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土星蜥蜴の「筆のすさび」

日々雑感。 アニメ文化に関する気ままな評論・感想を書き連ねます。

『デュラララ!!』#21「五里霧中」の感想。

「僕は自分のことばっかりで、何も見ていなかったのかもしれない。園原さんのことも、ダラーズのことも…。僕は、ダラーズの何を知ってるんだろう。」
『デュラララ!!』#21「五里霧中」より

以下、ネタバレが多分に含まれますので、ご了承の上でお進みください。




 来良+メガネ+巨乳=杏里って、どんな方程式だよw確証もない情報に踊らされる人々を描いているのかと思いきや、こんなお茶を濁すようなギャグを仕込んでしまっては本題の意味が損なわれてしまうじゃないか…。そりゃぁ、面白いから構わないけど、ギャグを入れるなら別の場所に入れるべきだったような。。。なんだか、帝人の鈍感さと至らなさも、正臣の疑心暗鬼も、杏里の自責の念と行動力も、どれも分かりきった展開に感じる。もはや、最終回のオチに向けた単なる消化試合の様相を呈してきたかなw巨乳と聞いただけで杏里を想定してしまう面々の発想も、リーダーに頼らず自分たちの力で解決しようと盛り上がるダラーズ構成員の人の良さも、何も努力した形跡が描かれていないのに「進化してやろうって決めた」とか言っちゃう帝人とか、どれもこれもトリッキーな三者鼎立の状況を作り出すためのご都合の多さに白けてしまう。ご都合だろうと予定調和だろうと、ハッピーエンドが好きってやつだねwまさしく、作者自身の持論を体現しようとしているってことなんだろうかw

■冗長ながらも繰り返される情報に踊らされる人々の描写

「きゃっほーーーーーヽ(*´∀`)ノ ーーーー」
「甘楽ちゃんでーす」
「あれぇ、どなたもいませんねぇ」
「まさか、私をのけものにしてみなさんでお楽しみですか~?」
「プンプン!」
「でもいいんです」
「私も絶賛お楽しみ中なのでーーーす」
「ゲームが盛り上がって来たので、私も落ちます!」
「バイバイビーーーー☆」

 大爆笑だったw神谷さんもノリノリである。臨也もすべての仕掛けを終えて、後は高みの見物ってわけだね。駒は見事なまでに臨也の意のままに動いているよ…。つまるところ、臨也のやったことは仲違いをさせるときの常套手段であって、両者に偽でありながら一致する情報を握らせることによって、本人たちが事実の確認をすると相手の持っている情報と一致するから本当だってことになって、真実ではないにも関わらず真実であるかのように錯覚させてハメるっていう方法だね。具体的に言えば、まず正臣には罪歌がダラーズと組んでいるかもしれないと思わせる状況を見せ付けた上でダラーズのリーダーが帝人であることを伝え、杏里には罪歌のせいでダラーズと黄巾賊が一触即発であると自責の念を植え付け、帝人にはダラーズと黄巾賊が一触即発であることを煽る。すると、黄巾賊はダラーズを潰しにかかり、見かねた杏里は事態を解決しようと動くために黄巾賊の前に現れることになり、罪歌がダラーズの仲間であるという見方の根拠を与えてしまうことになる。まだ正臣は疑心暗鬼の状態だから対立軸は成立していないけど、その疑念に確証を与えるような行動を杏里や帝人にとらせれば、臨也の勝利って感じだろうか。初めに両者に握らせた情報は嘘だったけど、互いにそれを信じて行動したために事実へと摩り替わってしまう。見事な虚偽のロンダリングだねwこれを仕組んだ身としては楽しくてしょうがないだろうなぁ。。笑いが止まらないだろうねw

「ダラーズからは手出ししていない。ボスからも特に指示は出ていない。そのことに不満を抱いている連中もいるようだが…。ま、あくまで噂だがな。」

 結局、ドタチンでさえも「噂」に翻弄されている。自分がダラーズであることを悟らせないための方便とも受け止められるけど、単なる噂程度の情報を与えて帝人に信じさせようとしているあたりが、いかにも情報に踊らされる人々の姿を象徴しているようにも見える。事実も確認しないで行動することは危険なんだよw

「で、ダラーズのリーダーはその子の同級生で、黄巾賊にも友達がいる。」
「帝人がダラーズのリーダーだってことは、杏里ちゃんは知らないんだ。」
「とにかく、三人は仲良しで、ダラーズの子と黄巾賊の子は、お互いにそのことを知らない。」

