人間が眠っているのはすぐにわかる。大いびきをかいていればなおさらだ。
ところが動物の場合、寝ているかどうかを判断するのは難しい。
この記事では、Facebookを通じて寄せられた「虫って眠るの?」という質問に答えてみたい。
「答えはYESです。注釈が付きますが」と言うのは、米ウィスコンシン大学ラクロス校の生物学者で、ミツバチの睡眠について研究しているバレット・クライン氏。アシナガバチ、ゴキブリ、カマキリ、ショウジョウバエなどは眠る虫の仲間だ。特に、ミバエの睡眠は、哺乳類の睡眠とよく似ており、睡眠導入物質やカフェインに対して同じ反応を示すのだという。
しかし、昆虫の睡眠を評価するのは困難だ。たとえば、「睡眠」と「睡眠しているような状態」を区別するのは容易ではない。
虫の睡眠どう見極める?
虫が本当に眠っているサインは、動かず、「重力の方向にうなだれ」、筋肉が弛緩している状態だ。「覚醒閾値」も、判断材料のひとつ。虫を揺すって、覚醒するまでにかかる時間を測定する。
ショウジョウバエには「睡眠反跳」があることも、実験で明らかにされた。睡眠不足になったショウジョウバエは、その反動で長い睡眠時間が必要になる。忙しい人なら、身に覚えがあるだろう。
オレゴン州立大学の生物学者、ケイティ・プルディック氏は、チョウは休憩するものの、「寝ているかどうかはわからない」と言う。チョウは夜に羽を休め、「気温が一定値より低くなると動けない」。一見すると眠っているようだが、実際は休眠と呼ばれる活動停止状態である。
雑なダンスを踊るミツバチ
プルディック氏によると、チョウは、午後遅くに「就寝する」とのこと。葉っぱや木の皮などの隠れ場所からぶら下がるのだ。十分な休息を取らないと、エサを取ることができないし、メスのチョウは、アオムシが食べない植物に間違って卵を産み付けてしまう。
睡眠不足が深刻な問題になるのは、人間だけではなく虫だって同じなのだ。クライン氏は2010年、極めてひどい音を出す「不眠機」を使って、ミツバチの睡眠不足について調査した。鉄のタグが付けられたハチは、「不眠機」の磁石が作用して睡眠が阻害され、銅のタグが付けられたハチは、同じ巣に住みながら十分な休息を得られるようにして実験を行ったのだ。(参考記事:「ミツバチが消える「蜂群崩壊症候群(CCD)」と闘う」)
ハチは、「尻振りダンス」と呼ばれる動きで、エサの場所や巣の候補地についての情報を交換する。この調査では、睡眠不足のハチが「正確な道案内ができるハチとは明らかに異なる動きをする」ことがわかった。たとえば、寝不足のハチのダンスは雑で、よく寝たハチのダンスほど役立たない。
夜通しテレビを見て、注意力散漫になる人と同じだ。あなたのテレビには、磁石が仕込まれていないだろうか。(参考記事:連載 睡眠の都市伝説を斬る「知らぬ間に膨れあがる寝不足ローンにご用心」)
働きバチの誕生(1:03)
卵からかえったばかりの働きバチの幼虫が、さなぎを経て成虫へと姿を変える様子を2500枚の画像をつないだタイムラプス映像で目撃する。ナショナル ジオグラフィック電子版2015年5月号に掲載しています。