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本田のミランデビュー戦とミランの監督解任のお話

さて、皆さん、こんにちは。先日、とうとう本田がミランでデビュー戦を飾りましたので、本日はミランのお話でもしようかと思います。もっとも、試合内容については、そんなに詳しくはやりません。なんでかってーと、ミランが、試合後、監督のアッレグリの首を飛ばしたからででして、「移籍して一戦したら監督が替わっていた」というイタリア全開な展開です。



そんな訳ですんで、試合内容云々の前に、最近のミランってクラブの問題点とかを、さらっとまとめときたいと思います。


僕個人としての感想なんですが、アッレグリのミランで本田がプレーするのは心配だったので、割と解任を指示してます。なんで、アッレグリがダメなのかってーと、理由は単純で、「アッレグリのミラン、怪我人大杉」だからです。正直いって、半月板やっちゃってる本田みたいな選手を、怪我人続出させてる監督の下でプレーさせるのはホント勘弁して欲しかったので、解任自体は本田にとってはプラスです。W杯前に怪我させられたら、たまったモンじゃないし。ただ、後任がセードルフとかタソッティとかインザーギとかのOBの名前ばっかり上がるのは勘弁してほしいのですが。





アッレグリのミラン、何故、怪我人がこうも多かったのか?


で、最初の話になるんですけど、「何でミランは怪我人がこんな多いの?」って話になるわけです。これについては、今に始まった訳じゃなくて、



ミランとユヴェントス、圧倒的な負傷者の差


こっちにガゼッタの2012年の記事がありますが、

ミランは昨シーズン、第37戦でインテルとのダービーを落としてスクデット(セリエA優勝)を逃した。しかし、ミランの医務室はどうなっていたか? 今シーズンの第2節まで考慮して、ミランはのべ319選手が公式戦を欠場している。ベンチなしで、29チームがつくれる数だ。ミランは昨シーズンの38試合でのべ307選手が欠場した。1試合平均8.07人だ。レオナルド体制のときから不安はあったが、マッシミリアーノ・アッレグリ監督になってから、その数は増えている。


イタリア王者になったユヴェントスは、リーグ戦を通しての欠場者がのべ44人。ライバルのミランは307人だ。両チームは公式戦の数が8つ違う(ユヴェントスはリーグ戦とコッパ・イタリアで43試合、ミランはリーグ戦とコッパ・イタリアとチャンピオンズリーグで51試合)。しかし、両チームの違いは明白ではないだろうか。

ってのがあります。これ、アッレグリが監督になってから、如何にミランで怪我人が増加したのかって話をする時、数字として実感してもらうのにもってこいの記事なんですけど、とにかくアッレグリが監督になってからミランは怪我人が多くて、年間通じてベスメン組めた時期のほうが少ない、というか、ベスメン組めた事がないって状態でした。


で、その怪我の内容なんですけど、サッカーは接触プレーが多いので、打撲とか捻挫系の怪我が出るのはしょうがないのですが、アッレグリ体勢になってから、特に顕著だったのが、筋肉系の故障だったりします。今シーズンで言えば、「太ももの筋肉の負傷」で、カカ、バロテッリ、ビルサ、シルベストレ、アバーテ、モントリーボが戦線離脱してます。判を押したように、みんな太ももの筋肉の故障です。



サッカーのフィジカルコンディショニングにおいて、現在、筋肉系の故障の予防は最も重要なテーマになっており、ミランみたいなチームが筋肉系の故障が続出するってのは、ちょっとおかしな話です。ミランラボなんていう、専門のコンディショニングチームをもっているのに。




この原因は何か?まあ、わかってたら、誰も苦労はないんで、推測しか出来ないんですけど、タイムリーな事に、WSDの最新号、No,403で、ミランの話が載ってたので、それを紹介しときます。WSDが巻末で連載してる「football こころとからだ研究所」からです。


ロベルト・ロッシ:ミランは昨シーズンから、故障者の多さが際だっていたよね。「ミランラボ」を含めたメディカル部門の責任が問われて、主任フィジカルコーチを長年務めてきたダニエレ・トニャッチーニが更迭されたのは、それでだろう。後任のフィジカルコーチに、アッレグリ監督の息がかかったシモーネ・フォレッティが就任した今シーズンは、フィジカルトレーニングのメソッドを見直すという話だった。


プレシーズンにそのフォレッティのインタビューを読んで、私は目を疑ったよ。今シーズンはCLプレーオフがあるから、例年よりも2週間はチームの仕上がりを早める必要がある。だから、インターバル走など持久力アップのための有酸素運動を減らして、その分インテンシティを高めるとコメントしていた。驚いたのは、インターバル走の具体的なやり方だ。700メートルを二分半で走っていた以前のやり方を、620メートルを2分で走るように変えると言うんだ。心肺機能を負荷に慣れさせて、向上させるこの手のトレーニングは身体が適応するのに時間がかかるから、ある一定期間は繰り返さないとならない。

