オモコロ

こんにちは。海賊王です。略奪、してますか？

突然ですが皆さんは『ウォーシップサーガ』というゲームアプリをご存知でしょうか。

ウォーシップサーガは実在する200もの戦艦を忠実に再現し、それらを元に艦隊を作って海戦をしまくるゲームです。

そのウォーシップサーガのPRを担当する事になったのですが、
現代において「海戦」で勝ちまくって海の覇者、つまりは海賊王になるにはどうしたら良いのでしょうか。

流石に現代においては戦艦同士が大砲でボンボン撃ち合ったり、
ゴム人間が人をぶん殴ったりして戦ったりするわけではないと思うので、本日は現代の海戦に詳しい専門家の方を呼んでお話をお伺いする事にしました。

じゃん！

2016年8月に「安全保障入門」（星海社）という新書も発表された、軍事ブロガーの石動竜仁（いするぎたつひと）さんです！

※ご本人顔出しNGのため、Twitterで使用されているアイコンを使用させていただきます。

石動竜仁

2008年に「dragoner」名義で軍事関連ブログを開設。

その後、2010年にTwitter(@dragoner_JP)を開始し、現在は、個人ブログ「dragoner.ねっと」の他に、「Yahoo!ニュース 個人」や「ジセダイ総研」などにも、軍事問題の時事解説を中心に寄稿している。

「えー、早速ですが、海戦に勝ちまくって海の覇者、つまりは海賊王になりたいなと思っているのですが、現代において海賊王になるにはどうしたら良いんでしょうか？」

「そうですね。ただの海賊になるだけなら戦う必要は無いと思いますが、海の覇者になりたいとなると、やはり現代最強のアメリカ空母に勝たないといけないと思います。それなら、海賊王を名乗っても良いと思いますよ」

「なるほど。そこで僕も色々作戦を考えたんですが、こういうのはどうです？」

「まず、日本から船でロシアのウラジオストックあたりに行って、ロシアマフィアからRPGとか自動小銃とか、ああいう武器をいっぱい調達して来るんですよ」

「で、武器を調達したら太平洋に行ってそのまま米軍の空母を襲撃します」

「なるほど。まず、ロシアの領海に無断で武装して侵入した場合、沿岸警備隊の追跡を受ける可能性がありますが、下手に抵抗したり逃げ出そうとすると攻撃される恐れがあります。実際に2009年に停船要求を無視した中国船が、沿岸警備隊の攻撃を受け、沈没しています」

「え？攻撃されるんですか？」

「はい。仮にバレずに入港出来たとしても、ロシアで調達は難しいかもしれません。90年代のロシアは不景気で、軍からの横流しが問題になっていましたが、プーチン大統領就任以降は、軍人にもちゃんと給料が支払われるようになるなどの対策がされて、管理が厳重になっているそうです」

「じゃあ武器買えないじゃないですか」

「そうですね。今の日本周辺ならフィリピンが狙い目かもしれません。フィリピンは海軍も沿岸警備隊も、国の広さの割に小規模で、装備の老朽化が問題になっています。だから監視をくぐり抜けやすいでしょうし、国内では複数の反政府勢力が活動していますから、武器の入手ルートも見つかるかもしれません。ただ、新しい大統領の政策で、今後どうなるかはわかりません」

「なるほど。『武器を買うならフィリピンがおすすめ！』ってそんなに大々的に言って良いもんなんですかね？」

「意味が近かったとしても、雑に要約しないでください！」

「じゃあ、こんな感じでフィリピンに寄って武器をゲットしてから空母を襲撃するのはどうでしょう？」

「一瞬で撃沈されるでしょうね。正体不明の船舶が近寄ってきたら向こうも警戒しますから、まず警告が来てその後射撃、という展開になると思います」

「全然ダメじゃないですか」

「そもそも、RPGにしろ自動小銃にしろ、マフィアから買える程度の武器で空母を撃沈させるのは不可能ですね。空母って全長が330メートルあってめちゃくちゃデカいんですよ。大きなビルが海に浮かんでるくらいです。それにダメージコントロールと言ってRPGくらいなら１発２発食らっても絶対沈没しないようになっています」

「そっかぁ。ミサイルをどっかからかっぱらって来るしかないかぁ」

「じゃあ、こういう作戦はどうですか？まずは海上で漂流したフリをするんですよ」

「そしたらたまたま自衛隊のイージス艦が通りがかって救助してくれるんですけど、その漂流していた船にはスティーブン・セガールが乗っててイージス艦を制圧しちゃうんです」

「制圧されちゃった方も、セガールが来たもんだからテンションあがってみんなでアメリカの空母を攻撃しに行くっていう」

「なるほど。1万歩くらい譲ってイージス艦を強奪するところまで成功したとしても、イージス艦には対艦ミサイルが8発しか積めませんから、撃ったミサイル8発全部迎撃された後に、その10倍くらいのミサイルが飛んで来て撃沈されて終わりだと思います」

