PSYCHO-PASS 6~8話
6話 狂王子の帰還
狡噛の過去と、標本事件。
監視官だった狡噛は、人間を生体標本にする猟奇事件を追う最中に、部下の執行官・笹山を殺され、それでおかしくなってしまったらしい。
別件で捜査中だった被疑者・藤間の自宅から生体標本を作るための薬品が見つかり、藤間が失踪した後は事件が止み、お蔵入り。
狡噛は、執行官となった今でも、その標本事件を追い続けている。
狡噛曰く、たとえ藤間が実行犯だったとしても、殺意という目的があるだけで、手段を持っていなかった。
その手段を与えたのは別の人間で、ソイツが黒幕だ。
その構図は、3話のロボットを利用した殺人事件も、4~5話のアバター乗っ取り殺人事件も、よく似ている。
その黒幕というのが、槙島なわけだ。なぜか女子校の先生になっていたけども。
王陵璃華子は、槙島に心酔しているようだった。ものすごく不穏な絵を描いていたけども!?
璃華子は、性的虐待を受けている大久保葦歌を、シェイクスピアの悲劇のヒロインに重ねている。
花が散る前に、その美しさを永遠のものにしてしまいたい。
彼女が葦歌に向ける感情は、いったいどういうものなんだろうか?
「あなたはあなたが望むとおりの人生を選べない。その辛さはわかるわ。今の時代、だれもがシステムによって決められた適性に沿って押しつけられた幸せだけで満足するしかない。自分が本当に望んだ夢を叶えることもできずに」
「本当に望む姿。本当の自分の価値。それを確かめてみたいとは思わない?」
7話 紫蘭の花言葉
標本事件、王陵璃華子の場合。
絶望を知っているから、希望を持つことができる。
璃華子の父は、絵の中に絶望を描くことで、人々に希望を与えようとしていた。
彼女は成すべきを為す父を尊敬していた。
しかし、絶望を知るまでもなく、希望は機械が教えてくれるように社会は変革する。
璃華子の父は、社会的にも生物的にも死に至る。
けれど、彼女は父が――自分が為すのは、為すべきことだと信じている。
ここにいる人々のすべてがそうだ。何も気づかず、何も語らず、そして何も考えない。ただの抜け殻のように生きて、そして雪が解けるように消えていく。罪無き人々を死に至らしめる伝染病。でも、この病原菌が根絶されることはない。
これは、安らぎという名の病。人々が望んだ、死のかたち。
璃華子が持っているのは、本当に使命感だけなのだろうか。
自己顕示欲のような、俗っぽい感情が交じっているようにも見えたけど。
だって、葦歌を作品にしようとするとき、すごく楽しそうな表情をしていたよ?
8話 あとは、沈黙。
標本事件の幕引き、王陵璃華子の最後。
今回も狡噛さんは神懸かった捜査能力を発揮していた。
事件の見せ方から、似た手口なだけで別人の犯行であることを見抜き、その作風が王陵牢一と似ていることから、娘の璃華子を容疑者と疑っていく。
7話のサブタイトルでもあった紫蘭の花言葉は「あなたを忘れない」。
璃華子は、単に父親に依存していただけ。彼と、彼の作品を世に広めたかっただけ。
最後の最後では死んだ父親に助けを求めようとしていたしね。
槙島が璃華子に期待していたのは彼女の個性についてで、失望は所詮模倣しかできないという点についてだったんじゃないのかなぁ。
あるいは、破滅することがわかっていて、なおも父を選ぶファザコンっぷりにか。
……え、なに、じゃあ槙島は自分を選んでくれなかったことに失望したわけ? なんか違くね?
しかし、槙島のような悪役ってけっこうありがちだよね。
世界に退屈していて、自分を楽しませるものにだけ価値を見出しているタイプ。
なら、自身にはいったいどれだけの価値があるというのか?
そのあたり、きちんと納得の出来る描写のある作品って少ないので、やや不安です。
コメント