Blitz The Ambassador / Stereotype ~アングラ・ヒップホップ・ジャムバンド~
Blitz The Ambassador / Stereotype (2009)
N.Y.ブルックリンをベースに活動するアンダーグラウンド・ヒップホップ・ジャムバンド。
ガーナで生まれアフロビートやジャズに触れ育ったBlitz The Ambassadorは後に兄から薦められたPublic Enemyのクラシック・アルバム"It Takes A Nation of Millions to Hold Us Back"に多大な影響を受けることとなる。
その後、Blitzは大学へ出席すべくアメリカへ渡り、Kent State Universityでミックステープを作成するなどミュージック・スキルに磨きをかけ卒業。大学を卒業するとN.Y.へ移住、自身のバンド"The Embassy Ensemble"を結成し"Stereotype"のレコーディングを開始し2009年に本盤が誕生。
何と言ってもBlitz The Ambassadorの魅力はBlitzのルーツでもあるアフロビート×ヘヴィ・ホーン×ヒップホップのビート×Blitzの奥底から放つ存在感のあるラップで構成されるトラックに宿る圧倒的なエネルギーと生を感じさせる躍動感。こういった手は意図的になりすぎて大味になりがちですがBlitz The Ambassadorはごく自然なのがイイ。まずはその圧倒的なエネルギーを感じてもらいたく「らしさ」が顕著な#03-"Breathe"と「らしさ」×コズミック、徐々に変化を魅せ中間からBlitzが爆発する大地と宇宙・未来といったスケールの大きさをひしひしと感じさせてくれるフューチャーヒップホップ#11-"Remembering The Future"を聴いてもらえたらと思う。往年のヒップホップ・ファンは#12-"Goodbye Stereotype"を聴くとニヤリ。
荘厳なストリングスとアフロビートに極ソウルエッセンスを絡めたスケール感のある冒頭に続き、荒くファットなビートが加わる重厚なトラック。魂の叫びともいえるバックヴォーカルとコーラスの使い方なども含めTalib Kweliの"Quality"やTalib Kweli & Hi-Tekの"Train Of Thoughtあたりのサウンドが好きな方におすすめしたい"#02-"Something To Believe",
アフロビート×ドラムマシンが生み出す濃厚なビートに中毒性の高いギターリフ、カラっとした熱気を含んだホーンの音色が息づくエネルギッシュなトラック。アフロビートに対抗し饒舌ラッピンも魅せるBlitzの姿と煽るようにヴァイブを吹き込むゲスト"Rob Murat"のヴォーカルが映える最も「らしい」シングル#03-"Breathe",
Little Brother系の爽やかでメロディアスなホーンで始まりつつも、トラックは情熱的でスリリングなサウンドとゲストヴォーカル"Rick Bartlett"を筆頭にカリブ・エッセンスをブレンドした展開で魅せていく刺激的な#04-"Lover's Remorse",
セクシーなサックスを率いたJAZZの幕開けからベースラインとギターはトラックの軸として残し、パーカッションを絡ませたシックでアダルトな構成に。節々でサックスがタイトルHomeを思い起こさせるように切なさを含ませセクシーにブロウする数少ないJazzy Hip-Hopチューンながら重厚さは健在の#06-"Home",
終盤で昂ぶり激しさを増すメランコリック・ギターにスペイン語のフィメールヴォーカルとサイレンが重なる別の意味でヘヴィな哀切トラック好きにはタマラナイ仕様の#07-"Ghetto Plantation",
これまたヘヴィ。冷徹なストリングスとシンセに被さる途方に暮れるような"Kate Mattison"の脱力ヴォーカルが無常に響き、力強いドラムスと高圧的ラップが重く圧し掛かる他、暴虐的なエレキ・ギターがドラマティックな曲へと高めるなどフィルムなんかと相性が良さそうな#08-"Nothing To Lose",
切ない旋律を流麗に奏でるピアノにAl Greenの"I'm Glad You're Mine"を引用したビートと"Tarrey Torae"のヴォーカル、中盤以降で聴ける解き放たれたかのように自由に音を響かせるフルートがベストマッチ。美しくも儚さを感じさせ心に食い込む#09-"Dying To Live",
前3曲のダークなトーンとはうって変わり、Marvin Gayeの"Mercy Mercy Me"にも似たゆったりとしたサウンドをパーカッション、エレピ、ベースなどで演出。切迫したラップを魅せていたBlitzも本ナンバーではリラックス・ムードでラップを披露する本盤唯一のレイドバック・チューン#10-"Beyond The Clouds",
息抜き的な#10を経て再びトラックはBlitz The Ambassadorらしい、ヘヴィ・ホーンと腰の据わったビートを軸にスペイシーな味付けを加えたものへ。ゆったりとした前半から一気にトラックが疾走しBlitzも疾走⇒トリップ感を演出したスペイシーなパート⇒終盤のアフロビート、ホーン、マリンバが炸裂するルーツ回帰的なパートと7分で様々な顔を魅せる聴き応えのある#11-"Remembering The Future",
フューチャーリスティックな冒頭に続き、Boogie Down Productionsの"South Bronx", Eric B. & Rakimの"Eric B. Is President", Public Enemyの"Don't Believe The Hype", Run D.M.C.の"My Adidas", Notorious B.I.G.の"Unbelievable", Nasの"NY State of Mind", Wu Tang Clanの"C.R.E.A.M.", 2Pacの"Ambitionz Az a Ridah"など哀切トラックを交えながらヒップホップ・メドレー状態で締めるあたりに相当HIP HOPからの影響と強い思い入れを感じさせる#12-"Goodbye Stereotype"のエネルギー全開の全12曲。