 そして、またもや外野席にいる新羅の口を借りて、ご丁寧にも状況の整理を説明してくれちゃったわけだwセルティは自責の念に駆られる杏里を抑えるために「誰のせいでもない」とフォローしてるけど、それだけでは説得力を持たずに気休めにしかならないよね。まぁ、そんなことを健気にも言うところがセルティの可愛らしさではあるけどw内緒モードを使いこなせていなかった杏里を見て驚くセルティも可愛かったww
 そんなセルティの気遣いも届くことなく、杏里は「私のせいだ。私のせいで、紀田くんが…。」と言って臨也の術中に見事にハマるわけだ。ついに罪歌の子を使って黄巾賊の暴走を止めるけど、それは黄巾賊に罪歌とダラーズがつながっていることを裏付ける証拠になってしまうし、正臣には杏里が背後にいることを悟らせることになる。まさしく臨也の思う壺ってやつだw正臣自身も「嘘だろ…。嘘だよな?」とか言いながら、半分以上は杏里=罪歌っていうことを認めざるを得ない感じだったね。
 一番の問題は今までも指摘してきたように、事実を確認しないまま虚偽の情報を真実であると錯誤してしまう安易な思考にある。なぜ首なしライダーがいるっていうだけで催眠術につながるのか、なぜ来良でメガネで巨乳な女の子と一緒にいたというだけで催眠術の原因を彼女に求めることができるのか、砂上の楼閣って感じ。どれも偶然の一致でしかないにも関わらず、そこに信憑性を読み取ってしまうのは危険でしかない。臨也の「いいねぇ。いいねぇ、盛り上がってきた。」という高笑いが響くよw
 そして、ここ二話ぐらい、ずっとこの情報処理に関する問題ばかりが取り上げられているwこれこそ作品としての問題なのかもしれない。これ以外に描かれていることが少ないんだもんw情報に踊らされてむにゃむにゃ考え込んでいる三人組の姿が描かれるだけで、何もドラマの進展がない。なぜ同じ状況の繰り返しを三話にも亘って続けているんだろうか。冗長でしかない。しかも、それだけの時間をかけて提起してきた情報に踊らされることの問題点に関して、巨乳方程式というギャグを持ち込むことによって台無しにしかけているwこれをやってしまったら、踊らされることは承知の上でギャグとしてやってるということになってしまう。何がしたいんだか…。皆が臨也の盤上で踊る姿を淡々と描く場面はもうたくさんだ!ん…、この鬱積された感情を利用して、バネ作用から最後のクライマックスを印象的にドーンと派手に打ち上げようという魂胆なのか?w

■自惚れるばかりの帝人

「ただ、帝人くんは日常からの脱却を夢見ているようだけれど、東京の生活なんて、半年も過ぎれば日常に変わるよ?さらに、非日常に行きたければ、よその土地に行くか、あるいはもっとアンダーグラウンドなものに手を出すしかないねぇ。でも、そっち側も踏み込めば、たぶん三日で日常になってしまうんだろうねぇ。本当に日常から脱却したければ、常に進化し続けるしかないんだよ。目指すものが上だろうが、下だろうがね。日常を楽しみたまえ。」
#12「有無相生」より

「進化してやろうって決めた。でも…。これが、その結果…。」

 ん?進化しようと決めたんだっけ!?それで何をしたんだっけ…wダラーズの集会があって以来、帝人は何も動いてなかったじゃないか。それなのに結果が出るとは、これ如何に!!しかも立派に悩んでるしw急に帝人が主人公面をして舞台に立ち戻ってきたような感じがする。帝人ってここまで空気の読めないキャラだったっけ?w杏里や正臣の変化に気付くこともできず、ダラーズと黄巾賊の抗争に対しても傍観しつつ臨也の煽りに焦るだけだったし、今回はダラーズの数に頼ることもせず無力なままでしかない。

「ダラーズなんて、本当にあっていのかなって思って。ダラーズなんて、本当に必要なんでしょうか。」

 いやいや、ダラーズとしての活動もろくにせず、ダラーズ創設のきっかけを作っただけの帝人に、こんなセリフを言う資格はないよw杏里に対して「ズルいと思う。」とか鋭い突っ込みを入れていた帝人はどこに行ったんだ?自分だけは棚上げの自惚れ屋なんだろうか…。

「何日か経った。あれ以来、僕はダラーズのサイトを見ていない。街では相変わらず騒ぎが続いているらしい。でも、ここでの僕の日常に変わりはない。滝口くんも退院した。こうしていれば、平和でいられる。これが、僕の日常。でも…。」

 そして、すぐに責任放棄であるw正臣はそんな日常を捨ててでも黄巾賊を率いて事態の解決に乗り出したのに、帝人はいまだに日常を捨てきれずにいるんだよね。。。そこらへんの好対照が画かれていて、いかにも帝人の情けなさが際立っているように思う。これはこれで、いいのかもしれないw今回の話の狙いは、こういった帝人の情けなさを印象付けることにあったんだろうか。そして、ここから帝人が積極的に行動するようになり、事態が解決へと導かれるっていうことなのかな?何にしても、今回の帝人の言動については文脈が欠けていることは否めない。

