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MPI(モーズレイ性格検査)とは

2016.08.31.Wed.23:53
この記事では性格検査の一つであるMPIについて書いていきます。


■MPI(モーズレイ性格検査)

まずは基本的な情報を引用します。

“アイゼンクが開発した質問紙法の性格検査である。モーズレイは病院名である。80項目を3件法で行い、情緒安定性である「神経症傾向」と社会性である「外向性-内向性」の2つの性格特性を測定する。回答の歪みを判断する虚偽尺度がある。”
(臨床心理士指定大学院対策 鉄則10&キーワード100 心理学編 (KS専門書)より)


神経症傾向はN尺度と呼ばれます。

N尺度は情緒の不安定さ、ストレスへの反応しやすさ、神経質で落ち着きのなさ、といったことを表す因子です。

後述するE尺度に比べて同一被験者でも時期によって変化しやすいと言われています。


外向性-内向性はE尺度と呼ばれます。

E尺度の向性はユングの向性の考え方とは少し異なり、社会的向性のみを測定していると言われています。

簡単に言えば、対人関係において社交的かそうではないかを測定しています。

また、衝動性も含まれていることが示唆されています。


虚偽尺度はL尺度と呼ばれます。

これはMMPIの虚偽発見尺度の20項目と同じものです。

L尺度の得点が20点以上あれば結果が歪められている恐れありと見なし、再検査の必要があります。


MPIではこの他に採点されない中性項目というものが12項目あります。


MPIはE尺度、N尺度のおよその平均点に0.5の標準偏差を増減することにより、9つのカテゴリーとしてざっくり見ることもできます。


ちなみにこちらのサイトで簡略版ではありますが、やってみることができます。

http://psycho.longseller.org/mpi.html


■MPIの利用領域

MPIは心療内科では時折用いられるそうです。一方で精神科領域における諸疾患の弁別力は弱いと言われています。


研究でも、あまり見かけたことはありません。


とは言えMPIで取り上げられている神経症傾向と外向-内向性というのはその後のビッグファイブや他のどんな性格検査でもほぼ必ず因子として現れるため、ビック2と呼ばれています。


それくらいこの2つは人のパーソナリティの共通要素ということですね。
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SCT(文章完成法)の解釈方法を解説

2016.08.30.Tue.23:28
今回はSCTの解釈方法について書いていこうと思います。


SCTは文章完成法(文章完成テスト)と呼ばれる投影法の一つです。


内容としては、ある刺激語が提示され、それに続けて文章を書いて完成してもらうというものです。


刺激文の例としては「私の好きなのは…」、「友達は私を…」みたいな感じです。


解釈に関する本はかなり少ないようで、探してみたのですがあまり見つかりませんでした。

一例として以下を載せておきます。






どちらにせよべらぼうに高いですね。。。



■SCTの解釈


実施法うんぬんは参考書に任せるとして、ここでは解釈がどのように行われるのかという所について書いていきます。


・形式分析

バウムテストと同様で、形式分析は内容に関するものではなく、どのように書かれているかを解釈することになります。

1.反応の長さ

短文か長文かということです。

例えば短いなら自分の事を話したがらない(防衛的)、内省的でない、粗雑、といったように解釈する感じです。


2.反応時間

どれくらいの時間をかけて書いたのかということです。

熟慮するタイプかなど。


3.文法的な誤り

文章として正しいか否かという観点です。

注意深さなどがわかるのではないでしょうか。


4.筆跡

字の大きさや筆圧などからもパーソナリティを想像するヒントが得られます。



・内容分析

書かれた反応の内容を分析するのが内容分析です。

特にこうしなければいけないという決りはないようです。


重要な点は、解釈をいくつも出していくということだと言われています。


SCTは力がある検査者が読み取ると、色々なことがわかると言われるのは、この解釈仮説をいくつも出せること、それを統合してまとめられることができるからでしょう。


例えば
・私が知りたいのは…あの時失敗さえしなければどうなっていたか
という刺激と反応があったとしましょう。(今適当に考えたのであくまで参考までに)


この反応から、①過去にこだわっている(過去志向)、②過去志向の人は内向性が高い場合が多い、③現状に不満がある、④「さえ」という表現からその失敗が人生に大きな影響を与えていると思われる。

といったように解釈仮説を色々出していき、最終的に共通要素やその人にとって重要な要素をピックアップして所見を作成するという手順になるかと思います。



■SCT解釈の観点


SCTは刺激文が様々あるのですが、大枠で捉えると以下の観点でまとめることができると思います。


1.パーソナリティ特徴

要するに性格に関する見立てです。


2.家族関係

家族関係に関する見立てです。どういう家庭で育ったのか、今の家族関係はどうかなど。


3.対人関係

友人や同僚、その他対人関係に関するその人の関わり方に関する見立てです。


4.その他

性役割観、職業観、特定の出来事など。


5.総合所見

上記のまとめと面接での対応など。



■まとめ

SCTは文章を作成するものなので、バウムテストといった描画タイプの投影法より社会的望ましさや防衛が入りやすいです。


そういった点も踏まえつつ、様々な解釈仮説を持てるか否かが重要になってくると思われます。

文章の解釈はいわば誰にでもできるものなので、解釈の標準化が難しいのかなと思います。


頑張って頭をひねるしかないということでしょうか。



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バウムテスト(樹木画テスト)の分析・解釈方法をサクッと解説

