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□ 「ごはん作りが何より大変」と答える人が多い日本

仕事柄いろんな主婦のお悩みというのに対峙することが多いのですが、いろいろアンケートやインタビューしてると、一番多いのが「ごはんづくりが大変」という答えです。献立を考えるのも大変だけど、作り続けるのも大変。特に、子どもが生まれると「ちゃんと作らなくては」ということで、料理が不得意な人はなおさら「ごはん作りが苦痛」となってしまう模様。

ちょうど先日、お友達がみつけてきたアメリカの「ランチパック」という商品。ほかの方のブログから拝借しました。こちらです。

http://academyblog.shopro.co.jp/column/2007/01/post_4.html

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学校のお弁当にこういうものを持ってくる子が多い@アメリカ。スーパーで売られていて、入ってるのはクラッカーとチーズ、ハムみたいなもん。いずれも保存料と塩分が高濃度。これにコーラーとかジュースとか。
私が小学校の時、アメリカンスクールの子どもたちがうちの学校に一定期間来ていたのですが、彼らのランチもこんな感じ。食パンにハム一枚はさんだものが入っていれば御の字。ポテチとコーラとりんご丸ごととか。そんなのがいっぱいありました。

確かに、こういうのを目の当たりにすると、日本は素晴らしい。胸を張ろう! って思えるんですけど、でも、そのごはんづくりが「苦痛」「たいへん」って思ってる主婦はいっぱいいる、ってことなわけです。

そういうたいへんなことを請け負っているからこそ、素晴らしい日本の食文化があるのだ、と考えることもできるんだけど、でもそうして請け負っているものの正体というのは、果たして「すばらしい日本の食文化」なのかなあ。
場合によっては、余計なものを背負い込んでいるところもあるのでは? というのが、ずっと私が考え続けていること。

たとえば美食の国フランスでは、レストランの料理ばかりが目に入ってきますが、一般家庭の食事ってどんな感じなんでしょ? いろいろ検索していて、ここの表記が一番近いような気がしたので引用します。

http://paris.navi.com/special/5036167

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外食率が日本に比べてそれほど高くないフランスでは、基本的に家庭で食事を済ませることが多いです。平日は特に忙しい人が多いから、簡単なものを準備する場合がほとんど。例えば、仕事帰りにチーズとハムを買う。それからパン屋に寄ってバゲット(フランスパン)を買う。家にはワインがストックされている。野菜が食べたい人はこれにサラダを足し、子供達には温かいスープを足す。乳製品や加工肉、パン、ワインが美味しいフランスですから、これだけで、十分豪華な食卓になると思いませんか?そして週末は、のんびりマルシェへ出かけ、鶏肉専門店でローストチキンを買う。それにサラダとバゲットを添えて、ストックしているワインを足せば、豪華なブランチの完成です。料理が好きな人は、週末に家族や友人を招いて、フランスの一般的な家庭料理を振舞うこともあります。庶民派フレンチはこんな簡単な食事だったんですね。
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一般的に、主婦が「作るのが大変」と困っているのは、たいてい夕食です。献立を毎日変えなくちゃいかん、というのも大きな要因だし、栄養のバランスを考えるとか、節約もしなくちゃとか、皿数並べなくちゃとか、いろいろ大変。

先日耳にしたのは
「夫が皿数が少ないと不機嫌になるので、最低5皿は並べるので時間がかかる」
「市販の惣菜を買ってくるとすぐにばれて、箸をつけてくれないので、全部手作りしないとならないので大変」
という、なんぢゃそらあ!!! というようなお話。でも、こういう人は意外と多いらしい。

「あまり好きじゃないものが並ぶと子どもが食べてくれないので、毎日工夫して子どもが喜ぶものを考えている」とか
「ピーマンが好きじゃないので、なんとか食べてもらえるようにムースにしたり、形が見えないように小さく刻んで混ぜたりしています」とか。

手をつけないなら、「残念でした」で、勝手にお腹を空かせてもらえばいいじゃないか。もしくは自分で作って並べてもらえればいいじゃないか。
子どもが食べないのも、お腹空かせておけ。ピーマン? 一生食べなくて何か支障でもある?

