ナタリー PowerPush - DIR EN GREY

バンドの完全復活を示す意欲作「輪郭」

DIR EN GREYのニューシングル「輪郭」がリリースされる。2011年8月発売のアルバム「DUM SPIRO SPERO」から1年4カ月ぶりとなる今作の表題曲は、京(Vo)の伸びやかなボーカルが印象的なミディアムナンバー。喉の不調で活動を止めていたことを感じさせない、聴く者の胸を締め付けるような歌声を堪能することができる。さらに今作には初期の楽曲「霧と繭」のリメイクバージョン、人気ホラーゲームシリーズ「サイレントヒル」の音楽制作および作品全体のプロデュースなどを手がける山岡晃による「輪郭」のリミックスも収録されている。

今回のインタビューでは薫(G)、Die(G)のギタリスト2名に再始動後の感触、新曲制作についてたっぷり話を訊いた。

取材・文 / 西廣智一 ライブ写真撮影 / 中村卓

9カ月前より先に行った感じを出したかった

Die(G)

──DIR EN GREYは10月10日に約9カ月ぶりとなるライブをSHIBUYA-AXで行いましたが、今振り返ってみるとあの復帰1本目のライブは皆さんにとってどういうステージでしたか?

Die 自分の立ち位置から観る景色とかステージ上のスモークの匂いとか、そういうのをちょっと懐かしく感じたというか。「ああ、やっぱここはいいな」と。ライブ自体は9カ月ぶりなのでかなり意気込んでいたんですけど、ちょっと空回りしたところもあったかな。なんかこう、自分のプレイと勢いがマッチしない感じがして。

──気持ちのほうが強すぎた?

Die ガーッと行き過ぎた感じで、なんかおぼつかなかったなっていうのが正直な感想です。

──なるほど。薫さんはどうでしたか?

薫 個人的には9カ月前よりももっといい状態というか、より先に行った感じを出したかったんですよね。でもそんな感じにできなくて、ちょっと不本意って言うとあれですけど、悔しかったかな。

──現在のツアーでは9カ月前には演奏してなかったアルバム「DUM SPIRO SPERO」からの楽曲も披露しています。そういった初めてライブで演奏する曲があることで、また9カ月前とは違った緊張感があるんでしょうか?

Die そうですね。今回から加わった楽曲は間が大事になってくるので、緊張感もすげえあったし。ライブの流れも実際変わったと思います。でも、どの曲ももっとクオリティを上げていかないといけないなという気がしてますね。

──ライブの本数やライブとライブの間隔も以前より若干落ち着いている印象を受けます。このペースでツアーを行うことに違和感は感じませんか?

10月10日にSHIBUYA-AXで行われた「TOUR2012 IN SITU」初日公演の模様。

薫 自分は割と気に入ってます。1つのライブを冷静に観て判断することができるし。以前のペースだとスケジュールが詰まっていて、ちょっとズルズルと行ってしまうこともあったりするので、そういう意味では1本1本しっかり確認しながら調整して次に挑めるのは良いことだと思います。

──Dieさんはどうですか?

Die ツアーっていう感じはあんまりしてなくて、単発でやってるようなイメージが強いかな。体力的にもあんまり疲れないし。以前だとツアーが続く中で体がずっしりと重くなってきたりして、その分無理に力まず自然に任せてた部分もあったんですけど、今回は……なんて言うんですかね。ちゃんと自分たちを見つめ直す時間があるので、それはそれで良いのかなと。

「輪郭」は入っていきやすいけど中の情報量が多い

──ここからはニューシングル「輪郭」について話を訊かせてください。表題曲を最初に聴いたとき、意外な方向で来たなというのが第一印象で。アルバム「DUM SPIRO SPERO」のあとに発表される最初の作品なので、どういう方向性になるのか気になっていたんですが、まさかここまでストレートでメロウな曲だとは思ってませんでした。この曲の制作ではどういったことを意識しましたか?

薫(G)

薫 「輪郭」に関してはあまり奇抜なことはせずに、なじみのあるテンポ感や雰囲気を重視して作り始めたかな。ライブを休止してからずっと曲作りをしてたけど、シングルっぽくない雰囲気の曲が多くて。アルバムが出てから最初のシングル、活動を止めてから一発目ということを意識したら、なかなか答えが出てこなかった。それで「自分たちが入っていきやすい空気感の曲を作ったほうが、今の自分らには合ってるのかな」と思ったんです。だから自分たちがイメージしやすい曲を作って、それぞれの個性を出していけばいいんじゃないかと。そこから始まりました。

──そうなんですね。「DUM SPIRO SPERO」は情報量が多くてちょっと取っ付きにくさのある1枚だったと思います。でも今回の「輪郭」はその流れとはちょっと違って、入り込みやすい楽曲だと思っていたので、今の話を聞いて納得しました。

薫 「DUM SPIRO SPERO」の流れとは別のものなのかどうかは、今後制作する楽曲次第ですね。単純に今できたものがこの「輪郭」だっただけです。「DUM SPIRO SPERO」に関しては、入り口がちょっと狭いけど中に入ってみるとすごく親しみやすいと俺は思うんですね。でも実は「輪郭」って入っていきやすいけど、中にいろんな要素が凝縮されているので、自分的にはこの曲のほうが情報量は多いと思ってます。

これくらい振り切っていかないと自分たちも納得できない

──シングルを制作するとき、表題曲でどういうものを提示しようかというのは事前に意識しているんですか? 例えば今回は攻撃的な曲でいこうとか、メロディアスなミディアムナンバーでいこうとか。

薫 ここ最近はアルバム制作の流れで曲を作っていたので、そこから「さて、どれをシングルにしようか」って決めてました。だからシングルのために曲を作るのは今回が久しぶりで。そういう意味では、今回はどういう曲にするかを意識しながら作りましたね。

