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「白人たちの蜂起」カリフォルニアから独立したい人々

樋口博子・カリフォルニア在住コラムニスト
シャスタ郡議会での騒動について取り上げた新聞記事(左側)=ロサンゼルス・タイムズ紙2020年1月10日付
シャスタ郡議会での騒動について取り上げた新聞記事(左側)=ロサンゼルス・タイムズ紙2020年1月10日付

「見捨てられた」と感じる人々の戦い(上)

 1月6日、トランプ氏の大統領選敗北に納得しない支持者らが暴徒化し、首都ワシントンにある連邦議会議事堂に乱入した事件は、「民主主義への攻撃」として米国内だけでなく、日本でも注目されました。しかしその前日、カリフォルニア州北部のシャスタ郡で前兆ともいえる出来事があったことは、日本ではほとんど報道されていません。

 シャスタ郡では1月5日、コロナ禍に伴うレストランや学校の閉鎖などに反対するトランプ支持者らが、郡の議会に押しかけるという騒動がありました。郡の人口は約18万人、住民の約87%が白人の小さな田舎町で起こったこの騒動は、ワシントンでの議事堂乱入事件との連続性、関連性が指摘され、米国内ではロサンゼルス・タイムズ紙などが取り上げました。

 報道によると、騒動の中心にいたトランプ支持者たちにはもう一つの顔がありました。彼らは、シャスタ郡を含む地域一帯を米国の「51番目の州」とし、独立することを目指す「ジェファーソン州独立運動」の人々でもあったのです。

 彼らの言う「ジェファーソン州」とは、カリフォルニア州北部とオレゴン州南部にまたがる広大な山岳・森林地帯を指します。くしくもワシントンでの事件がきっかけとなり、この地域に暮らす人々の存在に光が当たることになったのです。

1941年から存在する独立運動

 シャスタ郡は、世界有数のパワースポットと言われるシャスタ山と、ふもとに広がる豊かな自然で知られる場所です。州都のサクラメントからは車で2時間半。私たち家族も週末、サクラメントに行くとよく立ち寄るのですが、今回の騒動が起こるまで、この土地の住民がど…

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カリフォルニア在住コラムニスト

 英国ケント大学修士(国際関係論)、ロンドン大学修士(開発学)、東京大学博士(国際貢献)。専攻は「人間の安全保障」。2008年、結婚を期に米ロサンゼルスに移住。渡米前はシンクタンク、政府機関、国際NGOで開発途上国支援に取り組んだ。現在は執筆活動のほか、地元コミュニティを地域や日米でつなぐ活動を行っている。カリフォルニア州下院議員アル・ムラツチ氏は夫。