と、私は思うんだけど、そうはいかないものが、何か根底に流れているように思うわけです。

ほいでもって、フランスの夕食に戻るんだけど、私があっちに滞在していた時にいた家も、家庭料理は非常に質素でした。で、その時のことを思いだして、私もたまにそんな夕食になることがあります。これは昨日の夕食。

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私が好きなパン屋さんのAntenDoのバトンというフランスパンは、日本のフランスパンのように中がふわふわしていない。あちらで食べるのに非常に近く、がっしりと固いハードタイプの皮に、もちもちっとした風味の深い中身で、しっかり噛んで食べるバゲットです。
これに、西荻窪の「もぐもぐ」というソーセージやさんで買ってきた手作りベーコン、ほうれんそうと玉ねぎをはさんだだけのサンドイッチ。
このソーセージやさんは、ご主人がドイツで修行を積んできて、ここで手作りでハムやソーセージを作っているお店です。スーパーのベーコンとはもう、存在がまるで違うおいしさ。

たったこれだけ? サンドイッチ1個?
と、普通なら夕食の食卓に並んだら大ブーイングのはず@日本。

でもね、ちゃんとおいしいパンと、しっかり作られたベーコンを、もぐもぐとしっかり噛んで噛んで時間をかけておしゃべりしながら食べれば、お腹も心もすっかり満足して、夜遅くなってもお腹が空かないのです。
この日はアルコールを抜いたけど、これにワインとチーズがあって、食後に小さなタルトとか、果物があれば立派な夕ごはんです。すごーくフランス的。

もう1日、こんな日も。

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具だくさんのスープ、チーズ、バゲット、コーヒー、果物のジュース。
ハードタイプのフランスパンをおいしく食べる切り方は、上記の形です。輪切りにしない。この形に切れば、トースターにも入れやすい。

はて。

ここまで来てはたと気づくわけです。

これは、日本食でも十分にあてはまる、と。

白米ではなく、しっかり噛んで滋味のある玄米を主体に、具沢山の味噌汁があり、あとは、漬物とか納豆があれば、たいていの栄養素は取れてしまう。
先に紹介したフランスの家庭ごはんのレポートを元にするなら、ここに「帰りがけに商店街で鯖の塩焼きでも買ってくる」とか、「刺身の盛り合わせ」とか、それこそコロッケやからあげ買ってくれば、それで十分ちゃんとごはんなわけだ。

キホンのセットがあって、そこに「帰り道でみっけたもん」が加わればなんとかなるというのが、夕ごはんでよいのではないか、と思ったり。
もちろん、それが旬のきのこだったり、青々としたカブだったりしてもいいわけで、それをさほど複雑ではない方法で調理して並べれば、十分だったのではないか@日本の食卓 なんて考えたりするわけです。

いつから、そこにイタリア料理や中華料理やエスニック料理が加わり、日々テレビや誌面をにぎわす献立がどんどん加わり、鍋も豆乳やトマトやカレーなんかでバリエーションつけなくてはならなくなり、複雑化してしまったのかのう@家庭の食卓。
そのくせ、従来の「会席料理」っぽい刷り込みもあるから、酢の物や煮物やサラダやスープも並ばなくてはならず。

そりゃあ、大変だよ。
日本のかあちゃん、すっごく頑張ってるよ。
お弁当もあるし。
朝ごはんだっていろいろ工夫しろ、ってすごく言われるし。


私ね、このあたりのいろいろな家事の複雑化は、高度成長期に専業主婦が新しい職業として脚光を浴びた時代に、集大成されたのではないかと思っているんです。
いままでにない、スマートできれいなお仕事(永久就職)だった専業主婦の価値を確立するためにも、さまざまな生活情報が生まれた時代でした。
この時、「家族の健康と栄養を管理する」大切な項目として、日本食と進駐軍の持ち込んだアメリカ式栄養学(アメリカの脱脂粉乳やマメやトウモロコシや肉をたくさん消費してもらうための>笑)などがミックスされて、膨大な家庭食のノウハウが生まれたんじゃないか。
同時に、「妻の心得」「母の役目」としてのメンタル教育も盛んに成された。今までの日本の知恵や心根を受け継ぐ部分もあったけれど、新しく生成されたものも多かったと思うわけです。
あとは食品の流通のかたちの変化も大きい。
たとえば前出のフランスパンのサンドイッチを、コンビニの食パンと、スーパー特売のボンレスハムから作ろうとしたら、そうだなあ、やっぱりいろいろ工夫をしないと、と思うわけで。
おいしい素材が安く手に入る場所なら、シンプルでも十分おいしく食べ続けられるものが、「大型スーパー」という流通の中が主体になってしまったことで、食べ方のかたちも大きく変わってしまったのかもしれない、とも思うわけです。で、この「大型スーパー」というのもまた、アメリカから入ってきたものでもあるわけです。(当のアメリカの食文化の現状は言うまでもありません)

何が言いたいかというと、家庭のごはん作りが大変だから、もうちょっと簡単にしてもいいんじゃないのか、という話をすると、たいてい「日本の素晴らしい文化なんだから」といわれることが多いんですが、それは果たして「受け継いできた素晴らしい文化」なのか? とちょい傍観してみることも必要なんじゃないか、ってこと。いろいろなものを取り込みながら、変形してきたのが今の家庭のごはんなわけで。

