超高齢化社会で支配なき長老賢人社会は実現するか?(漢字多過ぎ)


最近、立て続けに国の研究機関(独立行政法人)の理事長の年齢を見る機会があって、ともに70歳を超えていたのでちょっと驚いた。驚いた理由はいくつかあるんですが、ひとつは民主党が独立行政法人の役員の年齢制限をするとかしないとかいうニュースを聞いたような記憶があったためで、あれってどうなったのかなという疑問がわきました。


もうひとつは、若手の博士の就職難が続いているというニュースをちらほら目にしていたからです。例えばこちら↓
 http://d.hatena.ne.jp/next49/20101202/p1
 http://viking-neurosci.sakura.ne.jp/blog-wp/?p=4991


若い人がなかなか就職できないでいるのに、年金を貰えるような境遇の方が高給をもらう職についているというのは正直かなり違和感を感じました。


ただわたしが目にした70歳を超える理事長というのは二人だけだったので、例外的な人事かもしれない(おふたりとも一般的な知名度も相当高いと思われる方でした)という気持ちもあって他の独立行政法人についても調べてみました。とりあえず、文部科学省所管の23の独立行政法人についてです。


機関名 法人長の年齢 備考
国立特別支援教育総合研究所 69 -
大学入試センター 69 -
国立青少年教育振興機構 60 文科省出身
国立女性教育会館 76 -
国立科学博物館 63 文科省出身
物質・材料研究機構 70 -
防災科学技術研究所 66 -
放射線医学総合研究所 62 -
国立美術館 67 -
国立文化財機構 70 -
教員研修センター 不明 文科省出身
科学技術振興機構 68 -
日本学術振興会 67 文科省出身
理化学研究所 72 -
宇宙航空研究開発機構 71 -
日本スポーツ振興センター 75 -
日本芸術文化振興会 73 -
日本学生支援機構 71 -
海洋研究開発機構 67 文科省出身
国立高等専門学校機構 69 -
大学評価・学位授与機構 69 -
国立大学財務・経営センター 61 -
日本原子力研究開発機構 69 -

23の機関のうち65歳以下は4名だけでした。



で、こんな数字を出しておいてなんなんですが、わたしの基本的な考え方としては、年齢制限には反対なんですね。優秀で経験豊富な方々には、年齢に関係なく力を発揮していただきたいと思っています。特に、日本の場合、超がつく高齢化社会を迎えているわけでして、高齢者の力もどんどん借りていかざるをえないでしょう。


ただし、ただしですね、今回のわたしの提案は、そうした「長老」の経験や能力を、ムキュウで貸してくれませんかというものなんです。無休じゃなくて無給です*1。


ムキュー。ちょっと言ってみただけです。


総務省の発表によると、独立行政法人のトップの平均年収が約1800万円、理事だと約1500万円です。これだと若手3人から4人分くらいの年収にあたります。つまり、こうした機関の幹部を元気で優秀な65歳以上の方々に無給でお願いすれば、その分を若い人の雇用などに当てることができるわけです。


またこうした機関のトップというのは、研究自体というよりも、様々な政治的・儀礼的な場で研究の環境を整えるというのが主な仕事になるのではないでしょうか。もしそうだとすると、そういうポストに現役バリバリの研究者が就くというのは研究の発展という観点からはむしろマイナスになりそうです。ですから、効率的な研究体制の維持という観点からも、そういう縁の下の力持ち的な仕事を経験豊富な高齢者の方にやっていただくというのは意味がありそうです。そしてトップが無給で組織の発展や後進の育成に尽力している姿を見せれば、自ずと現場の士気も上がるだろうし、何より高齢者と若者との世代間闘争が緩和されて、社会の一体感も醸成できる気がします。


例えば独立行政法人が100個くらいあるので、トップの給与を4人の職員に当てれば400人雇えます。理事も含めるとそれなりの数の人の人生を変えられます。問題全体の大きさからすると、それだけで問題解決というわけにはもちろんいきませんが、若い人の士気に与える影響は割と大きいのではないでしょうか。「結局年寄りは既得権を手放さない」という白けたマインドを放置しておくのは割と危険なことだと思いますけどね。


そういうわけで研究機関に限らず、「ボランティア理事長」とか「ボランティアCEO」はダメでしょうかね*2。無給でそんなことする人はいないよ、と言われてしまいそうですが、どうなんだろう。年金さえもらえれば、お金の問題ではなくて、科学の発展とか若手の育成のために尽力したいと考える方もいらっしゃると思うんですけどね。そう信じたいけど。もちろん、無給は極端でも、現行の給与体系を抜本的に見直すという作業はやってみる価値はあると思います。


とにかく繰り返しになりますが、日本は未曾有の高齢化社会を迎えるわけで、高齢者を排除して社会を分断する方向に議論を進めるのは良くないというのが一点*3。そして、超高齢化社会における高齢者の生き方として、金と権力をベースにするのではなくて、若者からの尊敬をベースにした老後のあり方みたいなのを真剣に考えていくべきなんじゃないかと思っています。大学の先生とかも、例えば60歳を過ぎたら、「年収1000万円を500万円にしたらその分は若手を雇用できる」というオプションを用意するとか、色々やってみたらいいのになと思うんですけど 。若い人は拍手喝采じゃないでしょうか。


というわけでなんかちゃんと調べる時間もなかったのでとてつもない事実誤認などがある気もしますが、今日のところはそんな感じです。ムキュー。

*1:どっちにしてもなんかブラックに響きますね

*2:交通費くらい出そうぜ!

*3:ただ、若い研究者の不安定な状況をちらほらと聞き及ぶと、現在理事長とか理事をやってらっしゃる方がこの状況をどう考えているのか意見を聞いてみたいという気持ちにはなりますね。嫌味じゃなくて率直な疑問として