さすがP&G!人を動かし、買い続けさせる販売促進!
成功する販売促進は、消費者の心を洞察(インサイト)し、行動を読み買わせる。さらに、一度きりでなく、買い続けさせるように仕向けることである。「さすがP&G!」と思わせる防臭柔軟剤「レノアプラス」の販売促進がこれから全国で展開される。
キャンペーンが始まったばかりだとのことで、まだ全国の取扱店では店頭に並んでいないところも多いようだが、もし見かけたら足を止めて、商品を手に取ってみて欲しい。
P&Gの柔軟仕上げ剤「レノアプラス」。ただ衣類を柔軟仕上げしてくれるだけではなく、「一日中、着ている間も嫌なニオイが防げる」のが特長だ。同社の「ファブリーズ」の技術を使っているというから間違いない。でも、とってもいいけど、ちょと高い。
が、ドラッグストアの店頭で248円で売っているではないか!「数量限定!今がチャンス!お試しサイズ」とある。
手に取ってみる。あれ?「数量限定・お試しサイズ・通常ボトルの約3/4」とボトルのパッケージに表記されている。ご丁寧に、ボトルパッケージの3/4くらいの位置に点線で「入っているのはここまでですよ~」としるしがされているので間違いがない。通常の650mL入りボトルに3/4の容量、約433mLのブツを詰めて売っているのだ。
消費者の態度変容モデル、AMTULで考えてみよう。Awareness(認知)・Memory(記憶)・Trial(試用)・Usage(使用)・Loyal(愛用)である。
「消臭効果のある、いいけどちょと高い柔軟仕上げ剤・レノア」はもともと、多くの人に認知・記憶されている。問題は、「ちょと高い」ので、購入に踏み切らないことだ。故に、課題はTrial、お試しなのだ。
「いつもは特売の別メーカーだけど、こっちの方が値段的にちょっと安いし、いつもはレノア高いけど、買ってみようかしら!…色んな香りで迷うわ~」
お試し少量ボトルで洗濯してみる。Usageだ。
「あれま、部屋干ししても臭くない…タオルもふわっと…結構いいかもね」
少量ボトルなので、半月位で無くなる。
「もうなくなっちゃった…あら、けどこのボトル。容量がすくなかったけど、ボトルサイズは通常サイズと同じね」と、ドラッグストアへ。多分詰め替えパックをその頃売り出しにかかる。
「あっらー。詰め替えパックは安売りの時に買えば、ほかの仕上げ剤と比べてもほんのちょっと高いくらいだわ!ボトルもあるし、これでいいわ~」。そうして継続購入させ、Loyal・愛用の銘柄にさせるのである。
ミソは、上記の通り、最初にフルサイズのボトルを安く購入させることである。ボトルさえあれば、詰め替え用を継続購入させることができる。アフターマーケティング、囲い込みの第一歩だ。一度ボトルを手元に置かせれば、レノアの消臭機能と香り、仕上げのよさでブランドスイッチしない顧客も少なくないだろう。
本当に3/4サイズのボトルを作って買わせるのでは、詰め替えパックは480mLなので余ってしまう。ましてや、専用ボトルを作ってラインを分けるのは全く非効率だ。この展開なら、通常商品にラミネートパッケージをもう1枚かぶせ、内容量の充填を3/4にするだけでいい。最小限の努力で最大の成果を狙っているのだ。
飲料や洗剤などでは「今だけ増量!」という販促手法もあるが、「今だけ」では継続的な利益ににつながらない。また、不景気で安いものしか売れない時代に、安さを演出しようと食品などは、そ~っと内容量を少なくして価格を下げる「量目調整」が横行しているが、限度を超えれば顧客も気付き離反を招く。
堂々と真っ向勝負で、「3/4しか入ってません!」と明言すれば、消費者も「あぁ、少ないのね。試しやすくしてるのね。一回買ってみたかったけど、高いからためらってたのよ」と、「何で安くなってるの?」手にするのにいちいち勘ぐることもなくなる。消費者にとっても気持ちがいい。
効果的な販売促進は、消費者の心と行動を読んで、一度だけでなくロイヤル化までを見越して行うに尽きる。しかも、それを最小限の努力で実現しているのだ。さすがマーケティングエクセレンスなP&G。脱帽である。
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