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相手の「わかったつもり」をなくす有効な方法とは

川井龍介・ジャーナリスト

 伝えたつもりが伝わっていない。伝えたことがほんとうに理解されているのか不安になる。仕事の中でこんなことはないでしょうか。相手との約束、確認事項など重要な事柄について、こうした問題は悩ましいものです。

 医療の世界では、インフォームド・コンセントという概念が重視されています。医師は患者にその病名や病状などを説明し、患者がそれを理解し、同意したうえで治療が行われることを意味します。時に生死にかかわる問題でもあるため、患者が理解し、納得したかは非常に重要です。

 真面目な医師ほどこの点に気を使いますが、ある若い医師が、患者に対して自分が説明したことがほんとうに理解されているか心配になると話していました。この若い医師は、患者に病状などを説明する際についつい話が長くなり、相手に正しく伝わらなかったのではないかと思うことがありました。あるとき患者に確認してみると、案の定理解されていませんでした。

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ジャーナリスト

1980年慶応大学法学部卒。新聞記者などを経てフリーのジャーナリスト、ノンフィクションライター。実用的な文章技術を説いた「伝えるための教科書」(岩波ジュニア新書)をはじめ「大和コロニー~フロリダに『日本』を残した男たち」(旬報社)、「フリーランスで生きるということ」(ちくまプリマ―新書)を2015年に出版。このほか「ノーノー・ボーイ」(ジョン・オカダ著、旬報社)の翻訳をてがける。