前提条件
- ネガフイルムは、通常スリーブの状態で保存されている。マウントされているポジフイルムとは扱いが異なる。
- 35mm版の場合は6コマあるいは4コマごと、6x7版の場合は2コマごとに切断されている。複写やスキャン時には、この状態のフイルムを保持する器具(ネガキャリアやフイルムホルダーと呼ばれる)が必要。
- フイルム(ツヤのない面:乳剤面)についたキズやカビ痕、湿気を帯びたことにより発生したムラは除去することが難しい。また、指紋はカビの原因となる。
- ここでは、カメラ・レンズと複写対象のフイルムを、平行を保って固定することを優先した方法を検討する。
- フイルムを保持するために、フイルムの切断や恒久的なのり付けマウントなど、現状回復が困難となる作業はできるだけやらない方針としている。
複写対象のフイルムとカメラの固定および位置合わせに関する一般情報:
35mm版ネガフイルムの保持:
- NIkon スライドコピーアダプターES-1を利用した。ES-1は、マウントされたポジフイルムを複写するためのアクセサリーである(先人の利用状況)。マウントされたポジフイルムであれば、平行出しはできており、中心出しも比較的スムーズにできる。
- ES-1は、フィルター径52mmのレンズにはそのまま装着可能。AF-S Micro NIkkor 60mm f/2.8G ED のフィルター径は62mmであるため、ステップダウンリング62mm-52mm、もしくはBR-5リングを併用してES-1を装着する。
- 紙製スライドマウントを加工してES-1用のネガキャリア(フイルムホルダー)を作成した。スライドマウントの開口部は24mm×36mmよりも微妙に狭いため、カッターで切って開口部を広げている。
- 迷光対策が別途必要そうなので検討中。複写対象の画面隅に不用意に光が回り込むときがある。
35mm版ネガフイルム(スリーブ)をES-1にセットするバリエーション:
- ES-1にスリーブのフイルムを直接セットすることはできるが(先人の利用例)、ES-1の押さえバネによりフイルムにキズがつきそうだし、フイルムの位置合わせが面倒そうだ。
- 透明ポジシートをスリーブ1本に切り取り、それでネガフイルムを保護してES-1に直接セットする方法を試したが、歪んだ同心円状のムラ(ニュートンリング)が発生しやすく、ポジシートのキズやムラが結構目立つ。
- ネガフイルムを1コマごとに切断してスライドマウントしてしまうことも考えられるが(先人の例)、こんなことやったら二度と写真屋さんでプリントを受け付けてもらえなくなるのではないかと心配する。しかし、写真屋さんにプリント依頼を出さないと割り切るならば、必要なコマのみをスライドファイル等で管理できるようになるメリットはある。
- フイルムスキャナ用のフイルムホルダーを加工して使用している方もいるが(先人の事例)、このフイルムホルダーは本体のフイルムスキャナとともに生産中止となっており、現在では入手が困難。
注意事項:35mm版フイルム等倍複写時のワーキングディスタンス
- ES-1利用可否を判定するための要素は、等倍撮影時のワーキングディスタンス(レンズ先端から被写体までの距離)であって、撮影距離(撮像面から被写体までの距離)ではない。ワーキングディスタンスは、[撮影距離]から[マウントのフランジバック量]と[繰り出し量を含めたレンズ全長]を減じたものとなる。
- ES-1は「35mm版フルサイズ(FX)のカメラに標準マクロレンズを装着し、マウントされたスライドフイルムを等倍複写する」ことを前提としている。この条件から外れた場合、レンズ先端と複写するフイルムの距離(ワーキングディスタンス)を延長しなければならないケースが出てくる(先人の事例1、先人の事例2)。
- [D700 + AF-S Micro Nikkor 60mm f/2.8G ED +マルミステップダウンリング62-52mm + スライドコピーアダプターES-1 + 自作ネガキャリア]、の組み合わせでは、ES-1の延長筒をほんの少し延ばしたところでおおよそ等倍になる。
- 光源にフィルターを被せず(単なる白色光源)、レンズに色温度変換フィルタ(マルミMC-80A)をつけた場合、フィルター枠の厚みのため、ES-1の延長筒を最も短くしても等倍まで届かない。ただし、RAW現像時にクロップ(トリミング)することを前提とするならばなんとかなる。
6x7版フイルムの保持(ES-1的なモノを作る)
- 6x7版の画面対角線長は約90mm。このためホルダー開口部は少なくとも90mm以上が必要。ケンコーマルチホルダー100(アダプターリング82mm用とセット)はギリギリで適合した。6x8や6x9版には対応できそうにもない。
- マルチホルダー100は、本来100mm角のポリエステル製フィルター(2mm厚まで)やゼラチンフィルターを保持するための機材である。
