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さかなクンの江戸水族館
オランダの博物館に、ある日本人が江戸後期に描いた魚などの絵が300点以上も残されている。作者は「シーボルトの絵師」とも呼ばれる川原慶賀。さかなクンと一緒に、慶賀の海の中をのぞいてみよう。
すギョいです。
目を見張るばかりの素晴らしいお魚たちです。
川原慶賀先生が描かれた絵を見て、色彩がこれほど鮮やかに保たれていることに、まずビックリします。それから、色模様、鰭の形や大きさ、位置や数、鱗の数などが学術的にも非常に正確で、寸分の狂いもなく描かれているのに、またまた、ギョギョッと驚きます。
慶賀先生が描かれた長崎県周辺の魚類相はとてもバラエティー豊かで、沖合や沿岸のお魚はもちろん、有明海のお魚も見られます。おなじみのムツゴロウなどです。こんなに多様な環境をもつ場所は、ほかにあまりないと思います。すギョくぜいたくで、奇跡的な立地条件です。そこに暮らすお魚たちを、慶賀先生は一つ一つ丁寧に描かれたのが絵からひしひしと伝わってきます。“一魚一会”の巡り会いを大切にしながら描かれたのかと思います。
※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2017年8月号(amazon)でどうぞ。
“シーボルトの絵師”とも呼ばれる川原慶賀の作品に出会ったのは、「海を渡った日本の動物たち」の取材を進めているときでした。シーボルトについて調べていて、偶然、川原の存在を知りました。そして、その絵の鮮やかさと緻密さに魅了されました。「海を渡った~」には魚は登場しません。そこで、「海を渡った日本の動物たち:魚編」として取り上げたいなと考えましたが、ただ絵を見てもらうだけでは面白くないなということで、さかなクンに案内役を打診しました。お忙しいスケジュールの合間を縫って取材に応じていただき、“新発見”があったりして、とても有意義で楽しい時間でした。さかなクンの知識の豊かさと魚への愛情、そして、先人たちへの尊敬の念に感動した取材でした。(S.O.)