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今月の健康記念日

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 🕊日本の近代医学の父

 今年(2024、令和6)の7月、紙幣のデザインが変わりました。新1000円札の肖像となったのは北里柴三郎、日本近代医学の父と言われます。前回(2004、平成16)の1000円札は梅毒や黄熱病を研究した細菌学者・野口英世でした。奇しくも日本の近代医学を代表する二人によるバトンリレーとなりました。
 北里柴三郎は1853(嘉永5)年に熊本県で生まれ、熊本医学校(熊本大学医学部)、東京医学校(東京大学医学部)で医学を学びました。1886(明治19)年から6年間はドイツのベルリン大学に留学し、世界的な細菌学者ローベルト・コッホ博士に師事します。留学中の1889(明治22)年に破傷風菌の純粋培養に成功、翌年に破傷風菌の毒素に対する免疫抗体を発見し、それを応用して血清療法を確立しました。この研究により第1回ノーベル生理学・医学賞(1901年)の候補にもなりますが、結果は共同研究者であるベーリング博士の単独受賞でした。
 ドイツからの帰国後、北里博士は伝染病研究所、北里研究所、慶應大学医学部等の創設に携わり、それら研究機関の所長、日本医師会の初代会長を歴任、まさに明治・大正時代という近代日本の黎明期に研究と教育の両面で医学の近代化を推進しました。
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 🕊ワクチンと血清療法の違い

 今まさにインフルエンザワクチンの接種適期ですね。インフルエンザには
ホンコンA型やB型がありますが、今年の流行はどっちでしょうか。
 ワクチンは免疫を獲得するために接種します。なぜなら、一度感染症にかかると同じ病気にはかからない現象があるからです。18世紀の末、イギリスのエドワード・ジェンナーは種痘の予防接種に成功し、天然痘ワクチンを開発しました。これが人類初のワクチンです。
 ワクチンは無毒化(弱毒化)した病原体を抗原として感染前に接種することで、あらかじめ体内に抗体を作らせ、実際に感染した時に速やかに免疫反応を起こす準備をさせます。
 これに対し、血清療法はウマなどの動物に菌体を少量ずつ注射してウマの血清の中に抗体を生成し、その血清をウマから取り出し人間の患者に注射することで体内に入った毒素を中和し無力化する治療法です。ハブやマムシなどの毒ヘビに噛まれた場合や、破傷風、ボツリヌスなどの疾患の治療に行われます。
 また、細菌やウイルス等の感染症を予防や治療する目的で、ヒトの血液から取り出された抗体(免疫グロブリン)が医薬品として使用され、新型コロナウイルスへの有効性も研究されています。
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 🕊血清は1回しか打てない?

 例えば、ヘビに噛まれ血清を注射した場合、血清によって毒は中和されますが、血清そのものもウマなどの動物の体内で作られた異物であるため、患者の体の中で免疫反応が起こり記憶されます。
 2回目に同じ血清を体内に入れると、それら記憶細胞の血清に対する免疫反応により、「アナフィラキシーショック」と言われる急性アレルギー反応が発生し呼吸困難に陥るケースもみられます。
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 🕊医学の使命とは?

 北里柴三郎が血清療法を開発してから140年、人類は繰り返し感染症の脅威に晒されてきました。アフター・コロナの時代を生きる私たちにも、いつまた次の感染症が襲いかかってくるかわかりません。
 ただ、コロナウイルスに対して、新しいメッセンジャーRNAワクチンが有効だったように、人類もまた常に成長しています。このワクチンの開発に貢献したカタリン・カリコ氏、ドリュー・ワイスマン氏がノーベル賞(2023)を受賞したことも記憶に新しい出来事です。
 北里柴三郎が残念ながら逃したノーベル生理学・医学賞ですが、今まで5人の日本人が受賞しました。利根川進(1987)、山中伸弥(2012)、大村智(2015)、大隈良典(2016)、本庶佑(2018)の各氏です。北里博士が切り開いた医学の道は確実に現代まで引き継がれています。
 最後に北里柴三郎博士の言葉を紹介しましょう。新札を手に取ったら、先人の偉業に思いを馳せてみましょう。

「医学の使命は病気を予防することにある」
「人に熱と誠があれば何事も達成する。世の中は決して行き詰まらぬ。もし行き詰まったとしたら、それは人に熱意と誠意がないからだ」
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参考:北里研究所HP、血清療法HP、日本医事新報社HP、日本血液製剤協会HP、日本製薬工業協会HP、Wikipedia等 



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