から『クレオパトラの涙』を取り出した。
「成田さん、ここはダイアを二十面相に。あいつは血も涙もない奴です。脅かしじゃありません」
明智にうながされ、金蔵はダイアを見つめた。そして、首を横に振った。
「成田さん?」
「女房の代わりはいくらでもいる。しかし、このダイアはかけがえがないんだ」
明智はその言葉を聞いて、ゆっくりと椅子に腰掛けると、エジプトタバコの『フィガロ』を取り出して火を付けた。
「予想した通りでしたね、美和子さん」
明智がタバコの煙を吐き出しながら言った。美和子の表情から恐怖が消え、軽蔑のこもったまなざしで金蔵を見た。
「さすがは明智さんですわ。これで夫の本心がわかりました」
「は、謀ったな」
金蔵の声にはかまわず、明智は覆面の男に言った。
「もういいよ。小林君」
覆面の男は無言でナイフを下に下ろした。
「美和子さんからご依頼を受けましてね。一芝居打たせていただきました」
明智はタバコを吸いながら、言葉を続けた。
「二十面相からの予告状、ってのは美和子さんのアイディアですけどね。……やれやれ、せっかくのカフィーがすっかり冷めてしまった」
コーヒーを一口飲んだ明智の顔に苦悶の表情が浮かんだ。
「これは……毒?……な、なぜ……」
「明智さん!」
小林が叫んだ。
椅子から転げ落ちた明智に、金蔵が吐き捨てるように言った。
「小賢しいんだよ。何が名探偵だ。間男のくせに」
金蔵は美和子に向かって言った。
「お前が明智事務所に入り浸っているのに気付かなかったとでも思うか。別の探偵を雇って調査させたのさ。初対面のはずなのに、コーヒーなんて珍しい飲み物を出したところで確信したね。明かりが消えている間に毒を仕込むのはちょっと手間だったが」
美和子はうなだれた。
「ダイアもお前も俺の宝物だ。そう簡単に他人にはやらんぞ」
勝ち誇った表情で、金蔵はブランディーをあおった。その表情が一瞬で変わった。
「み、美和子、まさか……」
金蔵はゆっくりと椅子から滑り落ち、床に倒れた。
呆然としている小林には構わず、美和子はつかつかと金蔵の体に歩み寄ると、脇腹に蹴りを入れた。金蔵は微動だにしなかった。
「これで一件落着ね。明智先生が死んじゃったのは予想外だったけど」
美和子は微笑みながら、立ちすくんでいる小林の方に戻り、その体にしなだれかかった。
「金蔵の遺産が入れば、もうあなたも探偵の助手としてこき使われなくて済むというものよ。二人で遊んで暮らしましょう。全ては怪人二十面相の仕業なのよ、いいわね?」
美和子は小林の覆面を取った。小林の目には恐怖の色が浮かんでいた。
「恐ろしい人だ、貴女は」
美和子は声をたてて笑った。
「あら、私の信条は簡単よ。男にはとことん尽くす」
一呼吸おいて、美和子は続けた。
「ただしハンサムに限る、だけどね」
美和子は、つま先立ちして小林に接吻した。覆面を取った小林青年の顔は、すこぶる付きの美男子だった。
(了)
【人力検索かきつばた杯】
テーマ:『ダブル・スタンダート』
市営地下鉄人力線の車両は窓ガラスに人の顔を押しつけられた状態で果名駅に入線してきます。金田青年は手元のスマートフォンから顔を上げ、憂鬱な気持ちで、通勤客を吐き出す自動ドアの脇に並んだ。
(今日は一際混んでるなあ)
生憎の雨模様ということもあり、濡れた傘を手にした乗降客もちらほらと見える。車両内の不快指数は湿度とともに上昇しているだろう。おまけにどう贔屓目に見ても一人当たりの占有スペースは世界史の教科書にでてきた奴隷船と大差が無い。
それでも体を背中から人波にぶつけるようにして、無理やり乗り込むのは日本人通勤客の性。とはいえ、スマートフォンを操作できるだけのスペースをキープすることは忘れない。
先月遂にガラパコスケータイを解約し、念願のスマートフォンを手に入れた金田青年にとって、通勤中の最大の時間潰しはスマホイジリだ。