これですね。



これ、今回のWSDでもロッシが言ってますが、コンディショニングの方法としては、かなりトラディショナルな方法です。どういう事かというと、開幕時のコンディションは多少低くてもいいので高い負荷の持久系、パワー系のトレーニングをやっておいて、11~12月に最初のピークを作り、冬の中断期間にミニキャンプを張って負荷の多い持久系のトレーニングをして4~5月に再度ピークを作ろうとするやり方です。


以前も、ちょっとブログで扱いましたが、これ系のトレーニングは、最近、主流から外れてきており、主流になってるのが、モウリーニョが採用しているようなやり方になります。これは、ネットでみれますが、


3. フィジカルサーキット無し、ジムトレーニング無し、グランド周りのランニング無し

「ピアニストが巨匠の作品に取りかかる前に、ピアノの周りを走り回っている姿など見た事が無いだろう?同様に私のメソッドでも選手にグランドをぐるぐる走らせることは無い。」

またモウリーニョと彼の右腕とも言える、フィジカルトレーナーのルイ・ファリアにとってはフィットネスジムとは怪我のリハビリのための施設でしかない。



4. ボールは絶対必要だ。練習時間は最長90分


「私のトレーニングは決して長くはない。その内容はダイナミックであり、かつとても効率が良いものだ。私の選手たちにはボールコントロールをすることを特に好きになって欲しい。そしてボールを相手から取った後に何をするべきかを学んで欲しい。

3時間ものトレーニングなど、選手を飽きさせるだけだ。そんなことをしていたら、すぐに選手はボールが好きでなくなってしまう。」



5. シーズン中にコンディションのピークの時期は無い

「週ごとのトレーニングサイクルは純粋に次の試合をフォーカスしデザインしている。私はシーズンのある1部分、例えば12月や5月などにピークを迎えるようなプラン作りはしないし、強豪チームとの試合のために特別に調子を上げるようなこともない。」



モウリーニョ、10の言葉



こーいう奴です。モウリーニョって監督は戦術面では特に新しい事はやってませんが、フィジカルトレーニング、フィジカルコンディショニングのメソッドについては、最先端のやり方を採用しています。トラディショナルなコンディショニング方法は採用しておらず、短時間、高負荷、シーズン中のある時期にピークをもってくるようなコンディショニングはしないって所に特徴があります。


モウリーニョのフィジカルトレーニングの特徴は、サイクルが一ヶ月、三ヶ月単位の陸上競技的なモノではなく、一週間単位でサイクルを回す所に特徴がありまして、週末の試合にフォーカスしてサイクルを回していきます。


基本的に、2000年代に入る前、ヨーロッパのサッカーチームはプロからアマまで、シーズン前には走り込みと戦術練習、パワー系のトレーニングやるのが普通だったんですが、モウリーニョみたいな監督が結果を出し始めている事から、サッカーの世界で、フィジカルコンディショニングの様相が変わってきているってのがあります。



アマだと高校サッカーや、プロだとマガト系の監督とか、Jリーグだとサガン鳥栖は二部練、三部練が当たり前って所もありますが、そーゆー「高頻度」な練習とは対局にある考え方です。




いくつか、「低頻度」なトレーニングで記録を伸ばした人達の記事とかサイトを紹介しておきますが、



ウェイトトレーニングの基礎知識



"公務員ランナー"川内優輝のマネジメント力



メアリー・ケイン、トレーニング情報



三つほど、記事を紹介しておきます。最初の記事はパワーリフター三上さんの記事でして、三上さんのケースだと学生時代、毎日ウェイトをやっていたが、記録が伸びなかった。で、自分には才能がないのかと思ってたんだけど、社会人になってから、トレーニング頻度を週1回とし、使用重量を大幅に減らし、毎週少しずつ重量を増やすようにしたら、記録が伸び始めた。その後、サイクルトレーニングを取り入れた所、順調に記録が伸びるようになったって話があります。


これ、ウェートをやる人なら、知っておいたほうがいい話で、やればいいってモンでもないんですね。


で、二番目のは公務員ランナーで有名な川内さんの記事ですけど、

少ない練習量で日本トップクラスのマラソンランナーになった川内を、“天才タイプ”だと思う人がいるかもしれないが、川内自身は「才能なんてなかった」と言う。実際、埼玉県の強豪校・春日部東高校時代は故障に悩まされたこともあり、県大会でも上位に入ることができなかった。そのため、箱根駅伝の常連校をあきらめ、陸上では無名の学習院大学に進学した。


