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90歳父の「休業会社」が火種に?相続対策すべきこと

広田龍介・税理士
 
 

 不動産会社に勤務するHさんは、実家で暮らす父親Tさん(90)の相続について心配していることがある。Tさんは農業資材の卸売会社を経営しているが、かなり以前から、本業の営業活動は事実上ストップし「休業会社」化している。だが、万一、Tさんが亡くなり、相続が始まった場合、この会社の存在が火種となりそうなことだ。

上場株式の配当金で黒字に

 会社はTさんの父親が創業した。当時、実家周辺は農家が多く、資材の需要が高かった。Tさんが父親から会社を引き継いだ後も、経営はしばらく順調だったが、時代の変化とともに転廃業する農家が増え、経営環境は大きく変わった。

 今では、実家周辺は倉庫などの物流施設が多い地域と変貌している。かつての顧客はいなくなり、本業は休業状態で、もちろん赤字だ。

 だが、実は、会社は本業以外の収入で最終利益が出ている。Hさんの悩みの種は、これに関連している。

 会社の貸借対照表を確認すると、負債はなく、無借金経営だ。資産には、土地・建物はない。会社はTさんが個人で所有する土地・建物を借りているからだ。あるのは、商品在庫や機械設備と、そして多額の有価証券だ。

 つまり、営業外収入として上場株式の配当金が入るため、黒字になっているのだ。

資産に占める株式の割合が50%超

 Tさんの投資歴は長い。高校生のころ、通学に利用していた鉄道会社の株主優待で無料乗車券がもらえると知り、株式運用に興味を持ったのが始まりだった。

 アルバイトで資金をため、両親に頼み込んで証券会社から鉄道会社の株式を買ってもらった。手に入れた無料乗車券で遊びに出かけるのが楽しみだったという。その後も、貯金がたまれば、株式…

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税理士

1952年、福島県いわき市生まれ。85年税理士登録。東京・赤坂で広田龍介税理士事務所を開設。法人・個人の確定申告、相続税申告、不動産の有効活用などを中心に幅広くコンサルティング活動を続けている。相続税に関する講演やセミナーも開催している。