ちなみに今週はモバ●ーからダウンロードしたミニゲームに凝っている。怖いので無駄な課金がされないようオプション品は基本的に手を出していない。
【スマートフォンを指で操作するのって稼働範囲の狭さから見てほんと必要最小限だよね。ガラケーの時はフリップを開けてる分邪魔だったし。混雑した電車内ならスマホじゃなきゃ駄目だよな。でもそれに比べて前のやつ・・・】
金田青年の前には壮年の男が経済新聞を器用に四つ折りにして満員電車の中で読んでいる。開いている紙面は文字が一際小さい株価欄だ。
仮に彼の名前は岸田とでもしておこう。別に「キーウェル」でも「キキ」でもいいのだが、経済新聞を電車内で読んでるキキは想像しにくいので岸田としておくことにする。
【満員電車にゆられること20数年。こういう電車の中で読んでいいのはやっぱり仕事に活かせる経済紙だろう。読み方も俺くらいの年季になれば満員電車内で必要最低限スペースしか利用しない縦四つ折りだし、めくる時も殆ど周囲に手を広げない。今どきのやつはヘッドフォンやらで耳を塞いで目を瞑ってやがるが、そんなんじゃ周りに迷惑がかかっていないかどうか自分で判断できんではないか! まったく】
岸田氏の横には、耳全体を覆う大型のヘッドフォンを装備した大学生円谷君(仮称)が立っている。目を閉じているのは周囲から意識を切り離して音楽に集中したいからだが、さすがに車両が減速加速するときには薄目を開けて自分がもたれ掛かっていないかくらいは確認している。
【音漏れカットの最新式音楽が、満員の車両ではマナーだよな。そもそも手を動かす行為自体があり得ないっつうか、車両内でゲームはまあ百歩譲っていいとしても朝の満員電車で、この混雑の中無理やり続けるのはおかしくね】
円谷青年(仮称)が気にしているのは彼の背後でPSPだかDSだかを操作している女性である。今どきの女性が電車の中でゲーム機に興じる行為自体がそれほど珍しいものではない。しかしまあカチャカチャとボタンを押す音だけが響いている。まあ適当に馬場女史としておこう。ゲーム機なのでバーバラとかバシルーラとかバイキルト女子(もとい)女史の方が分かりやすいかもしれないが。
【今どきのゲーム機は小さいし、ボタンを指で押すだけだから操作しても殆ど周りには迷惑掛んないのよね。それに画面を覗いている隣のおっさんとかも気晴らしにしているの私知ってるんだから。最近は電車内も節電で暗めだし自分から発光する液晶画面じゃないと見えないのよね。それより今どき文庫本をこの満員電車で広げる神経が理解できないわ】
彼女の背中越しに文庫本を開いているのは中年の男性、田伍作だ。
【電車の中で読むって言ったら、文庫本でしょ。マンガ雑誌なんて言語道断だ。知的だし身体の正面に本を持ってこなくてもいいから少しの隙間があれば満員電車でもなんとかなるのが強みだよね。何よりページをめくる音しかしないし周りの人の目にも付かないし。でも最近はスマートフォンを目の高さでカチャカチャやるやつが増えて、空いてりゃいいんだけど混雑した中だとうざいんだよね】
と言ってスマートフォンを弄る金田青年を横目で睨む、田。(伍作は名前)
そんな朝の満員電車を空中から見ている使い魔と天使がいます。地下鉄なのに空中から見ているという表現は映像化が難しいのでメディアミックス的には喜ばれないですが、とりあえず空中です。
アテナ「ルーシーさあ、これなんとかならないの?」
ルーシー「任せて!」
電車が緊急停車し、車内アナウンスが流れました。
「え~この先を走行中の車両に急病人が発生しこの電車も一時停車いたします。このまましばらくお待ちください」
ルーシー「人って、悪い状況でも、その責任を押しつけられる外部要因があると団結するって聞いたんだ。巨大な悪に立ち向かうときには些細な立場の違いは乗り越えて共闘するってやつ」
アテナ「へ~、ヤマトとデスラーが共闘した話とか? でもこの場合、さっさと駅に到着させた方がいいような気もするけどね」
