« HTML エディタとしての Carbon Emacs | トップページ | CSS Nite LP, Disk 1 レポート(その2) »

2006-10-11

CSS Nite LP, Disk 1 レポート(その1)

Banner_lp1200200 CSS Nite LP Disk 1 に行ってきました。

Web 関係でこのテのイベントに出席するのは初めてですが、さすがに花形業界だけあって、参加者も多くて、皆さん関心が高いですね。(ただ、個人的な印象としては、参加者の皆さん、質疑応答の時とか、少々大人しすぎるような気も..。(^ ^;))少し遅れての入場になってしまったんですが、トップバッターの境さんがトラブルで遅れて来られるとのことで、入場したときには Mozilla Japan の瀧田さんがプレゼンをされてました。以下、発表順に僕の個人的な感想を残しておきます。

  1. CSS Nite LP, Disk 1 レポート(その2)
  2. CSS Nite LP, Disk 1 レポート(その3)

瀧田佐登子: Webブラウザの歴史とMozillaの標準化への取り組み

Firefox アイコン

瀧田さんのプレゼンは、途中からの(というより、ほとんど最後の15分だけの)聴講になってしまったのが、つくづく悔やまれます。(想像していたより、ずっと気さくな方だったんですね。)

聴講できた短い時間の中で特に感銘を受けたのは、その公正なスタンス。シェアを着実に伸ばしつつある Firefox ですが、IE や Opera, Safari といったほかのブラウザとの差別化を図って Mozilla ファミリーのアドバンテージをアピールするのではなく、むしろ、IE でも Firefox でも Opera でも Safari でも(そして、それ以外のあらゆる Web標準準拠ブラウザでも)同じ見栄え、同じ振る舞いをするようになることが大事だ、と主張されていたことです。

こういう公益性重視のスタンスに立っている人や団体・法人が話すと、普段 耳にしている話もどこか新鮮に聞こえてきます。

たとえば、現在、Netscape 4+ のような、セキュリティホールを抱えたまま、サポートを終了している、旧いバージョンのブラウザへの対応を明示的に謳っている(さらには推奨すらしている)サイトが時々ありますが、これは明らかにユーザーに対してリスクを負わせる行為で、特に個人情報や信用情報を扱うサービスなどは、むしろ、積極的にユーザーに新しいバージョンへの対応を促すようにしていって欲しいというお話がありました。

セキュリティの観点から、常に最新バージョンの利用を奨めているのは、Micorosoft など、ほかのブラウザベンダーも一緒なんですけど、なぜかこの時は、手を叩いて「なるほど」と頷かせるだけの説得力がありました。

今後はさりげなくレガシーブラウザにも対応させておきながら、一方で最新バージョンのブラウザでの閲覧を推奨するというスタンスで臨むことが重要になってきそうですね。

講演者のスタンスや話の組み立てひとつで、平凡な話でも全く新しい話のように聞こえるもんなんだな思い知らされた瞬間でした。

上ノ郷谷太一+長谷川恭久:
microformats がもたらすドキドキする未来

microformats Logo

お次は、この日イチバン期待していた演目です。この演目を聞きに行くために参加したといっても良いくらい。(笑)

プレゼンは S.ジョブス(Apple)テイストに高橋メソッドを織り交ぜたような形で進められました。このあたりは、ギャラリーを楽しませようという、プレゼンにエンターテイナー的な要素を重視する上ノ郷谷太一さん長谷川恭久さんらしさがよく出てました。

お二人の楽しくてわかりやすいプレゼンのおかげで microformats がどんなものなのかも、大分、見えてきました。ただ内容の方はというと、最初の期待が大きかっただけにイマイチ残念でした。(スミマセン、少し正直に思ったことを書いておきます;;)

まず、対象とする領域がセマンティックウェブだということを、もっと前面に出すべきだったかと。セマンティックウェブは、見栄え(CSS)や振る舞い(JavaScript)とは全く別の、少なくとも表面上は目に見えない、文書内の「意味(semantics)」を扱う領域なので、(一部の)エンジニアやハッカーにとっては実装意欲をかき立てられやすい分野のようですが、普通のデザイナーからすれば、手間ばかり増えるのに(少なくとも直接的には)見た目の面では何ら裨益するところがないと敬遠されてしまいがちです。そのことをはっきり宣言した上で、「でも実は..」とその意義についてアツく語って欲しかったかな、と。