2016.08.29.Mon.23:28
バウムテスト(樹木画テスト)とは投影法にあたる性格検査の1つです。


そもそも性格検査には質問紙法と投影法があります。


質問紙法は簡単に言うとアンケートです。
1つの刺激文に対して、1ほとんど当てはまらない~5かなり当てはまる、などの選択肢があり、それを選ぶものになります。

一方の投影法は刺激文があいまいで多義的であり、求められる反応の自由度が高いテストになります。

反応の自由度が高いため、意図的に回答を歪めることが難しい、無意識のパーソナリティが投影されやすいといった特徴があります。

つまり、本当の自分が出やすいということです。


投影法の話はここら辺にしておいて、バウムテストの解釈について書いていこうと思います。


■バウムテストのやり方


1.コッホ式

教示は「実のなる木を描いてください」というものです。
道具はA4版の画用紙、中程度の柔らかさの鉛筆です。


2.高橋雅春式

教示は「木を一本描いてください」というものです。
道具はB5のケント紙、HBの鉛筆です。

高橋式では初めから実を描けと教示しないにもかかわらず実を描く場合、それに意味があるということで教示しないようです。


■バウムテストの目的


最終的な目的は描かれた木から様々な解釈仮説を検討し、被験者のパーソナリティを見立て、所見を作成する、ということになると思います。

もちろん、木を一本見ただけでその人の人となりが完璧にわかる、ということはないでしょう。

しかし、この人はこんな人ではないか、といういくつかの人物像(可能性)を持っておくことはできると思われます。

また、質問紙法と併用し、テストバッテリーとして使われることが多いようです。



■バウムテストの解釈


ここでは高橋の解釈法を基にした解釈の方法を書いていきます。

詳しくはこちらを参照されると良いと思います。





・はじめに

バウムテストの解釈法はけっこうネットに載っています。
参考として以下のサイト。

http://jyu-q.com/pia/arttherapy/baumtest02.html

https://nanapi.com/ja/118663


かなり詳細に書いてあったりするので、とても参考になります。

ただし、なぜそういう解釈になる?というところまでカバーしてない所もあったので、ここではそれを中心に書いていきます。



■①全体的評価

これはようするに「パッと見」から全体的な印象を得ることで、検査者が直観的に被験者の評価をすることです。


そもそも木は人型に似ているため、自分自身を反映しやすいらしいです。


この枝はこれこれを象徴している、といった細部の解釈はそれだけではあまり意味がありません。部分部分の解釈では矛盾した結果も結構出ます。


まず初めに全体的な印象を評価し、その情報を参考にしながら、描かれた木の様々な特徴の意味しているところを考えていくような感じです。

この段階では例えばですが、雑だなとか、力強いなとか、調和がとれているなとか、直観的な印象を重視します。



■②空間象徴の分析

空間象徴というのは、木を描く用紙のある領域には特別な意味を象徴しているという考え方です。
もともとは筆跡学で用いられていたもののようです。


グリュンワルドという人が考えたのが有名ですので、画像を貼っておきます。
kuukan
(『「紙芝居屋・甲介の「ポレポレでいこう!」』より)

用紙のどの部分に、あるいはどの部分に向かって何が描かれているかというサインが、パーソナリティの側面と結びつく根拠となる理論がこの空間表象です。



■③形式分析


どのように描かれているか、に関する分析です。


例えば、木の位置、サイズ、写実性、筆圧、線の特徴、どこから見た木か(パースペクティブ)、対称性、透明性、陰影、などが形式分析の対象です。



■④内容分析

何を描き、何を描かなかったのかという内容に関する分析です。


樹冠や幹などの特徴、杉や竹といった特定の木を描いたか、などが対象となります。


どの部分に何が反映されるかという所ですが、以下のサイトが参考になると思います

バウムテスト(樹木画テスト)



■⑤総合評価

実際に解釈する場合、時間が許せばですが、それぞれの解釈仮説を基に、共通性の高いもの、全体評価にマッチするものをその人の特徴として考えていくのが良いのかなと思います。

イメージとしては

1.全体評価
解釈~~
2.空間表象分析(木の位置)
解釈~~
3.形式分析
・サイズ:解釈~~
・筆圧:解釈~~

4.内容分析
・幹:解釈~~
・枝:解釈~~


みたいな感じです。

よく投影法は解釈に熟練を要すると言いますが、本当にそうだと思います。


反応の自由度が高いがゆえに解釈可能性は膨大になりますし、部分部分の解釈は矛盾したものになることもよくあります。


どれをピックアップし、リアルな人文像を描くためには臨床の経験も重要になってくると聞いたことがあります。

様々な視点を統合して見ていく必要があるのでしょう。


ざっくりした感じになってしまいましたが、何かしらの手助けになれば幸いです。



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男らしさと女らしさ 日本は男らしさを重視する? Hofstedeの文化差の次元3