「えっ！空母ってそんなに強いの!?」

「そもそも、作戦行動中の空母って絶対に単独行動しないんですよ。空母打撃群って言うんですけど」

「空母にはヘリも戦闘機も搭載されてますから、哨戒って言って空からずっと監視していますし、イージス・システムを搭載したミサイル巡洋艦が１隻と駆逐艦が２隻居て対空防御と攻撃を担っていて、あとは原子力潜水艦が一緒に行動してて潜水艦の攻撃を受けないように同じく監視してます。ちなみに索敵半径は数百キロですし、イージス艦が強奪された事は米軍にもすぐ伝わっているはずなので、ミサイルを撃ちあうどころか、先に相手の戦闘機に見つかって空母の姿を一切見ないまま撃沈される可能性が高いです」

「なにそれ絶対勝てないじゃん」

「そうなんですよ。1つの空母打撃群に対して、ひとつの国の空軍と海軍の戦力をまるごとつぎ込んでも勝てるかどうか、っていうくらいですね。それでもほとんどの国が負けると思います。飽和攻撃と言うんですが、イージス艦の迎撃能力を超えるレベルでミサイルを撃ちまくればなんとかなるかなぁ、っていうくらいの対策しかありません」

「えー。じゃあこっちも空母作って対抗するとか？」

「空母1隻を艦載機コミで造るだけで、1兆円は覚悟しなきゃいけないと思いますが、そんなお金あるなら海賊なんてやる必要無いと思います」

「現代の海戦はロマンが無いわ」

「じゃあ、海賊王は諦めて単なる海賊は？ソマリアにはまだ海賊が居るんですよね？あれを日本でやるとどうなります？」

「まず、ソマリアで何故海賊が成立するかというと、無政府状態で取り締まりが機能してないからなんですよ。『海賊』と言ってもずっと海の上に居るわけじゃなくて、給油や点検もしなきゃいけませんし、陸上の拠点は必ず必要になるので普通の国なら陸上の拠点を警察に制圧されて終了なんですが、ソマリアだとそれが機能していないので海賊を続けられる、という事ですね。日本の警察は優秀ですから、その陸上の拠点を抑えられて終わりだと思います。それにもし、日本で海賊をやるとしたらどういう船を襲うんですか？」

「えー、なんだろ。石油タンカーとかですかね？」

「石油って、重量の割に価値が高くないのであんまり儲からないですよ」

「じゃあ貴金属とか？ダイヤモンド積んだ船とか」

「ダイヤモンドみたいに高価な物は、現代だと船で輸送せずに飛行機で運んじゃうんですよ。前提として、船で運ぶものって基本的には安価なものなんですよね。小麦とか石油とか。重量の割にそれほど高単価じゃない商品とか。昔の時代ならいわゆる『お宝』を船で運ぶ事もあったんでしょうけど、飛行機が発達した現代だとそういうものはほぼ空輸しちゃいますね」

「さっきから否定してばっかりじゃないですか！もう少し真面目に考えてくださいよ！」

「『海賊王になりたい』って言ってきた人が言うセリフじゃないと思います」

「じゃあソマリアの海賊は何を狙って海賊やってるんですか？」

「あれは基本的に『人』を狙うんですよ。誘拐して身代金を要求するっていう。身代金の相場は人質にもよりますが、1億円と言われていますので、重いモノを奪うより手軽に儲かるんですよ」

「『人間の誘拐は儲かる』とかサラッとえげつない事言わないでください。つまり、警察の取り締まりがゆるそうな国とか無人島に拠点を作って、そのまま船で日本に来て誘拐すれば良いんだ。狙うならお金持ちが良いですよね。具体的な名前は言えないですが、今は石垣島でのんびりしてる『素敵やん』って言いそうな人とか」

「でもそれだとただの誘拐犯で海賊とは言えないと思います。船を襲わないと」

「あーそっかー。そうなると映画みたいに豪華客船を襲うしか無いかー。じゃあ、船である程度近寄って、そのあとはジェットスキーとか小回りがきくやつでダイナマイト片手に脅すとかどう？」

「豪華客船もかなりサイズが大きいので、ジェットスキーみたいな小さいのが周りをチョロチョロしたところで、脅されてることに気付いてすら貰えないんじゃないでしょうか？」

「ぜんぜんダメじゃねぇか」

「そもそも、別の国から日本に来れるような船って、かなり高いんですが、そういうのを買う資金はどうするんですか？」

「えっ。船って高いの？」

「高いですよ。ちゃんとした船だと何億円っていう値段になると思うんで、ちゃんとそこを調べてきてください」

「えーー」

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