それと話が、"まず microformats ありき" になってしまっていたことも見通しを悪くしてしまっていたかもしれません。要するに手段が若干目的化してるように見えてしまったのがマズかったかと。本当はまず解決したい問題なり、実現したい目的なりがあって、次にそれを実現する手段として microformats があるはずで(Motivation and purposes comes first, and resources second. )、それを逆に microformats を使うと何ができるようになる("かもしれない")のかという筋で話を進めてしまったために、microformats の魅力なり説得力なりが減殺されてしまったように思えました。やはり、なぜセマンティックウェブなのかなぜ microformats なのかという点は、キチっと抑えて欲しかったです。僕もこの分野のことは詳しくないので、間違っていたらお気づきの方に指摘していただきたいのですが、上ノ郷谷さんのプレゼンを伺った印象から導き出した僕の理解としては(っていうか、自分で規格書読めよ、オレ!って話ですね..はは (^_^;;ゞ)、

  1. 現状の (X)HTML では、文書構造(document structure)やごく簡単な意味(semantics)しかマークアップできなかった
  2. そのため、(X)HTML 文書から、転用可能な情報をその情報が持つ意味や属性と関連づけて有機的に抜き出して利用することが困難だった(高度な自然言語解析やテキスト処理が必要だった)
  3. かといって、RDF(DublinCore)では、新しい規格をイチから習得し直す必要があって、デザイナーの間で普及するには敷居が高い
  4. そこで比較的 (X)HTML フレンドリーで、馴染みのある class や id, rel, title といった属性に、定められた共通の値を入れるだけでセマンティックウェブっぽいものを実現できる microformats が注目された(つまり、いわば「お手軽セマンティックウェブ」?

といったところでしょうか。でも、ここまではセマンティックウェブや microformats の魅力的な面のお話。もちろん、これに対して「えっ、それって大丈夫なの?!」と思わせるような面もあります。

  1. RSS のように同期を取って情報をリアルタイムに更新する仕組みがない
  2. RDF のように別々の場所にある情報を関連づける手段がない
  3. せっかく構造と見栄えと振る舞いの分離ですっきりした HTML ソースが、セマンティックマークアップで重く、見にくくなってしまいそう

最初の問題は規格の問題というより、実装の問題だと思うので、何とかなると思いますが(聴講した限りでの想像なので確信は持てませんけど)、2番目は結構 痛いかもしれません。ちょっと自分でも調査してみますが、microformats を本格的に追っていくかどうかは、それ次第ですかね。最後の3番目の問題は XML の世界でも言えることで、いくら "Designed for humans first and machines second" とはいっても、セマンティックマークアップをすればするほどソースがみづらくなるのは当然で、さきほども言ったように、Webページとして見た時に外見上の変化がないという短所を、ここでは長所してとらえて割り切ってしまうしかないでしょうね。

セマンティックマークアップは、深く細かい意味を付与すればするほど重たくなっていくので、もし Web がそういう方向に進んでいくのであれば、遅かれ早かれソースコードの直接編集から離れた、制作者の負担を軽減できるようなマークアップツールが必要になってくると思います。

なにはともあれ、今度は自分でちゃんと調査をしないと。良い機会を与えてくださったお二方に感謝です!