先ほどの車両から騒がしい人声それも罵声が漏れてきました。
本回答の核心部は下書き記法により締切直前(26日日曜日夕方~21時ごろ)まで非表示としておりました(現在は表示されています)。
ありがとうございます。
みんな自分が正しくて相手が間違っているというダブルスタンダードでしょうか。
この後どうなってしまうのか気になります。
風呂場を出て、体を拭き終るや否や走り去る息子を追ってわたしもリビングまで駆け出した。
ソファに飛び乗る息子を捕まえパンツ(メリーズ)をはかせながらぼやく。
「ったくもう、パンツぐらい、はいてから……」
そんなわたしを見咎めて妻が言う。
「パパもパンツはいてから、来てください」
風呂場を出て、体を拭き終るや否や走り去る息子を追ってわたしもリビングまで駆け出した。
ソファに飛び乗る息子を捕まえパンツ(メリーズ)をはかせながらぼやく。
「ったくもう、パンツぐらい、はいてから……」
そんなわたしを見咎めて妻が言う。
「パパもパンツはいてから、来てください」
本回答のこれ以降の内容には、人力検索かきつばた杯の『ある回答』の設定が使用されています。 本回答が参考とした回答(ぶっちゃけパクったともいう)の内容を損なわないように、 必ずこちら(元回答『ダブル・スタンダード』たけじん様)を先にごらんください。 (「チュドーーーーーン ドカァァァァン」ってやつです) その後、本回答のことは忘れ去っても一向にかまいません。
「これで終わり?」
「えっ? 終わりですけど……」
「他に無いの? あっと驚くような……結末が……」
「こんなのなら……」
「パンツはかせたよ」
「ありがとうね。それはそうと、和室の畳もだいぶ古くなってきたんじゃない?
青畳なんて言葉とは縁遠い感じ」
「これは黄金色って言うんだよ」
「ものは言い様ね。でも、ささくれ立って、もう野原みたいになってるし」
「あ~、もうパンツ一丁で畳でごろごろすんなよ。あっ、もうシィシィ出てるじゃん。
お知らせラインが青くなってるぞ。出たらちゃんと言いに来いよ」
そのやりとりを聞いていた老婆がにわかに打ち震えだす。その目は既に視る力を失って久しい。
しかしその脳裏には今目の前で繰り広げられている情景がありありと浮かんでいる。
「お……おおぅ、そ、そのもの青き線の入った衣を纏い、金色の野に降り立つべし……」
「ストーーップ!!!!」
「なんでしょう?」
「なんでしょうじゃないよ。前後の繋がりも無いし、この先どうストーリーが展開していくのかさっぱり読めないよ」
「じゃあ、MIYAZAKI風は没ですか? あともう1パターンあるんですけど」
「最後に警部が『あなたの一番大事なものを盗んでいきました。それはパンツです』とか言わない?」
「言います……。似たようなことを。王家の血を引く少女の前で」
「じゃあ、別のやつで……頼むよ」
「…そう、ちょい右」
「そう右」
「パンツ?」
「はい、そこでまっすぐ。足を通して」
「そう、そのまま、大丈夫だから」
「後は、きゅっきゅするだけだから」
「わかるの?ど、どこ?」
「4、3、2、1、0!」
「わーい。パンツがはけた~~」
「どういう設定?」
「え~~と、とある事情でパンツをはくのを、遠くにいる3人の子供達に
テレパシーで教えてもらうんです。
で、まわりの大人たちが、ああやっぱりこの子供達こそが真のニュータイプ
なんだなって……」
「TOMINO風も没ね」
「えっと、もう一個あるんですけど。
『νメリーズは伊達じゃない!!』って叫びながら、二つのサイコメリーズ
による共鳴現象がサイコ横漏れ防止フィールドを全開にして」
「もう聞くのよそうか……」
「あっ、でも『風の谷……』『機動戦……』で来てるんで、あと『つ』とか『ば』とかで3つぐらい続ければ回答として成立しますけど」
「『つ』で始まるアニメとか映画とかってなんか知ってる?」
「対馬丸くらいしか……」
