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カテゴリ:科学本
「異端の数ゼロ ー数学・物理学が恐れるもっとも危険な概念」チャールズ・サイフェ(林大訳)(早川書房) P19 古代バビロニアにも存在していた「空位」を表すゼロの存在。でもこの段階ではゼロは「数」ではなかった。 P46 この便利なゼロはギリシアにも計算を便利にするツールとしては伝わっていた。でも「ギリシア人がゼロを拒絶したのは無知のせいではなかったし、制約の大きいギリシアの数=形の体系のせいでもなかった。哲学のせいだった。(中略)ゼロのうちに、西洋世界の教義にとって有害な概念が二つ潜んでいたからだ。この二つの概念は、やがて、長らく君臨したアリストテレス哲学を崩壊させることになる。その危険な概念とは、無と無限である。」 P56 「したがって、最初の出来事があるはずだ。つまり天地創造である。だが、天地創造の前には何が存在していたのか。無なのか。アリストテレスにとって、これは受け入れられなかった。(中略)アリストテレスは無の概念を嫌うあまり、真空を抱えた宇宙より永遠不滅にして無限なる宇宙を選んだ。永遠なる時間はゼノンの無限分割と同じような”可能的”無限だと述べた。」 P67 紀元0年がなかったために・・・。「世界中のホテルとレストランでは1999年12月31日はずっと前から予約で満杯になっていた。2000年12月31日ではなく。誰もが、間違った日にミレニアムの変わり目を祝った。世界中の時間の公式の番人として年代に関する事柄すべての裁定者たるイギリス王立グリニッジ天文台さえ、浮かれ騒ぐ人々の群れを迎え入れることを計画していた。」 P86 「イスラムは原子論者の考えに飛びついた。何しろ、今やゼロがあるのだから、無は再び立派な概念となったのだ。アリストテレスは無を嫌った。原子論者は無を必要とした(註:原子が動き回ることができるために真空が必要だということ)。聖書は無からの創造について語っていたが、ギリシアの教義はその可能性を斥けていた。キリスト教徒はギリシア哲学の力の前にひれふし、聖書よりアリストテレスを選んだ。一方、イスラムは逆の選択をした。」 P98 「無限のゼロの力をはじめて証明したのは、イタリアの建築家、フィリッポ・ブルネレスキだった。ブルネレスキは消失点を用いて写実的な絵を生みだした。」 P108 「ルネ・デカルトはイエズス会士として教育を受け、やはり新しいものと古いものの間で引き裂かれていた。無を斥けたが、自らの世界の中心に置いた。(中略)デカルトはゼロを数直線の中心にもってくることになり、また、神の存在の証明を無と無限に探し求めることになる。だが、アリストテレスを完全には拒絶できなかった。無を恐れるあまり、無の存在を否定したのだ。」 P142 「ニュートンは無限小を嫌った。(中略)ニュートンは、自分の方程式に無限小が含まれていることを、きまりが悪く思い、これを隠してしまった。ニュートンの計算に出てくる0はただの媒介、計算の最後には不思議にも消えてしまう松葉杖にすぎなかった。一方、ライプニッツは無限小にのめりこんだ。」 P144 ロピタルの定理に関するベルヌーイとの逸話・・・知らなかった。 P165 ポンスレの射影幾何学とガウスの複素平面における掛け算と累乗の幾何学的解釈、「この二つの概念を組み合わせたのは、ガウスの教え子、ゲオルク・フリードリヒ・ベルンハルト・リーマンだった。リーマンは射影幾何学と複素数を融合させ、突然、直線が円に、円が直線に、ゼロと無限大が数に満ちた球の両極になった。」 P168, 赤道上の数(1や-1やiなど)を除くすべての数がゼロや無限大に吸い込まれていく様子は、このページの図から明らか。 P180 「有理数は、数直線のいたるところにあるのに、何の空間も占めない。数直線めがけてダーツを投げても、有理数に当たることはない。(中略)無限にある有理数の全体は、ゼロにすぎなかった。」 P191 「紫外線カタストロフィーは量子革命につながった。量子力学は、光についての古典的な理論が抱えるゼロ、そして宇宙のあらゆる物質のかけらから出るはずの無限大のエネルギーを取り除いた。しかし、これはそれほど大した偉業ではなかった。量子力学には、宇宙全体がー真空も含めー無限大のエネルギーに満ちていることを意味するゼロがあった。」 P201 「これが真空の力、無が生み出す力だ。カシミール効果である。」 P221 「量子力学と相対性理論が併存するところにはゼロがある。(中略)ブラックホールは一般相対性理論の方程式のなかにあるゼロだ。真空のエネルギーは量子力学の数学に現れるゼロである。(中略)ビッグバンは、どちらの理論にも含まれるゼロだ。宇宙は無から生まれた。そして、宇宙の歴史を説明しようとすると、どちらの理論も破綻してしまう。(中略)しなければならなかったのは、ゼロを追放することだけだった。万物の理論は実は無の理論だった。」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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