西アフリカのライオンが絶滅寸前

2014.01.09
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西アフリカでライオンが生息している可能性のある、21の保護区の調査結果。確認されたのは分断された4つの保護区のみ。

Map by NG Staff. Source: Panthera
 西アフリカからライオンの姿が消える日が迫っている。最新のレポートによると、さらなる保護の取り組みが求められているという。今月発表された調査結果は、6年間、11カ国をカバーしたフィールドワークがまとめられている。 西アフリカのライオンはかつて、セネガルからナイジェリアの約2500キロ以上の範囲に生息していた。しかし今回の実態調査では、範囲が1%未満に縮小、およそ250頭が確認されたのみだという。計4カ所に分断された生息域は、セネガル、そしてベナン、ニジェール、ブルキナファソの国境地帯の4分の1に各1区、2区がナイジェリアに存在している。50頭以上が確認されているのは、3カ国にまたがるドゥブルベ・アルリ・ペンジャリ区だけに追い込まれた。

「これほど悲惨な状況に追い込まれているとは」と、ガボンを拠点に調査コーディネーターを務める野生ネコ科動物の保護団体「パンセラ(Panthera)」のフィリップ・ヘンシェル(Philipp Henschel)氏は嘆く。「多くの国は保護区の惨状を把握していない。調査費用がなかったからだ」。

 同氏のチームはアメリカ、デューク大学の研究者による2012年のデータを基に、ナショナル ジオグラフィック協会のビッグキャット・イニシアチブの資金援助を受けて西アフリカ11カ国の保護区21カ所を新たに調査した。

「いずれの環境も以前と変わっていない。にも関わらず、ライオンは4つの分断された保護区に押し込められ、その数も激減していた」とヘンシェル氏は語る。

◆南部や東のライオンとは別の種?

 国際自然保護連合(IUCN)は現在、西アフリカのライオンの分類を見直している。最近の遺伝子研究で、南部アフリカと東アフリカの約3万5000頭とは、別の亜種である可能性が浮上している。ヘンシェル氏も賛意を示す。亜種となれば、レッドリストで「絶滅危惧IA類(絶滅寸前)」に指定される可能性が高く、国際的な保護への取り組みにつながるという。

 西アフリカのライオンは小柄で手足が長い。オスはたてがみが薄いという特徴もある。

◆西アフリカのライオンを脅かす脅威

 西アフリカ全域に広がっていた本来の生息域は、土地利用の大規模転換に伴って激減した。農地開拓や森林伐採、狩猟によって追い詰められ、今や保護区だけが頼みの綱となった。

 しかし最近は、保護区のライオンが地域住民の家畜を襲撃し、殺害されるケースも頻発。さらに、本来ライオンのエサである野生動物が密猟され、ブッシュミートとして市場に出回る深刻な事態も日常化している。景気不振と漁業資源の枯渇による食糧不足で、保護区内での違法行為に手を染める人々が後を絶たない。

 ヘンシェル氏は、報復的殺害や密漁の防止対策には資金が必要と指摘。「6カ所の保護区では運営資金が枯渇している。南や東の大規模な保護区と比べれば、21カ所すべてが人員不足だった。名ばかりの保護区では、組織的な密猟者に太刀打ちできない」。

◆西アフリカのライオンを救えるか?

 西アフリカのライオンの運命は、「遅くとも今後5年間で決まるだろう。十分な資金、そして政府機関や国際機関の協力が欠かせない」とヘンシェル氏は力説する。

「極東ロシアでは、調達された資金によってシベリアトラの個体数が回復傾向にある。危機的状況が周知されたおかげだ。西アフリカでも同様のプロジェクトを実施したい」。

 今回の研究結果は、査読付きオープンアクセスの米オンライン科学誌「PLOS ONE」に1月8日付けで発表された。

Map by NG Staff. Source: Panthera

文=Brian Clark Howard

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