[映画]ホロビッツのために/호로비츠를 위하여
17:20
ソウル劇場10館
E列13番 5,000W(前売2,000W割引)
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監督:クォン・ヒョンジン/권형진
出演:オム・ジョンファ/엄정화、パク・ヨンウ/박용우、シン・イジェ/신의재、チェ・ソンジャ/최선자、ユン・イェリ/윤예리、キム・ジョンウォン/김정원(ピアニスト)
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チス(オム・ジョンファ)はホロビッツのようなピアニストになることを夢見て音楽の勉強を続けてきた。しかし現実は厳しく、大学時代の同期生たちが音大の教授になったり留学したりする一方で、チスは生活のため子供相手のピアノ教室を開く。祖母と二人暮しで自閉傾向のあるキョンミン(シン・イジェ)は教室に勝手に出入りする困った子供だったが、ある日、チスはキョンミンに優れた音楽的才能があることに気づき、彼の師匠として名声を得ることを目論むようになる。チスはコンクールで優勝させるためキョンミンに猛特訓を強制し、キョンミンは戸惑いながらもチスへの憧れとピアノの楽しさに引かれてぐんぐんその才能を伸ばしていく。そして、コンクール当日、キョンミンはピアノを全く弾けなかった。失望したチスはキョンミンに対してもう教室に来るなと宣言する。二人がそれぞれに虚しい日々を送っていた時、キョンミンの祖母が倒れ、危篤状態に。キョンミンは祖母が亡くなれば一人の肉親もない孤児となってしまうのだが……。
自閉傾向のある子供が隠れた芸術的才能を持っているという設定は凡庸である。しかし、この映画ではその才能を見出し導いて行く「師匠」の設定がうまい。チスは世界的ピアニストという夢を果たせずにいる女性である。「自分には才能が足りなかった」「家の事情で留学できなかった」「音楽を存分に勉強できるような裕福な家でなかった」と言い訳しながら、華やかなキャリアを誇る同期生に引け目を感じ、良い人を見つけて嫁に行けという母親がわずらわしく、ピアノ教室の経営状態を心配して結婚式場のアルバイトを紹介してくれる兄が有難くも腹立しい。だから、キョンミンの才能に気づいたチスは、天才少年ピアニストの師匠となることに人生の一発逆転を賭ける。キョンミンの気持ちには全く無頓着なままに。
とは言え、チスに周囲の人への思いやりがないわけではない。自分のピアノのために、母は稼いだお金のほとんどを差し出し、兄は大学進学を諦めて就職した。そんな母や兄が嫌いだと言いながら、本当は母や兄の援助にも関わらず一流ピアニストになれない自分が苛立たしく、現状に安住もできない自分が嫌いで苦しいのだ。そうしたチスの姿はキャリアを目指して生きる現代女性の姿と重なる。この映画が自閉症天才少年物語にとどまらず、観客の共感を得ることのできるドラマとなっているのは、現代社会を生きる女性としてのチスの設定にある。オム・ジョンファがそんな女性をうまく演じている。
ゆえにチスが丁寧に描かれるほど見ている側は息苦しくなるのだが、所々に挟まれた爆笑場面が効を奏し、袋小路に陥りそうなドラマを救う。チスに思いを寄せるピザ屋の社長クァンホ(パク・ヨンウ)の存在がストーリーにラブコメタッチの楽しさを与えている。見るからにいいヤツという風貌を持つパク・ヨンウ、「甘く、殺伐とした恋人」に続いて好演。始終キョンミンを叱り飛ばし、チスにも難癖をつけてくるが、内心ではキョンミンの行く末を誰よりも案じている祖母(チェ・ソンジャ)。同期生の中で最も成功し、チスを気遣いながらもクールなチョンウン(ユン・イェリ)。それぞれ効果的なキャラクターである。
全編を通じて演奏される様々なピアノ曲が情感に溢れストーリーを盛り上げる。キョンミン役のシン・イジェは、制作陣が1年がかりで全国のピアノ学院を回って探し出したという「本当の天才少年」。オム・ジョンファもピアノの腕前は相当なものだそうで、演奏場面は実際に本人が弾いているという。
