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著作権マニア

音楽著作権って難しい?
穂口氏の指摘について一言
 各方面で、作曲家の穂口氏の発言が話題になっているようですが、それについて一言。
 このことは前に宣言した「J-POPの作り方」というコラムで触れるつもりだったのですが、ここでちょっと前出しを。
 1曲入り500円のCDを発売した場合、実際の作曲家に入る印税はいくらかというと、JASRACの規定6%(30円)の内、管理手数料6%(1.8円)が控除され、作曲家分はその半分(14.1円)。さらに音楽出版社がその半分(7.05円)をもっていくので、作曲家本人には7.05円がはいるわけです。しかし、多くの場合作曲家一人がその7.05円を受け取るわけではなく、中間業者(楽曲コーディネータと呼ばれる)や作曲家の所属事務所のマージンを考えると、だいたいその半分の3.525円が実際の懐に入る場合が多いようです。割合で言うと、0.705%というのが普通です。。。これが僕のいた現場の常識でした。
 穂口氏の例に挙げているアルバムの場合(14曲入り3000円)は、1曲単価が214円になるので、その0.7%(1.5円)になります。アルバム全体の定価からすれば極端なパーセンテージになりますけど。。他の13曲は全く関係ないことを思えば、ケーススタディとしてはちょっと悪意を感じずにはいられません。
 僕らが相手していた作曲家は、その辺りはドライに割り切っていて、「シングルに曲が採用されてなんぼ。アルバム曲ならゴミ扱い」というスタンスをもっている場合が多かったです。
 こういう言い方は失礼に当たるかもしれませんが、才能のある作曲家(又は音楽をビジネスと割り切れる作曲家)は、それを分かった上で、曲を作り、業界内の競争を制し、知名度を上げていくのだと思います。僕もそのスタンスで仕事をしてきたし、それについていくことができない作曲家は、脱落するのみだと思ってます。
 この状況を「搾取」と考えるのは、ちょっと違うかなと。音楽出版社も所属事務所も中間業者もそれなりに仕事してますし、作曲家のみでその仕事が決まったとは思えません。曲によっては、楽曲コーディネータが一生懸命仕事をして、(時には作曲まで手助けして)楽曲が決まる場合だってあるんです。音楽出版社だって、なんとかメディアに載せることで売上に多大な貢献をする場合だってあるんです。(タイアップなしでたくさん売れる曲が今の時代どこにあるんですか?)メディア系出版社の存否については別項に譲るとして(これは僕も規制した方がいいと思ってます)、音楽出版社自体を否定するのはどうかと思います。

 結論として、原盤・出版ビジネスについては搾取はない、と思ってます。ただ、補償金制度や二次使用料分配・JASRAC自体のシステム(JASRAC手数料や入会料)については、別問題ですが。。


 最後に、このコラムの中での「作曲家」は職業作家(プロの作曲家)を指しており、いわゆる自作自演アーティスト(singer song writer)はまた違う考え方をしなくてはならないと思います。作曲家としての側面は同じですが、その他の面での収益が見込めるからです。
Comment
≪この記事へのコメント≫
著作権料配分
著作権料配分の内訳表が公開されていますが、いかがお考えでしょうか。
http://www.amvox.co.jp/entrance/vision/RoyaltyCalculation.html
2005/08/26(金) 14:19:23 | URL | #AtKzXnDM[ 編集]
re : 著作権料配分
アルバム内の1曲のみの作曲者の懐に入る金額は私が言っている金額と同じだと思うのですが。。(1.5円)
よって全くそのとおりだと思います。
ただ、アルバムの定価を母数とする割合を出すと極端になる、と言ったまでです。
2005/08/26(金) 19:23:53 | URL | oh_ben_toh #pQpZY72.[ 編集]
ん~~
以下の文章、アルバムを買うリスナーをバカにしてませんか?

僕らが相手していた作曲家は、その辺りはドライに割り切っていて、「シングルに曲が採用されてなんぼ。アルバム曲ならゴミ扱い」というスタンスをもっている場合が多かったです。
2006/05/05(金) 19:45:59 | URL | ん~ #-[ 編集]
ご返答します
>ん~様

 作曲する時点では、その曲がシングルになるかアルバムになるか分かっていないことがほとんどで、作曲家はシングルに採用されるために本気で作っています。ですから、リスナーをバカにしていることは全くありません。
 しかし、シングル選考から漏れた楽曲はアルバムに収録されても、印税の面でシングル曲とは雲泥の差になってしまいます。あくまでも「ゴミ」という表現は、印税についての記述です。
 言葉足らずで申し訳ありません。
2006/05/06(土) 10:30:45 | URL | oh_ben_toh #pQpZY72.[ 編集]
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しかし、多くの場合作曲家一人がその7.05円を受け取るわけではなく、中間業者(楽曲コーディネータと呼ばれる)や作曲家の所属事務所のマージンを考えると、だいたいその半分の3.525円が実際の懐に入る場合が多いようです。...  穂口氏の例に挙げているアルバムの場合(14
2005/08/24(水) 10:25:21 | 若旦那の独り言2005 Ver.3
[著作権]私的録音録画補償金制度(Copy & Copyright Diary)より: どうなる「私的録音補償金制度」 (InternetWatch) 私的録音補償金制度の根拠や、デジタル録音のみ対象としている日本の制度の特徴、分配の比率、問題点など簡潔にかかれています。勉強になりますね。 iP
2005/08/24(水) 11:16:48 | OTO-NETA
著作権マニア 穂口氏の指摘について一言穂口氏の出してきた金額に対する詳しい解説です。 穂口氏の例に挙げているアルバムの場合(14曲入り3000円)は、1曲単価が214円になるので、その0.7%(1.5円)になります。アルバム全体の定価からすれば極端なパーセンテージになりま
2005/08/24(水) 11:47:40 | 林檎の歌
ええ、いい訳ですけど(汗昨日は本業の20日の締めの日でしてね、合間に状況チェックつー名の徘徊ができなかったんですよ、全然。(相変わらずトラバとか表示できないブログそれなりに多いので・・・くぅ。)で、夜は一応あちこちでネタにしてたやふみゅーぢっく...
2005/08/24(水) 12:17:24 | ふっかつ!れしのお探しモノげっき
 日本コンパクトディスクビデオレンタル商業組合のニュース経由iPodに印税、上乗せ?――もめる私的録音補償金という記事が掲載されています。元記事は日経の様です。気になる部分を引用させて戴くと 「アップルさん、iPodで絶好調じゃないですか。補償金、覚悟して下さい.
2005/08/24(水) 14:25:11 | Where is a limit?
 作曲家の穂口雄右さんの「テレビが独占する音楽著作権利益の実態(1)」がネット上
2005/08/24(水) 14:31:38 | benli
[http://d.hatena.ne.jp/freeyoursoul/20050822/1124730421:title=一昨日に引き続き著作権関連の問題]。 一昨日の私的録音補償金問題記事でも現行の問題を提起されていた、社団法人日本音楽著作権協会評議員の作曲家、穂口雄右氏が興味深い記事を記載されています。 [http://
2005/08/24(水) 15:33:07 | musiclover blog
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