「僕は自分のことばっかりで、何も見ていなかったのかもしれない。園原さんのことも、ダラーズのことも…。僕は、ダラーズの何を知ってるんだろう。」

 このセリフを導いたことは結構なことなんだろうけど、鈍感な自分に気付いたところで何をするっていうんだろうか。それは次回からの話なのかなぁ。。これで対話することの大切さに気付いて、杏里や正臣と直接の話し合いをするようになれば解決に向かうんだろうけど…。
 それに、今まで帝人が見ていた杏里の姿は虚像だったのかっていう問題もある。自分の妄想を杏里に宛がっていただけで、悩んでいる杏里に気付くことはできていなかったとも言い換えることができる。そこらへんの観点からのアプローチは描かれないのかな?なんだか帝人の内面描写も物足りないぞ!wそんなことだからストーカーの偏愛野郎に説教されるんだよwwあんなストーカーの論理を真に受けるなww

■ダラーズという組織への帰属意識

 帝人がダラーズのサイトへ「ダラーズなんて、本当に必要なんでしょうか。」と投げかけたことによって、ダラーズの面々がリーダーに頼らずに自分たちの力で解決しなければならないという結論を導いていた。なんだか違和感があるんだよなぁ。。
 そもそも、ダラーズにリーダーと呼べる存在がいないっていうことは前々から作中で言及されてきた。創設者がいるっていうだけで、上から命令を出すような組織ではなく、それぞれのグループがゆるやかにダラーズであるという意識を共有しているだけの話だった。ここに来てリーダーに責任を求めるという声があがるのがナンセンスだと言うことは当然のこととして、自分たちの力でなんとかしようと呼びかけることの意味がわからない。ダラーズのみんなの力でラクガキを消した過去の例を帝人は思い出していたけれど、実体の覚束ない組織にとってどれだけの意味があるんだろうか。組織でないのに組織っぽく考えて「本当に必要なのか」という問いを発することは、如何にも愚問としか思えない。ここらへんのダラーズの処遇に関しては、どうも作中においてつじつまの合わない部分を感じるんだよねぇ。滝口はダラーズを辞めるって言っているけれど、実体のない組織に対して辞めるとか辞めないとか、そんな発想があるんだろうか。それこそ、自分から進んでダラーズの一員であるという帰属意識を持つほかに所属する資格を得ることはできないわけで、それは組織の問題ではなく個人の問題となる。もう少し、ここらへんを整理して欲しいなぁ。。

■予定調和の上に成り立った無理矢理のハッピーエンドに向けて

「ドラマの見過ぎよ。お約束な予定調和ばかり…。ここは現実なのよ?ゲームや雑誌の中じゃない、あなたは英雄なんかでもない。身の程を知りなさい!」
「それの何が悪いって言うんですか?予定調和も、お約束も、ご都合主義も、無理矢理のハッピーエンドだって大好きですよ!それを目指して、何が悪いって言うんですか!!人のためだとか、世界のためだとか、そんなことは言いません。ただ僕が見たいんです!!僕が信じたいんです。(そうだ、信じる。僕は信じる。みんな…、きっと…。)確かに、こんなのありふれた考えかもしれません。でも、ありふれてるってことは、それだけ、みんながそのことを考えてるってことなんですよ!!」
#11「疾風怒濤」より

 三者鼎立の構造を無理にでも成立させようと、いろんな場面でご都合的な展開や設定が見られるようになって久しい。前半はそれほどでもなかったのに、これほどまで見え透いたご都合をやる背景には何があるんだろうか。
 そこで思い出されるのが、引用した波江と帝人のセリフなんだよねぇ。無理矢理のハッピーエンドが大好きだと言って憚らない上は、実際にそれを体現することもやぶさかではないんだろうねwみんなの期待するクライマックスへと向けて、説明セリフを積み重ねてわかりやすさを求め、トリッキーな三者鼎立の関係を演出することで盛り上げようと必死なんだろうか。キャラクターや設定を歪めてトリッキーな状況を成立させることに躍起になるくらいなら、そんなハッピーエンドはいらないよ。。



 とは言え、盛り上がってきた。この最終回に向けた疾走感というか、ぐぐっと事態が差し迫ってくる緊迫感は毎度のことながらたまらない。そんな雰囲気が演出されているだけで良しとするべきなのかな…。それにしても、スプレーのラクガキが「蒼天已死」の「已」字を律儀に正しく書いてるのがおかしかったwこの字って「己」「巳」「已」と似たような字があって、よく間違えるんだよね…。普通は「己」か「巳」を書いてしまうんだけど、わざわざ正しく隙間を開けて「已」と書いているところが律儀だなぁと思った。

テーマ:デュラララ!! - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2010/06/04(金) 06:14:36|
  2. デュラララ!!
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