シロクマの屑籠

p_shirokuma(熊代亨)のブログです。原稿に追われてブログ記事はちょっと少なめです

「利己的行動」という言葉を使う際の慎重さと軽率さ・メリットとコストに関して

 
 【注意!】
 以下のテキストは面白くありません。また、文章力が無い癖に誤解を少なくすべく頑張っているせいもあって、大変読みにくい文章に仕上がっています。娯楽を求めて読んでも、何も良いことはありません!ネタも仕込んでありません!お勧めタグは[後で読む]ではなく[長いから読まない]です!なにせ、書いた私自身が読み返すのを躊躇うぐらいですからね!
 
はてなグループ
「人間の全行動は利己的動機・意図」を含んでいるという前提で考える方法論 - シロクマの屑籠
 
 私は、(自分は勿論のこと)全ての人間の行動は何らかの利己的動機・インセンティブによって選択される行動だという前提でいつも思考実験を進めている。しばしば議論となる「利他的行動」もまた、様々なレイヤーの少なくともどこかにおいて利己的メリットの期待値を向上させる(またはデメリットを被る期待値を低下させる)意図のもとに実行されると私は前提づける。それゆえ「利己的メリットが計算出来る状況・関係でこそ個人の利他的行動は発生しやすくなり、計算が困難な状況・関係では利他的行動は発生しにくくなる*1」と考えている。そしてその前提のもとに個人個人の行動・人間集団内の力動を追求していきたいと思っている。この前提で考察を行ったとしても、行動遺伝学的傾向・防衛機制を低レベルレイヤーとし大脳皮質レベルの計算・文化依存的行動を高レベルレイヤーとする、多層的な利己追求モデルをちゃんと記述しきれるならば、範疇的な人間の行動の殆ど全てについて再把握が可能だと私は妄想的に信じている。よしんば私一人では全てを記述しきれなかったとて、近似モデルぐらいなら提案可能だと思っている。その為の考察を積み上げる一助として、はてなでしばしば私はメモを書き散らしている。周りからの刺激があって、ここはとても便利なところだ。怠け者の私に考える事を強いるはてなのお陰で、この半年は随分収穫があったと思う。
 

 しかし、はてなグループに指摘されている通り、あるいはid:bluedeさんがしばしば誤解なさっているように、さらには2006-07-28 - すべての夢のたび。に書かれているところの「ドーキンスみたいで嫌なもの」のように、「全ての人間行動は利己的動機・インセンティブによって選択される」という言説は微妙な誤解を招きやすい。*2
 
 そのうえ私は進化生物学だけではなく(心理学・精神医学界隈でいう)防衛機制をも低レベルレイヤーとして仮定していて、この防衛機制がまた誤解されやすく説明しにくいときている*3。正直、私の脳内に立っているこの妄想樹を誤解を招かず描写するのは、自分のレベルではとても無理だ。ましてや、『分裂勘違い君劇場』の如く読者の願望を満たすような分かり易さに噛み砕いて提供するなんて絶対無理。そのうえ、私のテキストのなかでも「人間は利己的云々」テキストは、はてなダイアリーと本家のテキスト全部が繋がった多細胞生物のうちの一細胞片に過ぎないので、はてなブックマーク経由で個々のテキストだけ読んだ読者が私の意図に即した解釈をしてくれる確率は殆ど期待できない。正直、自分自身の考えをまとめ追求するのが精一杯で、「きちんとした理解」を読者に(ましてはてなブックマーク経由で個々の細胞片だけ拾い読みする読者に!)提供するのは不可能と諦めている。
 
 とはいえ、fromdusktildawnさんが仰るように、日常語における「利己的」と進化○○学における「利己的」の違いを招いてしまうリスクは確かにあるのは認めなければならない。まして、進化○○学よりももっと広いニュアンスで「人間の行動は何らかの利己的動機・インセンティブによって選択される」と私はほざいているわけで、一層誤解されやすいことと思う。実際、私の主旨に反対というよりも、むしろ勘違いがもとで原因で批判や非難されてるなぁと思うことは今までにもあったし、これからもあるんだと予想される。この手の問題を全部やっつけるのは無理だし、その為にコストをかけすぎるのは愚かなことだろうけれども、、確かにある程度気をつけなければならないし、気をつけることはまさに「私個人の利益を誘導し、損益を回避しやすくする」うえでも有利に違いない。何かやってみよう。そうだ、例えばはてなの関連記事に「汎適応論」というタグを貼り付けて回ろうかな(そんな事をしても非難する人がいちいち読んでくれるとは思えないが、私の損益を回避しやすくする一助としては機能するだろう。ただ、私はネットの色々を再設定する事を高価なコストとして取り扱うため、作業は遅れがちだろう)。私自身のネット上における色々を精一杯勘案して、必要と見積もられる範囲で努力をしてみようとは思います。このような努力でどれぐらいの読者が誤解しにくくなるのか、逆にどれぐらいの読者が「読みにくいぞコノヤロー」と思うのか、ゆっくりトライアンドエラーしてみるつもりです。
 

*1:もっと正確を期して書くなら、「利己的メリットの期待値が高いと計算可能な個体が多いであろう状況では、利他的行動を選択する個体が増加する&利己的メリットの期待値が低いか計算不能な状況では、利他的行動を選択する個体が減少する」という表現を用いなければならないか。実際、私の独り善がりな議論は、せめてリチャード・ドーキンス『利己的な遺伝子』ぐらいの用心深い注釈や長ったらしくも正確な表現を心がけるのが好ましいとは思う。fromdusktildawnさんが仰るようなリスクを減らすにはそうするしかない。でも、それをやりすぎると誰も読まなくなるのがオチだし、自分自身も議論していられなくなる。だから、私は多少の誤解をコストとして支払いながら、「はてな側では自分が誤解しなければそれで良し」という前提でメモっていくつもりだ。幾らかの誤解は、私にとって不可避のコストとして支払われなければならない。だが、汎適本家で計画中のアレにおいては、多少の読みにくさとまだるっこしさを犠牲にしてでも自分に可能な限りの的確な表現を目標にしていかなければと覚悟している。せめて『利己的な遺伝子』の慎重さが私にあればいいけれど、なんか無理そうだなぁ。

*2:とはいえ、「言説という言説が読み解かれる時には程度の差こそあれ必ず誤解を含んでいる」なんて考え方もあるぐらいで、「誤解を招きやすい」「誤解を招きにくい」といのは数直線上の程度問題なんだと私は思っている。例えば分裂勘違い君劇場のわかりやすくてキャッチーで「これはネタです!」なんて言ってもベタとして捉えられる確率の高いブログもまたこうした問題とは無縁ではいられない。放射性物質を扱っているのは、あっちも同じである。

*3:本当は、他の精神医学や心理学の概念も用いたいけれど、今のところ、自分がそれなりに理解していて、自分がそれなりに納得していて、行動遺伝学に絶対に矛盾しなさげなのが防衛機制しかないので、防衛機制は議論に含めている