「ミッション・インポッシブル3」「ダ・ヴィンチ・コード」「ポセイドン」などハリウッド映画に押されて興行不振が続く最近の韓国映画の中、健闘中。
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コメント
あ~なるほど、ネットで見られるのですね。他にどんな韓国映画をご覧になられてるのですか? 中国でどんな韓国映画が見られて、どんな作品が人気があるのか、すごく興味があります。
「ホロビッツ」は私も日本でたくさんの人が見てくれたらいいなぁと思ってます。
ただ、韓国映画は買い付けの価格が高騰してしまって、その割に興行成績が奮わないので(日本国内で競って青田買いみたいなことをしてたせいなんですが)、今は各社買い付けに慎重になっているようですね。
それはさておき「oyamanokobun」というハンドル、「大将」じゃなくて「子分」なんですね。面白い~。
投稿: なな | 2006.12.03 22:25
お返事ありがとうございます。やはり実話ではなかったんですね。中国にいると中国のことも日本のこともうとくなってしまい、中国の映画館で公開されたかどうかはわかりません。
これは友達からもらったDVDでみました。彼はネットからダウンロードしたようです。
日本でまだ公開されていないとは知りませんでした。これは絶対いけると思うのですがね。
投稿: oyamanokobun | 2006.12.01 10:47
OYAMANOKOBUNさん、いらっしゃいませ。
昨年から今年にかけて、韓国では「マラソン」「君は僕の運命(ユア・マイ・サンシャイン)」「裸足のキボン」と実話を元にした映画が立て続けに製作されましたが、「ホロビッツのために」は創作物です。
障害児・障害者を取り上げているという点では、「マラソン」「裸足のキボン」と共通してますね。
この映画はとても丁寧に作られてるんだと思います。泣かせよう、感動させよう、という作りでなく、チスと周囲の人々をきっちり丁寧に描いているので、ついつい引き込まれて感情移入してしまうみたいです。
オム・ジョンファはこの作品で、「大韓民国映画大賞」の主演女優賞にノミネートされてました。残念ながら受賞は逃しましたけれど。
中国語字幕でご覧になったということは、中国で公開されたのでしょうか。日本ではまだ予定がないようで残念です。
投稿: なな | 2006.11.30 03:00
日本語はまだ見ていないのですが、私も妻も中国語の字幕で見て感動しました。中国の友人たちに見せたところ大泣きでした。「これは実話でしょ!」と聞かれましたが、「さぁ、わかりません」としか答えられませんでした。実話じゃないですよね?
投稿: oyamanokobun | 2006.11.29 12:09
これ、なかなか良い映画ですよね~。ストーリーもよく出来てるし、登場人物のキャラクターもそれぞれに魅力的だと思います。
もうアシアナの機内で見られるんですね。そう言えば、もう大分前にDVDが出てました。早く買わなくちゃ。
飛行機は日韓往復ばかりなので、アシアナのエンターテイメントも映画は見たことありません。ちょこっとゲームをしてみたくらいです。いつも機内誌を見て、こんなにいろんなソフトがあるのに……と指くわえてます。
投稿: なな | 2006.10.28 03:58
この映画
今日のLAXからの帰りのアシアナの機内で見ました。
この手の映画としては
「ラストコンサート」以来の
泣ける映画でした。
ところで
アシアーナのエンターテインメントは
全席でオンデマンドで見れるようになり
すごいと思います。
今回福岡からロスアンジェルスまでの往復を44000円
でゲット(HIS)
インチョン空港での無線LAN環境は抜群でした
けんちゃん
投稿: kenchan | 2006.10.27 03:54