「で、それは諦めて、あと2~3バリエーション考えたところでさ、使えっこないよ」
「とっておきがありますよ」
「逃げちゃダメだって、唱えながらパンツはいて、なんだかんだあっておめでとうって
祝福されて終わるの無しな。
最後に魔法少女が
『すべての人々にパンツをはかせたい、現在過去すべてのパンツを、この手で』
とかって願うのも無しな」
「じゃあ、もうネタはありません。やっぱり無理だったんですかねぇ」
「ああ、この映像加工ソフトに似たようなのを俺達も作ったら、大もうけできるって
思ってたけど、難しいや」
「やっぱり、パクルのは良くないですね。パクルのは。それはそうと……」
「ん?」
「わたしらもパンツぐらいはいときましょうか?」
「そうだね。パンツぐらいね」
ありがとうございます。
かきつばたを折り込んだリレー小説というのも面白そうと思いました。
所でダブルスタンダートはいずこに・・・
チュドーーーーーン ドカァァァァン
目隠しと縄を外して見回すと、エドの周りはガレキと死体の山だった。
「神よ。」
エドは両手を上げ、天に感謝の祈りをささげた。敵の攻撃は止んでいた。
「ちょっと待て。なんでコイツは無傷なんだ。」
「主人公ですから」
「攻撃はどうして止まるんだ。」
「次の移動のためですよ」
「こんなことやってるから、ハリウッドはダメなんだよ。」
「これで、全米は涙するんですよ」
「アメリカ人はバカばっかりだな」
「なんだと、もう一度言ってみろ」
「おれならこうする」
チュドーーーーン ドカァァァン
目隠しをして縛られているエド 周りはガレキの山
そのガレキの山の下から、ごそごそと這い出してくる異形の物。這い回るそれは、エドに近づいていく。
目隠しの外れかけたエドは、目の端で敵を捕らえる。縛られた手足を動かして、なんとか腰の火器に手を掛けようとする。異形の物の触手がエドに触れた瞬間、火器を手にしたエドは、引き金を引き続ける。飛び散る異形の物。
カシャ カシャ カシャカシャカシャ
エドは引き金を引き続ける。もう残弾はない。が、異形の物も砕け散っている。
ハァハァハァ
息も絶え絶えに立ち上がるエド。
ふと、振り向く。
そして、その振り向いた先には。
異形の物の群れが。
火器を構える間もなく、異形の物たちは
音も無く、声も無く、エドに覆いかぶさっていく。
「この先どうなんの」
「これで終わり」
「えええ。説明は?」
「無いの。」
「絶対、観客が納得しない。金返せって言われる」
「映画なんて自己満足でいいんだ」
「それが、映画の衰退を」
チュドーーーーン ドカァァァン
目隠しをして縛られているエド 周りはガレキの山
そのガレキの山の下から、ごそごそと這い出してくる異形の物。這い回るそれは、エドに近づいていく。
異形の物の触手が、エドに触れようとした瞬間。触手が怪光線に焼かれる。
マントを翻し、真っ赤な全身タイツに覆われた金色の仮面が、エドの傍らに降り立つ。仮面のヒーローは、右手を一
旋する。異形の物は、彼方へと飛び去り、地平線の向こうで大爆発する。
「もう大丈夫だ、エド。」
仮面のヒーローは、腕を組み胸を張って立っている。
「ありがとう、スーパー仮面」
「ではまた。」
スーパー仮面は空の彼方へ飛んでいく。それに向かって手を振るエド。
「なんなんだこの子供だましは」
「どうせなら」
「唐突でご都合主義なんて、子供でもだまされないぞ」
「やっぱ、だめかぁ」
チュドーーーーン ドカァァァン
目隠しをして縛られているエド 周りはガレキの山
目隠しを外そうと、もがくエド。それをガレキの向こうから覗く二人組
「あいつ生きてるぞ」
「やっちまいましょう」
「いや、またの機会にしよう。それより先を急ごう」
「ああ。」
立ち去る二人。
目隠しも手足の縄もほどいたエドは、その二人のいった方向に走っていった。
「なんで、とどめを刺さないんだ。」
「この先もドラマがあるんで」
「そんなことやってるから、やられちゃうんだ」
