
No.4ベストアンサー
- 回答日時:
お礼欄、拝見しました。
>ナラトロジーは下で出た、構造主義とはまた別なのでしょうか?
この点は、たとえばここの哲カテでもかなりいい加減に使われていたりするのですが、「構造主義」というのは、探求の方法を示す用語です。
記号学というのは、研究の分野を示す用語です。
物語論、物語学、ナラトロジー、何と言ってもいいのですが、それは記号学の一分野です。
記号学というのは、記号を扱う学問で、たとえば人間の言葉も音が意味を表している、という意味で記号であるし、交通標識も記号、あるいはファッションも一種の記号であるといえます。
物語学の場合、物語の内容をカッコに入れて、もっぱら形式にのみ焦点をあてます。
先の物語例でいけば、「父親と息子」は「母親と娘」であってもまったくかまわないし、高-低という関係でとらえるならば、「鳥とモグラ」であってもかまわない。高-低という構造から見れば、同じ物語と言えるのです。
そうした意味で、物語を、その形式から記号に変換していく、という意味で、記号学なのです。
さて、その記号学の研究方法は、もっぱら構造主義的な手法がとられます。
構造主義的な手法というのは、どういうことか、ここで非常に簡単に説明するならば、このようになるかと思います。
たとえば「a」という文字があるとする。
この「a」という文字は、「b」「c」など、ほかの文字と混同されない限りは、どのようにでも書くことができます。
大事なのは「a」という文字の形や内容ではなく、「b」「c」でない、という差異であって、この差異が「a」という記号に意味を持たせている。
この考え方が構造主義の基本となる考え方です。
つまり、物語に即して言うのなら、ひとつの物語の意味を深く研究するのではなく、類似の物語と比較しつつ、差異を浮き彫りにします。そうして、表面にはあらわれてこない深層構造を抽出しようとします。
これでナラトロジーについてのおおまかなイメージがつかめたでしょうか。
ナラトロジーで扱う「物語」は、実は文学でも、昔話でも、神話でも、それこそハーレクインなどようなロマンス小説であってもかまわないのです。
>自分がイメージしたのは古代の神話が作られた背景に
>当時の宗教観などが影響しており、それが現代まで
>社会の世相がどう物語の変化に現れてるのか?
この問題意識はさまざまな角度でアプローチしていくことができると思います。
たとえばアメリカの神話学者にジョゼフ・キャンベルという人がいます。キャンベルは神話の本質を「英雄冒険の物語」に求めます(英雄伝説の基本構造に関しては
http://oshiete1.goo.ne.jp/kotaeru.php3?q=860867
の#15で回答しているので、もし興味がおありでしたら。
松岡正剛の『知の編集技術』(講談社現代新書)を手始めに、それからキャンベル自身の書物でしたら『神話の力』のほうがわかりやすいかもしれません)。
もちろんナラトロジーのアプローチも可能であるし、あるいはカルチュラル・スタディーズということになるかもしれません。
ただ、いまは、質問者さんの問題意識にぴったりくる分野を大学の学部、という形で探すよりも、さまざまな本を読みながら(新書レベルでかまいませんから)、自分の問題意識を深め、鮮明なものにしつつ、もう一方で、さまざまな学問分野とその方法(つまり、方法論を学ぶ、ということは、とりもなおさずその学問について学ぶ、ということにほかなりません)を知っていく、というやり方を取っていかれることをおすすめしたいと思います。
とてもお詳しいですね。
専門の方でしょうか?
記号学という領域自体かなり自分が好きな分野だと思います。
ナラトロジーはひとつの作品の意味を作者の生い立ちから考えるとか
高校のときならったようなやり方ではなく、
他作品との共通点を抽出していく、ということですよね。
>先の物語例でいけば、「父親と息子」は「母親と
>娘」であってもまったくかまわないし
>高-低という構造から見れば、同じ物語と言えるのです
いまいちわからないのは
この「関係性」というのは、書き手の意図を最重要視するのではなく
読み取る側が決めることに意味があるのでしょうか?
例えば父親と息子でしたら「男同志」とか
「同居人」という関係でも取れますよね。
神話は「英雄冒険の物語」である。という点についてですが
自分が物語の作られ方に興味を持ったきっかけは
斉藤美奈子さんの紅一点論という著書の
伝記と現代の日本のアニメに非常に共通点がある。
という指摘なんです。
神話と英雄冒険の物語の関係も同じだと思います。
そう考えると自分は漫画おたくなのですが、
少年漫画とハリウッド映画、少女漫画とハーレクインロマンス
なんかもすごく似てる部分があって、
じゃあそのハリウッド映画は何かというと
gooで回答されているスターウォーズも古代の英雄伝だとか。
そういうつながりが知りたいと思いました。
再び回答ありがとうございました
アドバイスのとおり、教えていただいた本など
もっと読んで問題を明確にしたいと思います。
No.5
- 回答日時:
>この「関係性」というのは、書き手の意図を最重要視するのではなく
>読み取る側が決めることに意味があるのでしょうか?
