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2006年4月24日 (月)

アクリル酸業界

アクリル酸は高吸水性樹脂向けを中心に世界中で需要が増えている。Tecnon(2004年:LG発表資料から)によればアクリル酸の需給は以下の通り。

                     単位: 千トン
  2004 2008予想 2010予想
能力 需要 能力 需要 能力 需要

Global

 3,617

 3,333

 4,351

 3,834

 4,491

 4,143

China

165

463

645

745

645

937

韓国 LG Chem によれば、2004年の能力順位は以下の通り。
①BASF 750千トン、②Rohm & Haas 575千トン、③Dow 516千トン、④日本触媒 450千トン、⑦LG 160千トン。

なおLGは新たに自社で開発した技術で80千トンプラントを建設中で、2007末に完成すれば能力は240千トンとなる。

日本のメーカーでは日本触媒と三菱化学が主メーカーで、海外にも進出している。

日本触媒が開発したアクリル酸製造技術は、海外の大手化学メーカーに数多く採用され、世界のアクリル酸製造能力の55%を占めている。(同社ホームページ)
同社は
姫路に220千トン設備(他にエステル 130千トン)をもつほか、米国テキサス州パサデナに高吸水性樹脂子会社NA Industries (当初はAlco社とのJVであったが、同社が他社に買収され、現在は日触100%)とElf Atochem North America との合弁会社American Acryl で120千トン(日触持ち分60千トン)プラントをもつ。
*
Elf Atochem は同敷地内にアクリル酸ブチルプラントを建設

更にインドネシアでは Nisshoku Tripolyta Acrylindo (当初 日触 50%、Tri Polyta 45%、トーメン 5%)の持分を増やし、現在 93.8%を所有している。同社の能力は60千トン(+エステル 100千トン)。

同社は2002年3月に住友化学との間でアクリル酸事業とMMAモノマー事業を交換した。日触としてはモノマーの販売だけのMMA事業を住化に譲り、アクリル酸に経営資源を集中投入し、強化・発展させていこうというものである。
この結果、住化・愛媛の80千トンの販売権と、
シンガポールのシンガポール・アクリリック社(粗製アクリル酸60千トン、住化 60%、東亞合成 40%)の51%の持分を住化から譲り受けた。
シンガポールではこのほか、スミカ・グレーシャル・アクリリック社(精製アクリル酸25
千トン、住化100%)の全持分を取得した。
なお、同地の
アクリル酸エステルJV(東亞合成 75%/住化 25%)は東亞合成 100%になり、高吸水性樹脂JV(住友精化 80%/住化 20%)は従来どおりである。

この結果、同社は全世界で450千トンのアクリル酸生産能力(持分ベース)を保有することになった。

その後、住化・愛媛のプラントは停止したが、姫路に老朽設備廃棄・愛媛停止集約で160千トンの新製法アクリル酸設備を建設中で2006年中に完成する。

三菱化学四日市に110千トン(ほかにエステル 116千トン)をもつ。

同社は2001年12月に
南アのSasol 社との間でアクリル酸及びアクリル酸エステルの共同事業について合弁会社を設立することで基本合意した。その後、20039月にEUの承認を得て2つの合弁会社を設立し、2004年4月に製品出荷を開始した。
①Sasol Dia Acrylates (Pty) Limited (本社:南ア)
 三菱化学 50%、Sasol 50% 出資で、アクリル酸及びアクリル酸エステルの販売、投資等の事業管理を目的とする。

②Sasol Dia Acrylates (South Africa) (Pty) Limited (本社:南ア)
 ①のJVが
50%、Sasol 50% 出資で、Sasol 社 Sasolburg工場敷地内に、アクリル酸 80千トン、アクリル酸ブチル 80千トン、アクリル酸エチル 35千トン、精製アクリル酸 10千トンを生産。

Sasol社の最新の石炭液化技術を用いて生産したプロピレン、エタノール、ノルマルブタノール(三菱化学技術)などの価格競争力をもつ原料と、三菱化学のアクリル酸及びアクリル酸エステル製造技術を組み合わせることにより、競争力ある製品を供給しようというものである。

*南アでは以前にアパルトハイト政策により欧米各国から石油の禁輸を受けたため、Sasol が同国の豊富な石炭を原料にしたエチレン生産技術を開発した。現在は中国にその技術を供与している。

なお、三菱化学は2004年8月に中国の藍星社に技術を供与した。藍星社のグループ会社の沈陽パラフィン社が遼寧省沈陽市で建設するアクリル酸(80千トン)、同エステル(120千トン)に生産技術を供与、製品の一部はSasol Dia Acrylates を通じて中国国内を含むアジア市場を中心に販売する予定である。

このほか、日本では出光興産(旧 出光石油化学)が愛知で50千トン(+エステル 50千トン)を、大分ケミカル(東亞合成90%、昭和電工10%)が大分で60千トンのプラントをもつ。大分ケミカルは1983年に廃業した日昭化薬(日本化薬/昭和電工)から事業を引き継いだもの。東亞合成は名古屋でアクリル酸エステル 114千トンのほか、シンガポールに100%子会社・Singapore Acrylic Ester(当初、東亞合成 75%/住化 25%)で同 82千トンをもつ。

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コメント

ダイセル イノベーションパークの久保田邦親博士(工学)ってノーベル賞候補なんですってね。自動車や様々な機械の低フリクション化の方向性を示す基礎理論、CCSCモデルというものが評価されているようですね。

投稿: サステナブル | 2021年10月 3日 (日) 14時06分

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