「しょうがないです、脇役ですから」
「主役に都合よく作るなよ」
「そうしないと観客が」
「けっ、バカにされたもんだなぁ、観客がよ」
チュドーーーーン ドカァァァン
目隠しをして縛られているエド 周りはガレキの山
そのガレキの山の下から、ごそごそと這い出してくる異形の物。
その触手が触れる寸前、縄をほどき銃を数発放ち異形の物を倒す。
ガレキの野を駆けるエド。息つく暇も無く、異形の物が襲ってくる。銃を撃ち、落ちている金属棒を振り回し、
石を投げ、異形の物を倒していく。
広い河原に出て、振り向くエド。もう、異形の物は襲ってこない。
すると、周りからわらわらと人々が集まり、エドを取り囲む。皆笑顔だ。
白髪で髭の老人が、エドに近寄り、抱き合う。周りの人々が万歳をする。
「大団円だなぁ」
「これでいいの?あの敵はやっつけちゃったの?」
「わかんないけど、ハッピーエンドだよ」
「ホントかよ」
「そうなの」
「続きがあるんだよ」
画面は人々の輪から引いていく。川沿いにグングン下がると、大きな建物の残骸が。
そこには、無数の異形の物が蠢いていて、一つに解け合おうとしていた。
そして、その巨大な塊は、川に入り、上流を目指し始める。
画面は上空に引き始める。異形の物の塊は、人々の輪を取り囲む様子が見える。
そして、その塊が収縮するところでフェードアウト
「せっかくハッピーエンドなのに」
「そんな終わり方のはずないだろ」
「まあまあ、単なる映像加工ソフトで喧嘩してもしょうがないだろ」
「ボタン一つでいろいろ変わるから面白いな」
「そうだな。ハッピーエンドとかハリウッドとかね。」
「ところでさ、あそこのドアの下のシミ、いつ付いたんだ?」
「知らないよ。あれ、広がってないか?」
「さっきの敵と同じ色してるな」
「ああ」
突然ドアが壊れ、異形の物の塊がなだれ込
ありがとうございます。
繰り返しパターンが面白いですね。
最後にオチもあって良かったです。
【かきつばた杯】史上初の連載小説、いよいよ今夜スタート!
6月24日(金)午後10時より連載開始(予定)
乞うご期待!!
ここは帝都・東京。武蔵野の面影を残す郊外にひっそりと佇む洋館があった。その大広間。
ロココ調のテーブルを挟んで、二人の男が向きあっていた。一人は、でっぷりと太った中年で、脂ぎった顔から流れる汗をひっきりなしにハンカチで拭いていた。
「こうしてあなたに来ていただければ安心です」
太った中年の名前は、成田金蔵。彼と仕事でつきあわざるを得ない人々は、影で「成金」と呼んでいた。
「予告状に書いてあった時間は、午後10時でしたね?」
もう一人の男が、成田に尋ねた。こちらは、背広を着こなした、いかにも紳士然とした風体である。
「そうです、明智さん。『午後10時に、貴殿の宝物をいただきに参上する。怪人二十面相』とありました。この『クレオパトラの涙』を盗みに来るに違いありません」
成田は、目の前に置いた宝石箱の蓋を開いた。シャンデリアの光が射して、大粒のダイアモンドが煌きを周囲に放った。
(続く)
「ほんとに綺麗なダイアですこと」
広間のドアの方から声がして、和服に身を包んだ妙齢の女性が、後ろに女中を従えて入ってきた。
「明智さん、妻の美和子です。美和子、こちらがかの有名な明智さんだ」
成田美和子は、赤い唇の端に蠱惑的な笑みを浮かべた。
「存じあげておりますわ。お目にかかれて光栄です。……お飲み物を用意してますのよ」
彼女は女中に合図した。金蔵の前にはブランディーのグラスが、明智の前にはコーヒーが置かれた。
「10時までまだ間がありますわ。どうぞお飲みください」
美和子の声に、明智が無言でコーヒーカップに手を伸ばした、その時。
何の前触れもなく、大広間の明かりが消えた。
「停電か?」
「成田さん、ダイアを。二十面相かもしれません」
闇の中に明智の声が響いた。
(続く)
次回、ついに最終回。完結編一挙掲載!
