90年に東京で生まれた若きコンポーザー、網守将平は2013年に日本音楽コンクールの作曲部門で1位に輝き、NHK Eテレ「スコラ 音楽の学校」に出演したりとクラシック/現代音楽のシーンで実績を積む一方で、ラップトップを用いたライヴを行うなど電子音楽/サウンド・アートの世界でも注目を集めてきた。そんな彼が昨年発表した初作『SONASILE』は、自身が弾くピアノとエクスペリメンタルな電子音響を張り巡らせた精巧なサウンド・デザインと、歌モノのポップ・ミュージックとしての親しみやすさを両立させた、実に挑戦的な一枚だ。ヴォーカリストとして参加した柴田聡子やBabiに、ceroや小田朋美のサポートも務める音楽家の古川麦というゲスト陣も見逃せないが、この先鋭的すぎるエレクトロニック・ポップを耳にすれば、坂本龍一や渋谷慶一郎といったアカデミックな系譜に連なる新世代の台頭を実感せずにはいられないだろう。\r\n
そんな網守が『SONASILE』を制作するにあたって、自分に課したルールは〈とにかくポップ・ミュージックを作ること〉だったという。独自の音楽遍歴とアルバム・リリースに至るまでの過程、本作の制作背景について尋ねてみた。\r\n \r\n 音楽からは絶対に逃れられない運命\r\n ――いつ頃から、どういった経緯でクラシック音楽を学ぶようになったのでしょうか?\r\n 「僕が4歳頃のことだと思いますが、周りの家庭の子供たちが次々に習い事を始めたことを意識した母から〈ピアノでも習う?〉と言われて、何も考えずテキトーに頷いたのがきっかけだったと思います。その後はダラダラとピアノを続けつつ、10歳くらいで作曲や、それに伴う伝統的なクラシック音楽の基礎的書法、ソルフェージュも習うようになりました。それで、師事していた先生から音楽大学の作曲科への進学を勧められるようになり、僕自身もそういった進路を意識するようになるのですが、その一方で、徐々に惰性になっている感も否めなかったんですよね。中学生くらいになると、僕と同じようになんとなくピアノを習っていた周りの男の子たちが次々と辞めていって、僕も習い事として続ける意味を半ば見失い、レッスンもよく休むようになっていたんですが、どういうわけか辞めたりはしなかった」\r\n\r\n
\n網守将平 \t\t\t\t\t\tSONASILE \t\t\t\t\t\tPROGRESSIVE FOrM(2016)\n\r\n
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