普通なら、その時点で競技への“本気度”が徐々に低下していくが、川内は違っていた。大学で出会った新たな練習スタイルが人生を変える
ことになる。


高校時代は朝練習を行い、ポイント練習も週に3~4回あったという。しかし、学習院大では朝練習がなく、ポイント練習も週に2回だけだった。津田誠一監督からは「(強豪校の練習と)競うことはない。頑張るな、頑張るな」と声をかけられて、川内は練習を継続してきた。トレーニングは「速く走る」ことではなく、「一定ペースで押していく」ことに重点が置かれていた。


「今、思うと、大学で強くなる方法に気づいたことが大きかったですね。大学での練習は高校時代と正反対だったので、当初はなかなか信じることができませんでした。でも、少ない練習量で高校時代の記録を超えたことで、この練習は正しいと思うようになったのです。

こういう奴ですね。内容的には三上さんの奴と同じような感じなんですが、高校時代、高頻度な練習を繰り返していたけど、記録は伸びず怪我がちだった。ところが、大学にはいって、朝練無しでポイント練習が週に2回だけ、っていう少ない練習量で高校時代の記録を超えれた事で、大学には入って始めた練習の有用性を確信したって奴です。社会人になっても一部練しかしてないようです。



三つ目の奴は、5000mで全米高校記録をもつ、メアリー・ケインの奴なんですけど、最大週間走行距離は現時点で60マイルって所がポイント。これ、メアリー・ケインより走ってる選手は、日本の高校でも沢山いるでしょう。(まあ、日本の部活陸上走りすぎ、ってのもあるんですが。)




サッカーのトレーニングは、それぞれの監督がそれぞれのメソッドを持っているので、自由にやればいいことなんですが、トレーニングメソッドについては、選手や大会方式に合わせて調整する必要があって、「これがベスト」ってのは、今の所、特にありません。




それで、なんですけど、サッカーにおいて、水曜日にCL戦って週末にリーグ戦を戦うビッグクラブは、トラディショナルなフィジカルコンディショニングは出来ないってのがある訳です。



つーか、根本的に無理です。週に二回、最大負荷で試合でプレーする以上、


日曜:試合
月曜:回復トレーニング
火曜:戦術練習と移動
水曜:試合
木曜:回復トレーニング
金曜:フィジカルトレーニング、戦術練習、技術練習
土曜:試合に向けた戦術練習と移動



これ以外に方法がない。チームの主要メンバーは、フィジカルトレーニングをやれるのは金曜のみで、しかも二日後に試合があるから、負荷の高いトレーニングは出来ません。インターバル走だったり、ジムでの負荷の高い筋力トレーニングは試合の二日前にやっても意味ないし。



こーなると、モウリーニョがやってるみたいに、サイクルを一週間で回すほうが良いってのはあるわけです。週二回、試合がある場合、長いサイクルで練習を回すのは事実上、無理なんで。



ここまで、スポーツの世界の練習メソッドをいくつか紹介してきた訳ですがね。



ミランに話を戻すと、今年の成績の酷さについては、最大の原因として、「フィジカルコンディショニングの失敗」が上げられます。筋肉系の故障からの怪我人が多すぎです。



これはフィジカルコンディショニングに失敗したチームが陥る状態で、この部分については、はっきりいって、監督とフィジコの責任です。どーいうトレーニングやらせてたんだって話です。



そういう訳ですので、今回の監督解任については、僕は本田にとっては、ある意味で良かったと思ってます。もっとも、後任の監督が、アッレグリより酷いレベルで怪我人続出させる可能性もある訳ですが・・・・・



セリエAには色々と問題があるわけですが、ピッチ上に話を絞ると、やたらとビッグクラブが野戦病院化するってのがあります。ユーヴェ、ミラン、インテルと、何でか野戦病院化しやすく、フィジカルトレーニングのメソッドを見直した方がいいんじゃ?ってのがある訳です。ザックのフィジコも、代表でやたらと怪我人だしてますけど、僕はどーにもイタリア人フィジコが好きになれません。それはそーいう理由です。怪我の予防がさっぱり出来てねぇ。



セリエAのビッグクラブは、落ち目とはいえ、いい選手いっぱいいます。でも、怪我人続出になって、戦力にならないってケースがあまりに多いんです。



今年はWカップがあるんで、長友と本田には怪我して欲しくないわけですよ。彼らがセリエ野戦病院のお世話にならない事を祈ってます。



でもって、本田のデビュー戦について、なんですけど


ちと、フィジカルコンディショニングの話が長くなりすぎたので、マッチレポートは軽めにしときます。



この試合については、ミランが簡単にサッスオーロから二点先制しました。ここまでは良かった。問題はその後。


https://www.youtube.com/watch?v=3LceDDN07hk


つべに動画あがってたんで、URL張っときます。


とにかく、ミランの最初の失点が酷くて、これ、キャプもつけときますけど、


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こーいう流れでした。サッスオーロとオッサスーロ間違えました。何が酷いって、人数揃ってるのに綺麗にゴール決められている所です。


