ウォンバットはお尻が「超」硬く、四角いうんちをするのはなぜ?

お尻の防御技「巣穴つぶし」と、謎だったサイコロ状の糞の仕組み

2024.09.18
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ヒールズヴィル自然保護区の若いヒメウォンバット(学名: Vombatus ursinus tasmaniensus)。四角い糞をするという動物界でも非常に珍しい存在だ。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)
ヒールズヴィル自然保護区の若いヒメウォンバット(学名: Vombatus ursinus tasmaniensus)。四角い糞をするという動物界でも非常に珍しい存在だ。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)
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 ずんぐりとして愛らしいウォンバット。オーストラリア固有の有袋類で、穴を掘るのが得意だ。最近はネットの人気者で、お尻を防御に使ったり、サイコロのような四角いうんちをしたりするという動画や記事を見たことがあるかもしれない。わかっている限りで、四角い糞を排泄する動物は、世界でウォンバットだけだろう。(参考記事:「動物大図鑑:ヒメウォンバット」

 この変わった生態は、各方面から注目され話題になっているものの、本格的な研究はこれまでほとんどなかった。科学的にも最近まで謎のままだった。ウォンバットの四角いうんちやお尻の防御について、わかっていることを紹介しよう。

何のために糞を四角くするのか?

 2018年初め、米ジョージア工科大学の研究者で、体液が専門のパトリシア・ヤン氏は、ある会議でウォンバットのうんちを知り、詳しく調べてみることにした。

「糞の形がサイコロみたいだなんて、最初は信じていませんでした」とヤン氏は言う。

 ウォンバットの専門家であるオーストラリア、アデレード大学のマイク・スウィンボーン氏は、「いろいろな仮説があります」と話す。これまで有力とされた説は、ウォンバットがなわばりを示すため、糞が転がることなく積み重ねられるようになったというものだ。ウォンバットは糞をなわばりの印として使う。しかし、スウィンボーン氏の考えは違う。(参考記事:「古代の巨大有袋類ウォンバット、サイズの違いは性別の違い」

「レンガでピラミッドを作るのとは目的が違います。ウォンバットは、ただ自分のなわばりで糞をしているだけです」と言う。

 スウィンボーン氏は、糞が四角くなるのはウォンバットが生息する乾燥した環境と大きく関係しているのではないかと考えている。「ウォンバットは、必要な水分を食べものから摂取しなければなりません」。実際、水を直接飲むことができる動物園で飼育されたウォンバットの糞は、それほど四角くならないことがあるという。(参考記事:「【動画】かわいい!世話係になついたウォンバット」

 1969年からウォンバットを飼育している米シカゴのブルックフィールド動物園のビル・ジーグラー氏は、水分摂取も一因である可能性は認めるが、ウォンバットの消化管の特徴による影響が大きいと話す。「ウォンバット・南オーストラリア」という組織の代表ピーター・クレメンツ氏も同意見で、生息環境とウォンバットの消化管の2つの要素が組み合わさって四角い糞ができると考えている。

次ページ:写真で見るとやはりサイコロ状、どうやってこの形になるのか?

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