本来の形は、めしと味噌汁と漬けもんみたいなものに、なんかが加わりゃええよ、ってあたりで十分完結していたのが、日本の家ごはんの文化。
こういうあたりに立ち戻っていけば、いろんな意味でぐんと楽になっていくと思うわけです。もちろん、和食だけでなくてよくって、上記のようにフランスパンのサンドイッチだけだって、立派な食事だし、世界ではこんな家ごはんも多いわけで。

毎日献立変えて、いろんなレシピ参考にして、夫も子どもも喜ばなくちゃいけなくて、お皿がいくつか並ばなくちゃいけなくて、其の上栄養もあって節約もしてて、惣菜とかインスタントや冷食になるべく頼らない。。。。
なんてことを毎日続けるのはほんま、大変に決まっとるよのう。。。。。。と。

ほいでも、そういうおうちごはんで育ってきた人たちにとっては、逆に、ごはんと味噌汁に1品、という食卓を作るほうが、ずっとずっとハードルが高いのではないか、ということも感じる昨今。
昔ながらの日本食は手間がかかるから、と思っている向きもあるけど、逆に今時の家庭ご飯のほうが、なんか手間がかかってないかい? もっとシンプルで、簡単で同じ物の繰り返しでもええんじゃないの? というのが、このところの私の思い。

とはいえ、そう思ってる当の本人がいろんな料理作ってるじゃないかよ! という突っ込みどころ満載なのでありますが、それは、「大変じゃない」からなんす。
家族少ないし。その家族も食べないこと多いし。
そんな私でも、フルタイムで子ども小さかったときはほんとに辛かったもん。
余裕のある日に、自分の趣味で作るから大変と思わないわけで、ある意味、こんな輩があれこれメニューを並べ続けることで、「あかん、うちは」と思ってしまう人もおるんかなあ、と思うと責任感じちゃったり。
楽しく大変だあ、と思えることは続ければいいけれど、本当に辛いなあと思う時には、シンプルな繰り返しで乗り切って十分。あとは家族で作るのをシェアしたり、外食の日を作ったり、惣菜の日を作ったり。
うちは「水曜日はカレーの日」と決めただけで、ぐぐーんと楽になった時期もあります。要は、自分に複雑なものを課し過ぎないでいたいなあ、と。
いずれ、いろんなことができる時代がやってくるしね。。。。。
今日もつらつらと長文になりました。いつも長くなっちゃうなあ。

結論

AntenDO のバトン はうまいよー!

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コメント

とおりすがってコメント書きます。
本当にそのとおりですよね~。おいしい味噌汁に炊きたてのご飯。あとは納豆とかごま塩とかそんなんで十分においしい夕食の出来上がりですね。
今日は夕食用に里芋の煮っ転がしだけ作ってきたので、会社から帰ったらあと何足そうなんて思ってましたが、今日は里芋煮、ごはん、味噌汁、納豆で決まりです。
粗食のほうが意外と子供受けが良かったりするんですよね。

ツイッターからきました。 

正しくその通りです! イギリス在住なのでよく分かります(笑)。
日本の主婦は3食ご飯作って凄いわーと毎日思っていた所です。
朝ご飯を作るというのがびっくりです(笑)。 朝の忙しい時には簡単に摂れる物でいいですよね(料理しなくて済む物で)。

ちょっと前にツイッターで「コンビニで花見に行くであろう家族が弁当を買っていて、母親は弁当くらい作れよ!と思った」というコメントを見てドン引きしたのですが、それに賛同する男の人の多さにもっとドン引きしました・・・。 外出の時くらいお母さん・妻に楽してもらおうっていう感謝・いたわりの気持ちはないのか、と恐ろしくなりましたね。

色々書きたい事もありますが、ほぼ言いたい事はももせさんと同じなので控えさせて頂きます。

観点・洞察力も素晴らしいです! 読んでいてすっきりしました(笑)。

>櫻井さん

お返事遅くなってすみません! 
里芋の煮っころがし! すばらしいいなあ。皮を剥くのが苦手なんですよねえ@私。
昔は畑から取れたものの残りとか、漁港の残りとか、そういうものがちらりと並んで
それで十分だったのではないかなあ、とか。
ほんと、粗食の繰り返しのほうが、子どもの味覚も安定する気がします。

>ようこさん

コメントありがとうございます!
そうなんですよう。世界を旅して、先進国で朝からガス台でお料理をしている国って、ほとんどないと思うんですよねえ。
アジアは外に出ちゃうし。
ただアメリカの一部はベーコンや玉子焼いたりもして、日本はそのあたりの風景を取り入れたのかなあ、と。
でもそれも、まわりにお店なくて身近にあったものを工夫して食べてたことの名残じゃないのかなあ。

がんばりすぎない程度が、からだにも心にも健康的だなあと思います!

あと、その「弁当ぐらい作れ」発言には引きますねえ。でも、そういうこと言いたがる人多いんですよ。
ごはんと同時に「母のお弁当」文化というのも、非常に興味あるところです。

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