(紙面の都合で省略)
程なくして、テーブルの上にほのかな明かりが付いた。明智は火のついたマッチをかざして、宝石箱を凝視した。
「良かった。『クレオパトラの涙』は無事だ」
金蔵が言うのとほぼ同時に、絹を裂くような女の悲鳴が聞こえた。明智は指を焦がしそうになったマッチを捨て、次のマッチを手探りで探した。しかし、明智がマッチを擦るよりも早く、シャンデリアの明かりが復活した。
広間のドアに背を向けて、美和子が大きな目を見開いて立っていた。その背後には、黒い覆面をした男が、美和子の喉もとにナイフを向けている。
覆面の男が、押し殺した声で言った。
「『クレオパトラの涙』をよこせ。さもなくば、女の命はないぞ」
「あなた、助けて。早くダイアを」
美和子は震える声で、金蔵に訴えた。金蔵は手元の宝石箱から『クレオパトラの涙』を取り出した。
「成田さん、ここはダイアを二十面相に。あいつは血も涙もない奴です。脅かしじゃありません」
明智にうながされ、金蔵はダイアを見つめた。そして、首を横に振った。
「成田さん?」
「女房の代わりはいくらでもいる。しかし、このダイアはかけがえがないんだ」
明智はその言葉を聞いて、ゆっくりと椅子に腰掛けると、エジプトタバコの『フィガロ』を取り出して火を付けた。
「予想した通りでしたね、美和子さん」
明智がタバコの煙を吐き出しながら言った。美和子の表情から恐怖が消え、軽蔑のこもったまなざしで金蔵を見た。
「さすがは明智さんですわ。これで夫の本心がわかりました」
「は、謀ったな」
金蔵の声にはかまわず、明智は覆面の男に言った。
「もういいよ。小林君」
覆面の男は無言でナイフを下に下ろした。
「美和子さんからご依頼を受けましてね。一芝居打たせていただきました」
明智はタバコを吸いながら、言葉を続けた。
「二十面相からの予告状、ってのは美和子さんのアイディアですけどね。……やれやれ、せっかくのカフィーがすっかり冷めてしまった」
コーヒーを一口飲んだ明智の顔に苦悶の表情が浮かんだ。
「これは……毒?……な、なぜ……」
「明智さん!」
小林が叫んだ。
椅子から転げ落ちた明智に、金蔵が吐き捨てるように言った。
「小賢しいんだよ。何が名探偵だ。間男のくせに」
金蔵は美和子に向かって言った。
「お前が明智事務所に入り浸っているのに気付かなかったとでも思うか。別の探偵を雇って調査させたのさ。初対面のはずなのに、コーヒーなんて珍しい飲み物を出したところで確信したね。明かりが消えている間に毒を仕込むのはちょっと手間だったが」
美和子はうなだれた。
「ダイアもお前も俺の宝物だ。そう簡単に他人にはやらんぞ」
勝ち誇った表情で、金蔵はブランディーをあおった。その表情が一瞬で変わった。
「み、美和子、まさか……」
金蔵はゆっくりと椅子から滑り落ち、床に倒れた。
呆然としている小林には構わず、美和子はつかつかと金蔵の体に歩み寄ると、脇腹に蹴りを入れた。金蔵は微動だにしなかった。
「これで一件落着ね。明智先生が死んじゃったのは予想外だったけど」
美和子は微笑みながら、立ちすくんでいる小林の方に戻り、その体にしなだれかかった。
「金蔵の遺産が入れば、もうあなたも探偵の助手としてこき使われなくて済むというものよ。二人で遊んで暮らしましょう。全ては怪人二十面相の仕業なのよ、いいわね?」
美和子は小林の覆面を取った。小林の目には恐怖の色が浮かんでいた。
「恐ろしい人だ、貴女は」
美和子は声をたてて笑った。
「あら、私の信条は簡単よ。男にはとことん尽くす」
一呼吸おいて、美和子は続けた。
「ただしハンサムに限る、だけどね」
美和子は、つま先立ちして小林に接吻した。覆面を取った小林青年の顔は、すこぶる付きの美男子だった。
(了)