- 紙製スライドマウントを加工して作成したネガキャリアを100mm幅(より微妙に狭い)のプラスチック板の上に貼付け、マルチホルダー100に装着できるようにした。プラスチック板の厚さは2mm以下である必要がある。
- スライドマウントの開口部はネガの実サイズより若干狭いが、今回は特にスライドマウントの開口部を広げる工作はしていない(私が使用しているカメラがPentax 6x7。プリズムファインダー装着時の視野率は90%なので、まあいいか、ってコトにしている)。
- 6x7版フイルム全体を複写する際のワーキングディスタンス確保ために、ケンコーメタルフードを4つ(KMH-62 + KMH-67 + KMH-72 + KMH-77)連結し、その先端にアダプターリング82mmを介したケンコーマルチホルダー100を装着した。
- AF-S Micro Nikkor 60mm f/2.8G EDに装着した場合、これでもまだ微妙にワーキングディスタンスが足りないので、普段使用しているプロテクトフィルターをレンズに装着することで距離を若干稼いでいる。ジャンクの62mm径フィルターを買ってきてガラスを抜いてフィルター枠だけにしたモノを利用し、距離を稼いでもいいかもしれない。
- この状態でカメラを直に床や机の上に横置きするとフードが歪みそうで危険だ。また、収納する時は全部バラしたほうがよい。
- この組み合わせを使って6x7版フイルムを複写すると下図のようになる。カメラがD700の場合、トリミング後の画像は概ね960万画素程度であり、縦横比の違いにより20%強の画素を損失する計算となる。
- なお、一部の紙製6x7スライドマウント(今回利用したホワイト写真用品の製品や、フジカラースライドマウント6x7)の長辺幅は100mm・厚さは2mm以下なので、マルチホルダー100にはそのまま装着できる(スムーズに脱着するには、微妙に長辺幅を削る必要がある)。このことから、6x7版フイルムについては、ネガフイルムを1コマごとにマウントしてしまった方が楽なんじゃないかとも考えたが、紙製スライドマウントはノリ付きなので一旦マウントしてしまうと、はがすのが至難の業となる…のでヤメた。
追加情報:未検証情報を含む
- 自作ネガキャリアにおける、プラスチック板とネガキャリアの固定に、顕微鏡(ネイチャースコープ)用品のNikon クレンメル(顕微鏡のプレーンステージ上でサンプルを固定する板バネ)を利用したいと考えている(今はセロテープで固定している)。
- フイルムと光源の間に乳白色の拡散板を配置する場合、ニコンSW-12(スピードライト用拡散板。A5版程度の大きさで厚さは2mm以下。固くて割れやすいらしいので加工は大変そうだが)を流用できるかもしれない。
- 35mm版のスリーブやロール(切ってない状態のフイルム)複写時のフイルム保持のためのアクセサリーとして、ニコンにはスライド複写装置PS-6がある。PS-6はベローズアタッチメントPB-6と併用することを前提としたものであるが、PB-6は既に製造中止である。また、PB-6とNikkorのGタイプレンズを組み合わせた場合、装着はできるが絞り値がレンズ側で設定できないため、マトモに使えないだろう。PB-6には、絞り値を単独で設定できるレンズ(Ai-sやAi 、AF-Dのマイクロニッコールなど)を利用することになると思われる。
- 高倍率の複写や接写(ハーフ版フイルムやマイクロフイルムの複写)には、BR-2Aリング(リバースリング)を利用して、フィルター径52mmのレンズを逆向きにカメラに装着する手段もある(デジカメWatchの参考記事)。BR-2Aで逆向きに装着するレンズにも、絞り値を単独で設定できることが条件となる。計算上では、Ai-s 50mm f1.4やAi-s Micro Nikkor 55mm f2.8 をBR-2Aリングで逆向きにカメラに装着し、BR-3リングを介してES-1を装着することは可能と思われるが….マトモに撮影できるかどうかは不明である。なお、親切な先人が、BR-2Aと各種レンズとの組み合わせによる撮影倍率を公開してくれている。
- 高倍率の複写や接写では、引伸用のELニッコールに適切なマウントアダプタを介し、ベロースアタッチメントに装着して利用する場合もある。現在、引伸レンズとしてのELニッコールは製造が終了しているが(中古市場には豊富らしい)、同じ仕様の一部のレンズが低倍率産業用ILシリーズとして栃木ニコンから供給されてはいる(ニコンによる解説)。
- 35mmより小さいフイルムの複写(より高い撮影倍率が必要)には、カメラをD700(FX)から、Nikon 1(CX)に変更してもいいんじゃないか…計算上、マウントアダプターFT-1があれば、ネガキャリアは別途作成しないといけないものの、今回利用したセット(AF-S Micro Nikkor 60mm f/2.8G EDとES-1)はそのまま使えそうだし。