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『まだ科学で解けない13の謎』の紹介

まだ科学で解けない13の謎

まだ科学で解けない13の謎

宇宙論から自由意志、セックス、地球外生命、医療まで、解決したら科学革命間違いナシの最大級の謎の現在を解説。大発見前夜、科学者はいかに苦闘しているか?


量子物理学の博士号を持つ科学ジャーナリストによる読物。その13の謎と副題を書き出してみます。

  1. 暗黒物質・暗黒エネルギー ― 宇宙論の大問題。でもそんなものは存在しない?
  2. パイオニア変則事象 ― 物理法則に背く軌道を飛ぶ二機の宇宙探査機
  3. 物理定数の不定 ― 電磁力や強い力、弱い力の強さは昔は違っていた?
  4. 常温核融合 ― 魔女狩りのように糾弾されたが、それでよかったのか?
  5. 生命とは何か? ― 誰も答えられない問い。合成生物はその答えになる?
  6. 火星の生命探査実験 ― 生命の反応を捉えたバイキングの結果はなぜ否定された?
  7. "ワオ!"信号 ― ETからのメッセージとしか思えない信号が一度だけ……
  8. 巨大ウイルス ― わたしたちはウイルスの子孫? 物議をかもす異形のウイルス
  9. 死 ― 生物が死ななければならない理由が科学では説明できない
  10. セックス ― 有性生殖をする理由が科学ではわからない
  11. 自由意志 ― 「そんなものは存在しない」という証拠が積み重なっている
  12. プラシーボ効果 ― ニセ薬でも効くなら、本物の薬はどう評価すべきか?
  13. ホメオパシー(同種療法) ― 明らかに不合理なのになぜ世界じゅうで普及しているのか?


この構成にシビれたw 最初に宇宙の謎をどーんと持ってきて最後ホメオパシーで終わるかよ、っていう。

ぼくはいわゆる定番・名作より新しい本が好きです。本屋行って眺めるのも大抵新刊棚です。やっぱり、いま先端はいったいどうなってるのか?ってことが知りたいですからね。この本は原著の発行も2009年で、この辺の"謎"については比較的新しい情報が入っています。初めて聞く話もとても多い。

この宇宙では見えている部分はたったの4%で、ダークマターやダークエネルギーが残り96%を占めている、と"言われています"。で、そのダークなやつらの正体はいったい何か、というのは今のところわかっていない。ところが一方には「相対性理論を少しだけ修正すれば、そんなものを仮定しなくても全部説明できるよ」という人たちがいるのです。ニュートン力学と相対性理論の関係のように、この修正相対性理論も、その辺の宇宙をちょっと飛ぶくらいなら必要なく、銀河対銀河みたいなスケールを考える場合のみ適用すべきものということのようです。でも物理学者は「宇宙のほとんどが行方不明」と「アインシュタインにケチを付ける」のどっちを取るかというと、100人中99人が前者を取る、今のところはそういう状況とのことです。

パイオニア変則事象というのはちらっと聞いたことがあったかな。二機の探査機の飛行経路は、計算よりもほんのわずかだけ太陽方向にずれているそうです(年間飛行距離3.5億キロ、ずれが12800キロ)。しかも、二機とも同じようにずれているので、燃料漏れや計器類の誤動作ということも考えにくい。そして、最初に異常が発見されて30年、専門の調査チームができて15年、もはやあらゆる想定を(あのNASAの厳密さで)調べつくしたと思っているのに、いまだに原因がわからないと。

常温核融合の話も面白かったです。当初追試を行ったMITでは確かに過剰熱の発生を確認していたのに、確証が持てないということで報告書は否定的内容に差し替えられたこと。現在ではなんらかの核反応が実際に起きていることはまず確実(試料に核反応の痕跡が残った)とされており、研究に助成金まで出ていること等々。

自由意志の否定についての話は、残念ながら知っている範囲を出ないものでした。プラシーボ効果の話は面白かったかな。単純に暗示が効くという以上にずっと複雑なメカニズムが働いているようです。そして最後の、ホメオパシー(笑)。はてなだけ見ていると、ホメオパシーは既に否定されたものと思えてしまいますが、この本によるとそうではない。完全に否定的ではない結果を報告した論文もいくつもあることがわかります。それも、そんなものを信じていない科学者側の検証によって報告された、ミイラ取りがミイラになってしまっているようなものたちです。


こういった"謎に対する解"への態度は難しいものです。"ニセ"科学者はこう言います。コペルニクスもアインシュタインも最初は受け入れられなかったではないかと。対して主流派はこう言います。確かにそうだが君のそれは違うと。もちろんパラダイムシフトがそう度々起きてはたまりません。しかし、シフトを起こすものは定義上現パラダイムの外側からやってくるほかない=最初はニセモノの形を取ってやってくる、ということもまた事実。ぼくはなにかあったときに大恥を掻きたくないので留保を付けたい。もしかしたら?ということは、あるのかも知れない。ただし、そんなことはほぼ絶対、まず絶対、可能性としてはあり得るけどほとんど絶対ない、と頑迷に否定するような態度こそが科学を前進させてきたのだ、ということも確かだとは思いますが。