何で、こんな事が起きたのかって話になるんですがね。



基本的に4312ってフォメは守備では、デフォで3の所の両脇が空いてます。だから、そこで起点を作られやすいって欠点があります。コンフェデのイタリア対日本で、散々、香川にあそこで起点つくられてました。で、そこで起点作られると、ボランチが一枚、サイドに出てくるんですけど、その時、中央で相手チームのボランチをフリーにしてしまいやすいんです。


この時のミランがまさにそれで、サッスオーロのボランチをフリーにしてしまってます。コンフェデのイタリア戦で、散々、遠藤と長谷部がフリーで前むいてボール捌けたのも同じ理屈です。


こうなんない為には、トップ下やFWの守備参加が必要不可欠なんですけど、カカもバロテッリも、申し訳程度の守備しかしておらず、サッスオーロのボランチに簡単に前向かれて、そこからラストパス通されてるんです。


根本的に、ミランのフロント、FWに守備やらない奴ばっかり取りすぎなんです。バロテッリ、カカ、ロビーニョと、守備が微妙なのばっかです。カカは、それなりにはやってくれてましたけど、ロビーニョとバロテッリの守備の時の怠慢は目を覆いたくなるレベルでして、あんな守備しかしないようじゃ、サッスオーロのボランチは自由にボールを配球出来る訳で、ボランチに自由に配球されたらボコられるに決まってる。


一点目と四点目は、どっちも似たようなやられ方でして、3の位置の両脇にボール当ててからボランチに展開、そこから崩しにかかるっていう4312対策の基本をモロにやられた格好です。



この試合、ターニングポイントになったのは、守備面では、アッレグリが後半10分で4312やめて、パッツィーニとモントリーボを入れて、442に切り替えた所で、これで、前半から延々と問題になってた4312の3の所の両脇使われてやられるってパターンがなくなりました。


ただ、ロビーニョが右SHに入ったんですけど、すぐに守備サボりはじめまして、アッレグリは、ロビーニョが守備さぼってるのみて、そこで本田を入れる決断をします。


本田が入ってからは、すぐ様相が変わりました。ロビーニョみたいに盛大に守備サボらないし、真面目にボール追うし、攻守の切り替えの時もすぐ戻ってきてくれるので、守備は断然安定しました。


また、本田が入って右サイドの高い位置で起点が作れるようなり、オッサスーロの左サイドを押し込むことが出来るようになったので、オッサスーロの左を封じる事もできるようになったので、その後はミランペースでした。ただ、残念なことに本田には何度かチャンスが来たんですが、決められず。



本田のデビュー戦、ミラン相手に4点とったベラルディに全部もってかれた感じもしますが、本田の出来自体は非常に良かったです。



真面目な話、今回の試合見る限り、本田は絶対にスタメン取れます。今のロビーニョなら、本田のほうが遙かに役に立ちます。右サイドで起点作れるし、守備も真面目にやってくれるので。(ロビーニョは右サイドで起点作ることすらほとんど出来てなかった)



正直、今のミランは、後半の442で戦った方がいいです。カカを左SH,本田が右SHにして、バロテッリとパッツィーニで2トップ組ませてね。もっとも、オーナー命令で4312か4321やる可能性あるわけですが、それだと今のミランは守りきれませんわ。


やるとしても、それは本田が相当守備やらないといけなくなります。本田はスタメンは取れるでしょうけど、その後が大変です。まあ、このあたりはわかりきってた話なんですけど、守備しないFWばっかりフロントが集めてくるので、トップ下がその尻ぬぐいせざるを得ないチームなんです。今のミランのDFでは、カカと本田が守備頑張らないと守れないです。



あと、残念な話ですが、ミランはもうCL無理です。三位のナポリと勝ち点差20ついてます。残り試合数19試合で、勝ち点差20ってのは、挽回不可能な数字です。試合数を勝ち点差が上回ったら、逆転はほぼ不可能です。


それに加えて、フィジカルコンディションの調整にミランは失敗してるっぽいので、EL圏内への追い上げも期待できません。怪我人の多さが、調整の失敗を雄弁に物語ってます。



なんで、正直、本田は怪我せず、W杯まで過ごしてくれたらいいかな、と。CLも出られないしね・・・・



今日はこのあたりで。それでは。