LimeWire停止により違法音楽ダウンローダーが激減、しかし音楽セールスにはほとんど影響なし?

以下の文章は、TorrentFreakの「US Music Piracy Plunges After LimeWire Shutdown」という記事を翻訳したものである。

原典:TorrentFreak
原題:US Music Piracy Plunges After LimeWire Shutdown
著者:Ernesto
日付:March 24, 2011
ライセンス:CC BY

今日はメジャーレーベルにとって喜ばしいニュースでも。市場調査会社NPD Groupは、米国の違法なP2P音楽ファイル共有ユーザの数が、3年前に比べてほぼ半減したことを明らかにした。その結果、米国の違法音楽ファイル共有ユーザは1,200万人減少した。NPDはこの激減をLimeWireの閉鎖によるものと推測しているが、残念なことにレコードレーベルの収益には何の影響も及ぼさないようだ。

昨年10月、RIAAは何とかLimeWireを停止させることに成功した。しかし、ファイル共有界隈が一変したというような話は聞こえてこない。ある日を境に、世界中で最も人気のあったファイル共有アプリケーションが姿を消した。我々はその際、LimeWireの消滅が音楽パイラシーの規模に影響を与えることはないだろうと予測したが、NPD Groupの調査を見る限りでは、我々の予測は間違っていたようだ。

LimeWireの代わりは数あれど、NPDによると、昨年第4四半期のP2Pアプリケーションによる違法音楽ダウンローダーの数は、2007年同四半期に比べて43%も減少した。NPDは、この激減はおおよそLimeWireの停止によるものだとしている。LimeWireが停止したのは、第4四半期に入ってから数週間後のことであった。

このデータは、アメリカ人5,549人を対象にした広範な調査から得られている。母集団全体に置き換えると、米国の違法音楽ダウンローダーの数は、この3年間で、2,800万人から1,600万人に減少したことになる。

P2Pアプリケーションのマーケットシェアを見てみると、LimeWireは32%を占めており、依然として最も大きい割合を占めている(2010年第4四半期の最初の数週間は使用できたため)。しかし、この数字は同年第3四半期の56%からは減少している。

予想されていたように、LimeWireの停止により、他のP2Pアプリケーションのマーケットシェアは軒並み上昇した。FrostWireがその恩恵に最もあやかったようで、10%から21%に伸びている(訳註:FrostWireはインターフェースがLimeWireによく似たGnutella/BitTorrentクライアント)。

一方、BitTorrentクライアントとしては最も人気のuTorrentは、マーケットシェアを8%から12%に伸ばした。しかし、昨年に比べて違法音楽ダウンローダーの総数が減少したことから、uTorrentで音楽を違法にダウンロードするユーザの絶対数は減少した。(訳註:2,800万人の8%>1,600万人の12%)

また、NPDの調査によると、米国における違法音楽ダウンローダー人口の割合は、2007年第4四半期の16%から2010年同四半期には9%にまで減少している。では、このような大幅な減少が、音楽産業の収益にどのような影響を及ぼしたのだろうか?我々は、この調査の妥当性について必ずしも新羅いているわけではないが、少なくともRIAAにとっては喜ばしい結果であるにちがいない。

しかし、2010年第4四半期の収益を見てみると、4大メジャーレーベルの収益に大きな変化があったようには思えない。なぜか?まぁ、そもそも音楽パイラシーは音楽セールスに大きな影響を及ぼすものではないだろうから。しかし、彼らがこれを利益に結びつけることができなければ、おそらく、RIAAはこのパイラシーの激減を単純になかったことにするだろうね。

ちなみに、NPDのニュースリリースによると、P2Pファイル共有ユーザの平均音楽ファイルダウンロード数は、Q4 2007の35曲からQ4 2010には18曲の減少しているとのこと。もちろん、1、2曲しかダウンロードしないユーザもいれば、100曲以上ダウンロードするユーザもいる、との但し書きもある。分散が大きいってことを暗に示唆しているんだろうね。

