リズと青い鳥

「響け!ユーフォニアム」TV版2期・1話~4話の、みぞれと希美のエピソード、完結編。
(残念ながら)久美子や麗奈の出番はほとんどナシ。
同じ京アニ制作ではあるけれど、制作グループが違うようで、絵のタッチも描写のタッチもまるで違う。
(初見ではみぞれちゃんと一般女子Aの違いがわかりませんでした……)
(久美子の髪の毛もしゃもしゃ具合、こっちの絵柄のほうが好きまである!)

シナリオレビュー


ネクラなみぞれ、ネアカな希美


三年生になったみぞれは、やっぱり暗くて取っつきづらい女の子のまま。
みぞれの心の真ん中はいつも希美がいて、その存在は彼女と仲直りした去年の夏よりも大きくなっているようですらあった。

一方、希美の周りには、いつでも友達や後輩がいる。
二人だけの時間は、早朝に校門前で待ち合わせてから音楽室に入るまでのたった5分間。
みぞれはその時間をとても大切にしていて、それでももっと希美と一緒にいたい――そう思う気持ちはどんどんと大きくなっていく。
そして(二年生の頃、避けられていることにすら気がつかなかったほどニブい)希美は、そんなみぞれの心の内など知る由もないのであった。

孤独な少女の元に訪れた、幸運の青い鳥


リズと青い鳥。
ひとりぼっちだったリズの元に、ある日少女がやってくる。
出会った二人はとても仲良しになり、一緒に暮らすようになった。
しかし、ある時リズは、少女がいつか出会った青い鳥だったことを知ってしまう。
悩んだ末、リズは少女の本当の幸せを思い、別れを告げる。
そうして、青い鳥は大空へと羽ばたいていくのであった。

「私には、わからなくて……。好きな人を自分から突き放したりなんか、できないから……。理解できないし、わからないです」


コンクールの自由曲の原作であるこの童話に、みぞれと希美は自分たちを重ね合わせる。
ひとりぼっちだったみぞれの元に現れた希美。
自分とリズを重ねていたみぞれは、希美と離れ離れになるくらいならいっそ鳥籠に入れてしまいたい――そう思ってしまうのだ。

だから、二人のオーボエとフルートの合奏はなんだかうまくいかない。
感情を込めて――そう言われた日もあったけれど、リズにすらなりきれないみぞれには、込めるべき感情がわからなかったのだ。

「じゃあ、もし鎧塚さんが青い鳥だったら?」


「そうね――じゃあ、もし鎧塚さんが青い鳥だったら?
 青い鳥はあの日、突然リズに別れを告げられる。昨日まで二人で幸せに暮らしていたのに」


みぞれは、希美と二人でソロの練習をするうち(もっと以前からだったかもしれない)、力量差があることには気がついていたのだろう。
けれど、みぞれにとって、才能のあるなしは問題にすらならなかった。
楽器という絆で二人が結ばれていることこそが重要だったのだから。

しかし、希美にとってはそうではなかった。
みぞれのように吹けないことはわかってはいたけれど、それを客観的に見せつけられたくはなかったのだ。
希美は純粋に音楽が好きだったのだから。
だから、希美はみぞれの才能を羨み、嫉妬し、そんな自分を恥じて――彼女にいつも通りに接することができなかった。

平凡な少女の元に訪れた、自由な青い鳥


「リズが……リズがそう言ったから受け入れた……。リズの選択を青い鳥は止められない、だって青い鳥はリズのことが大好きだから。悲しくても、飛び立つしか、ない……」


大好きのハグも拒絶されてしまったみぞれは、「鳥籠から出されようとしている青い鳥」の気持ちは理解できた。
そして、その感情を思い切り込めたソロを聞いてしまった希美は、自分こそがリズなのだとはっきり理解してしまったのだ。

希美は自分を卑下するような言葉ばかりを並べ、自分のすべてが好きだと言ってくれたみぞれにも「みぞれのオーボエが好き」としか告げなかった。
どこまでが彼女の本心かはわからないが、彼女は駆け引きをするような器用なタイプではなさそうだから、言った言葉はすべて本当に違いない。
ただ、「みぞれが好き」なことを隠しただけ。
リズは鳥籠を開け、青い鳥を大きな空へと羽ばたかせなければならないのだから。

総評:★4・佳作入選


"大好きのハグ"と水責めの青春



しかしまぁ、みぞれちゃんの生きづらそうなことといったら!
私も割とシツコイ性質の人間だから、なにかに執着してしまうことは(しばしば)ある。だからみぞれちゃんの気持ちもわからないではない。
けれど、それが過去になった時に振り返ってみると、なんでわざわざあんな苦しい生き方をする必要があったんだろう……などと私は思ってしまうのだ。
大好きのハグをねだるみぞれちゃんを見ていると、あの頃の息苦しさがまざまざと蘇ってくるような気さえする。
けれど、私のような中途半端な人間とは違い、これからもみぞれちゃんは好きな人をずっと好きでい続けるし、好きなものをずっと好きでい続けるのだろう。
今にも溺れてしまいそうなほどに息苦しい日々も、それは青春に違いないのだ。

そんな暑苦しい想いを押し付けられている希美ちゃんだけれど、あの子は鳥籠は開けたものの、絵本のリズになるつもりはまったくなかったようで。
進んでいく道も違うし、もはや楽器も絆ではなくなってしまった。
それでも、なぜか二人は更に仲良くなっているようなのでした!

「私さ、リズが逃した青い鳥って、リズに会いたくなったらまた会いに来ればいいと思うんだよね」
「ええ、それじゃあリズの決心が台無しじゃん」
「うーん……でも、ハッピーエンドじゃん?」


つまり、女の子にはしっぽがあるべき



定型的に表現できる恋愛関係(好き・愛してる・結婚しよう)とは違い、友情はあやふやな形をしていて、それを正確に表現することはとても難しい。
だからこの作品では、言葉に依らない絵画的・抽象的な描写でそれを表現しようとしていた。
(そういう意味で、希美ちゃんのポニーテールのぴょんぴょん具合は本当に象徴的でした)
(だから女の子にはしっぽがあるべきだって私はずっと言ってるんです!)

壊れものを柔らかい紙で包むように、少女たちの繊細な心をやさしく描き出す。
そのせいで、覚醒したみぞれちゃんのオーボエソロには本当に感動させられてしまいました。

私の評価は、★4・佳作認定。
あらすじを書き出してしまえばシンプルなのに、それを描くための演出へのこだわりが尋常じゃない。
この映画が「映像作品」としていろんな賞を取っているのもわかろうというものです!
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