ありがとうございます。
面白かったです。まさに逆転・逆転さらに逆といった感じですね。
ミステリ仕立ても良かったです。どんどん引き込まれました。
シュは自らの内側へ、命ぜられた。
『おお! 世界よ!』
そして、この世界が形作られた……
「ナニ考えてんの?」
「うん? 例の翻訳」
「例ってあの? 最近発掘された、この世界の発端が記されたとされる古文書のこと?」
「そう……」
「アレって一応、決着ついたんじゃなかったけ? この世界の成り立ちとは全く関係ない、
後世の人間がでっちあげたつくり物だったって」
「いや、こないだ発見されたのは、明らかに形成年代が新しいし、データ形式も胡散臭いから
信憑性はほとんどないだろうけど…………」
「なんか引っかかる点でもあるんか?」
「ああ、あれ自体は、比較的新しい段階で生成されたのは確かだけど、僕の知っている他の古文書で
記述内容が酷似しているものが沢山あるんだ」
「それって、創造主が、世界を創出したという記述がいくつものバリエーションで存在しているってこと?」
「ある部分ではね。ある流派ではシュの存在なんて明記されていないし、酷いものになるとその直後に世界の
終末を予言しているような流派もあって、一概には全部が全部同じ内容だとは言えないんだけど」
「一番、有力な説としてはシュの存在以前にも別の世界があって、その世界でシュが生み出されたんだっけ?」
「そう、でもシュがどこにいるのかについては未だに諸説入り乱れてて、あるいはこの世界はシュの内側に存在
しているのかも知れない……。でもそれを否定するかなり強い学説は存在している」
「ダブルスタンダード仮説だね」
「そう、ふたつのスタンダードっていうのがナニを意味しているのかが、
はっきりすればすべての辻褄はあってくるとは思うんだ」
「だけど、『i』も『o』も具体的にはなんであるのかが解っていないんだよね。
キミ自身はどう思っているんだい?」
「やっぱり、ダブルスタンダード仮説なんて眉唾だね。いろいろ説得力のある説明は付けられているけど……」
「例えば、すべての物質は『i』という場から生じて『o』へ向けて消滅する。よってこの世界の物質の総量は基本的には変化していない」
「ああ、その大原則があってこそ、現代の物質学が成り立っているのは承知している。でも『i』と『o』が絶対的に
均量であるなんて保証される根拠は僕には見つけられない」
「シュって存在していると思う?」
「いるとしたら、とてつもない存在だね。僕らでは検討もつかないよ。僕らがシュの内側に存在しているとしても……
シュがどこかから僕らを見守っているとしても……、僕らの力ではその存在を立証することが出来ないとも思う」
「でも、みんなどこかで気にはしてるんだよね」
「そう。だから、あんな、なんでもない古文書がひとつ見つかるだけで、大騒ぎするんだけどね」
「ちなみにだけど、その古文書の内容って素人がみてもわかるのかな?」
「まったくの素人じゃ無理だけど、翻訳ツールにかければ一般的な形式に変換するのは簡単だよ
変換前の原文の状態じゃあ、素人には全く意味がわからない。どちらかというと言語学者の領域だね」
「ふ~~ん。今度暇があったら、原文見てみよう」
「じゃあ、キミんとこのアーカイブに掘り込んどくよ。でも暇つぶしにもならないと思うよ」
main(){ printf("Hello world"); }
ありがとうございます。
これはオチが強力でしたね。
ダブルスタンダード ダブルスタンダードI/O
ダブルstdioでしょうか。
ありがとうございます。
面白かったです。まさに逆転・逆転さらに逆といった感じですね。
ミステリ仕立ても良かったです。どんどん引き込まれました。