あと、3年前に比べて大幅に減少したのは違いないんだろうけど、そのすべてがLimeWireの停止によるものというわけではないと思う。もともとP2Pファイル共有ユーザ自体が減少(ないし微減)傾向にあり、そこにさらにLimeWireの停止が追い打ちをかけた、というところじゃないのかな。

それにしても、「Limewireによる損害は『75兆ドル』」なんて主張されている一方で、LimeWireの停止が音楽セールスにほとんど影響を与えていないのだとしたら、あまりに間抜けすぎるよねぇ。あくまでも裁判ってことで、「侵害された曲目×共有していたユーザ数×法定損害賠償額(min-max)」で計算しました、ということなんだろう。それが逸失利益(lost sales)かどうかは別にして。

こちらも負けじとLimeWireの停止による回避できた損害額を単純計算してみる。LimeWireの存続期間6年間で被害額が「4000億-75兆ドル」なので、年間平均すると「667億-12兆ドル」、四半期ごとだと「167億-3.1兆ドル」、停止したのが10月末なのを考えると、さらに2/3して「111億-2.1兆ドル」。よって、LimeWireが停止したことにより、米レコード産業が回避できた損害額は、2010年11-12月の2ヶ月間で日本円にして「9037億円-171兆円」ということになる(単純計算をからかってるだけなので、信用しないように。)

さて、これほどの損害を回避できたのだから、音楽産業はさぞお喜びのことだろうと思いきや、この件に関するRIAAのプレスリリースを見る限りでは、そこまででもないようだ。

間違いなく良いニュースではありますが、このレポートからは、LimeWireの穴を埋めるべく、他のサービスの人気が上昇していることがわかります。FrostWireとuTorrentはこの四半期で成長を続け、また、依然として1,600万人がP2Pを用い、アーティストやクリエイターに対価を支払うことなく音楽を盗んでいます。 

確かに、3年前に比べてほぼ半減したとはいえ1,600万のユーザ数というのは、決して安心できるものではないのかもしれない。それと、uTorrentユーザの絶対数は減少してるのに比率だけ見て「成長だ」としてしまうのは、総数と比率の関係をわかってないということなんだろうね。ほんと大丈夫か?

それはさておき、RIAAはさらに、未だ被害は甚大だ、私たちRIAAの活動は今後も必要不可欠だ、と主張する。

このとは、現在生じている問題に対し、多面的な戦略が必要とされていることを意味しています。音楽レーベルは、既に合法的で優れた選択肢をファンに提供し、その需要を十分に満たしていますし、新しいサービスも続々と市場に投入されています。また、  インターネット上の著作権や、デジタル窃盗がクリエイターに及ぼす影響について消費者を啓蒙し続ける必要があります。エンフォースメントも依然として重要です。オンラインコミュニティにも重要な役割を担ってもらわなければなりません。たとえばISPはオンライン窃盗に使われたアカウントについて加入者に警告する、広告業者は著作権侵害サイトに絶対に広告を出さない、決済サービスは海賊版業者に対する支払い処理を行わない、といったように。共に、オンラインコミュニティを変えていくことができるのです。

反射的に音楽産業は「合法的で優れた選択肢」なんて提供してしない!と思っちゃう方は実際にリンクをのぞいてみると良いかも。個人的には、「音楽レーベルが」提供しているわけではないにしても、魅力的なサービスが並んでいるなぁと思います。あくまでも米国の話として。

コメント

セールスについて・・・

日本では、いろんな曲をダウンロードしてコレクションを作成し、友達にコピーして配ってあげている人っていうのが結構な確率で身の回りにいると思うが、直接DLしてる人がちょっと減ったとして、そういった「親切な友達」が減らない限りあまりかわらないんじゃないでしょうか?
アメリカでも、そういった人が周りにいて、大量に違法配布してる可能性は高いんじゃないでしょうかね?
で、まわりにそういった人がいる人は音楽を買ったり自らP2Pでダウンロードしなくても、最新ヒット曲が全部手に入るから、P2Pやる必要も買う必要もないんじゃないでしょうか?

昔みたいに実時間(もしくはせいぜい倍速)をかけてメディアにダビングしないといけない時代とちがって、最新ヒット曲全曲コピーでもあっという間にできちゃうから
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