残りの3本のプレゼンレポートは夜に..。(^ ^;)

|

« HTML エディタとしての Carbon Emacs | トップページ | CSS Nite LP, Disk 1 レポート(その2) »

[Web]XHTML」カテゴリの記事

コメント

上ノ郷谷さん、はじめまして。

こちらこそ、いいキッカケを与えていただいて本当に感謝です。microformats については、ずっと気になっていながら、イマイチ、腰が重かったもので。(^v^;ゞ

でも、デザイナーが Web のセマンティクスに関心を持つのは、すごく意義があることだと思いますし、またそれが Web2.0 の世界の発展・強化にも繋がっていくので、公益性も高いですよね。そのためにも、できるだけ多くのデザイナーに関心を持っていただくために、敷居を低くみせるというコンセプトは、確かに重要だと僕も感じています。

> 利用者が増えてこそソリューションの幅も広がるんじゃないかなあ、と、そんな希望もあったりするのですが

確かにハッカーの趣味でもない限り、ソリューションにどこまで投資できるかって、結局はユーザーニーズに左右されてしまいますもんね。結局、両面からの働きかけが必要なんでしょうね。

おかげさまで、microformats に対する関心も高まってきたので(特に普及に対して現実路線なところや、活動が活発なところとか)、もう少し、色々と身についてきたら、翻訳なり実践面なりで僕も協力させていただきたいと思っています。

こちらこそ、刺激的な発表、ありがとうございました。少なくとも、僕が関心を持つキッカケとしては充分すぎるプレゼンでした!

# すみません。最近、トラックバックスパムが1日1000件近く来ていて、コメントを要承認にしてました。どこかに書いておくべきでしたね。ココログフリーの設定って、ちょっと融通がきかなすぎるので、MT に乗り換えようかと真剣に検討しています。

投稿: ゆう@管理人 | 2006-10-13 11:05

すてきなご意見ありがとうございました!
私も熟読させていただきました。手段が目的化してしまっていたのも反省点ですね。
確かにデザイナーにとってはまたひとつ手間を増やしてしまうだけのように感じられても仕方ないですし、まずはやってみてくださればよいなあ。という願いをどう伝えるのか。ソリューションが増えて利用者が増えるという流れはもちろんなのですが、利用者が増えてこそソリューションの幅も広がるんじゃないかなあ、と、そんな希望もあったりするのですが、そうしたお話をどうお伝えすればよいか、資料を作成する際にすごく悩んだ点でもありました。
そういった意味では、僕の最終的な判断は少し誤っていたかもしれませんね。レポートを拝見してすごく参考になりました。
本当にすばらしいレポートありがとうございます!

投稿: kaminogoya | 2006-10-13 10:40

ヤスヒサさん、はじめまして。御自らのコメント、恐縮です。(^v^*;ゞ

ヤスヒサさんの hConnect のお話、microformats が抱えている課題とポテンシャルが両方透けて見えて、とっても有意義でした。ヤスヒサさんも COULD で言及されてますけど、たしかに hConnect のようなキラーアプリがひとつふたつ出てくれば、かなり追い風にはなるでしょうね。microformats に限らず、セマンティックウェブに通じて言えることでしょうが、あとはいかに手間をかけずにマークアップする手段をひねりだすか、なのかなと。便利になることは間違いないはずですしね。

昨日、本当は懇親会に出席して色々お伺いしたかったんですが、都合で出席できず、残念でした。いずれ機会があれば、その時は色々面白い話などお聞かせ下さい。

投稿: ゆう@管理人 | 2006-10-11 19:51

ものすごい濃いレビューを書いていただいてありがとうございました。興味深く読ませていただきました。
今すぐ出来る現実的なセマンティックWebを Microformats という形で実現しようということは話されていたと思いますが、カバーした部分が広すぎたのか(僕なんて未来像ばかりでしたし)、焦点がうまく合わないものになってしまったのかもしれませんね。

なぜ Microformats なのかという点にしても hConnect のような分かりやすい形で具体的なやり方を提示しないと少なくともデザイナーはわざわざ面倒なマークアップをしようとは思わないかなと思いました。それゆえ難しい説明は抜きにしたのですが、テクニカルな側面も含めた説明を求めていたとしたら、僕のスライドはまったく的外れですね。その部分はもう少し深く説明するべきだと思いました。

セマンティックWebまで話を広げたら僕もまだまだ勉強不足です。こうしたブログを通じてでも情報共有出来たら良いですね。

投稿: ヤスヒサ | 2006-10-11 17:34

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: CSS Nite LP, Disk 1 レポート(その1):

« HTML エディタとしての Carbon Emacs | トップページ | CSS Nite LP, Disk 1 レポート(その2) »