2016.05.02.Mon.21:55
近年(といっても結構前からですが)女性の高学歴化が進み、職場でも男女平等が重要視される風潮にあります。


働く女性も増えてるみたいですが、保育所が足りないという問題が出てきたりと中々社会的な基盤が追い付かないといった現状もあるようです。


とは言え、知り合いの女性に言わせると、専業主婦になりたいという思いを持つ女性も根強いようで、根強いというよりむしろ増えてるのではと言ってるくらいでした。


今回の記事は男は仕事、女は家事、そういう性役割の文化差に関する記事です。


実際のところ、日本はどのくらい男らしさや女らしさを強調する国なのでしょうか。



■男らしさと女らしさ


以前、比較文化心理学における文化差の次元については4つあるということを以前書きました。

・Hofstedeの多文化社会理論による4次元

①権力格差の大小
②個人主義―集団主義
③男性らしさ―女性らしさ
④不確実性の回避の強弱(リスク志向度)

参考:価値観の違いっていうけど価値観ってどんな意味? 比較文化心理学による説明


これはIBMの社員にとったアンケートを基にした調査結果です。


・男らしさ-女らしさの定義

この調査では、男性は外で仕事をし、競争を好み、たくましい、女性は家事や育児や人間関係全般に関心を持ち、やさしいといった性役割観が強調される程度のことを指しています。


男らしさが強い国は社会における男女の性役割が明確に区別されている国で、女性らしさが強い国は男女の役割が重なり合っている国ということらしいです。


■男性らしさ-女性らしさの測定


アンケートの質問事項は「理想とする仕事にとって、重要な条件は?」というものだったそうです。


男性らしさ
給与、承認、昇進、やりがい(を重視する)

女性らしさ
上司との良い関係、協力、居住地、雇用の保障(を重視する)


個人的には女性らしさの項目は男性も重視しそうだなぁと思ってしまいますが。


■日本における男性らしさ-女性らしさ


こちらに得点と順位が書いてありますのでまずはご覧ください。

国民性の指標「ホフステッド指数」を分析する


日本はなんと第2位でかなり性役割が区別される国と言えます。


スウェーデンやノルウェーといった北欧の国はほぼ男女差がなく、やさしく慈しみ深いことに価値を置く国だと言えます。



■男性らしさ―女性らしさの起源


実は関連する要因は見つかっていないようです。

女性らしさの強い国はヨーロッパ北西部なんですが、ここのエリートは貿易商人と船員(バイキングの影響)で、男が旅に出ている間、女が村を切り盛りし、夫婦で商売に関わったことが原因かもと考えられているようですが、憶測の域を出ていないみたいです。


■まとめ

日本は世界的に見ても性役割が区別される国と言える。



読んでいただきありがとうございました!
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縦断的研究・横断的研究・コーホート研究 発達心理学の研究法を理解する

2016.04.29.Fri.19:07

一応発達心理学のカテゴリにしていますが、心理学全般に言える研究法の種類について書いていこうと思います。



■発達心理学の研究方法


発達研究の主要な研究方法としては縦断的研究と横断的研究の2つの方法があげられます。


・縦断的研究

縦断研究は、同一個人や同一集団を継続的に追跡調査することで、その発達的変化や一貫性を検討する手法です。


例えば、ある個人を小1、小2、小3と追ってデータを蓄積していく場合、縦断的研究といえます。


メリット
発達的変化やその原因を時間の経過とともに探ることが可能。環境の影響、歴史的条件などを明らかにできる。


デメリット
時間・費用・労力といったコストが非常に大きい割に、少しのデータしか得られない。研究対象を長期にわたって追跡・保持するのがそもそも難しい。



・横断的研究


異なる年齢集団を一度に調査し、各年齢集団間の発達的変化を検討する方法です。


ある一時点で、小1、小2、小3のデータを一気に集めた場合、横断的研究といえます。


例としては3歳、4歳、5歳の子たちにある課題を与え、どの年齢から達成するかがわかれば、課題獲得の時期を高い精度で確かめられたことになります。


メリット
少ない費用・時間・労力で多数のデータを得ることができる。

デメリット
個人の発達の軌跡を記述することができない。それぞれの年齢集団のコーホートが異なるため、縦断研究のような個人の一貫性はない。


■コーホート研究


コーホートとはなんぞや? ということで、それについても補足しておきます。


コーホートとは、ある一定期間内に生れた人の集団をいい、同一年齢集団の差異を用いて、時代背景の影響を検討する研究をコーホート研究といいます。


例えば、ゆとり教育前の10歳とはじまってからの10歳では性質が違うことが予想されるように、同じ年齢集団でも生まれ育った時代によって差異が生じるため、このような研究が生まれました。


つまり、横断的研究によって20代と30代のデータを取ったとしても、発達の影響で変数に差が出たのか、発達途中の時代背景の影響なのかは慎重な判断が必要ということになります。


今回は研究法について紹介しました。


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