非常にいい点に気がつきましたね。
そこは構造主義的読解のポイントでもあります。
まず高校くらいまで、わたしたちはかならず本を読むと、「作者は何を言いたかったのか」という問いに答えなきゃならなかった。未だに文学カテや読書カテ、あるいは映画のカテにもその手の質問は登場します。
もう少し高尚(に聞こえる)問いとして「Aという解釈とBという解釈のいずれが正しい解釈か」というのもありますが、根本的には同じものです。
つまり「正しい解釈」にしても、「作者の意図」にしても、結局はその理想とするものが、生きた作者の話を直接に聞けばいい、ということになってくる。それが一番確かなわけですから。
じゃ、作品っていうのはないか。生きた作者と読者の間に立ちふさがる障害物、そこまでいかないにしても、作者の「声」を歪んで届ける媒介物になってしまう(事実、ギリシャ時代のプラトンなんかはこんなふうに考えています)。
つまり、ここでは作品<作者の意見なんです。「作者は何を言いたかったのか」の問いも、実はその影響下にある。
さて、二十世紀も後半になって、ここに「テクスト」という思想が登場します(もちろん一気にプラトンからここへ来たわけではなく、長い間の思想的変遷があるのですが、そこは割愛しています)。テキストではなく、あえてテクストと呼ぶのは、そうすることで、テクストの語源texture(織物)ということばの響きを残そうとしているからです。すでに存在するほかのテクストを媒介として、織物のように織り上げられたもの、それがテクストである、そういう考え方です。
文学作品というのは、書かれ、印刷されたものです。
そのとき、作品は、作者とは別個に独立した「生」を与えられる、と考えるのです。
読者は作品を媒介にして、作者の声に耳を傾けているわけではない。
読者は作品に向き合っているのだ。
つまり、作者というのは、読者の上にそびえ立つ創造者ではなくて、単なる書き手、一個の人格ではなく、読まれることによって初めて存在する単なる<主体>に過ぎない。これがロラン・バルトの言う「作者の死」です。
テクストで語っているのは作者ではなくて、構造なのだ、と。
質問者さんがおっしゃる
>読み取る側が決めることに意味があるのでしょうか?
というのが、非常に重要なポイントである、という理由は分かってもらえたでしょうか。
ここらへんはかなり荒っぽい説明なのですが、もっと詳しくは下の方も名前を出しておられる内田樹『寝ながら学べる構造主義』(文春新書)がいいみたいです(ごめんなさい、わたしは読んでないのですが(笑)、いいっていう評判です)。
文学理論ってなんだろう、どんなものがあるんだろう、理論を学ぶ、ってどういうことだろう、と興味がおありでしたら、その名もズバリ『文学理論』(ジョナサン・カラー 岩波書店)これ、お手ごろ価格だし、買いです。
>自分が物語の作られ方に興味を持ったきっかけは
>斉藤美奈子さんの紅一点論という著書の
>伝記と現代の日本のアニメに非常に共通点がある。
>という指摘なんです
『紅一点論』あれ、おもしろいですよね。
ただ、わたしなんかからすると、「見立てのおもしろさ」という点は買うんですが、類似を指摘して、そこからどうするのか。どうしてもそんなふうに考えてしまいます。
きっかけは、なんでもいい。
自分の心に引っかかりが生じたら、それをしっかり握って離さないことです。
途中で絶対、自分が考えてることなんて、ほかの千百万人の人が考えてることにちがいない、という気にたぶんなってくるでしょうが(わたしなんていつもそう思ってます。そしてそのつぎに、こんなことに興味がある人間なんて自分以外にいるわけがない、という思いが襲ってきて、情けなーい気分になってきます)、とにかく読むこと、そして考えること。問いを立て、また読むこと。そうすることによってしか、進むことはできません。がんばってください(なんか、妙にキレイに終わったのでちょっとうれしい)。
No.3
- 回答日時:
学問分野にはナラトロジー(物語学)という領域があります。
ナラトロジーは記号学の一部門で、物語の構造を分析していくもの。文学理論のなかでももっとも活発な分野です。
おそらくその領域のことをおっしゃっておられるのではないか、と思うのですが、質問文を読んだ限りでは、いまひとつよくわかりません。
簡単に、ナラトロジーというのはこういうことをやるものだ、と紹介をしておきます。
ある物語があるとします(以下の部分はテリー・イーグルトン『文学とは何か』を典拠としています)。
-------------
ひとりの少年が、ある日、父親とケンカして、家を飛び出します。ところが、少年は森へ入っていき、深い穴のなかに落ちてしまう。
息子を捜しに森へ入った父親は、その穴を見つけてのぞきこむけれど、暗くてよく見えない。
そのとき、頭上にのぼってきた太陽の光が差し込んで、穴の奥深くまで照らす。
そのために、父親は息子を救出することができ、親子は仲直りをし、連れだって家へ帰る。