10月10日にSHIBUYA-AXで行われた「TOUR2012 IN SITU」初日公演の模様。

──シングルのために制作したこともあってか、「輪郭」という曲にはDIR EN GREYのことを知らない音楽ファンにもアピールする要素が、今まで以上に含まれていると思いました。

薫 この曲のサビのコード進行はメジャーコードなんですけど、アルバムを制作しているときはマイナーコードを多用した世界から入っていくので、なかなかこういう方向に行かないんですよ。外に向けてっていう意味では、これくらい振り切っていかないと自分たちも納得できないと思うんですよね。このアレンジにたどり着くまでにすごく時間がかかりました。ギターだけでもすごいトラック数を使ってるんで、制作にも時間がかかりましたし。

──実際どれくらいかかったんですか?

薫 曲作りからレコーディングが終わるまで、実質1カ月半くらいかな。曲を1からこの形にするのに、多分1カ月以上かかっていて、録るのは数日だったと思います。

──それは今までのアルバムのレコーディングで、例えば1曲仕上げるのにかかる時間と比べると長いほうなんですか?

薫 まあ曲によりけりですけど、アルバムの場合は今回の「輪郭」ほどトラック数を必要としない曲もあります。10分くらいある曲とかはかかる時間もそれだけ長くなるので……そう考えると「輪郭」は結構時間がかかってる気がしますね。

ニューシングル「輪郭」/ 2012年12月19日発売 / FIREWALL DIVISION
「輪郭」初回限定盤 [CD+DVD] 1890円 / SFCD-0109/110
「輪郭」通常盤 [CD] 1260円 / SFCD-0111
「輪郭」完全受注生産限定盤 [CD+DVD] 4725円 / SFCD-0107/108
CD収録曲
  1. 輪郭
  2. 霧と繭
  3. 輪郭 Eternal Slumber Mix(Remixed by Akira Yamaoka)
初回限定盤 DVD収録内容
  • 輪郭(Scenes From Recording)
完全受注生産限定盤 DVD収録内容
  1. AMON
  2. LOTUS
  3. OBSCURE
  4. 流転の塔
  5. 暁
  6. 激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇
  7. THE BLOSSOMING BEELZEBUB
  8. mazohyst of decadence
  9. 蜜と唾
  10. 「欲巣にDREAMBOX」あるいは成熟の理念と冷たい雨
  11. DIFFERENT SENSE
  12. DECAYED CROW
  13. 輪郭(Scenes From Recording)
DIR EN GREY TOUR2012 IN SITU
  • 2012å¹´12月25日(火)東京都 東京国際フォーラム ホールA
    OPEN 18:15 / START 19:00
    ※チケット完売
TOUR2013 IN SITU -The Depiction of Reality-
  • 2013å¹´1月26日(土)愛知県 Zepp Nagoya
    OPEN 18:15 / START 19:00
    ※「a knot」会員&「DIR EN GREY ONLINE」有料会員限定ライブ
  • 2013å¹´1月27日(日)大阪府 堂島リバーフォーラム
    OPEN 18:15 / START 19:00
    ※「a knot」会員&「DIR EN GREY ONLINE」有料会員限定ライブ
  • 2013å¹´1月31日(木)東京都 新木場STUDIO COAST
    OPEN 18:15 / START 19:00
    ※「STUDIO COAST 10th ANNIVERSARY SPECIAL LIVE」の一環として開催。
  • 2013å¹´2月1日(金)東京都 新木場STUDIO COAST
    OPEN 18:15 / START 19:00
    ※「a knot」会員&「DIR EN GREY ONLINE」有料会員限定ライブ
  • 料金 5700円
    ※1月31日(木)新木場STUDIO COAST公演のみドリンク代が別途必要。
rockin'on presents COUNTDOWN JAPAN 12/13
  • 2012å¹´12月29日(土)千葉県 幕張メッセ国際展示場1~8ホール / イベントホール
    OPEN 12:00 / START 13:00 / END 21:30
DIR EN GREY (でぃるあんぐれい)

京(Vo)、薫(G)、Die(G)、Toshiya(B)、Shinya(Dr)からなる5人組バンド。1997年に現メンバーが揃い「人間の弱さ、あさはかさ、エゴが原因で引き起こす現象により、人々が受けるさまざまな心の痛みを世に広める」という意志の元に結成。ミクスチャー/ヘヴィロック的な要素をゴシック的な様式美の中で表現する世界観が評価され、日本のみならず海外でも大ブレイク。2002年にアジアツアーを成功させたのを機に、アメリカ、ヨーロッパ各国にも進出し、熱狂的なファンを多数獲得する。2008年にアルバム「UROBOROS」を世界16カ国で同時期にリリース。同作はアメリカのBillboard Top 200で114位、インディーズアルバムチャートBillboard "TOP INDEPENDENT ALBUMS"で9位、新人アーティストを対象としたチャートBillboard "Heatseekers Chart"で1位という快挙を達成する。その後、2008年末から2010年にかけて「UROBOROS」を携えたライブツアーを国内外で展開。2010年1月に日本武道館公演を2日間にわたり開催し、ロングツアーを締めくくった。2011年8月には約3年ぶりのアルバム「DUM SPIRO SPERO」をリリース。発売直後からヨーロッパや北米、中南米などで海外ツアーも行った。2012年1月には大阪城ホールで「UROBOROS -that's where the truth is-」と題した一夜限りのライブを敢行。しかし2月からは京の声帯不調を理由に表立った活動を休止していたが、10月よりライブ活動を再開。同年12月にはニューシングル「輪郭」を発売する。