-------------
精神分析批評なら、この物語を、エディプス・コンプレックスの観点から見ていきます。
少年が穴に落ちることは、父親とケンカしたことで自分を罰したいという少年の無意識の願望を表したものであり、「穴」は子宮への回帰を象徴したもの、と読みとっていくでしょう。
いっぽう、構造主義的に読んでいく、というのはこういう方法だ、とイーグルトンは説明します。
物語を図式的形態に変換することから始めます。
「少年が父親とケンカする」という意味作用の第一単位は「低いものが高いものに反抗する」と書き換えられます。
つぎに、少年が森のなかを歩いていくことは、水平軸に沿った運動なので「低い/高い」という垂直軸と対照をなしている。
さらに穴へ落ちるのは、「低い」
頭上の太陽は「高い」
穴を照らした太陽は、「高い」→「低い」への運動で「和解」をもたらし、第一単位の「低い→高い」の「衝突」が逆転したものとみなされる。
父親と息子の和解は「高いもの」と「低いもの」の間の均衡状態の回復であり、ふたりが連れだって家へ帰るのは「中間」を意味する。この「昼間部」が媒介役を果たすことが改めて明示される。
実際のナラトロジーでは、時間の側面、組織、意味作用、あるいはテーマなど、もう少し多面的に分析され、それぞれの「単位」は時間をあらわす「t」とか、機能をあらわす「f」とかという記号を使って表記していきます。
先にも書いたように、ナラトロジーは世界的に見ても、よく動いている文学理論ですので、研究していらっしゃる方も多いです(ただ、#2の方が上げておられる内田さんは哲学者のレヴィナスがご専門で、ナラトロジーの分野の方ではありません)。
大学の学部としては、文学部、記号学というより、文学理論、比較文学として探していったほうが見つけやすいかもしれません。
ただ専門としてやっていこうと思われるのでしたら、学部というより、どうしても研究科(大学院)が中心になっていくかと思います。
この領域は専門ではないので、第一人者、といわれるとちょっとわかりませんが、金沢大学の西田谷洋さんがWebで講義内容を公開していらっしゃいますので、参考までにあげておきます(ただし講義の部分はメモなので、これだけで何らかの理解が得られるというものにはなっていません)。
http://homepage2.nifty.com/nishitaya/index.htm
読み物としては、こちらのほうがおもしろいかな。早稲田大学の井桁貞義さんのページです。
http://www.kt.rim.or.jp/~igeta/igeta3/index.html
参考URL:http://homepage2.nifty.com/nishitaya/index.htm
「ナラトロジ-」
・・初めて聴く言葉です。
物語の構造を分析していく、というのが確かに自分がやりたいことです。
出していただいた例ですが
非常に、理系というか数学的というか
正直言って現段階ではいまいちピンと来ませんでした。
ナラトロジーは下で出た、構造主義とはまた別なのでしょうか?
自分がイメージしたのは古代の神話が作られた背景に
当時の宗教観などが影響しており、それが現代まで
社会の世相がどう物語の変化に現れてるのか?
ということです。
しかし物語についてこういった考え方をした事がないので
これはとても興味深いと思いました。
いまHPを読んでいる最中です。面白い・・
No.2
- 回答日時:
いやいや、ジャンルを形成するような固定的な内容ではないということです。
それこそ神話からアニメまで含むので、一つの学科の守備範囲には収まりません。Googleで「構造主義 物語」を検索したら16万件ヒットしました。研究者の名前には疎いのですが、神戸大学の内田樹さんなんか最近売り出し中ですね。
参考URL:http://www.google.com/search?q=%E6%A7%8B%E9%80%A …
ふたたび投稿ありがとうございます
「構造主義」という語彙をはじめて聞いたのですが
自分が探している学問とかなり近いです。
内田氏についてもう少し調べて見ようと思います
No.1
- 回答日時:
大学の専門としては文学、文化人類学、社会学などになると思います。
つまり、それだけ専門にやるというほど確立された分野ではないので、いろいろな学科で研究されているということですね。ですから、学部や学科を選ぶのでなく、それが専門の先生がいるところを選ぶのが大切です。学問の名前としては文芸批評ということになるでしょうか。文芸批評は何でも放り込める大きなバケツです。
ありがとうございます。
専攻がわかっただけでも道が見えてきました
しかしそこまで大きなジャンルではないのですね(ガッカリ
もしこの分野の第一人者のをご存知の方がいましたら
以前質問受付中なのでよろしくお願いします☆
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